天才・涅マユリの秘密道具   作:筆先文十郎

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この小説はBLEACHの二次創作です。
本編とは違うところが多々あります。
本編と矛盾するところがあるかと思います。
他にもおかしいところはあると思います。
以上のことを了解した上で読んで下さると助かります。

見えざる帝国との戦いが終わった10年後のif要素のある物語です。


東空座町編第九話 粕人、偶然通りかかった親父二人に命を救われる

 東空座町上空。

「くっ!?」

 死神になった粕人は虚に包囲されていた。

「どうしたどうした?」

「逃げてばかりではなく攻撃したらどうだ?」

「もっとも攻撃する余裕があればの話だがな」

 鳥、蝙蝠、モモンガを模した虚が避けるのに精いっぱいの粕人をせせら笑う。

(落ち着け葛原粕人。敵の挑発に乗るな!機会を見るんだ……)

 正気を失い攻撃に転じようとする自分をなだめる粕人。

 浦原商店から針や苦無などの飛道具を入手した粕人は攻撃に転じようと思えば出来た。

 しかし針や苦無も一つの目標()に集中しなければならない。一対一ならまだしも今は複数の敵に囲まれている状態。一体の敵に集中すれば他の敵にガラ空きなったところを攻撃される。

 粕人の弱点。それは多方向の攻撃に弱いことだった。

 前回倒した破面のように隙と十分な罠と粕人の居合で斬れる相手ならば格上の相手も倒せる。しかし今回のように罠や遠距離用の攻撃も使う暇がないほど多方面から攻撃されれば、遠距離の攻撃力が乏しい粕人には苦戦を強いられるのは必然と言えた。

 機動力が高い者ならば瞬時に間合いを詰めて各個撃破も可能だろうが、霊力がカス同然の粕人には瞬歩で間合いを詰めることは不可能だった。

(どうする、どうする葛原粕人!?)

 粕人は猛攻を避けながら考える。

(逃げるというのは可能だ。しかしここは住宅地。今ここで僕が離れたら多くの人が被害に。……それは出来ない)

「ならどうする?」

 猛スピードで遥か上空から急降下してきたモモンガの体当たりを避け、鳥と蝙蝠が口から放つ塊を上下に飛んで回避する。

(だったらここは赤煙遁(せきえんとん)と携帯用義骸で敵の隙を作り一体を仕留める。仲間がやられたことに動揺する間にもう一体を撃破。そして一対一に持ち込む。それしかない)

 自分が導き出したわずかな可能性にかけ、粕人は実行に移す。

「縛道の二十一、赤煙――」

 ドゴオオオオオオォォォンッッッ!!

「え?」

 赤煙遁を発動させることに集中していた粕人は一瞬何が起きたのか理解できなかった。

 上空にいる粕人の耳に届く轟音が届いたのとほぼ同時に右腕が焼けるような強烈な痛み。見ると先ほどまではあった右腕が吹き飛んでいた。

「――――――――ッ!!??」

 大量に血が噴き出す激痛に耐えながら粕人は轟音が聞こえた方向を見る。そこには大砲のような腕をした巨大な虚がニヤリと笑っていた。

(しまった……敵はこいつらだけじゃなかったのか!?)

 他にも敵がいたことに気がつかなかったという動揺が生み出した隙を見逃さず、モモンガ虚がはるか上空からの急降下し粕人めがけて突進する。

「ウワアアアアアアァァァァァァッッッ!!??」

 体当たりをもろに受けた粕人はそのまま地面に激突する。

「ゴホッ!ゲホッ!……うっ、ちくしょう……!?」

 立ち上がろうとする粕人が、止まった。

「終わりだな、死神」

 先ほど右腕を吹き飛ばした大砲虚が粕人の顔に大砲を押し当てていたからだ。

(く、利き腕が吹き飛ばされ顔の前に砲口を向けられては……何かしようにも目の前の大砲の方が早い!)

 もう自分の生死は敵の思うがまま。

 恐怖で固まる粕人に虚は喜悦の表情を浮かべる。

「死神っていうのは単純な奴だな。空を飛んでる奴らで全員だと思い込んで俺のことを忘れているんだからよ。ま、だからこうして俺はお前ら死神を狙い撃つことができるんだけどよ。じゃあ、お前も他の死神達と同じく俺達が骨の髄まで食べてやるよ」

 そう言って大砲を発射させようとした、その時だった。

「俺からも言わせてもらえば。戦場では新たな敵が出ることもあるってことを教えておいてやるよ」

 背後からの声に粕人を射殺そうとした虚が振り向こうとしたがその機会は永遠に失われた。なぜならば彼は振り向く前に頭から股下まで斬られていたからだ。

 泡のように消えた後、粕人の前に斬魄刀を肩に担いだ死覇装を着た、がっしりとした体格の髭面の男の姿が映る。

 突然大砲の虚を一刀両断にした死神の出現に空を飛ぶ虚たちは右往左往する。

 ここから逃げるべきか、それとも戦うべきか。しかしその迷いは一瞬にしてなくなった。何百という矢がもたらした死によって。

「ふん」

 その矢を放った、眼鏡をかけた銀髪の脆弱さは感じられない細身の男は一瞥するとさっさと弓を片づけた。

「あ、ありが――」

「じゃあ、坊主。風邪ひくなよ」

 携帯していた補肉剤で右腕を再生させると突然現れた死神と滅却師(クインシー)にお礼を言おうとする粕人に、二人は颯爽と立ち去っていった。

 まるで近所で悪戯をしていた悪ガキに一言注意してからその場を立ち去るおじさんのように。

「……やはり遠距離でかつ多方面から戦える方法も考えなければならないか」

 名前の知らない男、黒崎(くろさき)一心(いっしん)石田(いしだ)竜弦(りゅうげん)に助けられたことを恥と思うでもなく虚に殺されそうになったことに怯えることでもなく、粕人は今回のようなケースへの対応策を模索するのであった。

 




そろそろ現世のネタが尽きたので尸魂界に戻ろうと考えてます。

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