インフィニットストラトス ~空から降ってきた白銀と少女~   作:鉄血のブリュンヒルデ

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混乱と出会い Seventeenth Episode

「え?また転校生?」

 

一組の教室で、ステラは間抜けな声を出した。

 

あれから二日。ステラは前回と同じく赤い目の状態の記憶は一切無く、誰もステラにその事を聞こうとはしなかった。

 

「そう!今日うちに転校生が来るんだって!しかも二人!」

 

「二人も?しかもうちのクラスに?」

 

「うん!」

 

(まぁ理由は大方想像出来るけどね)

 

ステラはそう思いながら一夏達を見た。彼らは世界で四人………いや、二日前に現れたデストロ・デマイドを含めて世界に五人しかいない男性操縦者の内の三人なのだから。

 

(なんなら津上先生もこのクラスの所属だし、デストロ・デマイドは公表されてないから実質全ての男性操縦者はこのクラスにいるんだよね)

 

「えっと、ステラさん大丈夫?」

 

デストロ・デマイドの事を考え、険しい顔になるステラに、クラスメイトの相川が心配そうに顔を覗き込んだ。

 

「ん?あぁ、ごめん。何でもないよ」

 

ニコリと笑ってステラはそう答えた。

 

「諸君、おはよう。まずは席に着け」

 

教室へと入って来た千冬は壁に寄りかかり、真耶は教壇についた。

 

「だいぶ噂になっていますが、今日はこのクラスに転校生がいます!入ってきて下さい!」

 

真耶に呼ばれて入ってきたのは、小柄な銀髪の少女と、

 

「………え?」

 

「ちょっと、あれって」

 

「嘘でしょ?」

 

「フランスから来ました。シャルル・デュノアです」

 

金髪の男子だった。

 

「男………!?」

 

「はい。僕と同じ境遇の子がいると聞いたので、急遽転入することになりました」

 

「……………キ、」

 

((((((あー、これは))))))

 

男子三人とステラ、箒、セシリアは、以前のパターンを思い出して耳を塞いだ。

 

「?」

 

「「「「「キャアアアアアアア!!!」」」」

 

「うわぁ!?」

 

何も知らないシャルルと名乗った男子は、女子達の歓声をモロにくらい、その場にたじろいだ。

 

「男子よ男子!四人目!」

 

「守ってあげたくなる系の!」

 

「何言ってんの!津上先生入れて五人目よ!」

 

「お姉ちゃんって呼んで!」

 

「好きです!付き合って下さい!」

 

(いや、それは気が早いんじゃないかな?)

 

ステラは内心で苦笑いしながらクラスメイトの言葉を聞いていた。

 

「静かにせんか。まだ自己紹介が残っている。山田先生、どうぞ」

 

「わかりました。ラウラさん、自己紹介してくれるかな?」

 

「はい。私はラウラ・ボーデヴィッヒ。ドイツから来た代表候補生だ。よろしく」

 

パチパチパチッ

 

普通に挨拶をするラウラを見て、千冬は内心驚いていた。

 

(あいつが普通に挨拶を?変わったな)

 

ラウラは拍手を受けながら、一夏の前に立った。

 

「お前が織斑 一夏か?」

 

「そうだけど、何?」

 

「なに、お前がクラス代表と聞いたのでな。確認したまでさ」

 

「?そうか」

 

ラウラは一夏の返事を聞くと、自分の席へと歩いて行った。

 

「ふっ」

 

しかし、ステラはそれを見るクラスメイトのどの表情とも当てはまらなかった。

 

(今の、殺気?一瞬だけだったから分からなかったけど、今のボーデヴィッヒさんから出てたのは多分憎悪と殺気…………つまり)

 

「それではHRを終わる。各自授業を開始してくれ」

 

「あ、もうそんな時間か」

 

ステラは一旦考える事をやめ、一時間目の準備に取り掛かった。

 

 

…………………………

 

 

「あ、さっきも言ったけど僕はシャルル・デュノア。よろしく」

 

「よろしくな。けど今はゆっくりしていられないから、行こうぜ」

 

「え?なんで?」

 

きょとんとするシャルルに一夏は少し驚きながら答えた。

 

「なんでって、一時間目はISの実習だぞ?」

 

「うん。でもそれでなんで急ぐの?」

 

「男子は更衣室で着替えるんだよ。もしかしてお前女子の裸見たいのか?」

 

「え?あ、あぁ!そうだね!急がなきゃ!」

 

「?」

 

「おい、そこの変態予備軍。さっさと行くぞ」

 

「え?あぁ!忘れてた!」

 

一夏はシャルルの不自然な態度に疑問を抱いたが、数馬の言葉で準備を急いだ。そして、シャルルも教室を出た所で数馬に腕を掴まれて、半ば強引に走らされていた。

 

「ねぇ、三人とも何でそんなに走ってるの?授業までまだ時間あるでしょ?」

 

「いや、残念ながら無いぞ」

 

そうして更衣室まで歩いて行くと、(興奮した)女子の大群に遭遇した。

 

「見つけた!転校生よ!三人も一緒だわ!」

 

「これに捕まったらな」

 

「ど、どうしてこんなに人が!?」

 

「そりゃ俺達が男子だからだが」

 

「!そ、そうだよね!男子だもんね!」

 

三人は走って逃げていたが、とうとう壁際に追い詰められた。

 

「大丈夫よ三人共。ちょっと体のあんな所やそんな所を触りたいだけだから!」

 

「いや、十分アウトだろ!」

 

弾は女子達の言葉に、渾身のツッコミを入れた。

 

ガラガラッ

 

「行くぞ」

 

後ろから聞こえた言葉に振り返ると、数馬が開いた窓に手を掛けていた。

 

「行くって?」

 

「飛び降りるんだよ!」

 

「「「うわぁ?!」」」

 

一夏とシャルルを引っ張った数馬は、窓から飛び降りた。ちなみに弾は一夏に引っ張られた。

 

「サイクロン」

 

数馬はフィリップを部分展開してサイクロンの能力で風を操り、無事に着陸した。

 

「ふ、不思議な能力だね……」

 

「まぁ、束さんが作ったからな」

 

「束って、あの篠ノ之 束?!」

 

「あぁ。まぁ、一応束さんは協力者として技術提供しただけだと言っているがな」

 

「そ、そうなんだ……」

 

埃を払う数馬にシャルルは問いかけたが、更なる疑問が生まれただけだった。

 

「おい、起きろ」

 

そんなシャルルを気にせずに数馬は目を回す一夏と弾を起こした。

 

「…………」

 

それを見つめるシャルルの目には、先程の様な暖かさは無く、ただひたすらに冷たかった。

 

 

…………………………

 

 

「では、授業を始める。まずは、そうだな………オルコットと凰は前へ出ろ。模擬戦をしてもらう。戦闘の実演だ」

 

千冬に呼ばれてセシリアと鈴は前へ出る。

 

「ハァ……まるで見世物ですわね」

 

「気は乗らないけど、やるしかないわね」

 

二人は嫌そうに前に出た。すると、千冬は二人に耳打ちした。

 

「いい所を見せなくていいのか?」

 

千冬は誰とは言わない。それは二人にとって勇姿を見せたい相手が違うという事を理解しているからだ。

 

(一夏に、いい所を………)

 

(ステラさんに、私の勇姿を……)

 

「やってやろうじゃない!」

 

「えぇ、イギリスの代表候補生の力をご覧にいれますわ」

 

ちなみに何故セシリアがステラを意識するのかと言うと、ステラと関わる内にその妹の様な雰囲気に愛着が湧いたからだ。今のお気に入りは嬉しそうに「も~、やめてよ~///」というステラを撫でる事。

 

「そう焦るな。お前達の相手はあっちだ」

 

千冬の指差した方には、ラファール・リヴァイヴを纏った真耶が浮遊していた。

 

「お前達には山田先生と二対一で戦って貰う」

 

「二対一ですか?いくら何でもそれは」

 

「私達を馬鹿にしていますの?」

 

「安心しろ。山田先生はお前達が組んでも引けを取らん」

 

「へぇ~………」

 

「そうですの」

 

鈴とセシリアはISを展開してゆっくりと浮上していった。

 

「二人ともーーー!頑張ってねーー!」

 

その声に二人が下を見ると、笑顔で手を振るステラが居た。

 

「ったく、相変わらずね」

 

「ふふっ、でもあんな笑顔で応援されると」

 

「そうね。尚更に負ける訳には行かないわね」

 

先程のどこか苛立ちを含んだ表情だった二人は、いつの間にか僅かに笑っていた。

 

「二人とも、よろしくお願いしますね」

 

「よろしく~」

 

「よろしくお願いしますわ」

 

「試合、開始!」

 

地上から響く千冬の声を皮切りに、戦いは始まった。

 

「らぁ!」

 

「はぁ!」

 

ギュンッ!

 

「はっ!たぁ!」

 

ガガガガガガガッ!

 

鈴の突撃とセシリアの狙撃を軽やかな動きで避けた真耶はマシンガンを二丁呼び出し、正確に狙い撃った。

 

「くっ!きゃあっ?!」

 

「鈴さん!」

 

近くに居た鈴はそれをまともにくらい、セシリアがそれを受け止めた。しかしその間も真耶の攻撃は止む事は無く、二人は二手に分かれて回避を余儀なくさせられた。

 

「やっぱり、教師なだけあってやるわね!」

 

「鈴さん、一つ考えがありますわ」

 

「え?」

 

鈴とセシリアはプライベートチャンネルで会話しながらも回避を続けた。

 

「ティアーズ!」

 

セシリアが急に回避を止め、ビットを放った。

 

「それではただの的ですよ!」

 

ガガガガガガガがガッ!

 

真耶は立ち止まったセシリアにマシンガンを二丁とも向けて撃った。

 

「分かっていますわ!」

 

セシリアは弾丸を全て落とす様にスターライトMk-Ⅲを撃った。

 

「ウラァァァ!」

 

「っ?!」

 

真耶はそれを避けたが、避けた先には鈴が双天牙月を構えて突っ込んできた。

 

(ほう、あの時の戦闘で使った戦法の応用か。なるほどな。しかし今の一瞬の会話でここまでの完成度か。中々やるな)

 

「くっ!はぁ!」

 

真耶は急いで体制を立て直したが、鈴の攻撃は避けきれないと悟り近接武器を展開して受け流した。

 

「これで!」

 

「決まりですわ!」

 

いつの間にか挟み込む様な陣形になっていた二人は、互いの近接武器を投げた。

 

「その程度なら!」

 

二人の投げた武器を余裕を持って避けた真耶だったが、二人にもそれは予測済みだった。

 

「はぁ!」

 

ギュンッ!

 

セシリアはビットを巧みに操り、放ったビームで鈴の双天牙月を打ち返した。しかし

 

「甘いです!」

 

真耶はそれを弾き、セシリアに向かってロケットランチャーを撃った。

 

ドカァーーーンッ!

 

「きゃぁー!」

 

その攻撃が致命打となり、セシリアは落ちた。

 

「まだ、私がいんのよー!」

 

後ろを振り返ると、セシリアのインターセプターを振り下ろす鈴の姿があった。

 

「分かっています」

 

「なっ?!」

 

インターセプターを振り切った鈴だったが、そこに真耶の姿は無く、あるのは栓の抜かれた手榴弾だけだった。

 

「まずっ」

 

ドカァーーンッ!

 

手榴弾の爆発を避け切れなかった鈴は、その威力をもろにくらい甲龍のシールドエネルギーが底を突いた。

 

 

…………………………

 

 

「負けましたわ。完膚なきまでに………」

 

「あと少しだったのに………」

 

落ち込む二人の元に汗を拭きながら真耶が近寄った。

 

「二人とも、凄かったですよ。あと少し反応が遅れていれば負けていました」

 

「そうだよ!二人ともかっこよかったよ!」

 

「「ステラ(さん)………」」

 

「まぁ、確かに想像以上の実力だったぞ。まさかあのような戦い方をするとは、やるな」

 

千冬の厳格のあるイメージの抜けない二人は、千冬の微笑む様な笑顔に一瞬困惑した。

 

「これがIS学園の教員だ。以降は敬意を持って接するように」

 

「「「「「はーーい!」」」」」

 

「うむ。それではこれより、ISの歩行訓練を始める。専用機持ちは指導に回れ。ISは全部で六機。『打鉄』と『ラファール・リヴァイヴ』、好きな方を選べ」

 

一組と二組のピッタリと揃った返事に千冬は頷くと、今後の指示を始めた。

 

「織斑君!私に教えて!」

「デュノア君!」

「五反田君!」

「御手洗君。私に教えて?」

「どこ?!津上先生はどこ?!」

 

「何をしている!出席番号順に整列しろ!」

 

「「「「「すみませんでしたー!」」」」」

 

千冬の怒鳴り声に、生徒達は即座に並び始めた。

 

(何故だ。何故小娘一人の発した名前にここまで反応するんだ?!私は何故津上先生を意識しているんだ!)

 

怒鳴り声には多少の私情が挟まっていた千冬だった。

 

尚、訓練は怖いくらいに順調に進んだ。




こんな作品ですが読んでいただいてありがとうございます。ここで個人的な要因ではあるのですが、お知らせがあります。

今日から数日間ログイン出来るか出来ないか分からない状況が続くので、次話投稿は期間が空く可能性が高いです。

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