天才・涅マユリの秘密道具   作:筆先文十郎

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この小説はBLEACHの二次創作です。
本編とは違うところが多々あります。
本編と矛盾するところがあるかと思います。
他にもおかしいところはあると思います。
以上のことを了解した上で読んで下さると助かります。

見えざる帝国との戦いが終わった10年後のif要素のある物語です。


東空座町編第六話 粕人対破面

東空座町上空。

「ハァ……ハァ……」

死神になって上空に立つ粕人は追い詰められていた。

目の前の男は人間に近い姿をしていた。オールバックにキリッと長い眉毛に鷹のような鋭い目。すらりと高い鼻立ち。白いタクシード風の衣装にスラリとした体格と容姿は西洋のモデルか貴族と言われれば信じるほどだ。顎の部分に人間の顎の骨を思わせる仮面がなければ(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

破面(アランカル)

 

(ホロウ)の限界を超えた戦闘能力を体得する事を可能した虚。

霊圧と差と危機管理能力が粕人に告げる。

 

逃げろ。

 

と。

しかし粕人は震える手で落ち着かせて右手を柄に置く。目の前の男が周囲にいた人々の魂魄を吸い込む所を見たからだ。ここで逃げれば多くの人が目の前の男の餌食になる。

東空座町駐在任務を負かされた自分が逃げるわけにはいかないという責任感が粕人に逃走という選択肢を消して対峙する道を選ばせた。

「ほお。破面№78ダダ・サルバドールを前にしても逃げないとは」

サルバドールは顎の仮面をまるで髭を撫でるように握る。

「君と私の差は歴然。このままでも勝てると思うが、一刻も早く魂魄が食いたい。だから一気にケリをつけるとしよう」

そう言うと仮面の男は(おもむろ)に刀に手を置いた。

「覆いつくせ影法師(ソンブラ)

刀を抜いた瞬間、サルバドールの仮面が壊れると同時に男の体が影に包まれる。

「なっ!?」

粕人は目を見開く。そこには隼を擬人化した男が立っていた。

「私の能力は影。影に変身した姿に我が身を変えることが出来る。こういう風に!」

鳥人間となった男が粕人の前から消えた。

「!グアッ!?」

反射的に横に跳んだ粕人は右わき腹を見る。死覇装と肉がわずかだが(えぐ)り取られていた。

「よく避けたな。お前の(はらわた)を抉り取ろうと思っていたのだが」

鳥人間となったサルバドールの口には粕人の死覇装の切れ端が咥えられていた。

(目で追うことが出来なかった、これが破面の力か……!)

今まで倒した虚とは明らかに違う実力さに粕人は唇を噛む。それでも粕人に諦めて殺されるという選択肢も逃げるという選択肢もなかった。あるのは目の前の敵を倒す。それだけ。

後ろに雑木林を見つけた粕人は行動に出た。

「縛道の二十一、赤煙遁(せきえんとん)!」

粕人の手から赤い煙が数メートルの範囲に立ち上る。

「そんなことをしても無駄だ!」

再びサルバドールが先ほどと同じように赤い煙の中に突っ込む。

「……」

サルバドールの嘴が驚愕の表情で固まる粕人の心臓を貫いた。

 

 

 

殺した。隼形態になったサルバドールが勝利の余韻に頬をゆがめた時だ。

 

パンッ!

 

粕人の携帯用義骸の風船が割れるような音にサルバドールは一瞬ドキッとする。そして本物の粕人を探す。

「ん?」

サルバドールの目に地上に血が転々としているのが見えた。地をたどるとそこは雑木林だった。

「なるほど。確かに隼形態では雑木林には入れない。考えたものだ。だが、甘い!」

鳥人間は笑うと雑木林に向けて急降下する。そして地面にぶつかるスレスレのところで再び影がサルバドールの全身を覆う。隼から狼に変身したサルバドールは地面に落ちる血の匂いを嗅ぐ。

「こちらに逃げたか。フッ、無駄なことだ」

狼になった破面は雑木林の奥に逃げる獲物に向かって駆け出した。乱雑する木々を器用に飛び越える。

「ハァハァハァ……」

すぐに獲物は見つかった。クズ同然の霊圧しか持たない死神は大木を背にえぐられた箇所の消毒を行っているところだった。木々に姿を隠しているとはいえ距離にして10メートルほど。狼の姿になったサルバドールにとっては机の上に置かれた鉛筆を手に取るような距離。にも関わらず粕人は治療を続けている。

死神(獲物)が気づいていないと確信したサルバドールは姿勢を低くし、飛び出した。勢いよく飛び出した狼は牙をむき出しにする。大きく開かれた口が粕人の首を噛み切ろうとした。

その時だった。

「!?」

ロケットのように飛び出した身体が宙で止まる。見ると近くに寄らなければ見えないほど細い糸が何本も自分の身体に絡み付いていた。

サルバドールは知らなかった。それが技術開発局の技術の(すい)を集めて開発した対破面用の捕縛用の糸だということに。

しかし中級大虚(アジューカス)のダダ・サルバドールにとって捕縛用の糸は強度が無さ過ぎた。力を込めると一本、また一本と千切れていく。脱出は時間の問題だった。だが戦いではその一瞬が致命的なことをサルバドールは忘れていた。

「グアアアッ!?」

前足に痺れ薬が練りこまれた毒針が幾本も刺さった。

それでもサルバドールの戦闘意識は途切れない。すぐに痺れを無視して力で捕縛用糸から抜け出した。

そして獲物の首を噛み切ろうとした時、自分の首がクルクルと宙に浮いていた。

(なん……だと……!?)

サルバドールが最期に見たのはいつの間にか間合いを詰め、刀を抜いた粕人が刀を収める姿だった。

 

 

 

か、勝ったのか……

ピクリと動かなくなった破面を見て、緊張の糸が切れた粕人はその場に倒れこんだ。

 




こんな破面が出したらいいのでは?というアイディアがありましたら感想の方にかいていただけると嬉しいです。

予定ではとあるレズビアンが気絶する粕人を回収する予定です。

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