天才・涅マユリの秘密道具   作:筆先文十郎

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この小説はBLEACHの二次創作です。
本編とは違うところが多々あります。
本編と矛盾するところがあるかと思います。
他にもおかしいところはあると思います。
以上のことを了解した上で読んで下さると助かります。

見えざる帝国との戦いが終わった10年後のif要素のある物語です。


新章第三十四話 粕人は忘年会を手配するようです

 12月30日 高級料亭 六角亭(ろっかくてい)

「ぷはぁ~!」

 十二番隊第二十席兼技術開発局雑用総責任者兼眠八號護衛役総責任者、葛原(くずはら)粕人(かすと)熱燗(あつかん)を一気に飲み干すと酒臭い息を吐いた。

「よ! いい飲みっぷり!」

 技術開発局№2であり技術開発局の中で(くろつち)マユリと付き合いの長い阿近(あこん)が手を叩く。

「葛原、こっちの卵焼きもどうだ?」

「ヒック、いただきます!」

 顔を真っ赤にさせながら粕人はギョロッとした目をしたフグのような男、鵯州(ひよす)が差し出した皿から卵焼きを箸で挟むと「よっ!」と空中に放り投げてパクッと口に入れる。

「お見事!」

「ムシャムシャ、美味しいです!」

「葛原、デザートをどうぞ」

「はい、いただきます!」

 粕人は研究素材捕獲科科長の采絵(とるえ)が微笑を浮かべながら手渡したシャーベットを口に運んでいく。

「ふぅ~」

 満足した粕人は膨らんだ腹を撫でる。

「ヒック。いやぁ~、全く至れり尽くせりですねぇ。でも突然どうしたんですか?」

「いや、実は俺達、葛原にお願いがあるんだよ……」

 申し訳なさそうにいう阿近の様子を気にすることなく粕人は陽気に答える。

「ヒック。お願いって何ですか? ここまでしてもらったらどんなお願いだって『ドンっとこい!』ですよ!!」

 

 ドンっとこい! 

 

 その言葉に阿近は口を開く。

「実はな。明日12月31日に100人規模の忘年会が予定されているんだ」

「へぇ~、そうなんですか。それは楽しみですね」

「でも場所が決まってないんだ……」

「……へ?」

 粕人は固まる。

「場所が決まってない? それは予約が取れなかったとかいう理由ですか?」

「いや、予約を取れなかった以前に予約すらしてない……」

「……」

 粕人の頬がピクピクと痙攣(けいれん)する。

「予約すらしてない? どういうことですか?」

「いや、実はだな……」

 阿近は顔を視線をそらしながら説明する。

「一ヶ月前に局長から俺達に忘年会をするように指示だされていたんだ。でもその時俺達は忙しくてな。『誰かがやってくれるだろう』って思ってそのまま忘れていたんだ。そしてふと昨日思い出してな……」

 この時ほろ酔い気分の粕人の身体からサァーと酔いが抜けていった。

「まさか……今から僕に忘年会の手配をしろ、と? いや! この時期に予約なんて取れるわけがないじゃないですか!! こういうのはもっと前に言っておくべきでしょう!! っていうか店に予約するなんて簡単なことすらしてないってどういうことですか!? 無理むりカタツムリですよ!!」

粕人は首をブンブンと横に振る。

「おい、まさかだと思うが引き受けないとか言わないよな? さっき『どんなお願いだって『ドンっとこい!』ですよ!!』と豪語したのはどこにいったんだ……」

「……楽しみにしているだろう局長が予約出来ていないと知ったら間違いなくクビにされるでしょうね。あぁ……たった一人の薄情な男のせいで私達三人とその家族が路頭に迷うことになるなんて!!」

「……」

 鵯州と采絵の言葉に粕人は思考を停止させる。

「あぁ……」

 阿近は額に手を当てる。

「いくら付き合いの長い腹心の俺でも『店に予約する』という簡単なことすらしていなかった俺を局長は「この役立たずが!!」と言って切り捨てることだろう。……次に副局長になる者に引き継ぎや教育をせずに……。そうなると次の俺の後釜は局長へのストレスと重責で身体を壊して次の奴も……あぁ、葛原が引き受けてくれればこの負の連鎖を断ち切ることが出来るのに!!」チラッ

「……」

「職を失ってどうやって生活していけばいい……。愛情込めて育ててくれた年老いた両親の首を俺が絞めなくてはならないとは……。あぁ、葛原が引き受けてくれれば両親を殺すという最悪の状況を回避できるのに!!」チラッ

「……」

「与えられた仕事を忘れて部下に尻ぬぐいさせようとする無能女なんてどこも雇ってくれないわよね。そして行き着く先は風俗……。当たり前のように結婚して当たり前のように子どもを産んで当たり前のように笑いあう家庭を築くなんていう平凡な夢も終わり。さようなら清純、こんにちは性病。あぁ、葛原が引き受けてくれれば風俗嬢にならなくてもいいんだけど」チラッ

「……わかりました。やります」

 乾いた声で粕人は了承した。

「おおっ、さすがは葛原だ!!」

「悪いな葛原。うまくいったらいい酒をおごってやる!」

「いやぁ~良かったわぁ~。これで安心していつも通り仕事に取り組めるわ。ありがとうね、葛原!」

 肩の荷が下りた三人はニコニコと席を立った。

「……急げ!!」

 三人に対する怒りを抑え込み、粕人は走り出した。

 

 

 

 その日。酒が完全に抜けた粕人は今まで貯めた300万円相当のお金を日本円に両替して現世に(おもむ)くと、以前地下帝国へと連れて行かれた時に協力者した仲間と共に裏カジノの社長をギャンブルで罠に()め、さらに一儲けすることを画策。

 裏カジノの社長が考案した変則麻雀「17歩」で勝負するが協力者二人の裏切りにより思いかけず孤立無援の死闘を余儀なくされる。しかし偶然居合わせた金融会社の息子のジャッジもあり4億8千万円の大金を得る。そして勝負の立会人となっていた金融会社の息子に勝負を申し込まれ承諾。

 

 その際何だかんだあって7000万円という大金を失ってしまうが出稼ぎで日本に来ていた中国人のC、フィリピン人のMという男が協力を申し出る。葛藤はあったものの粕人は二人の申し出を快諾。ワン・ポーカーというギャンブルで金融会社の息子と勝負をつけることになる。

 

 互いに1枚のカードを使って勝負するゲームで序盤有利に進める粕人だったが、資金力と心理的駆け引きによって敗北。椅子ごと逆さまに吊るされた状態でベルトが解除・収納され頭から十数メートル下に落下、確実に即死となる状況に追い込まれてしまう。しかしCとMが自分達の命を担保にすることでゲームは続行。そこから怒涛(どごう)の巻き返しにより大逆転。その結果24億円という大金を得る。なお負けた金融会社の息子は逆に自分が椅子ごと吊るされる状況に追い込まれたが、24億円のアタッシュケースを覆っていたブルーシートで即席のトランポリンを作るという粕人の機転によって事なきを得た。

 

 その後。粕人は二人に命を担保にした見返りとして6億円ずつ手渡すと、涅マユリが作った秘密道具で母国に送り届け、すぐに尸魂界(ソウル・ソサエティ)に帰還。残った12億円(-手数料)を元手にすぐに行動を開始。

 翌日の12月31日。予約を取っていた団体に多額のお金を手渡し無理やりキャンセルさせると残ったお金で忘年会に参加する100人分の店を確保することに成功した。

 

 ちなみに24億円を奪い取るべく金融会社の息子の会社は日本全国に包囲網を張ったが、すでに母国に帰った外国人二人はもちろん尸魂界に帰った粕人を捕まえることが出来ず、時間とお金と労力を無駄にすることになったことは言うまでもない。

 




作者の一言。
「粕人、お前はなに福本伸行先生の『賭博黙示録カイジ』の賭博堕天録カイジ、和也編、ワン・ポーカー編、24億脱出編みたいなことをしているんだ?」

今の状況で大勢が集まる小説を書くのはどうかと思ったのですが、それより小説を読んで笑顔になる方が有益ではないかと思い投稿しました。
皆さん567に負けずに頑張りましょう!

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