インフィニットストラトス ~空から降ってきた白銀と少女~   作:鉄血のブリュンヒルデ

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混乱と出会い Seventh Episode

「皆さん!ここから避難して下さい!」

 

混乱の中、教師達も自分に出来ることをしていた。

 

「山田先生!」

 

「ターナーさん!大丈夫でしたか?」

 

「はい。それと、ここから先には行けません」

 

「え?どうしてですか?」

 

「さっき確認しましたが、アリーナのセキュリティシステムが作動しています」

 

「そんな!それじゃあ出口が!」

 

「落ち着いてください!扉は私達が破壊します。一応先生に確認を取りたくて」

 

「こういう場合は生徒の命が最優先です。お願いします」

 

「はい!皆さん、扉から離れて下さい!」

 

ステラはギンギラの右腕を部分展開して、サーマルキャノンを放ち扉を破壊した。

 

「後は避難誘導を「一番星ちゃ~ん」え、本音?」

 

「避難誘導は私がするから、一番星ちゃんはおりむー達を助けてあげて」

 

「…………ありがとう本音!今度スイーツ奢るから!」

 

「特盛パフェね~」

 

「えぇ?!あぁ、もういいよ!特盛パフェ一緒に食べよ!」

 

「わ〜い!やった~!」

 

ステラは走りながら、本音はそれを見送りながら笑顔で別れた。

 

…………………………

 

「そこを退いて下さい!………ダメだ。セキュリティが頑丈過ぎる…」

 

「虚!」

 

「弾君?どうしてここに!」

 

「開かねぇんだろ?だったら壊す!エクシア!」

 

弾はエクシアの両腕を部分展開させて、GNソードをガンモードにしてエネルギーをチャージし始めた。

 

バンッ!ガゴッ!

 

「開いたわ!」

 

「皆さん!早く、そして落ち着いて逃げて下さい!」

 

虚の言葉に、その場にいた生徒達は落ち着いて避難を始めた。

 

「弾君、ありがとうございます」

 

「おう?!」

 

虚は嬉しさのあまり弾に抱き着いた。そして虚はゆっくりと離れて弾に言った。

 

「アリーナに行って下さい、あの二人だけでは心配です」

 

「分かってる」

 

弾は虚に背を向けて走り出した。そして虚はその背中を見ながらふと思った。

 

(あれ?私、何してるの?!)

 

そして顔を赤らめた。

 

…………………………

 

その頃、数馬が行った方では。

 

「扉が開かない!どうして?!」

 

「アリーナのセキュリティが作動してるんだよ!早く解除しなきゃ!」

 

「そこを退け」

 

その声を聞き、生徒達はまるでモーゼの海割りの様に道を開けた。

 

「フィリップ」

 

数馬はフィリップの右腕を部分展開してビームライフルを構えた。そしてそれを撃つと、今までとは違い赤い炎の様な粒子が光弾を包んだ。

そして火球となった光弾は扉を破壊した。

 

「後は避難誘導か」

 

「その必要は無いわ。貴方はアリーナに向かいなさい」

 

「なに?」

 

「ここは私がやるわ。貴方は貴方の成すべき事をしなさい」

 

数馬に声をかけたのは、水色の髪の少女だった。

 

「そのリボンの色、二年か。だが」

 

「いいから行きなさい。私を、信じて」

 

「……わかった」

 

数馬は彼女の事を疑問に思いながらも、走り出した。その後ろ姿を見ながら、少女は呟いた。

 

「貴方との約束があるから、私は死なない」

 

その目は、希望を見る様な目だった。

 

…………………………

 

「あ、篠ノ之さん!」

 

「どうしよう、扉が開かないの!」

 

箒が行った場所は、たまたま一組の生徒が多くいた。

 

「分かった。セキュリティを解除している時間は無いから、破壊する」

 

「でもどうやって?」

 

「こうするのさ」

 

ガチャッ

 

「え?!ちょい待ち!何それ!」

 

「ロケットランチャーだが?」

 

「いーやいやいや!何で持ってんの!」

 

「借りたんだ。こういう時の為にな」

 

そして箒はロケットランチャーを構えた。それを見て生徒達は扉と箒から離れた。

 

「はぁ!」

 

ドンッ!ドガァァン!

 

「早く逃げろ!」

 

「ありがとう篠ノ之さん!」

 

箒は避難誘導をしながらアリーナの方を向いた。

 

「後は頼んだぞ」

 

…………………………

 

その頃。

 

「クソっ!こんな『奴ら』何処から来たんだよ!」

 

一夏達は突如襲っていたISが無人機だと気付き、そのISを合流したセシリアと共に倒した。そんな時、更に三体の無人機が先程空いたアリーナの穴から進入して来た。

 

「くっ!ぐぁっ?!」

 

「うっ!きゃあ?!」

 

先程の無人機の観察する様な動きとは違い、今回のISは容赦なく一夏達の命を狙っていた。

 

ギュンッ!

 

「きゃあぁ!」

 

「鈴さん!」

 

「鈴!よくも鈴を!許さねぇ!」

 

「一夏さん!一人では無理です!」

 

「うおおおおぉ!」

 

「戻れアホ」

 

〈Spider〉

 

「うわっ?!」

 

一夏は突然鉄製のワイヤーに捕まり、ピットに引っ張られた。そして、セシリアも瓦礫に隠れた。

 

「冷静さを欠いて勝てる相手じゃない。まず落ち着け」

 

「数馬?でも鈴が!」

 

「鈴ならさっきステラが助けた。俺達はアイツを倒す。人数だけでも揃えたいのが現実だ。お前も来い」

 

「そんなの当たり前だろ!でも、もうエネルギーが」

 

「それならそこで補給しろ。今回の作戦にはお前が、お前の零落白夜が必要不可欠だ」

 

「じゃあ、それまで奴らはどうするんだよ」

 

「俺達が時間を稼ぐ。弾とステラが反対側のピットで待機しているから、セシリアと合流して奴らを叩く。それでも恐らく俺達だけでは倒せないし、教師のIS部隊を待っていれば奴らはここを飛び出して学園にダメージを与えかねない。お前がこの戦いの鍵だ。頼んだぞ」

 

数馬はそう言うと、フィリップを完全に展開させてピットを飛び出した。

 

「俺が、戦いの鍵……」

 

 

…………………………

 

 

そして、アリーナに飛び出した数馬はロッドを展開して敵機の内一体を地面に叩きつけた。

 

「コイツらに識別番号を付ける。俺が落としたのは一号、ステラの側にいるのが二号、弾の側が三号だ。セシリアは援護を頼む!」

 

「「「了解!」」」

 

そして数馬は、地面のクレーターに佇むIS、一号を見て呟いた。

 

「やはりこの程度では倒れないか。なら!」

 

そういうと次はビームライフルを展開して光弾を撃った。そして光弾は黄色い光を纏い、逃げ出した無人機を追尾した。

 

「やはりこの能力がビームライフルに相性がいいな」

 

数馬はそう言いながらも攻撃の手を緩めない。そして全速力で向かって来る一号を勢いを殺さずに受け流して、その背後に光弾を撃ち込んだ。

 

 

…………………………

 

 

「でりゃあ!」

 

ブンッ!

 

ステラはを拳を振るう。だが二号は身を翻してそれを躱すと、自身の腕部から射出されるビームソードでステラを切り裂こうとする。

 

「よっと!はぁ!」

 

ギュンッ!

 

ギュンッ!

 

ドォーンッ!

 

ステラの撃ったレーザーと二号の撃つレーザーがぶつかり合い、爆発が起きた。

 

『マスター、今です!』

 

「はぁ!」

 

ガンッ!

 

爆発を突き抜け、ステラは二号を殴り飛ばした。

 

「かったい!全然ダメージ入って無いじゃん!」

 

『いえ、シールドエネルギーは着実に削っている筈です』

 

「それならいいんだけど、ね!」

 

ステラはギンギラの言葉を聞きながら追撃を仕掛けた。

 

 

…………………………

 

 

「おぅらあ!」

 

ブンッ!

 

「ちっ!無駄に速いな」

 

ギュンッ!ギュンッ!

 

弾は三号にGNソードで斬りかかり、それを躱して離れる三号に対して刀身を畳みレーザーで狙う。

 

ギュンッ!ギュンッ!ギュンッ!

 

グゥーーンッ、ドンッ!

 

「おわっと?!速すぎんだろ!しゃーねー、トランザム!」

 

弾はトランザムを発動させると、超高速で動き回る三号の背後についてビームを撃つ。

 

 

…………………………

 

 

「これをどうサポートすれば……」

 

三人の戦いを見ていたセシリアはただただ困惑していた。

 

(未だビットの操作と射撃は両立出来ませんし、出来たとしてもこの状況では!…………私に、出来ること……………)

 

「きゃあ!」

 

「っ?!ステラさん!」

 

セシリアが悩んでいると、二号の攻撃を食らったステラの悲鳴が聞こえた。慌てて辺りを見ると、そこにはまだ稼働は出来るものの、ダメージを多く負っている数馬達がいた。

 

(私に出来ること…………いえ、違いますわ!)

 

セシリアは一度俯き顔を勢い良く上げると、心を解き放ち叫んだ。

 

「私はイギリスの代表候補生、セシリア・オルコット!友達を助ける為に戦えない様な人間には代表候補生は務まりませんわ!出来るかでは無く、やるのですわ!」

 

セシリアはそう言いながらスターライトMk-IIIを構えた。

 

「私の思いに答えよ!ブルー・ティアーズ!」

 

セシリアの叫びと共に一瞬髪が銀色に光り、すぐに元に戻った。そしてスターライトMk-IIIから大出力のビームが放出され、そして動かせない筈のビット達が敵を狙い撃つ。無人機達はそれを躱したが、気付かぬ内に一箇所に集められていた。

 

「今ですわ、一夏さん!」

 

「うおおおおぉ!」

 

青く輝く光の剣が、無人機達を纏めて切り倒した。

 

 

…………………………

 

 

「無人機、か」

 

薄暗い部屋。その中心には四つの発光する球体が置かれていた。

 

「はい。解体の結果中に人は居ませんでした。しかし……」

 

「どうした?」

 

「その…人の、脳が………」

 

「………………………………そうか」

 

「そうかって……織斑先生は何とも思わないんですか?!」

 

「思うさ。ただ、こんな事を平気で行える奴は、一体何を考えているのだろうなと思ってな」

 

「織斑、先生?」

 

(お前は何を思い、これを作った?お前は何がしたい?何故ステラ達を巻き込む?)

 

「答えろ、デストロ」

 

千冬の怒気の籠った呟きは、機械音しか聞こえない部屋の中で、僅かに木霊した。

 

 


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