天才・涅マユリの秘密道具   作:筆先文十郎

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この小説はBLEACHの二次創作です。
本編とは違うところが多々あります。
本編と矛盾するところがあるかと思います。
他にもおかしいところはあると思います。
以上のことを了解した上で読んで下さると助かります。

見えざる帝国との戦いが終わった10年後のif要素のある物語です。
+切り替え式時間望遠鏡というドラ○もんの切り替え式タイ○スコープとよく似た秘密道具で見たifです。楽しんでいただければ幸いです。


新章第三十三話二番隊編 第八席葛原粕人

 地下特別監理棟。通称「蛆虫の巣」。

 二番隊第八席兼檻理隊副分隊長に就任した葛原(くずはら)粕人(かすと)は、収容された男達の前で持ってきた小説を朗読していた。

「『ほとんどの生徒が下校した放課後の屋上に僕は一人立っていた。いや、一人ではない。同級生で学園のマドンナの有栖川(ありすがわ)涼子(りょうこ)さんが虚ろな目をしたまま立ち尽くしていた。そこで僕は思い出す(・・・・)。突然前触れもなく催眠術に目覚めた僕は催眠術を使って有栖川さんを催眠状態にしたことを。そして僕は有栖川さんに……』

 

 ゴクリッ

 

 男達の喉を鳴らす音が静粛に包まれたこの場に静かに響く。

「『そして僕は──』」

 粕人が小説の主人公がヒロインにどんな暗示を吹き込もうとしたのかを言おうとした、その時だった。

「葛原。お前は何をしている?」

「!?」

 粕人は潤滑油が十分に注されていないロボットのように首を後ろに回す。そこに立っていたのはギョロリとした目が特徴の、砕蜂(ソイフォン)と似た背恰好の女性が腕を組んで立っていた。その身体からは激しい怒気が漂っている。

 鬼塚(おにづか)静気(しずき)

 二番隊第三席にして檻理隊の分隊長を務める女性。そして二番隊兼隠密機動に配属された粕人の直属の上司だ。

 静気が先ほどまで粕人の朗読を聞いていた男達を見る。それだけで男達は無意識に後ずさった。中には腰を抜かす者や気絶する者もいた。

 囚人達を震え上がらせた女分隊長は目の前で小さくなる副分隊長を見下ろす。

「葛原。我々檻理隊は囚人どもに恐れられる存在でなくてはならない。なのにお前は副分隊長という重要な仕事を放棄して囚人どもとこうして仲良く語り合っている。しかもこれは一度や二度、否……119回目だ! ……覚悟は出来ているな?」

 そう言って女分隊長は手刀を作るとゆっくりと振り上げる。

 囚人達を素手で制圧できることが檻理隊分隊長の最低条件である。その最低条件を合格するために、彼女はあらゆる格闘術を我が物にした。その中には手刀を真剣のように鋭くするものもあった。

「職務放棄の罪、命を持って償え!」

 振り上げた手刀を振り下ろす。狙う先は粕人の脳天。その時粕人が口を開いた。

「待って下さい、鬼塚分隊長!」

 ピタッ! 

「何だ、葛原?」

 脳天まで一寸(約3cm)の距離で手刀を止めた静気が尋ねる。

「この前現世に赴いた時に、現世で声優をしている『ミキ シンイチロウ』という男の声を録音しております。ぜひ聞いていただきたいと思いまして」

「フンッ! そんなので私の機嫌を取ろうと思ったのか!?」

 そう言って手刀を再び脳天に振り下ろそうと振り上げた静気に、粕人はポケットから取り出した録音機の再生ボタンを押した。

 

『鬼塚サン。だ~い好きですよ!』

 

 録音機から流れる浦原(うらはら)喜助(きすけ)と同じ声色を聞いた瞬間、静気は再び手刀を脳天まで一寸のところで静止させた。

「今回の件は不問とする」

「ハッ!」

 手刀を収めた静気に粕人は頭を下げる。

「だが次また同じようなことをすれば厳罰に処す。覚悟しておけ! そしてその録音機は没収する!!」

 そう言って粕人の手から録音機を取り上げると、静気は足早にその場を後にした。

「なあ両角(りょうかく)

「なんだ?」

 細身ながらガッチリとした筋肉質な男が、剥げた頭の大男に尋ねる。

鬼塚静気(あの女)の厳罰って、これで120回目だがいつになったらなるんだ? この前は浦原商店新作駄菓子だったし、その前は浦原喜助隠し撮り写真。あの人、浦原喜助に気でもあるのか?」

「俺に聞くな」

 

 

 

 

 

 


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