天才・涅マユリの秘密道具   作:筆先文十郎

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この小説はBLEACHの二次創作です。
本編とは違うところが多々あります。
本編と矛盾するところがあるかと思います。
他にもおかしいところはあると思います。
以上のことを了解した上で読んで下さると助かります。


第十四話 結界丸

マユリにクズと呼ばれている男はまたもマユリに呼び出されていた。

「クズ。これを渡しておこう」

そう言ってマユリが渡したのは一見ただのビー玉だった。

「それは結界丸(けっかいがん)と言ってな。『解放!結界丸!!』と叫ぶと半径一メートルに半透明の堅固な結界が半球体で展開される」

「……はぁ」

(何か裏があるな……絶対に)

散々実験台にされていた男は一応聞いてみる。

「ところで涅隊長。これは試されているので?」

「いや、まだない。ただ私の計算が正しければ、隊長格の卍解にも数回くらいは耐えられる耐久力はあるはずだ」

(この流れって……)

男は前回のことを思い出す。

(確か、書類を十一番隊の更木隊長に渡す任務を与えられた時、背中に更木隊長を挑発する内容の紙をいつの間にかつけられ無理やり戦わされたっけ。あの時は何とか命からがら助かったけど……本気になった更木隊長と戦うなんて二度と御免だね!)

幽世閉門の力で何度も生き返っている男ではあったが、絶命する前後の記憶があいまいなため、自分が死んだということに気づいていなかった。

幽世の門(死んだ者が通るとされる死の世界への門)の前で幽世閉門を使っている記憶がない男は、目の前の上司の言葉を待つ。

「そうだ。この書類を」

(まさか。十一番隊に届けろ、とか?)

身構える男に、マユリは続ける。

「七番隊の狛村左陣(こまむらさじん)に届けてくれたまえ」

「な、七番隊?」

男の口から本音が漏れる。

今までの流れからだと、『男の知らない状態で相手を挑発し、自らの発明品を発揮しなければならない状態へと追い込み発動させる』という流れだったからだ。だとすれば、それは好戦的な十一番隊が仕掛けやすい。

されど七番隊は規律の高さで有名だ。ましてや七番隊隊長・狛村左陣は更木剣八と違い、そう簡単に挑発に乗るような男ではない。卍解にも耐えられる実験をしたいのなら一番不向きだと男には思えた。

「ん?何か行きたくない理由でもあるのかい?」

「い、いえ……そのようなことは!」

男は慌てて首を振り、書類を受け取る。

自分の力量以上の仕事を割り振られたのならまだしも、書類を届けるという簡単な仕事で上司の命令を断る理由はない。

怪しく思うも男は書類と渡されたビー玉、結界丸を持って七番隊宿舎に向かった。

 

 

 

七番隊宿舎に着いた男は背中を触る。

(よし、何もない)

背中に何もないことを確認した男は、目の前の宿舎に足を運んだ。

 

 

 

「わかった。涅隊長には『狛村が了解した』と伝えておいてくれ」

書類を受け取った犬顔の巨漢の隊長は使者である男に優しく言った。

「……」

「どうかしたかな?」

え?それだけという顔をする男の顔を見て、犬顔の隊長は尋ねる。

「あ、いえ。狛村隊長。僕、狛村隊長を怒らせることはしてないですよね?」

「ん?別に気に障ることはないが?」

男の質問の意図が分からず首を軽く傾げる狛村左陣。

「あ、そうですか。無礼なことを聞いてしまったこと、お許しください」

男は深々と頭を下げると七番隊宿舎を後にした。

「……何もなかった」

何もなかったことに男は身体を震わせる。

「涅隊長のことだ。絶対に狛村隊長を怒らせて卍解させるように仕向けて結界丸を使うように誘導するはず」

しかし男の予想は外れた。卍解を使わせるどころか、普通に書類を手渡すことが出来た。

そして。男はある結論に至る。

「そうか。結界丸はただ単に作っただけ。そして狛村隊長に書類を届けるのも単なる偶然。僕が気にし過ぎていただけか」

気分が楽になる。ふと空を見る。先ほどまで晴れていた空が一気にどんよりとした雲に覆われる。そして、バケツをひっくり返したような豪雨になった。

「うわ~、マジかぁ。傘持ってないよ……そうだ!」

男はあることを思いつく。

「この結界丸は傘代わりにも使えるかも。よし、解放!結界丸!!」

男がビー玉を握りしめて言い放つと半透明の結界が男を中心に展開される。

半透明の結界は雨を弾いた。

「おぉ、これはいい。これで雨に濡れずに帰れるぞ!」

意気揚々で男は涅マユリに書類を届けたことを報告するため帰路についた。

 

 

 

「マユリ様」

マユリの部屋を副隊長の涅ネムが訪れていた。脇には男の遺体が。

「マユリ様がクズと呼んでいる男が隊舎前で死んでいました」

「わかった。そこに捨てておけ」

「かしこまりました、マユリ様」

そう言って憂い顔の女性は文字通り男の遺体を捨てるように雑に置いて部屋から立ち去った。

「う~む、窒息死だね」

男の遺体を見て、マユリは死因を突き止め、なぜこうなったか思いつく。

「結界丸はどんな攻撃も通さない。すなわち空気の流れも遮断するから徐々に結界内の空気が薄くなり、最後は窒息死に至ったわけか。……穴がないのが穴だったとは……」

マユリは大きなため息をつくと邪魔になった男の死体を外に投げ捨てた。

 

 




最後のオチ。最初は男の想像通り更木剣八を挑発する内容を”頭”につけて発動させようと思っていたのですが、『本当の悪意とは本人がそれと気づいていないこと』というのが頭に浮かんだので、マユリも想定していない死に方にしてみました。

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