天才・涅マユリの秘密道具   作:筆先文十郎

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新章第三十三話二番隊編 激突!砕蜂(夜一バカ) VS 鬼塚静気(喜助バカ)中編

 四番隊 綜合救護詰所 薬品管理室。

 そこでは四番隊十五席、一葉(いちよう)音芽(おとめ)の指示の元、隊員達が数ある薬品の状態の確認・整理を行っていた。

「凝血剤に痛み止め、共に使用期限・備蓄数問題なし、と」

 確認した部下からの報告を受け自分自身の目で最終確認を行いながら、黒髪の女性はチェックリストに丸をつけていく。

「よし、後は……ッ!」

 まだチェックリストに丸をつけられていない箇所を見て、音芽の顔が険しくなる。

 丸がつけられていない箇所、それは自分の部下であり夫である仏宇野(ふつうの)段士(だんし)が担当する箇所だったからだ。

「あの男は!」

「い、一葉十五席! ……えっと、ほら! 仏宇野先輩は立ち上がりは遅いですけど──」

 ギリギリと歯を鳴らす上司に怯えながらも傍にいた大前田(おおまえだ)希代(まれよ)がフォローをしようとするが

「結果を出したことがあったか?」

「……」

 その一言で言葉を詰まらせてしまう。

「もういい。あのバカ旦那には体に教え込ませないとね!」

 そう言うと音芽は床を叩くように段士のいる担当箇所へと歩きだす。そんな音芽を青ざめた顔で希代は追いかける。

 音芽の足が止まる。そこにいたのはいかがわしい服装をした女性が表紙となっている本の袋とじを開けようとしている音芽の夫、仏宇野段士だった。

「よ~し、そ~と、そ~とだ」

 男はゆっくり、慎重に袋とじを破いていく。

「慎重に慎重に……よしあと少しで」

「何をしているのかしら」

「うわ!?」

 突然声をかけられたために手元が狂い、袋とじは大きく破れた。

「何をしやがる!」

「それはこっちのセリフよ!!」

 烈火の如く怒る男に女はそれ以上の怒りをぶつける。

「今日という今日は体に覚えこませないといけないようね」

 バキッバキッと拳の関節を鳴らす音芽。それを見て恐怖で体を震わせる段士。

 

「「ッ!?」」

 

 その時、向かい合う夫婦の脳内にとある光景が浮かぶ。それは四番隊の自分達とは全く関係のない、隠密機動総司令の砕蜂(ソイフォン)とその部下、鬼塚(おにづか)静気(しずき)が戦っている情景だった。

「あぁ! もういい!! やる気がないのならここは私がするわ!! あんたはとっとと家に帰りなさい!!」

「へいへい」

 段士は口笛を吹きながら薬品管理室を後にする。そんな夫を見向きもせず、音芽はぶつくさと文句を言いながら薬品のチェックを始めた。

「……」

 いつもなら一葉リベンジャー、一葉インフェルノ、一葉スパークという某プロレス漫画の三大奥義に出てきそうな技を放つのに小言だけで済ました上司を希代は怪しんだ。

 

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 二番隊隊舎食堂

「あぁ美味しい~」

 忙しかった昼時を終えて、中年の女性達がお茶を飲んでいた。その中に同世代とは思えないほど、あまりにも幼い容姿の女性の姿がほんわかとした表情でお菓子とお茶を交互に口へと運んでいた。

 仏宇野(ふつうの)八葉(やつは)

 二番隊に所属する平隊士で俗にいう食堂のおばちゃんである。そして四番隊に所属する万年平隊士の仏宇野段士の母親であり一葉音芽の義理の母にあたる。

「しかし隠密機動の人達は大変だね。食事もババッと食べて。もう少しゆっくり食べたらいいのに」

「本当だよねぇ~」

 八葉は相づちを打つ。二番隊と隠密機動は強い(かかわ)りを持つが、全ての隊員が隠密機動というわけではない。中には彼女のように二番隊の隊員として従事している者もいる。

「そういえば聞いてよ、(うち)の旦那がさぁ……」

「どんな話~?」

 八葉がもっと詳しく聞こうとした。その時

 

「ッ!?」

 

 裏見隊(りけんたい)分隊長、鬼撫(おになで)が見ている情報が彼女の脳内に映し出される。

「あ、ゴメン。私トイレ~」

 八葉は照れ笑いをしながら食堂を出る。

「チッ、あのバカ二人が!」

 先程までの陽気でバカそうな女の子ではない厳しい顔つきで上官である砕蜂と静気をなじると、八葉はまるで隠密機動のように瞬歩でどこかへ向かって走り出した。

 

 




一葉音芽。お前はゆ○たまご先生の代表作である○ン肉マンファンか?

というかなぜ隠密機動と関わりのない三人に鬼撫から情報がなぜ渡ったのか……。いったい何者なんだ?

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