天才・涅マユリの秘密道具   作:筆先文十郎

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この小説はBLEACHの二次創作です。
本編とは違うところが多々あります。
本編と矛盾するところがあるかと思います。
他にもおかしいところはあると思います。
以上のことを了解した上で読んで下さると助かります。

見えざる帝国との戦いが終わった10年後のif要素のある物語です。


新章番外編 希代ちゃんは見た

 皆様はじめまして。私四番隊隊士の大前田希代と申します。今日は記憶に残る一日を紹介しようと思います。

 

 

 

 ある日。

「大前田さんですね?一葉(いちよう)十五席はいらっしゃいますか?」

 

 救護詰所に見るからに人の好さそうな、悪く言えば周りにたくさんの仕事や無理難題な仕事をおしつけられていそうな小柄な男が希代に話しかけてきた。

 

「はい、今呼んできます……あ、失礼なのですが……お名前を窺ってもよろしいでしょうか?」

「あぁ。これは失礼しました」

 目の前の男が照れくさそうに頭を下げた。

「僕は葛原(くずはら)粕人(かすと)。十二番隊で二十席をやらせていただいています」

「!?……し、失礼しました」

 自分より小さい男に希代は勢いよく頭を下げる。

 席官と護廷十三隊に入ったばかりの平隊士では大きな差がある。他所の上官である男が自分を知っていていたにも関わらず自分は上官のことを知らなかった。

 上官に無礼なことをしたと思った希代は自責の念で目に涙を溜めていた。

「き、気にしないで下さい。大前田さん!貴女の事は貴女の兄の大前田(おおまえだ)希次郎三郎(まれじろうさぶろう)や貴女の先輩にあたる仏宇野(ふつうの)段士(だんし)から聞いていただけですから!あと僕、威厳とか風格とかそういうのないからこないだなんか他所の平隊士に顎に使われて」

 今にも泣きそうになる希代を男は必死になって慰める。

「ふふ、ふふっ、あはははっ!」

 自分よりはるかに上の上官があたふたとしながら自分を慰める。その光景に希代は「申し訳ございません」と謝りながらも笑っていた。

 そんな希代に気分を害すことなく男は微笑んだ。

「あ、葛原!」

 奥から希代の直属の上官で指導役の女性で男の無二の親友である仏宇野段士の妻、一葉(いちよう)音芽(おとめ)が姿を現した。

「一葉十五席、おはようございます」

「おいおい、普通に一葉って言ってくれよ」

「いや、こういうけじめはちゃんとしないと」

 楽しそうに談笑しながら二人は奥の部屋へと下がって行った。

(そういえば葛原二十席は一葉十五席に何の用があったんだろう?)

 気になった希代はこっそりと二人が下がった部屋に聞き耳をたてる。

 

『……この薬……強すぎて……』

『ならこれなら……遅効性……バレない』

 

(よく聞こえないけど何か怪しい会話している!?)

 話をもっとはっきり聞こうとドアに耳に当てる。その時だった。

「マイハニー!愛してる~!」

 廊下の端から全力で走ってきた先輩隊士、仏宇野段士に驚いた希代が扉から離れると佛宇野は一目散に二人がいる部屋に入った。

 

『上官になんて言う口を聞いているんだ!このクズ亭主!!』

『ウギャアアアアアアァァァァァァッッッ!!』

『何で僕までぇぇぇぇぇぇ!?ヒギィイイイィィィィィィッッッ!!』

 

 ボキッ!!バキッ!!ボギィッ!!ブチィッ!!

 

 間接が外され、骨が折れ、砕かれ、肉が飛び散る音が部屋の外にも響く。

「あ、ああああああ…………」

 中で行われると思われる阿鼻叫喚に、希代は青ざめた顔でそっと救護詰所に戻って行った。

 こうして自分と似ていると言われていた葛原粕人と出会い、上官である一葉音芽の恐ろしさを改めて知ることになった希代の忘れられない一日は終わった。

 

 

 

 余談になるが仏宇野が部屋に飛び込まなければ苦無を持った一葉がドアを貫通する威力で希代に投げつけていた上、忘却剤を持った粕人によって記憶を消去されていたのだが、大前田希代にそれを知ることはなかった。

 


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