天才・涅マユリの秘密道具   作:筆先文十郎

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・シリアスです。
・クズと呼ばれている男(霊骸)に本物が襲われるだけです。




番外編 アニメ『BLEACH』の『護廷十三隊侵軍篇』にクズと呼ばれる男が登場していたら0話

技術開発局内廊下。

「ウワアアアアアアァァァッッッ!!」

マユリにクズと呼ばれている男は逃げていた。男を追うのは、マユリにクズと呼ばれている男(・・・・・・・・・・・・・・)だった。

「何で僕が僕に追われているんだ!」

(技術開発局のみんなの姿は見えないし!)

「縄道の三十、嘴突三閃(しとつさんせん)!」

「ヒィッ!?」

全力で逃げる男は男の鬼道に身体を器用に()じ曲げながら避ける。

「縄道の六十三、鎖条鎖縛(さじょうさばく)!」

「ギョエェイッ!?」

光る太い鎖が蛇のように巻きつき体の自由を奪おうとするのを、生存本能を発揮させて一時的に超人的な運動能力を得た男は壁を蹴りながらジグザグに走り、光る鎖を避ける。

(って二十番台の鬼道を詠唱破棄で発動しようとして暴発してしまうくらい鬼道が使えない僕が何で六十番台の詠唱しているんだよ!しかも詠唱破棄で!!)

「とりあえず、とりあえず逃げないと!そして外に助けを!!」

男は逃げ道を求め出口に向かう。普段ならいるはずの隊員達の姿はいない。

男が外に通じる扉に手をかける。後ろを振り返ったがもう一人の男の姿はない。

男は扉を開ける。

暗い外の空の下に、もう一人の自分がいた。邪悪な笑みを浮かべるもう一人の男は幽世閉門(かくりよへいもん)に手をかけ、抜いた。

 

 

ブシュウウウゥゥゥッッッ!!

 

 

「な、なぜ……僕が、僕を……!?」

左肩から右ももにかけて大量の血が周囲に飛び散る。崩れ落ちる男は疑問の言葉を呟く。

地面に倒れる男に、もう一人の男が語りかける。

「もう一人の僕。このまま死ぬのは心残りだろうから教えてあげるよ。僕は君の霊骸。君は僕の原種……つまり僕は君のまがい物、って奴だ」

いや、ともう一人の男は呟く。

「僕が!この僕が、本物の僕だ(・・・・・)!!」

霊骸の男は本物の男の斬魄刀を拾い、

 

 

バキッ!

 

 

握りつぶした。

「あ!……あぁ……!?僕の、斬魄刀……――――」

おびただしい出血をした所に自らの斬魄刀が破壊されたことに心が折られた男は、……そっと目を(つむ)った。

「ふふふ!ふははははははっ!!」

目の前で倒れる本物の男の姿を見て、霊骸の男は笑った。

「これで僕が!この僕が……十二番隊隊士・葛原(くずはら)粕人(かすと)だ!!」

高笑いをしながら霊骸の男は本物の男から姿を消した。

 

 

 

「…………、大丈夫かな?」

本物の男はそっと目を開けて周囲を確認する。誰もいないことを確認すると(おもむろ)に立ち上がる。

「ふうっ、霊骸というのはよく分からないが。とりあえず僕が僕と同じように詰めが甘い男でよかった。そもそも幽世閉門ってナマクラだし」

本物の男ははだけた赤く染まった服をビシッと整える。

「ふう、涅隊長には感謝かな?隊長のおかげで死んだふりも上手くなったもんだ」

そう言って本物の男は懐から血のりを入れた袋を取り出す。そして背中に隠していた斬魄刀を取り出す。それは壊されたはずの男の斬魄刀・幽世閉門だった。

「今さっき壊された斬魄刀もレプリカだしな。……本当に『備えあれば憂いなし』だね。隊長のおかげで僕も用心深くなったもんだ」

さて、と男は本物の幽世閉門を腰に差す。

「今の瀞霊廷は僕の力では何にも出来ない最悪な状態にあるみたいだから……どこかに姿を消しておこう。僕が姿を現したところで何にも出来そうにない。足手まといだ」

はぁ~と大きなため息をついた男は全ての決着がつくまで一人静かに身を隠した。

 




『番外編 アニメ『BLEACH』の『護廷十三隊侵軍篇』にクズと呼ばれる男が登場していたら』の感想を見て男と男(霊骸)の違いが書きたくてこんな話を書きました。

お楽しみいただけたのなら幸いです。

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