インフィニットストラトス ~空から降ってきた白銀と少女~ 作:鉄血のブリュンヒルデ
「ねえ簪」
ある日、ステラと簪は自室で夏休みの課題を進めていた。そんな中で、ステラが唐突に簪に声をかけた。
「何?」
簪も手を止めてステラに応える。
「前から思ってたけど、簪のメガネって度は入ってるの?」
ステラは首を傾げながらそう聞く。
「入ってるよ。あまり強くないけど」
簪はそう言いながらメガネを取る。
「予備あるけど、かけてみる?」
「え?いいの?」
ステラは少し嬉しそうにそれを受け取ると、メガネをかける。
「うおっ、視界がぼやける。
どう?似合う?」
ステラは簪の方を向くと、にこりと笑ってそう聞いた。
「うん。似合ってる」
「ありがと、えへへ///」
ステラは少し恥ずかしそうに頬を赤く染め、簪はそれを笑顔で見る。
「そうだ。前に本音が部屋にオシャレ用の伊達メガネ置いて行ってたのがあるから、そっちかけてみなよ」
簪は机の引き出しを開けながらそう言うが、ステラは少し曇った表情になる。
「でも、本音の物を勝手に使うのはちょっと…」
「後から言えば大丈夫だよ。それに本音はこのくらいで怒らないし、なんなら乗ってきてくれるよ」
ステラの悩みを即座に解決すると、簪は一つの黒縁のメガネを取り出した。
「はいこれ」
ステラはそれを受け取りながら簪のメガネを取る。そしてそれを簪に返すと、今度は本音のめがねをかけた。
「おぉ、こっちは見える」
ステラはそう言いながら立ち上がる。
「ねぇねぇ。これで食堂行こうよ。ちょうど昼時だし」
ステラの提案に、簪は頷いて立ち上がった。
「そうだね。そろそろお腹空いてきそうだし、行こう」
二人は部屋を出て、話をしながら食堂へ向かった。
「おぉー。結構いるね」
ステラが食堂を見渡すと、そこには生徒達が色々なグループを作って食事をしていた。
「あら、簪お嬢様にステラちゃん。お食事ですか?」
そこに、後ろから虚が声をかけた。
「あっ、虚さん!どうですか?」
そう言ってステラは顔を向ける。
「とても可愛らしいです。よくお似合いですよ」
虚はそんなステラの頭を撫でる。するとステラは目を細めて気持ちよさそうに笑う。
(((((羨ましい)))))
それを見つめる生徒達。その中には、虚の事を羨ましく思う者もいる様だが、二人はそれに気が付かずに微笑みを交わす。
「良ければ、お食事ご一緒しませんか?会長もいらっしゃいますよ」
虚がそう言って手で示すと、そこには食事をする楯無の姿があった。
「あ、本当だ。簪どうする?」
「行こ。みんなで食べた方が楽しいし」
簪がそう言うと、ステラは顔を明るくして簪と虚の二人と腕を絡めた。
「んじゃ、行こ!」
ステラはそう言いながら二人を引っ張って楯無の席へと近付く。
「楯無さん!一緒に食べましょ?」
食事をとる楯無に、ステラは声をかける。
「あら、ステラちゃん?いいわよ………ん?ステラちゃんメガネなんてかけてたかしら?」
楯無は振り返ってステラの顔を見る。しかしいつもと違いステラはメガネをかけており、それを珍しそうに見る。
「伊達メガネです。どうですか?」
「うん。可愛いわよ」
楯無は、先程の虚と同じ様にステラの頭を撫でる。ステラも先程の様に嬉しそうに目を細める。
「えへへ///」
ステラはそんな声を漏らす。その声に、辺り一帯が和やかな空気に包まれる。
だがその時。
「「ステラのメガネ姿が見れるとは本当か?!」」
食堂へと、千冬とラウラが勢いよく飛び込んで来た。
「ラウラに千冬さん?!」
ステラは驚いて駆け寄る。
「どうしたの?そんなに慌てて」
ステラがそう聞くと、二人は勢いよく顔を上げた。
「ステラがメガネかけて歩いていると先程相川から聞いたんだ!」
「私は一夏から話題になっていると聞いてな!」
二人の勢いが強く、少し後ずさりするステラ。
そして、後ろからその肩を虚が優しく支える。
「お二人とも落ち着いて下さい。ステラちゃんが怯えています」
「「え?」」
虚の言葉に、二人はステラの顔を見る。その顔は、確かに少し怯えている様だった。
「その、すまんステラ。お前のメガネをかけた姿が見たくて、少し興奮してしまった…」
ラウラは申し訳なさそうにに謝る。
「私もだ。少し取り乱していた…」
千冬も同様に気まずそうに目を逸らしながら謝る。
「私は大丈夫だよ?それより、皆でご飯食べようよ!」
ステラは二人が気にしない様に言うと、さらに二人を食事に誘った。
「いいのか?」
少し遠慮げに聞くラウラに、ステラは笑顔で答える。
「うん!」
ステラの答えを聞くと、二人の表情は柔らかくなる。
そして、全員で料理を受け取って席に戻る。
その間にも、シャルロットと数馬、そして弾と合流し、更に席に着いた時に近くにいた一夏と、それを挟む様に歩く箒と鈴、そして噂を聞いて見に来たセシリアと本音が集まり、いつの間にか大所帯になっていた。
その後も、ステラ達の会話は弾み、笑顔も咲き乱れる。
ステラ達は、この大切な一時を噛み締める様に精一杯笑うのだった。
そして、夏の終わりも近づいて来ているのだった。