本編とは違うところが多々あります。
本編と矛盾するところがあるかと思います。
他にもおかしいところはあると思います。
以上のことを了解した上で読んで下さると助かります。
見えざる帝国との戦いが終わった10年後のif要素のある物語です。
「……」
線香と花を供え、目を
墓には『
「シバタ。俺は明日、ボクシングのヘビー級王者として初めての防戦戦をする。……正直言うと心臓がバクバクだ。挑戦者だった時は『俺は挑戦者。負けても失うモノはない』という気持ちで臨んで、なんとか勝ってチャンピオンになれた。だが今は王者……負けたら失うモノが出来てしまった……王者というのは、怖いものだ……ッ!?」
チャドはバッと背後を振り向く。そこにはどこにでも溶け込みそうな普通の恰好をした小柄な男が驚いていた。
「アンタは……」
死神か?
微かに感じる霊圧にチャドがそう聞こうとする前に男は自らの正体を明かした。
「初めまして茶渡泰虎さん。僕は
翌日 日本武道館。
テレビでは正方形のリングに立つ二人の闘いの様子を映していた。万を越す観衆が二人の一挙一動に歓声を上げる。その様子を熱くなりつつも冷静に実況が伝える。
『チャンピオン茶渡、このラウンドも苦戦しています!初の防衛戦と減量失敗による影響が出ているのか?』
実況の言う通りチャドはモヒカン頭の挑戦者の猛攻に防戦一方になっていた。挑戦者は己の拳の威力を誇示するかのようにガードの上から強烈なパンチを放ち続ける。
『チャンピオン茶渡。初の防衛戦という精神的にキツイものがあるか?おっと、カードを無理やり突き破るようなパンチがチャンピオンの顔に直撃!茶渡泰虎後退!危ない!チャンピオン茶渡ピンチだ!!」
顔に喰らった強烈な一撃にふらつくチャド。ロープを背にするチャドを挑戦者は逃がすかと言わんばかりに間合いを詰めていく。
『挑戦者セッカマ・サコー!バランスを崩すチャンピオンにフックフックフックの連打!!チャンピオン茶渡に反撃はおろかバランスを整える時間も与えません!!』
挑戦者の怒涛の攻撃に血を流すチャド。しかし彼の目には挑戦者の猛攻への恐怖も自分が負けるのではという不安もなかった。あるのは勝つという明白な意志。そしてそれは現実になる。
トドメとばかりに大きく腕を大きく振りかぶる挑戦者。少しだけ身体を屈ませていた王者の右腕が宇宙へ飛び立つロケットのように振り上げられた。勝利を確信した挑戦者が振り下ろすよりも先に思い切り振り上げられたチャドの右腕が捉えた。
『おっと!全体重を乗せたかのようなチャンピオンの強烈なアッパーがサコーの顎を捉えたっ!!身長2m10cm体重120㎏のセッカマ・サコーの巨体が重力が逆転したかのように浮き上がる!!そして長い長い空中散歩を終えてサコーの巨体がリングの外に叩き付けられた!!!』
100kgを越す人間が宙を浮くという普通では考えられない光景に一瞬会場が沈黙した。
二人の戦いを間近で見ていたレフェリーが一瞬の沈黙の後すぐさまリングの外へ降りてカウントを始める。
『ワン!……ツゥー!……スリィー!……』
レフェリーがカウントを進めていくが顔を大きく歪んだ上、白目をむいている挑戦者が動く気配はまったくなかった。
レフェリーのテンッ!という声と共にカンカンカンッ!と試合終了の鐘が鳴る。その声に観客が防衛に成功したチャンピオン茶渡泰虎に祝福するかのように歓声を上げる。
(見ているか、シバタ!)
チャドはキズだらけになりながらもしっかりと立って観客の歓声に応えながら、心の中で
茶渡泰虎(さど やすとら)
通称チャド。プロボクサー。
最終話での王者決定戦では勝利してヘビー級チャンピオンになった(筆先文十郎独自設定)
セッカマ・サコー
チャドに挑んだ挑戦者。身長2m10cm体重120㎏とチャドを超える巨躯。
『かませ』と『雑魚』を組み合わせたような名前だが気のせいです。