天才・涅マユリの秘密道具   作:筆先文十郎

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この小説はBLEACHの二次創作です。
本編とは違うところが多々あります。
本編と矛盾するところがあるかと思います。
他にもおかしいところはあると思います。
以上のことを了解した上で読んで下さると助かります。

見えざる帝国との戦いが終わった10年後のif要素のある物語です。

今回は残酷な描写があります。苦手な方は読まないほうがいいかもしれません。


真夏の怪 葛原粕人は眠八號に浴衣をプレゼントしたようです

「ふ~む。たまには外で気分転換というものも悪くないものだネ」

 (くろつち)マユリは右手で太陽光を(さえぎ)りながら空を眺める。

 季節は夏。大きな入道雲に蝉の鳴き声。うっすらとにじみ出る汗。普段なら不快感を露わにする所だったが今はそんな気分ではなかった。

「こういう時に案外天使とかいうモノが現れるのかもしれないネ」

「マユリ様!」

「ん? ──―」

 振り向いたマユリは心を奪われる。そこには髪をシニヨンでまとめた愛娘、(ネムリ)八號(はちごう)の姿だった。着ている服は白地に水彩画風のタッチで青から緑のグラデーションで朝顔が描かれた浴衣。淡い黄色と淡い緑の両面遣いの半幅帯を折り返して結び優しいアクセントになっていた。

 風そよぐ夏の朝を思わせる、一枚の絵として飾りたい姿だった。

「どうですか、マユリ様! クズさんが作ってくれたんですよ!」

「……」

「マユリ様?」

「あ、あぁ……似合っているヨ」

「うわぁ~い、ありがとうございます。マユリ様!」

 無邪気にその場でクルッと一周すると眠八號は「これから苺花(いちか)ちゃんの所に遊びに行きます!」と言ってその場を後にした。

「……ふっ」

 愛娘の可愛らしい浴衣姿に嬉しそうに微笑みながらマユリは研究所に戻った。

 

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 研究所に戻ったマユリは先ほどの眠八號の姿を思い出しでは今まで積み上げてきた涅マユリ像が崩れる笑顔を浮かべていた。幸いなことにその姿をこれから『葛原粕人(モルモット)でどのような実験(拷問)手伝い(サービス残業)をさせようか』と考えていると部下から思われたのでイメージが壊れることはなかったが。その際その姿を見た部下は葛原粕人の末路を想像し距離を置くように逃げたのは言うまでもない。

采絵(とるえ)さん見て下さい、これ!」

「ん?」

 マユリは声のする方へ振り返る。そこには私服の写真を机に並べて自慢する久南(くな)ニコと複雑な顔をする采絵の姿があった。

「確かに似合っているわ。でも男が女に服を送るって『送った服を引き()いてその女を自分のものにしたい』という裏の意味があるから気をつけた方がいいわよ」

 

 ッッッ!!!! 

 

「それじゃあ仕事に戻りましょう」

「そうですね」

 その場を後にする二人とは対照的に、さきほどの浮かれていたのが嘘のようにマユリは大きく目を見開き、大粒の汗を流していた。

「……『送った服を引き剥いてその女を自分のものにしたい』……だと……?」

 マユリの脳内にある光景が浮かび上がった。

 

 ~~~涅マユリの脳内~~~

 

『キャアッ!!』

『グヘヘヘヘッ』

 口から(よだれ)を垂らし、獲物を見る目で眠八號に近づく粕人。

『く、クズさん! 何で!?』

 母のように優しい男の豹変(ひょうへん)した姿に、眠八號は信じられず身体を小刻みに震わせながら粕人を見つめる。

『知らないんですか、眠さん。男が女に服を送るというのは『送った服を引き剥いてその女を自分のものにしたい』という意味があるんですよ』

『そ、そんな……』

 これから何をしようとするのか想像し逃げようとする眠八號。しかし外に通じる扉は粕人の真後ろ。そして自身の後ろは音一つ漏らさない厚い壁。壁を破って逃げるという方法はなかった。

『さあ、始めましょうかね』

 そう言って粕人は自身が送った青い濃淡の朝顔で彩られた浴衣に手をかけ、力任せに引きちぎった。

 眠八號のきめ細やかな、白く透明感のある肌が露わになる。

『いや、助けて……マユリ様ァァァァァァッッッ!!!!』

『呼んでも無駄ですよ! グフフ、ギャハハハハハハッッッ!!!!』

 

 ~~~~~~~~~~~~~~

 

「ククク、クズの分際で!」

 愛娘を凌辱する部下を許すほど護廷十三隊でも一、二位を争うサディストである十二番隊隊長兼技術開発局局長の涅マユリは慈悲深くはなかった。例えそれが葛原(くずはら)粕人(かすと)本人にその意思がなく、ただ純粋に眠八號に喜んでもらおうと忙しい合間を()ってプレゼントしただけで凌辱することなど微塵(みじん)も考えていなくても。

「さてオシオキ(・・・・)の時間だヨ……」

 

 ====================================================

 

 技術開発局通路。

「ねぇ采絵さん。今日のお昼は何にします?」

「そうね。今日は血のように赤いことで有名な激辛軒(げきからけん)名物の『激辛 血の池地獄ラーメン~ミンチ肉を絡ませて~』なんてどう?」

「え~、こんな暑い日に激辛ですか♪」

「何言ってんのよ。暑い時に熱いものを食べる。これも一つの暑さ対策というものよ……ん?」

「どうしたんですか……ん?」

 楽しそうに昼ご飯を何にしようかと談笑していた采絵と久南ニコは耳を傾ける。

 

 だ……誰か助けて……爆弾が、爆弾が……うわああああああぁぁぁぁぁぁっっっ!!!! 

 ドゴォォォォンンンッッッ!!!! 

 ビチャッ!! ビチャッ!! ビチャッ!! 

 ──────

 

 普段人が足を運ばない資料室の方から涅マユリの怒りを買った哀れな葛原粕人(モルモット)が体内に埋め込まれた爆弾によって首だけを残して吹き飛び、部屋中に肉片と血を飛び散らし絶命した声が二人の耳に残った。

「……ねぇ。今日は甘々軒(あまあまけん)の『スペシャルグランドパフェ ~トロピカルフルーツ盛り合わせ~』にしない?」

「……そ、そうですね」

 そう言って二人は資料室から離れるようにもと来た道を引き返した。

 




ハロウィンネタじゃなく夏がとっくに終わった時に夏のネタを思いつく。

どんだけ旬をはずすんだ、私は?

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