本編とは違うところが多々あります。
本編と矛盾するところがあるかと思います。
他にもおかしいところはあると思います。
以上のことを了解した上で読んで下さると助かります。
技術開発局で一人の男が十二番隊隊長・
「涅隊長。お呼びとのことで参りました」
「おお。クズ、良いタイミングで来るじゃないか」
「あ、いや。僕はクズじゃ……いえ、何もありません」
男は言いかけた言葉を飲み込む。ここで「クズじゃない」と言えば怒りを買うと思ったからだ。そしてまずいタイミングで来てしまった自分の不幸を男は呪った。
「と、ところで涅隊長。今回はどのような世紀の大発明を?」
「世紀の大発明?おぉ、世紀の大発明だとも!」
奇怪な顔の技術開発局局長は大きく目を見開いて男を見る。そして懐から黒猫を模した置物をを取り出した。
「見ただけで理解できないクズに、この私がわかりやすく説明してやろう。これは招く猫。招きたい人の名前を呼んでスイッチを入れると、招き猫のような仕草をして人を招き寄せるという優れものの発明品だ!」
「ああ、ドラ○もんのカ○カムキャットですね――ッ!?」
男は慌てて口を押さえるが、遅かった。何故ならば目が笑っていない笑みを浮かべながらマユリが刀を抜こうとしていたからだ。
「
「い、いいい、いいえ!何でもありません涅隊長!!招きたい人を招くという僕ら凡人には永久に思いつかない発想を思いつきかつそれを実現してしまうその発想力と実現能力!!流石は涅隊長です。これぞまさしく天下無双の頭脳を持つ天才科学者、涅マユリ!!!」
バクバクとなる心臓の鼓動を感じながら賞賛の言葉を贈る男に、マユリは「まあ、当たり前だがネ」と満足な笑みを浮かべて刀を元に戻す。
「だがまだ生物ではためしてなくてネ。クズ、誰か呼びたい人間はいるか?」
「呼びたい人、ですか?」
男は考える。男が呼びたい人間はいる。しかしその者が仕事中だったりして手が離せない状態なら迷惑をかける。
「いいからさっさと呼べ!」
「は、はい!」
イライラする上司に促され、男は呼びたい人の名前を叫びながらスイッチを押す。
「五番隊の
黒い猫が招く仕草をする。すると二人の元にある者が現れた。
「あの~すみません」
二人が振り返るとそこにはツインテールの子どものような女性が立っていた。
「よ、夜野さん!?」
「久しぶりだね、葛原君」
朋花は少しだけ寂しそうな笑みを浮かべる。
「実はいかなければならない所があって。本当は既にいく予定だったのだけど何故かこちらに来なければならない気がして来ちゃったの」
「え、それは……」
悪いことをしてしまったと男は悔やむ。
「いいの。構わないわ……実は一人でいくのは寂しいと思ってたから。葛原君が一緒にいってくれるなら私も嬉しい」
「え?」
突然の誘いに男は上司の顔を見る。
「行ってやれ」
マユリは大きくため息をつくと、部下に彼女についてあげるように促す。
こうしてマユリは二人を見送った。
「ガラにもないなぁ。この私が恋の手助けをするなど……」
そして数分後。
「く、涅隊長!葛原がここにいると聞いて来たのですが!」
息を大きく切らしながら四番隊の男が現れた。
「どうしたんだネ?あのクズなら五番隊の夜野朋花とかいう女と共にどこかに出かけていったが?」
「え?」
マユリの言葉を聞いた瞬間、男は後ずさり壁に倒れこむ。
「どうしたんだ、いったい?」
「夜野さん。昨日の夜、亡くなったんですよ……」
「な、何だと!?」
その言葉にマユリは驚きを隠せなかった。亡くなったとされる彼女をつい先ほどまで見ていたからだ。
「そして。死亡解剖のために四番隊で安置されていた夜野さんの遺体がどこかに消えてしまったんですよ。まるで誰かに呼ばれたかのように!」
「……」
四番隊の男の説明に、マユリは先ほどの彼女の言葉を思い出す。
『実は”逝”かなければならない所があって。本当は既に”逝く”予定だったのだけど何故かこちらに来なければならない気がして来ちゃったの』
『いいの。構わないわ……実は一人で”逝く”のは寂しいと思ってたから。葛原君が一緒に”逝って”くれるなら私も嬉しい』
「……」
「あ、あの。涅隊長!?」
四番隊の男の言葉は、放心するマユリの耳には届いていなかった。
夜野朋花(よるの ともか)
筆先文十郎オリジナルキャラ。マユリにクズと呼ばれている男とは同期にあたる。男が密かに憧れていた。
元々身体が丈夫というわけではなく、慣れない仕事で病気がちになり亡くなった。