インフィニットストラトス ~空から降ってきた白銀と少女~ 作:鉄血のブリュンヒルデ
「オラァ!」
「……!」
ガンッ!ゴンッ!ガキンッ!ドンッ!
ギンギラの反応が消滅したという報告から十分前。ステラと
ギュンッ!ギュンッ!
そこにギンギラが稀に隙を作る為にビームを撃つ。
「消しとべ!サーマルキャノン!」
エネルギーの残量なんてステラは意識していなかった。それをギンギラは常に大気中のサーマルエナジーを吸収し続ける事でエネルギーの問題をなんとかしていた。だがその時、不意にステラは攻撃をやめた。
「………ねぇ、ギンギラ」
『っ?!マスター、意識が戻ったのですか?!』
「うん。多分もう、大丈夫」
ステラは息を絶え絶えにしながらも答えた。
「ねぇ、ギンギラ。あの作戦、やれる?」
『今の
ギンギラの言葉に、ステラは驚くこと無くただ構えた。
「そりゃ、あの状態だしね……………ギンギラ」
『なんでしょうか?』
「最悪の場合、エネルギーフィールドは任せたよ!」
『っ?!マスター!おやめ下さい!』
ステラはイグニッション・ブーストで
「ごめん、ギンギラ!」
ステラは振るわれる
「サーマル、エクスプロージョン!」
ステラの叫びと同時に、ステラの体の周りに黄金の光が漂い始めた。
「これで!終わり!」
ドカアァァァァァァン!
次の瞬間には、辺り一帯に爆風が吹き荒れた。
『マスターーーーー!』
その場に残ったのは、中破した
「……………」
海へと、落ちていく。ギンギラはステラの言葉の意味を理解し、エネルギーのほとんどを使ってゴスペルをエネルギーフィールドで包み込んだ。
『マスター!』
ギンギラはギリギリの所でステラを受け止めた。
「………!」
だが、
〈た…む!応し……れ!ステラ!〉
その時、辛うじて生きていた通信機能が、ステラの耳に千冬の声を届かせた。
「千冬、さん?」
ステラは声を絞り出して声を出した。
〈っ?!ステラか!無事なのか!〉
ノイズ混じりの声に、ステラは少しだけ泣きそうになった。
「千冬さん、ごめんね?」
〈何故だ!何故謝る!〉
「私………………勝てなかった」
最後の言葉を呟いたステラの声は、涙に濡れていた。
ザパアァァァァァァン!
ステラは、飛沫を上げながら海へと落ちた。
…………………………
時間は流れ、弾達は既に出撃の準備を終わらせていた。
「五反田 弾!エクシア、GNアームズ!行くゼオラァ!」
「凰 鈴音!甲龍!行くわよ!」
「セシリア・オルコット!ブルーティアーズ!行きますわ!」
「ラウラ・ボーデヴィッヒ!シュバルツェア・レーゲン!出る!」
「更識 簪!打鉄弐式!行きます!」
弾は強襲用コンテナにエクシアごと入り、マスドライバーを使って勢いをつけて飛びたった。
それに続く様に四人も自分のISに出せる最高速度で遠くの
「ダン君!そろそろ見える筈だよ!」
「おう!」
弾がメインモニターを見ると、そこにはエネルギーの膜に包まれて身動きがとれない
「見えた!エクシア、目標を駆逐する!」
弾は強襲用コンテナを飛び出してGNアームズを纏い、
「ハァ!」
「……!」
…………………………
「アンタは、八年前に死んだ筈だ。なのに、どうして生きている」
数馬は先程までの高ぶった感情をなんとか抑えて問う。
「簡単な話だ。俺達は死んでいなかった」
「俺達?まさか、純さんもなのか?」
荘吉の言葉に数馬は驚きつつも、冷静に質問を続ける。
「俺達はあの日、奴に殺された筈だった。だが俺も純も気付けばラボの様な所にいた。そこで分かったんだ。奴は最初から俺達を殺す気は無かったんだ」
荘吉は続けて話す。
「俺達はその日から手を組んだ。それが今俺がここにいる理由だ」
荘吉の告白に数馬は驚き、シャルロットは未だに困惑していた。
(数馬のお父さんって、御手洗 荘吉さんだよね?どうして、襲撃なんか……)
「お前はデュノアの娘か」
「そう、ですけど」
突然話しかけられたシャルロットは少し動揺しながら答えた。
「まさかあの日の少女が俺の前に立つ障害となるとはな」
シャルロットが身構えた瞬間、数馬がそれを止めた。
「お前は下がってろ。親父とは俺がやる」
「でも!一人じゃ危険だよ!」
「黙れ!いいか、これは俺の問題だ!お前はいいから下がってろ!」
普段とは違う数馬の剣幕に、シャルロットは怯えた。普段ならこの時点で冷静さを取り戻すのだが、今の数馬にその余裕は無かった。
「親父。昔よく賭けをしたのを覚えているか」
「あぁ、よくやったな。勝った方が負けた方から一つ命令権を得る、だったな」
「そうだ。俺が勝ったら、言う事を聞いてもらおうか!」
「あぁ、構わない」
荘吉の言葉を皮切りに、数馬はシャフトとマグナムを構えて攻撃を仕掛けた。
…………………………
「おーおー、ムキになってやってんなー」
数馬達の戦いを、崖の上から眺める者がいた。
「そろそろ戻るよ」
「ん?デストロか。了解」
その者は立ち上がり、数馬達に背を向けて歩き出した。だが、ふと立ち止まり海を見た。
「次は俺達の番かもな」
その者は、後ろで赤い髪を後ろで纏めて赤いパーカーの上から白衣を着ている男だった。
「ラスボスは親父だった、なんてRPGじゃ使い古してるが」
男はニヤリと笑い、海にも背を向けた。
「お前レトロゲー好きだろ」
「なに語ってんだよ。早く行くよ、純」
「おう」
男の名前は、五反田 純。今まさに命をかけて戦っている弾の父親だ。