インフィニットストラトス ~空から降ってきた白銀と少女~   作:鉄血のブリュンヒルデ

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海上の激戦 Fourth Episode

「ん、んんー。あれ?ここは?」

 

座敷の中心に敷かれた布団の上に横たわっていたステラは、目を擦りながら起き上がった。

 

「ステラ、大丈夫か?」

 

「え?うん」

 

「お前、砂浜で倒れてたんだぞ?ギンギラを纏って」

 

「っ?!ギンギラは大丈夫なの?!」

 

ステラは目を見開き一夏の肩を揺らす。

 

「あぁ、束さんが修理してるよ。新武装のテストもするって」

 

「私、行かなくちゃ!」

 

「安静にしてろよ!束さんのナノマシンで修復出来てるけど、お前骨折してたんだぞ?!」

 

「それでも、強くならなくちゃ。デストロを倒す為に!」

 

ステラは立ち上がって部屋を出た。

 

「お、おい!待てよステラ!」

 

一夏はステラの腕を掴もうと立ち上がった。だが、その瞬間に一夏は妙な悪寒を感じ、その方向を睨んだ。

 

「なんだ?なんか、嫌な予感がする」

 

一夏は、旅館の窓から見える海に、敵意を向けた。

 

 

…………………………

 

 

「束さん!」

 

「え?スーちゃん?!」

 

駆け寄ってくるステラを、束は驚きの表情で迎えた。

 

「もう痛みは残ってないの?」

 

「全然!もうこんなに肩回しても」グリッ!

 

「いったー?!」

 

「痛いんじゃん…」

 

ステラは大丈夫な事を証明しようと肩を思い切り振り回したが、変な音が鳴った後に急激な痛みに襲われた。

 

「…………」ザッザッザッザッ

 

「あ、いっくん!なんでスーちゃんを止めなかったの?!」

 

「…………」ザッザッザッザッ

 

「い、いっくん?」

 

束の問いかけを一夏はまるで聞こえてない様に無視して、一夏は歩きながら白式を展開した。

 

「………千冬姉、俺と戦ってくれ」

 

「何故だ」

 

「強くなりたい」

 

「理由になっていないぞ」

 

一夏を見据え、千冬は呆れたように言った。

 

「多分、何か来る」

 

「何か?」

 

「あ、そうだ!昨日デストロも言ってました!次に君達が戦うのは僕の集大成の一部だって」

 

「集大成?待て。だとしても、何故お前に分かる」

 

「さぁ、分かんねぇよ。けど分かるんだ。どす黒い何かが、こっちを見てる」

 

一夏の言葉に、誰もが首を傾げた。

 

「とりあえず、今日は色々とやる事がある。そんな暇は無い」

 

「そっか」

 

「そうそう、箒ちゃんに渡す物もあるしね」

 

「渡す物?」

 

「ヘイ!カモーン!」

 

束が上へと手を向けると、上空から赤色の金属の塊が落ちてきた。

 

ドゴォォォォン!

 

塊は砂埃をあげて着地した。砂埃が晴れると、その塊の正体が分かった。

 

「……IS?」

 

「そのとおり!箒ちゃんの専用機!第四世代機『紅椿』だよ!」

 

「「「「「「第四世代?!」」」」」」

 

束の言葉に、各国家代表候補生とステラは驚嘆の声をあげた。

 

「束さん!何作ってんの!」

 

「そもそも、私はそんな物欲しいなんて一言も!」

 

「うん、言ってないね。けど貰って。何も考えなくていいから」

 

「…………分かりました」

 

箒は若干納得していなさそうな表情のまま、紅椿に触れた。

 

「よしっ!それじゃあテスト始めよっか」

 

それから、紅椿とギンギラの新武装のテストを開始した。それからしばらく経った時、真耶が血相を変えて走って来た。

 

「織斑先生!大変です!」

 

それから、ハワイ沖でアメリカ・イスラエルの共同開発の軍用IS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』が暴走。こちらの方へ向かっているという事が伝えられ、事態は急変した。

 

 

…………………………

 

 

銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)は超高速移動中。チャンスは一回が限界だ。今回は織斑の零落白夜とターナーの力が不可欠だ。しかし白式の燃費の悪さから超高速移動用のパッケージを持つブルーティアーズに運搬させる」

 

千冬は緊急事態にも関わらず、冷静な声色で作戦を告げる。だがセシリアはその作戦に苦い顔をした。

 

「織斑先生。ブルーティアーズのパッケージ換装には時間がかかります。ここは、ギンギラさんではいけないのですか?」

 

「今回の作戦では、ギンギラの新能力と新武装が零落白夜を外した時の保険となる。なるべく余計なエネルギーは使いたくないんだ」

 

「なら、俺のトランザムで」

 

「それも考えたが、制限時間内に遭遇しなければ意味が無いだろう」

 

「……あまりオススメはしないけど、紅椿ならその問題を全て解決出来るよ」

 

それぞれがそれぞれの考え等を話し合っていると、束が少し嫌そうな顔をして言った。

 

「どういう事だ?」

 

「紅椿は第四世代って言ったよね?第四世代には、展開装甲っていう、要である可変装甲があるの。両の腕肩脚部と背部に装備されていて、その一つ一つが自動支援プログラムによるエネルギーソード、エネルギーシールド、スラスターへの切り替えと独立した稼動が可能なんだ。この展開装甲を利用すれば、パッケージ換装をせずに超高速移動が出来る。調整には七分もかからないよ」

 

束の説明に、男子以外の専用機を持つ者は驚愕に染まった。

 

「それなら、今の状況を完全に打破出来る!」

 

「ええ、流石は篠ノ之博士ですわ」

 

「……でも、一つだけ欠点があるの」

 

「篠ノ之の経験か」

 

千冬の言葉に、束は沈黙を持って答えた。

 

「…私は反対です。初心者も同然の私では、足でまといになります」

 

「箒。そうは言ってられないよ。この作戦には人命もかかってる」

 

「そうだ。束、調整を頼む。時間が無いんだ。使える手は何でも使うくらいの覚悟は必要だぞ」

 

「………そう、だよね。分かった!急ピッチでやる!」

 

束はそう言いながら空中にキーボードとディスプレイを呼び出し、作業を始めた。

 

「戦いになったら私と一夏が前に出るから、箒は心配しなくても大丈夫だよ」

 

ステラは笑顔で箒に言う。その言葉に、全員が頷いた。

 

「最悪の場合を想定して、二人程後から向かわせる。お前達は安心して戦え。何も一人で戦う訳じゃないんだ」

 

千冬の言葉に、箒は覚悟を決めた様な表情でステラに向き直る。

 

「分かった!任せろ!」

 

「うん!」

 

ステラと箒は互いの手をとり、決意を決めた。


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