天才・涅マユリの秘密道具   作:筆先文十郎

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この小説はBLEACHの二次創作です。
本編とは違うところが多々あります。
本編と矛盾するところがあるかと思います。
他にもおかしいところはあると思います。
以上のことを了解した上で読んで下さると助かります。




第二話 空間移動扉

技術開発局で一人の男が十二番隊隊長・(くろつち)マユリの部屋を訪れていた。

「涅隊長。おやつをお届けに参りました」

「おお。クズ、良いタイミングで来るじゃないか」

「あ、いや。俺はクズじゃ……いえ、何もありません」

男は言いかけた言葉を飲み込む。ここで「クズじゃない」と言えば怒りを買うと思ったからだ。そしてまずいタイミングで来てしまった自分の不幸を男は呪った。

「と、ところで涅隊長。今回は何が出来たんですか?」

「『何が』、だと?」

奇怪な顔の技術開発局局長は大きく目を見開いて男を見る。

「その口調だとまるでどうしようもないガラクタを作ったみたいじゃないか?クズが私の作品に――」

「ち、違います!涅隊長の実験の実験体にされるのが一番輝いている僕が隊長の作品を『何が』呼ばわりするわけがないじゃないですか!!で、今回はどのような我々凡人どもが想像もつかない物を作られたのです!!!」

言葉尻を捕らえるマユリに、男は必死になって自分を卑下し怒りを顕わにする上司を持ち上げる。

「ふん。まあいいだろう」

「はい、ありがとうございます。涅隊長!」

満面の笑みでそう言うマユリに男は「絶対こいつ殺してやる」という本心を隠して答える。

「クズのせいで私の貴重な時間が幾分か無駄になったわけだが、まあ私は慈悲の心を持つ男だ。水に流してやろう」

そう言ってマユリは何かが被された布を取る。

そこにはピンク色の片開きの戸があった。

「何ですか、これ?」という自分の気持ちを抑えて男はマユリの言葉を待つ。

「見ただけで理解できないクズに、この私がわかりやすく説明してやろう。これは空間移動扉。扉を開くと本人が望む場所に一気にワープできるという前代未聞の画期的な作品だ。しかも音声で目的地をこの機械に伝えていなくても思念を読み取ってその者が望む場所に連れて行くという万能さ!」

「え、これってドラ○もんのどこでも○ア――」

男は慌てて口を押さえるが、遅かった。何故ならば目が笑っていない笑みを浮かべながらマユリが刀を抜こうとしていたからだ。

()(むし)れ『疋殺(あしそぎ)――」

「い、いいい、いいえ!何でもありません涅隊長!!扉を開けるだけで行きたい場所に行けると言う僕ら凡人には永久に思いつかない発想を思いつきかつそれを実現してしまうその発想力と実現能力!!流石は涅隊長です。我々凡人にできない事を平然とやってのけるッ、そこにシビれる!あこがれるゥ!!!」

叫ぶように賞賛の言葉を贈る男に、マユリは「そうだろそうだろ」と満足な笑みを浮かべて刀を元に戻す。

「だが理論上は移動できるはずなのだがまだ生物ではためしてなくてネ。どうだね、今日の私は気分がいい。クズ、好きな場所に行くがいい」

「あ、はい。ありがとうございます……」

同じ苦しみならより軽い苦しみを。

ここで断れば「私の好意を無駄にするつもりかね!?クズの分際で!!」と怒りを買うと感じ取った男は了承する。

男はゴクリと喉を鳴らしてドアに手をかける。

(どこにでも行ける、かぁ)

ふと男の脳裏にある光景が思い浮かぶ。

子どもの頃に行った()熊山(ぐまやま)

空気が美味しくのどかでとてもいい場所だったのを昨日のことのように覚えている。

遠かったので行く気分になれなかったのだが行く機会があれば行きたかった場所だ。

(よし、行こう!間熊山に!!)

間熊山の情景を思い浮かべながら、男は空間移動扉のドアノブを握った。

 

 

 

翌日。瀞霊廷通信。

『昨夜未明。噴火中の間熊山にて十二番隊隊員の死体が発見。厳戒態勢を敷かれていた中でどうやって隊員が禁止区域に入れたのか現在調査中』

 




幽世閉門(かくりよへいもん)
クズと呼ばれている男の斬魄刀。本人が死んだ時のみ効果が発揮される。
死んでから一定時間たつと決まった場所に少しだけ強くなった状態で戻る。
幽世は「永久」を意味する不変の神域/死後の世界を指す。

生還するごとに強くなるが、本人があまりにも弱いため涅マユリを倒すには何千万回死んで生還する必要がある。

前回死んだはずの男が普通に登場しているのは上記の斬魄刀のおかげ。

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