インフィニットストラトス ~空から降ってきた白銀と少女~   作:鉄血のブリュンヒルデ

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混乱と出会い Twenty fourth Episode

「こんな所に呼び出して、何の用?」

 

「あ、スコールにオータム。久しぶり」

 

「久しぶりだな」

 

「千冬もいんのかよ。一体何事だ?」

 

ここは、束のラボ。以前ステラ達が訪れた人工島の地下にある施設だ。今は夜中で、束と千冬は十蔵からの指示でここにスコールとオータムを呼んだ。

 

「実は、デストロの目的が分かった」

 

「本当?!」

 

「聞かせろ、今すぐ!」

 

千冬の言葉に、スコールとオータムは身を乗り出した。

 

「落ち着け。奴は逃げるが、私は逃げん」

 

「そ、それもそうね。ごめんなさい」

 

スコールは身を引いて謝罪する。オータムも少し納得出来なさそうにしたが、引き下がる。そして、それを見て束は空中投影型のディスプレイで地図を表示する。

 

「昨日、世界のISを保有する全ての国とISに脅迫文が送られたのは、亡国企業にも情報が入ってるでしょ?」

 

「えぇ。そのおかげで今こっちは大忙しよ」

 

「この気に乗じてか、テロリスト共も動き出したしな。何処から情報漏れたんだよ」

 

「まぁ、十中八九デストロだろうな」

 

千冬は呆れた様に頭を抱える。

 

「けど、ならデストロはなんでそんな事を?彼の目的は世界のエネルギー支配だった筈よね?」

 

スコールは以前千冬から聞いたデストロの言葉を思い出しながらそう問いた。

 

「奴があの状況で本当の事を言った保証は無い。それに、”私達”の元に声明も届いているしな」

 

「声明?」

 

「これだ」

 

そう言って千冬は、一枚の紙を取り出した。

 

「コピーだから自由に扱え」

 

「分かったわ」

 

スコールはそれを受け取ると、紙に書いてある文を読み出した。

 

《親愛なる友へ

やぁ、君達に手紙を書くのは初めてだね。まぁ書いても君達は受け取らないか。と言う訳で、今回は脅迫文という形で送らせてもらうよ。

僕が脅迫文を全てのIS保有国に送ったと言うのは、もう既に知っているよね?これは僕が本当に起こしたかった事だ。エネルギー支配なんてやろうと思えばいつでも出来たからね。そして、君達三人の共通認識を正そう。ベリアルは僕の作ったエネルギー発生装置では無く、意思あるエネルギーの塊だ。それをこの星におびき寄せるのが僕の目的さ。

ここからが本題だ。ベリアルは争いの産む負の感情を好む。僕が言いたい事、分かるね?

まぁ、そんな訳だから、精々頑張ってね。

デストロ・デマイドより》

 

「要するに、デストロはこの星にベリアルというエネルギーを落としたい訳ね」

 

「何考えてやがる!そんな事したら、地球ぶっ壊れるぞ!」

 

「そうね。それが目的かもね」

 

オータムの激昴の声に、物陰から何者かが答えた。

 

「っ?!蓮!何故ここに?」

 

声の主は蓮だった。蓮の姿はトリガー装着時の状態で、手は何かを握っていた。

 

「お土産を持ってきたわ」

 

蓮の手に握られていたのは、ISのコアだった。

 

「れーちゃん。それを何処で?」

 

「安心して。これはどこの国にも属さないISよ。つまりはデストロの作った物ね」

 

「やっぱり、そっか。デストロは私のデータを見た事がある。だから作れるんだよ」

 

「見た事があるだけだろ?なら普通作れねぇだろ」

 

「普通なら、な」

 

「どういう事?」

 

千冬の含みのある言い方に、スコールは反応する。

 

「あいつは、純でさえ読み解くのに三日かけたISの理論を纏めた資料を、一日で理解した。その頭脳は悔しいけど本物よ」

 

「純…………確か、どこでもドアの設計理論を考案した五反田 純よね?」

 

「えぇ。そして、私が誰よりも大切だった人」

 

蓮の表情は穏やかだったが、その心はドス黒いもので支配されている。その事に気付いた四人は、少し後ろめたい物を感じて、自然と沈黙した。

 

「と、とにかく………デストロは完成したコアを作れる可能性がある。警戒が必要だ」

 

「そうね」

 

「それじゃあ、今日は帰るわ。三人共、気をつけた方がいいわよ。今の世の中、いつ誰に狙われるか分からないわ」

 

「分かっているさ。二人も気を付けろよ」

 

「えぇ」

 

「サンキュー」

 

二人はそう言ってラボを出た。

 

「…………蓮は、これからどうするんだ?」

 

「少し、旅でもしようかしら。あの子に倣ってね」

 

「あぁ、あいつか。いいと思うぞ。もし会ったらよろしくな」

 

「えぇ。それじゃあ、また」

 

蓮は、トリガーを解除しながら部屋を出た。

 

「さてと、私も帰るか。じゃあな」

 

「うん。バイバイ、ちーちゃん」

 

そして千冬も、その場を去った。

 

「さてと、クーちゃーん!夜ご飯作ろー!」

 

束は大声でクロエを呼んだ。だがその声に答える声は、いつまで経っても聞こえない。

 

「あれ?クーちゃん?どこ行ったの?ねぇ?クーちゃん?!」

 

いつまで経ってもクロエが応えない事に異変を感じた束は、少しずつ焦りだした。

 

「ねぇクーちゃん!返事をしてよ!ねぇ!どこ?!」

 

束は咄嗟にクロエの持つIS『黒鍵』の事を思い出し、GPSを使い場所を特定しようとた。

 

「………………え?」

 

だが、束島の何処にも、黒鍵の反応は無かった。

 

「どう、して?クーちゃん?クーちゃん!何処にいるの?!イタズラだよね!そうなんだよね?!」

 

束の声は、たった一人しかいない島に、木霊した。

 

 

…………………………

 

 

「なぁ、スコール」

 

「何?」

 

帰りの船の中で、オータムは星を眺めながら呟いた。

 

「多分、戦争が起こるよな。そうなったら、また人が………」

 

「そうさせない為に、私達がいるんでしょ?もうあの日の様には、させない為に」

 

オータムを抱きしめながら、スコールは慰める様に言う。

 

「そう、だよな。そうだ。もう、あんな事は起こさせない」

 

二人は、ゆっくりとキスをする。

 

「ようやく見つけたよ」

 

しかし、それを妨害するように、赤い光を纏った機体が降下してきた。

 

「貴方、何者?!」

 

「千冬達から聞いていないかい?まぁ、彼女達が僕の写真なんて持ってる訳ないか。僕の名前は、デストロ・デマイド!世界で最初の男性操縦者さ!」

 

「っ?!てめぇがそうか!てめぇが!」

 

オータムはそう叫びながらアラクネを展開しようとしたが、何故かアラクネは反応しなかった。

 

「なんでだ!なんで反応しない!」

 

「ここら一体にISを展開出来ない特殊なフィールドを作った。これで君達は、戦えない」

 

「何が目的?」

 

デストロの言葉に、スコールは何かを察した様に問う。

 

「スコール・ミューゼル。君には僕に付いて来て貰う」

 

「ふざけんな!なんでスコールを!」

 

「ちょっと黙ってくれ。君には用はない」

 

ドンッ!

 

「うわっ?!」

 

デストロは近くの水面に光弾を放ち、その衝撃でオータムを気絶させた。

 

「オータム!やめなさい!オータムを巻き込まないで!」

 

「別にいいけど、それなら…分かるよね?」

 

「……………行くわよ」

 

「物分りが良くて助かるよ」

 

ドスッ!

 

「うっ?!」

 

デストロはスコールの鳩尾を殴り気絶させると、抱えて空へと浮き上がる。

 

「さてと。これで二人目だ」

 

怪しい笑みを浮かべながら、夜の闇に赤い光だけを残して溶けていった。


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