天才・涅マユリの秘密道具   作:筆先文十郎

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葛原粕人の復活

 死を(つかさど)る神と称する死神で組織された護廷十三隊と悪しき魂を滅却してきた者達の見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)との全面戦争、後に『霊王(れいおう)護神(ごしん)大戦(たいせん)』と呼ばれる争乱は死神側の勝利で終わった。

 だが見えざる帝国の首魁(しゅかい)、ユーハバッハを始めとする重要人物を失った滅却師(クインシー)と同様に、死神側にも多数の犠牲者が出た。護廷十三隊創始者で護廷十三隊の頂点に君臨する歴戦の老将、山本(やまもと)元柳斎(げんりゅうさい)重國(しげくに)や隊長になれる実力を持ちながら元柳斎への忠義心から一副官として生涯を終えた雀部(ささきべ)長次郎(ちょうじろう)など多くの重鎮、隊士達が命を失った。そしてそれは多くの悲しみを生み出した。

 

 十二番隊平隊士兼技術開発局平局員の葛原(くずはら)粕人(かすと)の戦死も例外ではなかった。

 

「「「「何で、何で死んじゃったのよ!!!!」」」」

(自称)粕人の妻である竹馬棒らは嘆き悲しみ、

 

「葛原。俺はもっと強くなる!!」

 真央霊術院からの親友、仏宇野(ふつうの)段士(だんし)は悲しみを決意に変え、

 

「葛原のバカ野郎! お前が死んだら誰に仕事をおしつければいいんだ!!」

「局長のストレス発散が俺らに向くじゃねえか!! マジでふざけんな!!」

「掃除や書類作成とかやりたくない仕事を誰がやると思っているんだ!!」

 

 技術開発局の上司や仲間は怒りに(たけ)った。

 

 そして一年後。

 仏宇野家 庭

「せい! せい! せい!」

 息を吐くように女性陣にセクハラをすることから要注意人物と認識されている四番隊平隊士、仏宇野は死覇装をはだけさせ、上半身裸で素振りをしていた。

 頭上から勢いよく地面すれすれまで振り下ろされている素振りの音は全く音がしていなかった。だからと言って手を抜いているわけではない。

「もし今段士(あの人)の前に鉄の兜でも置いたら。まるで包丁でキュウリを切るようにスパッと斬っちゃうわね」

 どこかに行く途中に庭が見える廊下から見た妻、仏宇野(ふつうの)音芽(おとめ)がそう呟いてしまうほど無駄な力がない、手本にするべき刀の振りだった。

「ふう~」

 仏宇野は汗を拭った。

 

 葛原。俺、誓うよ。……俺は、俺はもっと強くなる!! 音芽や両親、大切な仲間……失いたくないものを守るために

 

 親友の折れた斬魄刀に誓ってあの日から。周囲に紛れて危険分子を探す裏見(りけん)(たい)の職責を全うするためにお荷物な平隊士を演じながら、仏宇野は自身に鍛錬を課していた。

「精が出るわね、段士」

 仏宇野が振り返る。そこには表上は隠密機動とは関わりのない二番隊食堂で働いている『仏宇野の妹』と言われても信じてしまうほど可愛らしい容姿の実母、仏宇野(ふつうの)八葉(やつは)が立っていた。

「なんだ、母さん?」

 ニコニコと笑う母に仏宇野は尋ねる。そんな仏宇野に八葉は「『母さん』か。裏見隊に入ることが決まる直前ぶりね」と誰にも聞こえない小声で懐かしそうに呟いてから実の息子の顔をしっかりと見る。

「お客さんが来ているわよ」

「客?」

 その客を見て、仏宇野は思考を停止させる。そこには

「久しぶり、仏宇野」

 一年前の戦いで命を落とした親友、葛原粕人が微笑みを浮かべた。

「…………」

「……えっと。仏宇野?」

 思考停止し何も言わない親友に粕人が恐る恐る尋ねる。そして

 

「何でおめぇは生きているんじゃあっ!!!!」

 

 勢いよく振り下ろされた斬魄刀に粕人は真剣白刃取りで防ぐ。

「いきなりどうした、仏宇野!!」

 (くろつち)マユリに『更木剣八とグレミィ・トゥミューの戦いの余波に巻き込まれて昏睡状態に陥った』という嘘の情報を吹き込まれた粕人は、自身の死への悲しみを決意に変えた親友の覚悟など知る由もない。故になぜ親友がここまで怒っているのか理解できなかった。

「まぁ、葛原君。ここは素直にうちのバカ息子のために一回斬られてくれない?」

「嫌ですよ!!」

 八葉のお願いを真剣白刃取りの状態で粕人は全力で断った。

 

 その頃、粕人の復活を知った技術開発局ではマユリの機嫌が悪い時に捧げる生贄が帰ってきたことを喜び、(自称)粕人の妻の竹馬棒達は復活することを隠していたマユリに怒りをぶつけるためにマユリの部屋を襲撃し

 

「「「「ま、まさか私たちの出番……これだけ?」」」」

 

 マユリが自室に仕掛けた対襲撃者用のトラップにひっかかり地面に転がされていた。

 




自称粕人の嫁ズの扱いがひどすぎる。

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