インフィニットストラトス ~空から降ってきた白銀と少女~   作:鉄血のブリュンヒルデ

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混乱と出会い Twenty-second Episode

「んっ、ここは…」

 

IS学園の医務室。そこに備え付けられたベッドから起き上がったのは、ラウラ・ボーデヴィッヒ。ドイツの代表候補生で、ある意味VTシステムの最初の被害者だ。

 

「起きたか、ボーデヴィッヒ」

 

「っ?!織斑教官!」

 

「織斑先生だ」

 

最早恒例になったやり取りを終え、不意に千冬が頭を下げた。

 

「すまない」

 

「なっ?!何故教官が謝るのです!」

 

「VTシステムを完成させたのは、デストロ・デマイド。私の宿敵とも言える奴だ。私があの日倒していれば、お前は苦しまずに済んだ!」

 

「それでも!貴方は悪くない!」

 

千冬の自責を止めようと、声を荒げた。

 

「んっ、ん~…」

 

「「っ?!」」

 

その時、隣のベッドから声が漏れた。

 

「危ない、ステラを起こす所だった」

 

「ステラ・ターナーも、怪我を?まさか、私が…」

 

「いや、怪我は大した物ではない。戦闘の疲労が大き過ぎたらしい」

 

「そう、ですか…。良かった…」

 

「意外だな。お前はステラを目の敵にしていたのではないのか?」

 

千冬の言葉に、ラウラは一度俯いた。数秒の沈黙の後、ラウラは千冬の目を見て語りだす。

 

「はい、確かにそうでした。しかし、あいつは私を許してくれた。そして友達と呼んでくれた。………希望になると、言ってくれた」

 

(そんな事があったのか。後でコアの通信のログでも確認するか)

 

「…あの、教官」

 

「先生だ。なんだ?」

 

ラウラの言葉を聞いて、これからの事を考える千冬に、ラウラはもう一度声をかけた。

 

「私は、あいつの友である資格があるのでしょうか?傷付け、罵倒し、危険な目にも遭わせた。そんな私に、その資格があるのでしょうか?」

 

「知らん」

 

「え?」

 

訓練で分からない所があれば、口下手ながらも常に回答してくれていた教官からの突然の拒絶。その事に驚くラウラに、千冬はいつもの、そしてどこか優しさを含んだ声で語りかける。

 

「正直、私は友情とかには疎い。親友も変人だらけだったからな」

 

そう語る千冬の顔はどこか遠くを見ているようで、いつもからは想像も付かない様に優しかった。しかし、次の瞬間には怒りに燃える様な表情に変貌していた。

 

「傷つけた?罵倒した?危ない目に遭わせた?”それがどうした”」

 

「っ?!」

 

「私は友を殺した。手を掛けた訳では無い。だが、あいつらは私のせいで死んだ。だがあいつらは、死ぬ間際も、私を友達だと言った」

 

「ならば、私は「だが勘違いするな」え?」

 

「友である事に資格などいらない。ただ、共に肩を並べて馬鹿話が出来れば、それは友なんじゃないか?それに友というのは許可を取ってなるものでは無く、いつの間にかなっているものだろう?」

 

千冬の言葉に、ラウラは言葉を失った。まるで雷にでも打たれたかのように。

 

「ならば教官!もう一つ聞いてもよろしいですか!」

 

「なんだ?」

 

 

 

 

 

 

「…………は?」

 

ラウラの言葉に、今度は千冬が言葉を失った。まるで、鳩が豆鉄砲を食らったかのように。

 

 

…………………………

 

 

VTシステムが引き起こした事件は、一般生徒にはISのコアに起こったバグによって引き起こされた暴走とされ、この事件にVTシステムが関与しているという事を知るのは校内でも限られた人間だけに絞られた。

 

「はい、皆さん席に着いてください………」

 

「え〜っと…何から言うべきなんでしょうか?取り敢えず………」

 

 

 

 

 

真耶がもごもごしていると、扉を開け、シャルロットが入ってくる。

 

「あれ?」「デュノア君だ。」 「何で女子の制服着てるの?」

 

突然現れた女子の制服を着たシャルロットに、教室がざわつく。

 

「え〜、その、て、転校生のデュノアさんです……。」

 

「シャルル・デュノア改め、シャルロット・デュノアです。よろしくお願いします。」

 

にこやかに挨拶を終えたシャルロットはいつもの自分の席に座る。

 

すると……

 

「ちょっと待って!デュノアく…さんが女の子ってことは、御手洗君は女子と同室だったってこと!?」

 

「あ!そういえば昨日は男子が大浴場使ったって聞いたんだけど?!」

 

「ってことは、男の子は皆デュノアさんと!?」

 

「っておい、ちょっと待て!昨日はちゃんと時間分けて「い〜ち〜か〜!」り、鈴?!」

 

「とりあえず、死ねぇ!」

 

「一夏危ない!」

 

その時、ステラは咄嗟に一夏を押しのけた。しかし、一夏は成人男性程の体格があり、その体を押した反動でステラはその場に留まってしまった。

 

「あ、やばっ」

 

「ステラ?!ちょ、あぶな」

 

その時、振り下ろされていた双天牙月が急に空中で停止した。

 

「そうそう簡単に死なれては困るぞ。私の希望になるのだろう?」

 

双天牙月を停止させたのは、シュバルツェア・レーゲンのAICだった。

 

「あ、ありがとう。ボーデヴィッヒさん」

 

「ラウラでいい」

 

「え?なら、ありがt、むぐぅ?!」

 

その時、ラウラが尻餅をついているステラの顎をクイっと持ち上げて、キスをした。

 

「むぅ?!ん、んー!んー!」

 

「んっ、ぷはぁ」

 

「ふぇ?にゃ、にゃんなの?///」

 

突然のキスへの衝撃と、想定外の深いキスで呂律が回らなくなっているステラに、ラウラがとどめを刺す。

 

「ステラ、お前が好きだ」

 

「ふぁ?!///」

 

その言葉に、教室中も衝撃に襲われる。

 

「お前を私の嫁にする!異論は認めn「ぐすっ…馬鹿ぁ……」え?」

 

「ラウラの馬鹿ぁ!私初めてだったのにぃ!馬鹿ぁーーーーーー!」

 

ステラは叫びながら、教室を飛び出した。

 

「ちょ、待てステラ!ちゃんと私の告白を聞け!」

 

「知るかぁーーー!馬鹿ぁーー!」

 

逃げるステラの目は、暴走とは関係なく赤くなっていた。そして、頬も。

 

「えっと………」

 

急な展開に取り残された一組の生徒と鈴は、ぽかんとしていた。

 

「また騒がしくなりそうだな」

 

「そうだね。でも、楽しそうで良いじゃん」

 

数馬の呟きに、シャルロットは笑顔で答えた。

 

「まぁな。それと、これからもよろしくな、”シャルロット”」

 

「うん!」

 

IS学園は一時の安寧を取り戻したのだった。

 

 

…………………………

 

 

「何故あんな事をしたんだい?」

 

暗い部屋の中で、デストロが一人の人に向かいそう言った。

 

「あの小娘の過去を見せれば、お前の邪魔をする人間を一人を消せると思ったんだがな。計算違いだったようだ」

 

「あまり勝手をされても困るよ、〇〇」

 

「分かっているさ」

 

デストロはそう言うとその部屋を立ち去った。そして、取り残された者は静かに近くに置いてあった帽子を被ると同じように部屋を後にした。その姿は、誰が見ても、

 

 

 

 

 

 

 

 

男だった。


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