天才・涅マユリの秘密道具   作:筆先文十郎

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この小説はBLEACHの二次創作です。
本編とは違うところが多々あります。
本編と矛盾するところがあるかと思います。
他にもおかしいところはあると思います。
以上のことを了解した上で読んで下さると助かります。


第十九話 戦闘能力増強クリーム

「涅隊長。阿近さんが気になることが――」

「出来た、出来たぞ!」

阿近から指示をあおいでくれと頼まれた男がマユリの元を訪れると、マユリは歓喜の笑いを浮かべていた。そして男はまたまずい所に出くわしたことを悟り、気づかれないように後ずさる。

だが、目の前の悪魔のような上司にはお見通しだった。

「逃げるんじゃないよ!」

振り替えるや否や、ロケットのように発射されたマユリの左腕が男の首を掴む。

「うおぉぇッ!?く、涅隊長……逃げるなんて」

男は左腕を外すと、逃げられなかったという気持ちを隠して冷静を(よそお)う。

「だ、第一……、隊長の実験体になることが唯一の生きがいである僕が、隊長の素晴らしい発明品に立ち会えて喜ばないわけがないじゃないですか」

「……それもそうだな」

マユリは左腕を外し、左腕に注射をして左腕を復元させる。

「では、私の作品の実験体になることが唯一の生きがいであり輝ける人生のクズに、私が華を添えてあげようじゃないか!」

そう言ってマユリは懐から何かを取り出す。それはクリームタイプの化粧品が入っていそうな容器だった。

「当ててみろ、と言ったところでクズだと百年たってもわからんだろうからこの私が説明してやろう。これが戦闘能力増強クリーム。これを顔に塗ってから丸い物を見ると狼男に変身するというものだ。このクリームの凄いところはただ狼になるのではなく、その者が持っている本能を爆発させるため本来眠っている力をフルに出せる。どうだ、素晴らしい発明品だろう?」

「ああぁ、これってちょっと戦闘能力を増強させるという部分は違いますけどドラ○もんのおおかみ男○リーム――ッ!?」

男が何かを言おうとしたが、言えなかった。何故ならば目が笑っていない笑みを浮かべながらマユリが刀を抜こうとしていたからだ。

()(むし)れ『疋殺(あしそぎ)――」

「い、いいい、いいえ!凄いです凄いです涅隊長!!顔に塗っただけで狼になり戦闘能力を増強できるなんて僕ら凡人には永久に思いつかない発想を思いつきかつそれを実現してしまうその発想力と実現能力!!こそれが出来る隊長はまさしくシャーロック・ホームズを超える頭脳を持った科学者です!!!」

涙目で祈るように賞賛の言葉を贈る男に、マユリは「探偵と科学者は違うだろう」と言いながらも不満そうではない笑みを浮かべて刀を元に戻す。

「だがまだ生物にはためしてなくてね。そこでクズ、今すぐこのクリームを塗ってみろ」

そう言ってマユリは男に戦闘能力増強クリームが入った容器を渡す。男の危険察知能力が警報を鳴らす。このクリームを塗るな、と。

しかし。

「いいからさっさと塗らないか!私は忙しいんだよ!!」

目の前の上司が今にも刀を抜きそうなほど怒りのオーラを上げているのだ。男の選択肢は一つだった。

(な、南無三!)

男は覚悟を決めると容器のフタを取って薄緑色のクリームを顔に塗りたくる。

「……」

しかし何も起こらない。

(そうか!確か丸い物を見ないと狼男に変身できないって言っていたっけ)

男が丸い物を見まいと決心したその時だった。

「おい、クズ。いま何時だ?」

「えっと」

男は何時か調べようと時計が置かれた場所を見る。丸い形の時計を。

「し、しまった!……ウッ、ウウッ!ウワオオオオオオォォォォォォォンッッッ!!」

男の体が見る見るうちに体毛が生えていき、耳が生え牙が伸びていく。そして遠吠えをするその姿はまさしく狼そのものだった。

「おぉ!本当に狼になったぞ」

嬉しそうに狼男になった男を見るマユリ。

「クンクン、クンクン……ウワオオオォォォッン!」

男は鼻を鳴らすと一目散にどこかに走り去っていった。

 

 

 

書庫。

副隊長の涅ネムは一人で書類整理をしていた。

「ウウウゥゥゥッ!」

「貴方は……」

うなり声の方を見るとそこには狼男になった男がネムに狙いを定めていた。そして

「ウワオオオオオオォォォォォォォンッッッ!!」

舌なめずりをした男が憂い顔の副隊長めがけてダイブした。

「……」

ネムは襲い掛かろうとする男をただジッと見て

 

 

ズドォォォォォォォンッッッ!!

 

 

ネムの突き上げられるように放たれたパンチが男のアゴを捉え、男の身体を天井に突き刺した。

 

 

 

「え?」

目を覚ますと、男は研究所の外にいた。外にいるだけではない。首には鎖付きの首輪が付けられ斬魄刀以外何も身につけていなかった。

後ろを見るとそこには『クズの小屋』と書かれた犬小屋を模した箱が置かれてあった。

「な、何で僕がこんな犬みたいなことをされているんだ!?」

狼になった自分がネムを襲いかかって見事に撃退されたことを覚えていない男は犬のような扱いをされている状況が理解できずにいた。

その後男は番犬として研究所の庭に放置されることになるのであった。


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