インフィニットストラトス ~空から降ってきた白銀と少女~   作:鉄血のブリュンヒルデ

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混乱と出会い Sixth Episode

「ねぇ、織斑君達知ってる?今日中国から転校生が来るんだって」

 

「しかも代表候補生!」

 

『マスター、これは』

 

「うん、分かってる」

 

「中国の………てことはあいつか?」

 

「まぁあいつだろうな」

 

「あいつ以外にいないだろ」

 

クラスの女子のもたらした噂を聞き、ステラは少し震えだし、一夏は自分の考えを確認しようと弾と数馬に問い、問われた二人はそれぞれ味の異なる珈琲を飲んでいた。

 

「そういえば、今後のトレーニングのことなんだけどさ」

 

 

「えっ!ステラ手伝ってくれるのか!?」

 

「そりゃそうだよ。この前の試合はお互い敵同士だったけど、一夏はクラス代表で私達はクラスメイト、協力しない理由ないからね。それに、セシリアも協力してくれるよ」

 

「おりむーが勝つとみんなが幸せだからね〜!」

 

話をしてると本音や数人の女子が割って入ってきた。

 

「みんなが幸せ?」

 

「クラス対抗戦の優勝クラスには、食堂のデザートのフリーパスが贈呈されるんだよ!」

 

「そうだよ一夏!デザートフリーパスだよ?!絶対勝ってもらわなきゃ!」

 

「ステラは前からスイーツ好きだよな。けど、そう簡単に勝てるかどうか」

 

「大丈夫!織斑君なら勝てるよ!専用機持ちのクラスはウチだけなんだから!」

 

一組の生徒が声援を送っていると、教室の扉が開いた。

 

「その情報、古いよ!」

 

ドアの方から声が聞え、その方向を見るとそこには見覚えのある小柄な少女がいた。

 

「二組も専用機持ちの私がクラス代表になったわ!そう簡単には勝てな「りーーーんーーー!」どわっ?!」

 

ドアの所に立っていたのは、二年前に中国に帰った鈴だった。そして、ステラは束直伝のジャンピングハグで鈴に飛び付いて押し倒した。

 

「鈴!久しぶり!本当に代表候補生になったんだね!」

 

「そうよ!なったわよ!そんな事より、とりあえず降りなさいよ!」

 

「え?あ、ごめん」

 

嬉しさのあまり我を忘れていたステラは、鈴の言葉で正気に戻り、静かに立ち上がった。しかし状況が飲み込めない生徒達はただただ困惑していた。

 

「全く、再会をサプライズでドーンと飾りたかったのに、ステラのせいで台無しじゃない!まぁ、いいけどさ?でもいきなりあれは無くない?」

 

「うぅ…だからごめんってば。久しぶりに会えて嬉しかったんだもん…」

 

少し拗ねたステラの頭を鈴は軽く叩き、抱き着いた。

 

「あのさ?私だって嬉しいに決まってんでしょ?まぁ、一夏達と再会するのは計算外だったけど」

 

「うぅぅぅ…鈴~…」

 

「はぁ、あんたは変わんないわね」

 

「鈴も変わってないよ」

 

「そうねぇ、変わってないわよねぇ。あんたはそんなに大きくなってんのにねぇ!」

 

「うにゃ?!」

 

突然鈴がステラの胸を掴んだ。

 

「何であんたはまだ成長してんのよ!」

 

「わ、私に聞かれてもぉ!」

 

「あーもう!イライラするぅ!」

 

「も、もう離してよぉ…んんっ!」

 

ガツッ!

 

突然の展開に一夏達すら困惑し始めた頃、鈴の頭に出席簿がクリーンヒットした。

 

「いとぉあ?!何よ!今私はステラ、の……」

 

「もうホームルームの時間だ」

 

「ち、千冬さん……」

 

出席簿で鈴を殴ったのは毎度の如く千冬だった。

 

「織斑先生だ。早く自分の教室に戻れ」

 

「くっ!覚えてなさいよアンタ達!」

 

「さっさと戻れ!」

 

「かしこまりましたあぁぁ!」

 

「廊下を走るな!」

「ぐえぇ!」

 

千冬が手に持っていたチョークを投げナイフの様に投げると、鈴の頭に命中した。

 

「あの人もうどうなってんだよ…」

 

「気にするだけ無駄だ」

 

「まぁ、もう人間辞めてるしな」

 

「おい、そこの男子三人組。何か言ったか」

 

「「「イエ、ナニモ」」」

 

「はぁ……まぁいい。HRを始める」

 

…………………………

 

午前中の授業を終え、ステラ達は食堂へと向かっていた。

 

「フン!逃げずに来たようね!」

 

「逃げずにって…、そりゃ食堂には来るだろ。休み時間なんだし」

 

授業が終わり昼食をとりに食堂に行くと、入り口で鈴が待ち伏せていた。

 

「鈴、取り敢えず中に入ろ?邪魔になってるし」

 

「わかったわ」

 

そしてステラ達は、空いている食堂の席に座った。

 

「久しぶりねアンタ達!」

 

「鈴こそな。元気だったか?」

 

「オホン!私を忘れてもらっては困りますわ!凰鈴音さん!」

 

「えっと、誰?」

 

「セシリアはイギリスの代表候補生で私達のクラスメイトだよ」

 

「ふぅん、他の代表候補生に興味ないから知らなかった」

 

「きょ、興味ないですって!?」

 

「それはそうと、一夏!約束、忘れてないでしょうね!」

 

「約束…、いや、俺は覚えてるはずなんだけどさ…」

 

「?まあいいわ。放課後に聞きに行くからね」

 

「あ、ああ…わ、わかった。」

 

「数馬さん。約束とは何のことですの?」

 

「プロポーズだ」

 

「プロポーズ!?」

 

「馬鹿!声が大きい!」

 

「も、申し訳ございませんわ」

 

「なあ弾、なんで数馬はプロポーズの話なんかしてたんだ?」

 

「さぁ。自分で考えろクソリア充」

 

「え?」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

放課後

 

 

 

「一夏のバカー!覚えてなんかないじゃない!」

 

「だから言ったのに。ほら、お茶だよ」

 

「グスッ、ありがとう…」

 

「で、鈴、これからどうすんだ?」

 

「一夏がちゃんとわかってくれるまで……!」

 

「あー鈴、多分それは無理だと思うぞ?付き合ってくれって言われて買い物に行くと思う様な奴だし」

 

「………………」

 

弾の言葉に、鈴は何かを思い出した様な表情になった。

 

「取り敢えず、一夏と会って来た方がいいんじゃない?」

 

「……わかった」

 

そう言って鈴は部屋から出て行った。

 

そしてーーーーーーー

 

 

 

「バカ一夏!ぜっっったいに許さないわ!」

 

体中に怒りと闘志をみなぎらせ帰って来た。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

日は流れ、クラス対抗戦。

初戦のカードは一組対二組。そしてその二つのクラスの代表は。

 

「覚悟しなさいよ一夏!」

 

「ああもう!鈴!俺が勝ったら約束の意味、教えてもらうからな!」

 

現在進行形で喧嘩中の一夏と鈴だった。

 

〈試合、開始!〉

 

「うおおおおぉ!」

 

試合開始のコールと共に一夏は雪片弍型を構えて突っ込んだ。

 

「甘いわよ!」

 

「ぐぁっ?!」

 

その時、一夏は突然何かにぶつかった様に飛ばされた。

 

「いってぇ……それが龍咆って奴か」

 

「あら、良く知ってるわね。でも、知識だけでどうこうなる程私の甲龍(シェンロン)は甘く無いわよ!」

 

「ぐっ!がぁ?!」

 

そして、その戦いを観戦しているステラ達は鈴の強さに舌を巻いていた。

 

「防戦……いや、ただの一方的な攻撃だな」

 

「幾ら鈴さんが代表候補生と言えど、この強さは異常ですわ」

 

「そりゃそうだよ。鈴はたったの一年で代表候補生になったんだもん」

 

「一年?!」

 

ステラの言葉にセシリアは驚き、弾と数馬は戦いを見ながら苦い表情を浮かべた。

 

「一応甲龍の装備は見たが、双天牙月という青龍刀が二本に、肩部と腕部の衝撃砲の龍咆。装備は少ないが、逆にこの二つだけだからこそ戦略を組みやすい」

 

「さらに言えば鈴は格闘とか反射神経はえげつねぇからな。一夏がそれに対応出来るかどうか」

 

「いや、出来るさ」

 

「え?」

 

数馬達が意見を出し合っていると、今まで黙っていた箒が口を開いた。

 

「一夏はまだ小さい時だったが、千冬さんの動きを見切った時がある」

 

「なっ?!」

 

「千冬さんの攻撃を見切った?」

 

「あのブリュンヒルデの織斑先生の攻撃をですか?!」

 

「………そうか、だからあの時も」

 

「ステラさん?どうかしましたか?」

 

「一夏がこの前の戦いで瞬時加速(イグニッション・ブースト)を訓練もして無いのに扱えたのは、多分そういう事なんだよ」

 

「どういう事だ?」

 

「多分、一夏は瞬時加速の使い方を直感で理解して実行した。それは多分私達の高速化を見たからだと思う。そして、千冬さんの攻撃を見切ったのは千冬さんの動きを毎日見ていたから。つまり一夏は実感無いかもだけど、見たものをすぐに学習して使える」

 

「なる程、だからあのタイミングの一次以降(ファーストシフト)か。一夏の能力を引き出す為に白式が一夏に合わせたんだ」

 

「そういう事だと思う。だから、時間があれば一夏も勝てる」

 

そんな事を言われているとはつゆ知らず、一夏達の戦いは激しさを増した。

 

「はあぁ!」

 

「おぉらあ!」

 

ガキンッ!

 

鈴の全力で振られた双天牙月を、一夏は全力でスラスターを噴かせてそのスピードを利用して何とか拮抗している。

 

「甘いって言ってんの!」

 

「そうそう何度も食らうかよ!」

 

一夏はそう言いながら海老反りの様に体を逸らした。すると、後方の壁に何がぶつかった様な跡が付いた。

 

「どうして?!」

 

「なんでだろう、な!」

 

ブンッ!

 

「あぶな!」

 

鈴はギリギリの所で躱し、そのまま距離をとった。

 

「鈴、そろそろ終わりにしようぜ!」

 

ドンッ!

 

白式のスラスターが全開し、そこから押し出されるエネルギーが空気とぶつかった音がアリーナに響いた。そして一夏は一直線に鈴に向かっていった。

 

「芸がないわね!沈みなさい!」

 

一夏に向けて龍砲が放たれる。

 

「今だ!」

 

その瞬間、一夏の動きが変わり、瞬時加速した一夏が鈴へ向かう。

 

「な、速っ!」

 

「もらった!これで……!」

 

ドゴォォォォン!

 

一夏が鈴の懐に入り、決めようとした瞬間。アリーナのシールドを破り、黒い影が現れた。

 

「何?あれ…」

 

全身装甲(フルスキン)の、IS?」

 

「ていうか今、アリーナのシールドを?」

 

キャアアアア!

 

次にアリーナに響いたのは、IS学園の生徒達の悲鳴だった。

 

『マスター!皆さんの避難を!』

 

「分かってる!セシリア以外は他の生徒の避難誘導を!」

 

「私は何を!」

 

「あそこに一つだけ開いているピットがある。あそこから入って一夏のサポートお願い!それじゃあ皆持ち場に!」

 

「「「「了解!」」」」

 

「あ、箒!」

 

「なんだ?」

 

「これ使って」

 

ステラはそう言って拡張領域から武器を取り出した。

 

「これはロケットランチャー。多分扉にロックがかかってるからそれで破壊して」

 

「破壊していいのか?」

 

「いいよ。緊急事態だから」

 

「わかった、使わせてもらう」

 

箒は受け取ったロケットランチャーを持って避難誘導を始めた。

 

「よし、私も!」

 

そして、一夏達は突然現れたISとの戦い。ステラ達は避難誘導を。

 

それぞれに出来る事を始めた。

 


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