インフィニットストラトス ~空から降ってきた白銀と少女~ 作:鉄血のブリュンヒルデ
「昨日は凄かったよセシリア!とうとうビットとの併用が出来る様になったんだね!」
「わっ?!ステラさん?!」
戦いの翌日。昨日は取り調べ等があって話せなかったからか、ステラはセシリアに飛びつき気味に抱き着いた。
「あの時は必死でしたので。しかし、あの後幾らやっても出来ませんでした」
「え?そうなの?」
『マスター、少しよろしいですか?』
「ん?いいよ。あ、少しごめんねセシリア」
「構いませんわ」
ギンギラに言われ、セシリアと話していた場所を離れて物陰に入った。
「どうしたの?」
『先日の戦闘のデータを確認していたのですが……』
「…………え?」
ステラは、ギンギラの言葉に驚きを隠せなかった。そして二人は尚も話し続け、数分後。
「そんな………」
『マスター、お気持ちは分かります。ですが現にセシリアさんにはその兆しがあります』
「…………兆し、か」
ステラは少し考えた後、物陰から出ていつもどおりの表情で教室に戻った。
そして数分後。今日の一時間目。
「はいはーい、皆席に座ってー」
教壇に立つ翔一は、いつにもましてやる気に溢れていた。
「皆は今まで基本の五教科を勉強して来たと思うけど、今日から他の四教科も追加されます。家庭科、体育、保健、書道の四教科です。と、いう事で!今日のこの時間は家庭科をします!」
「「「「「イエェェーイ!」」」」」
「それじゃあ、好きな人同士で班を作って貰おうかな。次の授業で調理実習するから」
「先生、どんな料理なんですか?」
「何でもいいよ」
翔一の言葉に、教室が少しざわついた。
「先生、それじゃあ説明足らないと思いますよ?」
困惑する生徒達を見かねてステラが苦笑混じりにそう言うと、翔一は笑いながら頭をかいた。
「あ、ごめんね?何でもいいって言うのは、どんな料理でもいいよって事。今日までに班と料理を決めて、俺から班長がプリントを貰って班員と必要な材料を書いて提出して下さい」
「「「「「織斑君/五反田君/御手洗君!私と班組んで!」」」」」
「一夏、弾、ステラ、セシリア、箒、組むぞ」
「おう。ゴメンな皆」
「フライドポテト作ろうぜ」
「弾、調理実習でジャンクフードは無し」
「フフッ、弾さんは相変わらずですわね」
「栄養も偏るだろ」
「「「「「振られた……」」」」」
落ち込んだような素振りを見せた生徒達だったが、いつもの事だと割り切りそれぞれ班を組んでいった。
「さてと、何作る?」
「フライドポテト」
「以外で」
「無難に朝の定食でいいんじゃないか?」
一夏と弾の漫才を他所に、箒はそう提案した。
「だな。皆はそれでいいか?」
「何でもいい」
「いいよ」
「構いませんわ」
「よしっ、じゃあ班長決めようぜ」
「え?一夏じゃねぇの?」
「そうだよ。一夏だと思って聞いてなかったのに」
「待て待て!何で俺が班長なんだよ!」
「「クラス代表だから」」
「ぐうっ…」
ステラと弾が当たり前の様にいうと、一夏はぐうの音も…………いや、ぐうの音は出た。
「じゃあ提出してくるが、いいか?」
「え?材料書いてなくね?」
「お前らが話している間に書いた。鮭と味噌汁の具材と米だが、問題あるか?」
「あ、セシリアってお箸大丈夫?」
「えぇ、祖国で練習しましたわ。日本に行くということは箸を使う機会が少なからずあると思いましたので」
「さっすがセシリア!真面目!」
「しかし、箸は扱いが難しいからな。結構練習を積まなければまともには扱えない。セシリアは努力家だな」
「フフッ、褒めても何も出ませんわよ」
先日の一件から友としての親睦を深め合い、当初とはまるで違う雰囲気で話す三人を、一夏達は眺めていた。
「あの三人が話してると絵になるよな」
「まぁ三人とも美人だしな」
「そうだな。それじゃあそろそろ決めるぞ。班長は一夏。作る料理は白飯、焼き鮭、味噌汁でいいな。材料は米、鮭、味噌、豆腐、ワカメ、葱。これで提出するが、いいか?」
書類を纏める数馬がそういうと全員が了解し、そのままその案で通った。
そして三日後。
「それじゃあ班の人は番号の所に行ってね。そこに材料と調理器具一式あるから」
「よしっ!すっごいの作っちゃうぞ!」
「まずは米を洗うか。セシリア、頼めるか?」
「はい、お任せ下さい」
箒に聞かれたセシリアは、何故か洗剤を取り出した。
「おい、セシリア。何故洗剤を取り出した」
「え?お米を洗うのですよね?」
「あぁ、そうだ」
「違いますの?」
「あぁ、大いに違う」
「えぇ?!」
「えぇ?!待ってセシリア、今までどうやって料理作ってきたの?!ていうか自分で食べた事ある?!」
「いえ、私の使用人達に振る舞う時に作りましたので、自分で食べたりはありませんわ」
「あちゃあ〜………」
ステラはあからさまに頭を抱えた。
「ある意味でクロエさんより重症だ…」
「ど、どうするんだ?」
「ここは私が何とかする。そっちは箒達でお願い」
「あぁ、任された」
「なんだよこのロボットアニメっぽいシーン」
かくして、ステラ達の班は(色んな意味で)ロケットスタートで調理を始めた。
「まずは味噌汁だな」
「わぁ!セシリア何いれんの!」
「何って絵の具ですわよ?」
「いや、ちょ、何考えてんの?!食べられなくなっちゃうじゃん!」
「いえ、色味が足りないと思ったので…」
「そこは作りながら味と一緒に調整するの!とりあえず絵の具しまって!」
「は、はいな…」
「……………味噌汁作るか」
「おう」
「あぁ」
「そうだな」
尚、ロケットは二人乗りでした。
「だーかーらー!香りが足りないからって香水入れちゃダメだって!」
…………………………
40分後。
「何とか形にはなったね………」
「あぁ、なかなかの出来だろ」
「さて、そろそろ飯も炊けただろう」
「腹減ったぁ…」
「同感…」
「すみません、私のせいで……」
「え?あー、気にしないでいいよ。慣れてるし」
何とか見た目も味も最高の出来になった所で、ステラ達は椅子に座り込んだ。
「おっ!結構よく出来てるじゃん」
疲れ果てたステラ達の元に翔一が声をかけた。
「あ、津上先生」
「うん、香りもいい。でも………テーブル片付けよっか?ていうか何で絵の具?!」
「あ、それは……」
「私ですわ。私が料理の際に使おうと持ち込みました。ですが、先程ステラさんに教わりました。料理が何たるかを」
「そっか………なら、俺が言うことは無いよ」
「まぁ、とりあえず食べようぜ」
「おう」
「あぁ」
「うん」
「そうだな」
「ですわね」
料理を食べる六人の顔は疲れ果て、そして楽しそうだった。
…………………………
一日の授業が終わり、部屋に戻ったステラを待っていたのは、机に大きな紙を広げていた簪だった。
「おかえり、ステラ」
「うん、ただいま。それじゃあ始めよっか」
「うん」
ステラ達は机に座り、大きな紙に何かを書いていた。そこにはこう書かれていた。
―打鉄弍式 改修プラン―