天才・涅マユリの秘密道具   作:筆先文十郎

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この小説はBLEACHの二次創作です。
本編とは違うところが多々あります。
本編と矛盾するところがあるかと思います。
他にもおかしいところはあると思います。
以上のことを了解した上で読んで下さると助かります。

見えざる帝国との戦いが終わった10年後のif要素のある物語です。


新章第二十五話 涅マユリは殿になるようです

 

 十二番隊隊舎前

「…………し、死ぬ」

 十二番隊第二十席、葛原(くずはら)粕人(かすと)は猛吹雪の中、十字架に縛りつけられていた。

 息すらも凍りつきそうなほどの氷点下で震える彼の足元には『この者罪人により飯や施しなど一切しないように』という立札が。

 体温で溶けた雪が服に染みわたりその溶けた雪が凍りつき体温を奪っていくという悪循環に体力はみるみる内に死が目前になるほど奪われていた。

(こんなことになるなら……やるんじゃなかった…………――――)

 震える体力すら残っていなかった粕人はガクッと首を落とした。

 なぜ葛原粕人がこのような死を迎えたか。それに昨日まで話は(さかのぼ)る。

 

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 昨日。(くろつち)マユリの私室。

「マユリ様のバカ!マユリ様なんて大嫌い!!」

 そう言って眠八號(ねむりはちごう)は目に涙を溜めて部屋を飛び出した。

 事の発端はマユリが、眠八號が楽しみにしていた粕人特製のプリンを食べてしまったことだった。

 三時のおやつにと楽しみにしていた分、眠八號の怒りは相当なものだった。

 自分に従順な娘の「大嫌い!!」にマユリのショックを隠すことが出来なかった。それは無駄な時間が嫌いなマユリが一時間以上も放心するほどに。

 

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 技術開発局廊下

「やばい!遅刻だ!!」

 粕人は大量の資料を抱えながら全力で走っていた。

 この日は技術開発局のトップであるマユリ以下全ての席官が参加しなければならない会議の日だった。

(涅隊長は遅刻に厳しいからなぁ。もう拷問は確実だけどそれでも急がないと更なる実験という名の拷問が……)

「ん?」

 粕人は立ち止まる。視線の先には天井を見ながらフラフラと歩くマユリの姿が。

(おかしい……隊長が会議の時間になってこんなところで歩いているなんて……そもそも隊長、何かおかしいぞ!?)

「あ、あの……涅隊長?……どうしたんですか?」

 恐る恐る粕人はマユリに近づいて尋ねる。

「……あぁ、そうだな」

 焦点が合っていない目で力のない返答をするマユリ。

(……何だかわからないが、今日の隊長はおかしい!)

「隣の家に囲いが出来たってねぇ、(へぇ)

「……あぁ、そうだな」

(確信した!今日の隊長はおかしい!!)

 普段のマユリにこのようなことを言えば「下らないことを言っている暇があったら仕事をしろ、このクズが!!」と罵声を浴びせられるはずだった。なのにそれがない。そんな放心状態の上司を見て、粕人の中にある考えが浮かぶ。

(もしかして何しても気づかない?)

 バレたら殺される、しかしやってみたいという好奇心がみるみるうちに粕人の中で膨れ上がっていく。そして、

「隊長、顔色悪いですよ。僕が化粧をしてあげますよ。あと今日は寒いですから御召し物も!」

 そう言って粕人はニヤニヤと笑いながらマユリに化粧を施し用意した服を着せた。

 

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 技術開発局会議室

「……会議開始時間からすでに30分。時間に厳しい局長が来ないぞ。何かあったんじゃないか?」

「さっきから連絡をしているんだか繋がらないんだ!」

「葛原も来ていないぞ」

 副局長の阿近(あこん)を始めとする主要な技術開発局局員がいる会議室は不安と苛立ちに包まれていた。

「おい、誰か――」

 局長を探しに行ってくれ。そう阿近が言おうとした時だった。

 会議室の扉を開けた粕人がニヤニヤと笑いながら平伏した。

「殿のおな~~り~~」

「「「殿?…………ッ!?」」」

 会議室に入った涅マユリを見て、局員達は全員目を見開いた。

 自分達の上司である涅マユリは度々(たびたび)化粧や衣装を変える。しかし目の前の涅マユリはあまりにも変過ぎた。

 真っ白な顔に太い眉毛。真っ赤な唇。チョンマゲのカツラに暖色系の豪華な衣装。

 

(((ば、バ○殿……)))

 

粕人を除く全員の心の声が一致する。

 某大物芸人が(ふん)する、バカなお殿様のような化粧と恰好に

「……帰るか」

 脱力した阿近が立ち上がると他の局員達も次々と退席した。

「……あれ。皆どうしたんだ?」

 誰もいなくなった会議室に一人残されたマユリはぼーとその場に立っていた。

 

 

 

 その後バカなお殿様の恰好のままのマユリに眠八號は爆笑。愛娘が機嫌を取り戻したのをきっかけに放心状態から解放されたマユリは自身の姿に憤慨(ふんがい)。バカなお殿様の恰好をさせた粕人を即座に捕まえると十字架に磔にして外に放置した。

 

 

 

 






 いつも理不尽な理由で悲惨な最期を迎える粕人だが、今回ばかりは粕人が悪いですね。

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