天才・涅マユリの秘密道具   作:筆先文十郎

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この小説はBLEACHの二次創作です。
本編とは違うところが多々あります。
本編と矛盾するところがあるかと思います。
他にもおかしいところはあると思います。
以上のことを了解した上で読んで下さると助かります。

見えざる帝国との戦いが終わった10年後のif要素のある物語です。
+切り替え式時間望遠鏡というドラ○もんの切り替え式タイ○スコープとよく似た秘密道具で見たIFです。楽しんでいただければ幸いです。


新章第三十三話二番隊編 大前田希千代、恐怖の一日

大前田(おおまえだ)

「……ッ!?」

 背後からの声に大前田(おおまえだ)希千代(まれちよ)はビクンと体を震わせる。その声は尊敬しつつも心の底から恐怖する上司、砕蜂(ソイフォン)の声だったからだ。

「……」

 希千代はゆっくりと声の人方へ振り返る。そこに立っていたのは

「なんだ。鬼塚(おにづか)か」

 希千代は安堵する。そこに立っていたのは目と髪型が同じならば砕蜂と双子と言われても信じてしまうほど同じ背格好のギョロ目の女、鬼塚(おにづか)静気(しずき)だった。

 希千代は「ふぅ~」と大きく息を吐いた後、ゆっくりと胸をなでおろす。

「いきなり後ろから声をかけるんじゃねーよ。砕蜂隊長だと思ってびっくりしたじゃないか。で、俺を呼び止めて何の用だ」

「砕蜂隊長がお呼びだ。急ぎ隊長室まで来いとのことだ。私も一緒に呼び出されたから一緒に行くぞ」

 そう言ってスタスタと先に歩く静気。

「お、おい! ちょっと待てよ!」

 その後を追いかけるように希千代は早歩きで追いかけた。

 

「……」

「……」

 

 スタスタ

 

「……」

「……」

 

 スタスタ

 

(これは何か話した方がいいのか?)

 隣で歩く女性との無言に耐え切れなくなった希千代は「そういえば鬼塚よ」とわざとらしく声をかける。

「お前って隊長のこと、どう思っているんだ?」

「『どう』って。隊長は隊長だ」

 そっけなく言う静気に、希千代は「……ま、まあ……そうだけどよ……」と言ってから続ける。

「お前って砕蜂隊長とアレで結構もめているじゃないか。……で、結局のところどう思っているのかな……て」

「……」

 アレ……自分たちが尊敬する四方院(しほういん)夜一(よるいち)浦原(うらはら)喜助(きすけ)の件に、静気はこめかみを一瞬だけピクンと動かした後、そのまま無言を貫く。そして

「お前は隊長をどう思っているんだ?」

 聞き返した。

「え、俺!?」

「お前は隊長に不満はないのか?」

「不満ねぇ……」

 希千代は腕を組んで考える。

「隊長かぁ……あの人はいい加減にしてほしいよな。些細なことで怒るし、必要な連絡は教えてくれないことは多々あるし。何よりいつまで『夜一様!』って言うんだか。夜一様はもう二番隊とは関係ないんだし……」

 グチグチと言う希千代。最後の方は「それでも強くて頼れる尊敬できる上司なんだけどな」と締めた希千代だったが、『夜一様』の所から怒りを爆発させないように耐えていた静気には聞こえていなかった。

 そうこうする内に二人は砕蜂の隊長室まで来ていた。

「失礼します」

「……」

 二人は椅子に座る砕蜂の前に膝を折る。

「隊長。お呼びとのことで来たんですけど……」

 恐る恐る尋ねる希千代に。砕蜂は静かに、確かめるように尋ねた。

「大前田。お前、気づいていないのか?」

「へ、何がですか?」

 目の前の上司の意図が分からずポカーンとした顔をする希千代。そんな希千代を見て砕蜂は小さくため息をついた。

「しょうがないか」

 そう言うと砕蜂は隊首羽織を脱いで眼鏡(・・)を取った。

「……ッ!?」

 その姿に、希千代の顔が崩壊した。そこにいたのは立場上は部下であり同僚の二番隊第三席兼檻理隊分隊長、鬼塚静気だったからだ。

(ま、まさか……)

 先ほどまで砕蜂(・・)だった静気は前髪を後ろに流すと、希千代の隣にいる静気(・・)に隊首羽織を手渡す。

「うむ」

 隊首羽織を受け取った静気(・・)眼鏡(・・)を取って後ろに流していた前髪を前に直すと、先ほどまで静気が座っていた席に座る。

 そこにいたのは部屋に入る前に噂にしていた上司、砕蜂だった。

 

「え、え、え……ええええええぇぇぇぇぇぇっっっっっっ!!??」

 

 希千代は意味がわからなかった。先ほどまで話していた同僚が砕蜂で、上司だと思っていた女性が同僚の静気だったからだ。

 二人の顔を交互に見る希千代に砕蜂が種明かしをする。

「十二番隊から異動した葛原(くずはら)粕人(かすと)が目元を意図的に変える変眼鏡(へんがんきょう)というものを作ってな。実際に通用するのか静気と入れ替わって、お前で試してみたわけだ」

(あのチビ、なに余計なことしてくれてんだよ!!)

 憤る希千代をよそに、もう自分は用がないと静気は「それでは」と隊長室を後にした。

「ま、待て。待ってくれ、鬼塚……ッ!?」

 呼び止めようとする希千代の首に

「さて。先ほどの話の続きをしようではないか」

 と獲物をいたぶる獅子のような笑みで、砕蜂が刀を当てていた。


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