天才・涅マユリの秘密道具   作:筆先文十郎

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この小説はBLEACHの二次創作です。
本編とは違うところが多々あります。
本編と矛盾するところがあるかと思います。
他にもおかしいところはあると思います。
以上のことを了解した上で読んで下さると助かります。

見えざる帝国との戦いが終わった10年後のif要素のある物語です。


眠八號に弟が出来るようです(中編)

 十二番隊隊舎前掲示板。

 

 ………………

 

 そこに張り出された内容に阿近(あこん)を始めとする十二番隊兼技術開発局員は言葉を失った。

 

『十二番隊第二十席兼技術開発局雑用総責任者兼眠八號(ネムリはちごう)護衛役総責任者

 

 葛原(くずはら)粕人(かすと)

 

 右の者。無期限の長期休暇を与える』

 

 その内容にその場にいた全員が

 

 な、なんだってぇぇぇぇぇぇっっっ!!!! 

 

 驚愕の声を上げた。

 (くろつち)マユリにとって葛原粕人は危険な実験に何の気兼ねもなく実験体に出来るモルモットであり、権限は一切ないが不都合なことがあればいつでも生贄にすることができるトカゲのしっぽであり、どんな雑用も一切手を抜くことなく実行する奴隷のような存在。そんな男から休日などを奪い自らの奉仕のために顎で使うことはあっても休日を与えるなど天地がひっくり返ってもあり得ないことだった。

 そのあり得ないことが現実として起きたことに技術開発局員たちは驚きを隠すことができなかった。それ以上に彼らを動揺させたのは

 

「葛原がいなければ誰が実験後の掃除をするんだよ!?」、「俺、葛原(あいつ)に仕事押し付けるつもりだったんだぜ! どうしてくれるんだよ!?」、「お菓子が~~~!!」

 

 という粕人本人の心配ではなく、粕人を使うことができないという普段のマユリ同様自分の都合だった。

 

 

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 その頃。

 (ネムリ)八號(はちごう)阿散井(あばらい)苺花(いちか)は並んで家路を歩いていた。

「ねぇねぇ眠ちゃん。今日は私の家で遊ばない?」

 にこやかに誘う苺花に眠八號は申し訳なさそうな顔を浮かべる。

「ごめん苺花ちゃん! 私、(ユメ)の面倒を見ないといけないから……ごめんね!」

「ゆ、夢?」

 聞いたことのない名前に首をかしげる苺花。しかしその疑問はすぐに解決する。

「ネムリおねえちゃ~~~ん!」

「あ、夢!」

 遠くからトコトコと走ってくる子どもを眠は優しくギュッと抱きしめた。

「この子、誰?」

 現れた謎の少年に苺花は隣で謎の少年に「可愛いです、夢!」と頬ずりする眠に尋ねる。

「あ、この子が夢です! (くろつち)(ユメ)。眠の弟です! ……ほら夢。苺花ちゃんにあいさつするです!」

 夢は「う、うん」と眠に隠れながら苺花を見る。

「は、はじめまして……くろつちユメです」

(……何かこいつ。ムカつく!)

 なぜ自分が腹が立っているのか分からず、苺花は無言で夢を睨みつける。そんな苺花に夢は「……ひぃ」と眠の後ろに隠れる。

「と、とりあえずまた今度誘ってね! それじゃあ!」

 不機嫌になる苺花と怯える夢を察して、眠は夢の手を引っ張りその場を後にした。

 

 翌日。

「ねぇ、眠ちゃん。今日はどこかで食べて行かない?」

「ごめんなさい! 今日は帰ったら夢と遊ぶ約束しているんです! また今度ね!」

 

 さらに翌日。

「ねぇ、眠ちゃん。前に読みたかった本が手に入ったんだけど、一緒に読まない?」

「ごめんなさい! 今日は夢に勉強を教えてあげる約束をしているんです! 本当にごめんなさい!」

 

 またさらに翌日。

「ねぇ、眠ちゃん。今日一緒に勉強──」

「ごめんなさい! 今日は夢に絵本を読んであげる約束を──」

 

 またまたさらに翌日。

「ねぇ、眠ちゃん。今日──」

「ごめんなさい! 今日は夢と双六(すごろく)を──」

 

 またまたまたさらに翌日。

「ねぇ、眠ちゃん。──」

「ごめんなさい! 今日は夢と──」

 

 何度も眠八號を誘う苺花に対して、眠八號は夢を優先して断り続けた。

(あのクソガキめ!)

 初めて会った時から気に食わなかった謎の少年に大切な親友を取られる怒りが加わり、夢に対する苺花の憎悪は最高潮に達しようとしていた。

 

 


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