月に至る2番目の歌   作:きりしら

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第2話 ステージ上の戦姫

「もう始まってるみたいデス…!行くデスよ調!アーニャ!」

 

「うん、行こう」

 

「頑張る…」

 

 

私が寝ていたせいで少し遅れてしまったようだ。

 

ステージではガングニールを纏ったマリアと青いギア、アメノハバキリを纏った風鳴 翼が戦っている。

 

ここに来るまでに中継を見ていたが、どうやらその中継も切られたみたい

 

まだ会場に残ってるスタッフがいるなんて驚いた。

 

 

 

「歌おう、エスクラピウス」

『烈槍・ガングニール』

 

 

 

私を置いてステージ(前線)へ走る二人を見送り、私も私のやるべきことをする。

 

歌うはマリアの烈槍、もう姉さんを傷つけることなど許さない。

 

私のギアは癒杖・エスクラピウス

人の歌に同調することでギアの適合率を上げ、体力の回復や一定以下の攻撃を軽減する不可視のバリアを張ることができるのだ。

 

応用すれば戦闘にも参加できるけど、ナスターシャが私を前線に出すことを嫌がるせいで、私はこうして裏方に回っている。

私もみんなの役に立ちたいのに。

 

杖に巻き付く蛇の口が開き、準備が整う。

ちょうど調と切歌も介入する頃だ、私もマリアの歌に合わせなくては

 

日本の装者よ、不可視の盾にびっくりするがいいさ。

 

 

 

『鏖鋸・シュルシャガナ』

 

 

 

そんな私の出鼻を挫く様に、ステージで調のシュルシャガナの音が鳴り響いた。

 

待って調、話が違う。歌が変わっちゃったよ?

 

せっかく格好良く決めようと思ったのに、鳴る歌声がマリアから調のものに変わってしまった。

 

仕方がない、それなら私も変えなくては。

 

蛇の頭を撫でながら、私は今度こそ歌い始めた。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

ステージside

 

 

『マリア、お聞きなさい。

 フォニックゲインは現在、22%付近をマークしています。』

 

(まだ78%も足りてない…!)

 

マリアは焦っていた。

 

世界へ向けた宣戦布告、終わりの名を騙る大博打。

 

まずはこのステージでフォニックゲインを高め、基底状態にあるネフィリムを再起動させなければならない。

 

だが現状は、予定していたラインを大きく下回る22%のエネルギー量。

 

一刻も早くフォニックゲインを高めなければならない、リスクを背負う覚悟をしなければ。

 

 

戦闘へ戻ろうとするマリア。

しかし、その隙を逃す防人ではなかった。

 

 

「私を相手に気を取られるとは!」

 

 

脚部のギアより取り出した対の剣、それらを組み合わせ炎を纏わせた1つの武器と成す。

更に回転を加えることによって防御不可の連続切りを可能とした。

 

【風 輪 火 斬】

 

その一撃は、マリアの芯を捉える一撃。

 

 

「しまった…っ!」

 

 

マリアに驚愕の表情が浮かぶ、ここは戦場(いくさば)

計画に気を取られ、重い一撃を貰ってしまった。

 

 

「(手応えが薄い…?だが!)

話はベッドで聞かせてもらう!」

 

 

たしかに芯を斬ったはず、それにしてはあまりにも薄い手応えに疑問を抱きながらも

翼は炎を纏うツインブレード持って反転、マリアを捕えんと追撃を仕掛ける。

しかし

 

 

『鏖鋸・シュルシャガナ』

【百輪廻 α式】

 

 

「何っ!?」

 

 

突如飛来する丸鋸群。

翼は剣を回転させ防御を強いられることとなった。

 

「行くデス!」

 

【切.呪リeッTぉ】

 

 

DNAを教育してく(DNAを教育してく)エラー交じりのリアリズム

 人形のように(人形のように)お辞儀するだけモノクロの牢獄(牢獄)

 

 

そこへ左右から追撃をかけるイガリマを纏った切歌。

不意の一撃に倒れ伏した翼の前には、黒を基調とした3人の装者たちの姿が。

 

 

「くっ…装者が3人…!?」

 

 

 

 

 

一方音響管理を行う管理棟では、緒川もその状況に驚愕していた。

 

 

「あの子たちはさっきの…!」

 

 

だが緒川にはその光景に些細な疑問を覚える。

 

彼女たちがギアを使ってこの場にいるのであれば、あの時蹲っていた少女は一体何処へ行ったのかと。

 

そんな緒川の疑問をよそに、ステージでは再び変化が起きていた。

 

 

 

 

 

「土砂降りな!十億連発だ!」

 

【BILLION MAIDEN】

 

 

「うりゃぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

「それでも…!」

 

 

少し余裕を見せるマリア、切歌、調の頭上から襲来する弾丸の雨、そして拳。

マリアはガングニールのマントで銃弾をはじき、響の拳に自身の拳でもって応戦する。

ぶつかり合う拳に痛む様子も見せず、追撃の対応をとった。

 

そうしてステージ上の主役達、観客席のオーディエンスと分かれ、この場に装者が集結する。

 

ステージ裏で歌う装者の存在を知らぬことがどれほど危険な状況であるか、

響たちはまだ、気づくこともなく。

 




2018/01/29 前書き削除。文章を追加。

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