天才・涅マユリの秘密道具   作:筆先文十郎

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この小説はBLEACHの二次創作です。
本編とは違うところが多々あります。
本編と矛盾するところがあるかと思います。
他にもおかしいところはあると思います。
以上のことを了解した上で読んで下さると助かります。


眠八號一歳

 話は見えざる帝国との戦いが終わってから約一年後まで(さかのぼ)る。

 

 技術開発局

「ちくしょうっ!!」

 十二番隊平隊士、葛原(くずはら)粕人(かすと)は壁がめり込むほどの強さで殴った。

 見えざる帝国との戦いが終わって約一年後。強面(こわもて)の上司、阿近(あこん)の説明に復活したばかりの粕人は悔しさで滝のように涙を流していた。

 自身が更木(ざらき)剣八(けんぱち)とグレミィ・トゥミューの余波に巻き込まれ昏睡状態に(おちい)ったこと(真相はバンビエッタ・バスターバインを除くバンビーズから更木剣八を守る時間稼ぎをして戦死したのだが、粕人が死んだことを悟らせたくないマユリによって伏せられる)。

 見えざる帝国との戦いに勝利したものの護廷十三隊が手痛い打撃を受けたこと。そして、

「ネム副隊長が……お亡くなりになるなんて!!」

 うぅっうぅっと嗚咽を漏らしながら粕人は歯を喰いしばる。

 (くろつち)ネムは粕人にとって上司であり、尊敬する涅マユリ(上司)の娘であり、共に技術開発局で働く仲間だった。

 そんな大切な存在が戦死したショックが、粕人の心を大きく(えぐ)った。

「ぼ、僕は……死を覚悟して更木隊長を監視することで情報収集をすることを涅隊長に志願しました。なのに……情報収集はおろか戦闘の余波で一年以上昏睡状態になっているとは!」

「あ、いや……」

 お前は充分な働きをしたぞ、と言おうとした阿近だったが真相は伏せるようにとマユリに厳しく言われているため、かける言葉が見つからずただ黙るしかない。

「くっ、僕が生きて……今後の技術開発局を(にな)う逸材のネム副隊長が死ぬなんて……クソッ!!」

「あぁ、葛原。その、ネム副隊長のことだが――」

「うわっ!?」

 突然粕人は尻もちをついた。目にも止まらぬ速さで近づいた何かが粕人の足を払うかのようにぶつかったのだ。

「いたたたっ!?……何だ、何が起こったんだ……」

 尻もちをついた粕人は周囲を見渡し、止まる。そこには

「あー!」

 可愛らしい赤ん坊が四つん這いの状態で、粕人に向かって手を伸ばしていた。

「何だ、この子は?」

 粕人は赤ん坊を抱きかかえて立ち上がる。

「葛原。お前が抱いているのがネム副隊長だ」

「………………」

 阿近の言葉に固まる粕人。そして数秒後。

 

「えええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっっっっっっっっっ!!!!」

 

 技術開発局内に響き渡るような大声を上げた。

 

 =======================================

 

「なるほど」

 阿近から自分が抱いている赤ん坊が涅ネムなのかの説明を受けた粕人は、(ネムリ)八號(はちごう)をあやしながら確認する。

「つまりネム副隊長の身体は、見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)の総大将・ユーハバッハの親衛隊(シュッシュツタッフェル)の一人、ベルニダ・パルンカジャスという滅却師(クインシー)との戦闘で消滅したものの大脳は無事で、その大脳を元に眠八號(この子)が誕生した。と」

「あぁ」

 阿近が力強く頷く。

「あー!」

 眠八號は嬉しそうに粕人に手を伸ばす。

「あぁ、よしよし。よしよし」

 粕人が笑顔であやすと眠八號も嬉しそうに笑う。

(まるで本物の親子のようだな)

 粕人と眠八號の笑顔につられて阿近も微笑む。その時だった。

「何をしている!!」

「え?……うわっ!?」

 声を上げたマユリは瞬歩で粕人に近づき眠八號を取り上げる。

 粕人と離れたことにより泣き出しそうになる眠八號だったが、粕人から自分を奪ったのがマユリだと知り泣き止む。

「あ、あの……涅隊長?」

 訳がわからず恐る恐る尋ねる粕人に、マユリはキラキラと輝く満面の笑みで言い放った。

「クズ、お前はクビだ。今すぐ荷物をまとめて出て行け」

「何でいきなりクビを宣告されないといけないんですか、僕が!!」

 

 

 

 その後。その場にいた阿近が嫉妬に駆られたマユリをなだめ葛原粕人をクビにするデメリットを語るなど説得したことで、粕人のクビは撤回された。

 しかし撤回後の粕人の仕事は土木工事など技術開発局とは離れた仕事に従事させられることとなった。

 眠八號が粕人がいないことにぐずり、マユリや他の技術局局員では対処できない事態になるまで。

 




今回の話はとある方からネムがいなくなった時の粕人の反応が気になりますというコメントからヒントを得て書きました。
この場を借りてお礼申し上げます。

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