インフィニットストラトス ~空から降ってきた白銀と少女~ 作:鉄血のブリュンヒルデ
「一夏、こんな物か?」
「まだまだ!」
「攻撃が甘い!突っ込むだけなら猪でもできるぞ!箒は前に出過ぎだ!もっと二人の呼吸を合わせる様にしろ!」
「はい!」
日曜日。ステラ達が束島に来て二日目。アリーナには白式を纏った一夏と打鉄を纏った箒が千冬と模擬戦をしていた。
「旋空弧月!」
「ぐぁ?!」
「一夏?!くっ!」
「はぁ!」
「がっ?!」
ビーーーッ!
<試合終了!勝者、ちーちゃん!皆お疲れ。そろそろ休憩にしようか。丁度スーちゃんのご飯が出来たみたいだし>
「あぁ、そうだな」
束のアナウンスを聞いた千冬はトリガーを、解除してアリーナを後にした。
「強すぎるだろ…」
「勝てる気が全くしない……だが千冬さんにもなにか隙がある筈だ。次こそはそれを見つけて私達が勝つぞ」
「おう。そうだな」
二人はその後も談笑しながらダイニングへと向かった。
…………………………
「「「「「いただきます(!)」」」」」
束島にいる全員が揃った食卓はとても賑わっていた。しかし、その場に蓮は居なかった。
「簪ちゃん、後で模擬戦しない?」
「いいよ。私もお姉ちゃんと戦ってみたかったし」
簪と楯無は、食事をしながら仲睦まじそうに会話をしていた。
「あの二人いい雰囲気だね~」
「えぇ、そうね」
そんなふたりを見つめるのは、二人の従者である虚と本音だった。
「なぁステラ。俺らの動きってどこら辺が悪かったんだ?」
「千冬さんに勝つ為にも、教えてくれないか?」
「うーーん、悪いところか。一夏は動きが単調過ぎる事かな。攻撃と攻撃の間のリズムもバラバラで、あれじゃあ技が繋がらないのも仕方ないよね」
「うっ…………」
「箒は近接武器にこだわり過ぎ。もっと柔軟な戦い方しないと、千冬さんには勝てないよ」
「そ、それは………」
ステラの遠慮の無い言葉に、一夏と箒は怯んだ。
「千冬さんにはグラスホッパー以外に空中戦闘の手段がないっていうアドバンテージもあるけど、旋空弧月があるから千冬さんには殆ど関係ないし」
「どうすりゃいいんだ?」
「んーー、一夏はもう少し相手との間合いの把握と攻撃のリズムを整える事かな。箒は射撃武器も扱える様にしようか。剣の道にこだわるってのもありだけど、それじゃあいざって時に困るよ?」
「分かった。しかし、射撃武器となると誰に教わればいいんだ?」
「それなら私が致しますわ」
向かいの席からの声に三人はそちらを向いた。
「セシリアか。ありがとう、昼一番でもいいか?」
「えぇ、構いませんよ」
「そうなると、俺って誰に教わればいいんだ?」
「鈴なんてどう?」
「鈴か?でもアイツ完全な感覚派じゃん」
「そうだけど、模擬戦繰り返してれば何か見えてくるかもよ?鈴は戦いのリズムはいいし」
「呼んだ?」
二人の会話に反応したのか、鈴がこちらを向いた。
「あのさ、一夏と模擬戦してくれない?」
「え?」
(こ、これはまさかステラが私の為に、ステラが用意してくれたイベント?なら!)
「やってやろじゃないの!私が徹底的に鍛えてやるわよ!」
「お、おう!」
やる気満々になった鈴に釣られて、一夏も勢い良く返事をした。鈴はステラに感謝しつつ午後の事に思いを馳せた。そしてステラは。
(なんか鈴いつにも増してやる気だなぁ。何か良い事あったのかな?)
無自覚だった。
「なら、ステラは私とやろう」
「いいんですか?!やった!今度こそ勝ちますよ!」
「ふふっ、そう簡単にはいかないぞ」
笑顔で話す各々を見て弾は数馬と翔一を見た。
「俺らでやるか」
「だな」
「それしかないね」
それから十数分。食事は終わり、それぞれの準備に入った。
…………………………
Said 一夏&鈴
「うらぁぁぁぁ!」
「だぁぁぁぁぁ!」
ガキンッ!
「だんだんと、掴んできたじゃない!」
「そりゃどうも!」
それぞれの武器を構えて戦う一夏と鈴。ただぶつかり合うだけに見えるが、アリーナに出来たクレーターや傷がその戦いの激しさを物語っていた。
「そろそろ次のステップ行こうか!」
「くっ!らぁぁっ!ぐぁ?!」
(あの技の感覚なら残ってる。あれが決まれば!)
「はぁ!」
鈴は双天牙月を投げて、龍咆の照準を合わせた。
「ちぃっ!」
(掛かった!)
一夏の動いた方向に龍咆を撃った。
「っ!それなら、さっき見たんだよ!」
「なっ?!」
一夏は見えないはずの龍咆を避けると、
「それはもっと見たわよ!」
鈴は分かっていたかのように、いや、分かっていたのだ。なんど一夏の突進を見たことか。鈴はギリギリでそれを避けると、双天牙月を回収しながら龍咆を撃った。
「くそっ!」
一夏はもう一度
「なぁ、鈴。何か感じないか?」
「何よ、時間稼ぎのつもり?」
「違うって!なんていうか、こう、肌がピリピリするみたいな」
「知らないわよ!とにかく今は」
ドカァーーーーーン!!
鈴の言葉を遮る様に、それは降って来た。
「な、なんだ?!」
そこには、黒い体に赤いラインの入った機体がいた。
「ギンギラ?いや、違う!お前誰だよ!」
「やぁ、織斑一夏。一応は初めましてだね」
「一夏逃げて!」
「っ?!」
鈴の叫びと、ロックオンの警告は同時に一夏の耳に響いた。
Said End
…………………………
Said 箒&セシリア
「箒さん、もう少し脇を締めて」
「こうか?」
「そう、その構えですわ。その銃『焔備』はアサルトライフルタイプの中でも命中精度等が高く人気の武装ですが、持ち方等がしっかりしていないと反動に負けて命中精度が格段に落ちてしまいますわ」
「そうなのか?なら気を付けないとな」
セシリアの指導の下で重火器の基本を教わる箒。その表情は真剣その物だった。
「一旦休憩にしましょうか」
「ん?あぁ、分かった」
二人はISを解除してベンチに腰掛けた。
「そういえば、箒さんの剣の腕はどこで磨かれたのですか?」
「え?」
セシリアの急な問いに少し戸惑った箒だったが、すぐに落ち着いて話し出した。
「祖父が道場を開いていてな。そこで鍛えたんだ。まぁ、今は要人保護プログラムによって道場はやっていないし、祖父とも離れ離れなのだがな」
「そ、それは……すみません。そこまで気が回らずに」
「いいんだ。まぁ、そのことで姉さんの事を一方的に嫌い、避けるようになったのは事実だ。あんなに思っていてくれたというのにな」
「箒さん………」
「さぁ、こんな暗い話はお終いだ。訓練を再開しないか?」
「えぇ、分かりましたわ」
二人は立ち上がると、ISを展開した。
ビービービー!
「っ?!なんだ!」
「箒さん、緊急事態ですわ。一夏さん達のアリーナに謎のISが現れましたわ」
「ならば私も!」
「いえ、箒さんは連れて行けません」
「何故だ!」
セシリアの言葉に、箒は苛立った様な声を上げた。
「箒さんはあくまでも一般人ですわ。貴方は来てはいけませんわ」
「しかし!」
「足手まといになるつもりですの?!」
「でも!……………分かった」
「それで良いですわ。とにかく避難して下さい」
セシリアは箒にそう告げるとアリーナを飛び出した。
「くっ………!」
誰も居なくなったアリーナで、箒は静かに唇を噛んだ。
Said End
…………………………
Said ステラ&千冬
「また負けた~…………」
「だが、一戦ごとに確実に腕は上がっているぞ」
「そうかな~」
「私が言うんだ。自信を持て」
「それを勝った人に言われても…」
ステラは愚痴の様に言いながらも、戦った時に感じた高揚感に疑問を抱いていた。
(私、そんなに戦いが好きって訳でも無いんだけどな。なんであんなに興奮してたんだろう?)
「どうした?」
「え?あぁ、いやなんでも無いです」
ステラの変な返しに首を傾げる千冬だったが、束から入った連絡に表情を変えた。
「ステラ、緊急事態だ。一夏達のアリーナに行くぞ」
「っ?!襲撃ですか?」
「あぁ。敵は
「はい!」
ステラと千冬は全速力で一夏達のいるアリーナに急行した。
Said End
…………………………
Said 弾&数馬&翔一
「まぁ、とは言ったものの」
「する事なんて」
「無いよね~」
三人はアリーナのピットでくつろいでいた。
「模擬戦は何度もしたしな。さてと、どうするか」
「ゲームでもしね?」
「えー?俺苦手だよ?」
ドカァーーーーーン!!
「おわ?!」
不意に起こった爆発に、弾は椅子から転げた。
「なんだ!」
「っ?!不味いぞ!隣のアリーナで襲撃が起こった!」
「弾!お前のトランザムならすぐだろ!先に行け!」
「了解!」
ギュンッ!
弾は瞬時にエクシアを展開して赤い光を纏い、空気を切り裂きながら飛んだ。
「さぁ、俺達も行こうか!」
「あぁ!」
残った二人もISを展開してピットを飛び出した。
…………………………
said VS???
「ぐぁ?!」
「きゃあ?!」
赤い光に弾き飛ばされた一夏と鈴はアリーナに更なるクレーターを作っていた。
「はははっ!その程度かい?」
「くっそ!このぉ!」
「その勢い、あの時の千冬にソックリだよ!」
「うおぉーー!」
勢いに任せて雪片弐型を振る一夏。だが謎の『男』はその攻撃を普通に片手で受け止めた。
「それでも君は彼女程の力は無い。やはり失敗作か」
ギューーンッ……ドンッ!
「がぁ?!」
ゼロ距離で放たれたエネルギーに、一夏は吹き飛んだ。
「そこまでだ!その場で止まれ!」
「ん?」
男が振り返ると、そこには専用機持ち全員が集まっていた。
「なんのつもりかは知らんが、今すぐ武装を「やぁ、千冬じゃないか!」…………何?き、貴様は!」
「久しぶりだねぇ。お?そこに居るのは彼らの?大きくなったねぇ!」
「黙れ!何故だ。何故貴様がここに!」
千冬の鬼の様な形相に専用機持ち達は驚愕した。しかし千冬は男を睨む事を止めずに、そのまま男の名を叫んだ。
「デストロ・デマイド!」