天才・涅マユリの秘密道具   作:筆先文十郎

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この小説はBLEACHの二次創作です。
本編とは違うところが多々あります。
本編と矛盾するところがあるかと思います。
他にもおかしいところはあると思います。
以上のことを了解した上で読んで下さると助かります。

見えざる帝国との戦いが終わった10年後のif要素のある物語です。

この話は成田良悟先生が書かれた小説『BLEACH Spirits Are Forever With You』を元に作っています。
上記の小説を読んでいない、もしくは謎の子どもや謎の女性が知りたい方は後書きを読んでから読んだ方がいいかもしれません。(筆先文十郎が間違った&説明不十分な記載をしているかもしれないので『BLEACH Spirits Are Forever With You』を読んだことのある方がいましたら、この説明であっているか足りないところはないかなどの感想下さると助かります)


東空座町編第十話 粕人はヒーローと会うようです

 東空座町郊外。

 一昔前の携帯電話を模した伝令神機(でんれいしんき)が表示する、大量の虚が一か所に集まっている場所から100mほどある森に、東空座町担当死神・葛原(くずはら)粕人(かすと)はいた。

 粕人は伝令神機で虚がまだ動いていないことを確認しながら作業を進める。

「数は約100。離散してこちら向かってきたら終わりだ」

 粕人の脳裏に先日空を飛ぶ三体の虚と自身の右腕を大砲のような腕をした虚に吹き飛ばされた苦い記憶がよみがえる。

 自分は遠距離からの多方面から攻撃に弱いと思い知らされることになった粕人は、同じ(てつ)は踏まないと浦原商店からあるものを注文した。

 それは粕人の身長を上回るバズーカ砲、対虚用追跡砲撃砲だった。

 店主の浦原喜助曰く、その砲撃砲は百発もの追跡機能を持つ砲弾が射程内にいる虚に反応し撃破する代物とのこと。

 欠点としては射程距離が100m弱と距離が短いこと。そして一度放ったら最後、砲身が持たず一回限りということ。そして、大王イカを釣り上げ持って帰ったことのある粕人ですら重いと感じるほど重量があること。

 粕人はずっしりと重い砲撃砲を肩に担ぎ、大量の虚が集まる広い屋敷に狙いを定める。

「機会は一度のみ。一応この周辺にも罠は仕掛けたが残った数次第ではこの罠も時間稼ぎくらいしかならないだろう。苦無や針には痺れ薬は塗ってあるからそれで生き残った虚に放ち各個撃破するしかない」

 これが更木隊長なら意気揚々と大量の虚がいる所に乗り込むんだろうな。そんなことを一瞬考えてから粕人は引き金に指をかける。

 大量の虚への対策に意識が向いていた粕人は気づいていなかった。霊力がない人間には見ることが出来ない糸が自分の身体に触れていることに。

「よし、……ッ!?」

 引き金を引こうとした瞬間、顔の右半分を髑髏の仮面で覆った破面と思われる女性が粕人の視界に一瞬入り、消えた。

 それが破面の高速移動、響転(ソニード)だと気づいた時には、

「ッ!?――――」

 粕人は持っていた砲撃砲を叩き落とされ後頭部を襲った強い衝撃に気を失った。

 

 

 

「こ、ここは?」

 目を覚ますとそこは十字架に張り付けられた男を中心とした絵が描かれた天井だった。粕人は以前見た絵であったことを思い出す。

 周囲を見渡すとそこは年季の入った甲冑やチャイナ服など統一感のない高そうな衣装が並べられていた。

 フカフカのベッドから出た粕人は自身の身体を確かめる。そこには先ほど森にいた時と同じ、死覇装の衣装に包まれていた。隠している針や苦無、毒薬、罠の道具もちゃんとあった。そして、自分の分身とも言える斬魄刀・幽世閉門も腰に携えてあった。

「ボハハハハハーッ!」

 両腕をクロスさせながら粕人と変わらないほどの霊圧を身に纏った一人の男が部屋に入ってきた。

「何者だッ!?」

 粕人は愛刀の柄に右手を置いていつでも抜けるように構える。突然部屋に入ってきた者を警戒しての行動だったが、それ以上にその男の恰好が粕人には理解しがたいものだったからだ。

 ドレッドヘアにピッチリとまとめられた口髭。キラリと輝くサングラスに、ド派手な真っ赤なマント。そのマントに負けないほどの煌びやかな衣装。彼の正体を知らない者に怪しいか怪しくないかと尋ねれば9割9分9厘が『怪しい!』と言うだろう。

「私が何者か?ならば説明しよう!私はドン・観音寺(かんおんじ)!迷えるソウルの声に耳を傾けるカリスマ霊媒師(れいばいし)にして、日本の25パーセントが認める正義のヒーローさ!」

「ドン・観音寺……」

 粕人はその名前を確かめるように呟く。

 

 ドン・観音寺

 

 粕人はその名前に聞き覚えがあった。

 粕人が敬愛する上司、(くろつち)マユリが隊士を爆弾として使用した件について四十六室に召喚されていた頃のことだ。

 ある罪(・・・)で無間にて禁固19500年の刑を言い渡された八代目十一番隊隊長、痣城(あざしろ)剣八(けんぱち)とマユリに殺されたはずのザエルアポロ(・・・・・・)グランツ(・・・・)と共に

 顔の右半分を髑髏の仮面で覆った女性破面(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)を追う命令を下された更木(ざらき)剣八(けんぱち)率いる十一番隊を妨害した(・・・・)、自称黒崎(くろさき)一護(いちご)の師匠。

 目の前の不審な男を敵と判断するべきか否か悩む粕人に老若男女からヒーローと慕われる男が指摘する。

「ボーイ、敵意がない相手に刀を抜こうとするのは失礼ではないかね?ユーは私のマイ一番弟子の一護と同じバトルスーツを着ているがもしやあのスキンヘッドのヤクザ・スピリッツの仲間なのかね!?」

 観音寺は持っていた杖をクルクルと回すとピタッ!と粕人に向ける。

(スキンヘッド?もしかしてそれは十一番隊副隊長、斑目(まだらめ)副隊長のことか?)

「確かに、失礼でしたね。無礼を―――」

 お許しください。そう言って刀から手を離し、頭を下げようとした時だ。

「あの先ほどの方は?」

 顔の右半分を髑髏の仮面で覆った女性破面(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)が部屋に入ってきた。

「破面!!」

 粕人は観音寺を守るように前に出ると幽世閉門を抜いた。突然の粕人の行動に意表を疲れた女性破面は辛うじて避けたものの頬に一筋の赤い液体が流れていた。

「あ、あの……」

 何が何なのか分かっていない女性破面に粕人は叫ぶ。

「死神として、ここでお前を倒す!覚悟しろ!!」

 抜いた刀を鞘に戻し、粕人は女性破面と対峙する。不審な男を守るために。しかしそれを止めたのは意外なことに自分が守ろうとしている男だった。

「ユーは何をしているんだね!敵意のないレディに刃を向けた上にロカ嬢の人形のように美しい肌を傷つけるなど……言語道断だ!!」

「え、貴方は何を言っているんです!?」

 レディという女性は死神と人間に敵対する破面。その破面に攻撃をしたことを責められるとは思っても見なかったからだ。

「あ、観音寺さん。私は気にしてませんから」

 傷が塞がった女性破面が激昂するドレッドヘアの落ち着かせようと声をかける。

 何が何なのか分からなくなっていた粕人をさらに追い込む出来事が起きた。

「ねえねえ、何してんの?」「さっきのお兄ちゃんが起きたの?」「遊ぼうよ遊ぼうよ」「俺 あ そび たい」「ハラヘッタ」「RRRRRRRRRRR……」

 少年少女人外の姿をした大勢の破面が部屋に入ってきたからだ。

「ギャアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァッッッッッッ!!??」

 

 敵である破面が自分の前に一気に現れる。

 

 その絶望的な状態に粕人は恐怖の悲鳴を上げた。

 

 

 数分後。

 万に一つも勝ち目も無いという状況によって諦めることで逆に冷静になることが出来た粕人に観音寺が説明した。

 女性破面がロカ・パラミア、子ども達がピカロという群体の破面で、町の平和を守る空座(からくら)防衛隊(ぼうえいたい)の一員だということ。普段は虚園にいる彼らだが今日はドン観音寺の別宅に遊びに来たこと。

 そうとは知らず倒しにやって来た粕人を女性破面のロカが帰刃『絡新妖婦(テイルレニア)』の力で第7十刃(セプティマ・エスパーダ)ゾマリ・ルルーの『双児響転(ヘメロス・ソニード)』をコピーして粕人をかく乱させた後気絶させたこと。

 説明を聞いても粕人は疑心暗鬼だったが敵である死神(自分)に一向に攻撃をしようとしない破面達に『目の前の男の言うことが本当ではないか』と思い始めていた。罠にはめるにしろその理由が見当たらなかった。

「貴女に一つお聞きします」

 粕人はキョトンとするロカの目をジッと見る。

「貴女と後ろの破面達は、この男に危害を加えるつもりはないのでしょうか?」

「はい」

 静かに、それでいて力強く答えるロカの言葉に、粕人は膝を折り頭を下げた。

「貴女達を疑った上数々の無礼、お許し下さい」

 彼女の言葉に嘘はないと悟った粕人は謝罪の言葉を述べた。

「おぉ!自分が間違っていると気づいたらすぐに謝る。そのスピリッツは大変素晴らしい!そんなユーを認めて私は君を黒崎一護(マイ一番弟子)石田雨竜(マイ二番弟子)に次ぐマイ三番弟子と認めよう。同時にユーを空座防衛隊と並ぶグレイトフルにしてマーヴェラス、そしてパーフェクトなヒーローチームの東空座防衛隊のイーストカラクラブラックに任命しよう!リーダーは無論この私、カラクラゴールド兼イーストカラクラゴールドの私だ!!」

 その後ドン観音寺のマイ三番弟子兼イーストカラクラブラックとなった葛原粕人は観音寺に命じられてピカロ達の相手をすることになった。

 贖罪と割り切った粕人はロカとピカロ達に猿柿(さるがき)ひよ()直伝の関西風お好み焼きを振舞った。その後ピカロ達に桃太郎やかぐや姫、人魚姫、フランダースの犬などの物語を語り聞かせた。

 日が昇り始め、ピカロ達と一緒に疲れて寝てしまった時には粕人の中にロカやピカロ達に対する敵対心はなかった。

 

 

 

「ドン・観音寺。感じる霊圧は僕同様カス同然だったがあの男とは別の力が感じられた。あの男は自らをヒーローと呼んでいた。敵である破面をも魅了する確かに彼はヒーローだ」

 そんなことを考えながら歩いていた粕人は忘れていた。今現在歩いている森が、対破面用に自らが幾重にも仕掛けた罠地帯だということに。

 

 

『spirits are forever with you(私はいつでも貴方と共に)』

 そんなことを呟きながら歩いていた粕人は地面からヒョコッと出た突起物を踏んだ。

 

 

 




『BLEACH Spirits Are Forever With You』のドン・観音寺
ザエロアポロ?の口車に乗りロカを殺そうとしたピカロとロカを探すゲームをし、廃病院で立っていたロカを記憶を失った自縛霊と勘違いした。
彼の優しさと弱者でありながらヒーローであろうとする姿が世界を救った。

ロカ・パラミア
26巻でヤミーの腕の治療をしていた女性。ザエルアポロによって人工的に生み出された蜘蛛型の中級大虚でザエルアポロの従属官。
成田良悟先生が書かれた『BLEACH Spirits Are Forever With You』のヒロイン。観音寺と接することで心を取り戻していく。

ヤミーに頭を潰されたが石などに自らの情報を残していたため復活。
帰刃『絡新妖婦(テイルレニア)』。反膜(ネガシオン)の糸で共有した情報をコピーし再現することができる。ただしあくまで糸・自身の身体能力による再現なのでバラガンの老いの呪いや愛染の崩玉の力など特殊過ぎる能力は再現できない。
また強大過ぎる能力はコピーに時間がかかり代償も大きい等限界も存在する。
虚園に帰った後はハリベルからピカロ達の面倒を見るように言われる。

ピカロ
群体の破面。特異な生まれを持っており、100を超える少年少女人外の姿をした存在。
子供特有の無邪気かつ残酷な性分で、遊び相手を見つけると己らや相手の死に頓着することなく壊れるまで遊び倒す。
観音寺とロカを探すゲームをして負けた。その罰ゲームとして空座防衛隊の一員となる。
ピカロの能力については涅マユリ曰く、『奴らは命を共有している(・・・・・・・・)。個体の一つが死にかければ、他の連中が微量に自らの霊圧を分け与えるのだヨ』。

ザエルアポロ(・・・・・・)グランツ(・・・・)
ザエルアポロ本人ではなく、ロカのバックアップによって生み出されたザエルアポロの知識と記憶を持った霊子の塊。後にそのことを自覚してシエン・グランツと名乗る。
第0刃だったザエルアポロが科学者として一度は十刃落ちしてまで切り捨てた戦士である兄の部分を持ち合わせている為、 ザエルアポロには無くなっていた闘争心と実力を持ち合わせている。
自分の存在を否定しかねない存在になりえたロカを破壊した上で彼女の能力を奪おうとした。
草鹿やちる曰く『剣ちゃんの新しいお友達』。

痣城剣八(あざしろ けんぱち)
ある罪で無間にて禁固19500年の刑を言い渡された八代目剣八。ザエルアポロ?の襲撃に便乗し無間から脱出。ロカの能力を得ようと彼女をつき狙う。
魂魄を改造し虚殲滅の尖兵しようと考えていた。
作中のある罪とは四十六室の許可の下、罪人の魂魄を改造して虚殲滅の尖兵を作り出したこと。その力に恐怖した四十六室は”痣城剣八が勝手に(・・・)罪人の魂魄を改造した”ことにした。
流魂街の住人の魂魄を改造しようとしたが零番隊が出ることを知ると自分を捕らえに来た京楽と浮竹に投降した。
更木剣八と一騎打ちで敗れた後は無間に帰る。

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