インフィニットストラトス ~空から降ってきた白銀と少女~ 作:鉄血のブリュンヒルデ
アニオリですかね?漫画で見た気がしないですけど。
忘れてるだけ?
「そうだ、お祭りに行こう」
ある日食堂で、ステラは唐突にそう言った。
「お祭り?」
隣に座るラウラが、不思議そうに聞き返す。ラウラはドイツ軍に所属し、少し前までかなりストイックに暮らしていた。
その為にこういったイベントに参加した経験が無く、イメージが湧かなかった。
「うん!毎年私達の町であるお祭りなんだけどね。毎年沢山人が来て、最後には打ち上げ花火もあるんだよ!」
ステラが興奮気味に言うと、向かいに座る弾があー、と声を出す。
「そういや明後日か。完全に忘れてたな」
弾がそう言いながらポテトを頬張ると、次にその隣の虚が口に含んでいたサラダを飲み込み、ステラの方を向く。
「お祭りですか。しかし、夜遅くなるとIS学園へ戻るモノレールは止まってしまいますよ?」
「あ、そっか。やっぱりダメですよね……」
ステラが落ち込んでいると、弾が何かを思いついた様にポテトを食べる手を止めた。
「俺ん家泊まるか?」
その一言に過剰に反応した虚。
「でもさ。もし皆で行くことになったら、弾の家に入るかな?」
「その時は一夏とか数馬の家に泊まればいいじゃん」
ステラの不安に、弾は無責任に答える。
その後ろから、本人達が近付いている事に気づいていながらだ。
「勝手に決めるな、と言いたい所だが、最近はトラブル続きだったからな。俺は構わん」
「俺もいいぜ。どうせ部屋は何個か余ってたんだ」
二人の承諾を得た事で、ステラも迷いが消えていた。
「それじゃあそうしようよ!皆でそれぞれお泊まり会!だね!」
ステラの絵顔に誘われ、皆が笑顔になる。
そうして、ステラ達の夏休み最後の一大イベントが始まった。
まず、多くの人を誘った。
専用機持ちに、生徒会役員。それに千冬と翔一。
まとめると少なく感じるが、総勢合計すると12人にもなる。
一先ず全員がそれぞれ準備をしてから一夏の家に集まる、という事で決まり、家が近い者は祭りの前日にそれぞれ帰り用意を済ませ、遠い者は寮か誰かの家に行く事になった。
「さてと、それじゃあ、浴衣どうしようか」
ステラは久しぶりに戻った自分の部屋で、浴衣を選んでいた。
普通、浴衣は一人一~二着程度なのだが、ステラの部屋にはそれが二十着程あった。
その訳は、毎年夏祭りの時期になると、束から送られてくるからであり、更に千冬が買ってくるからである。
「ステラ。祭りにはその、浴衣という物を着て行かなくてはならないのか?」
こういった文化に疎いラウラは、昨日と同じ様に不思議そうにそう問う。
「別に着て行かなくてもいいんだけど、着た方がなんか祭りっぽいかなって」
ステラは笑いながら振り返ると、自分の体に浴衣を重ねてラウラに見せる。
「どう?」
「ふむ。やはりステラには白が似合う。だが、聞いた話だと祭りでは零しやすい食べ物が多く出るのだろう?大丈夫なのか?」
ラウラは事前に聞いていた料理を調べており、それによってステラの浴衣が汚れてしまうのを懸念していた。
「それもそっか……でもまぁ、私染み抜き得意だし、なんとかなるよ!」
今は後のことより明日の祭りを楽しみたい。ステラはラウラにそう答えた。
「ふむ。ならば一着貸してくれ。私はステラとお揃いで楽しみたいからな」
笑顔で言うラウラに、ステラは目を輝かせながら頷く。
「うん!とびきり可愛いのを用意するからね!」
ステラはそう言って、浴衣を手に取って考え込む。
(不味いな。これは地雷を踏み抜いた様な気がするぞ)
ラウラはそう感じたが、時すでに遅し。
ステラは二着の浴衣を持ってラウラに詰め寄る。
「それじゃあまずこの二つから行ってみよう!」
(………まぁ、ステラが楽しそうだから良しとしよう)
ラウラは、私も温くなったものだなと少し笑い、浴衣の試着をするのであった。
…………………………
「ジャジャーンッ!どう?似合う?」
一夏の家の前で、ステラくるりと回って自分の浴衣を見せる。
「えぇ、とってもお似合いですわ」
セシリアはそんなステラを微笑みながら撫でる。
「もぉ、撫でないでよ子供じゃないんだからー///」
満更でもないステラ。それを後ろから引っ張ってラウラが抱き締める。
「こら!私の嫁だぞ!横取りとは趣味の悪い!」
ラウラが冗談半分、本気半分でそう言うと、セシリアは少し笑って答える。
「いえいえ。私はステラさんのお姉さんというポジションが気に入っていますから、大丈夫ですよ」
その言葉にステラは目を輝かせる。
「セシリアがお姉ちゃん?!いいねそれ!それじゃあ、千冬さんはお母さんかな?」
ステラが冗談めかして言うと、玄関が勢いよく開き、そこから千冬が飛び出してきた。
「私は大歓迎だぞ!」
ステラの肩を掴んでそう言う千冬の顔は、どこか興奮気味であった。
「私が母親なら父親は……津上先生、とかがいいんじゃないか?///」
最後の言葉、小さくてラウラとセシリアには聞こえなかったが、すぐそばに居たステラにはハッキリと聞こえていた。
「んもぉぉ!千冬さん可愛いんだからぁ!」
今度は逆にステラが抱き着き、千冬の頭を撫でる。
「それじゃあ、私はステラさんの妹がいいな」
家の門から、ステラにとって久しい声が聞こえた。
「蘭ちゃん!久しぶりー!」
ステラは蘭に抱き着くと、スリスリと頬ずりをした。
「んふふー、相変わらずのすべすべ肌だねぇ」
ステラの突然の行為に驚くセシリアとラウラ。
「あぁ、またか。ステラは昔から蘭に会うとまずこれをするんだ」
その後ろから現れた弾が二人にそう説明していると、更に後ろから浴衣姿の虚と簪、それと本音が現れた。
「ステラちゃん。とても似合ってますよ。それとお姉さんポジションは私も立候補します」
「ステラ、いつもと違う感じで可愛いね。私は親友ポジで」
「えぇ?それなら私は一番星ちゃんのペットになるぅ」
三人が冗談めかして言うと、ステラは目を輝かせそうになったが、本音の言葉を頭の中で反復させ、「ダメじゃん」という結論に至った。
「流石にペットはダメだよ?!ペットポジは多分ギンギラだし!」
『マスター……』
この発言に流石のギンギラも思う所があったのか、いつもはプライベートではほぼ声を発さないギンギラが、その声を発した。
「冗談だって。とりあえず、他は距離的に遠回りになるから先に行ってるって」
ステラはさりげなくギンギラが表示したメールの内容を皆に伝えると、浅く履いていた下駄を、少し深めに履く。
「それじゃ、行こっか!」
ステラの一声で、全員が祭りの会場へと歩いて行くのだった。
とりあえず今回はここまでです。
次回祭りの会場での話を書きます