インフィニットストラトス ~空から降ってきた白銀と少女~   作:鉄血のブリュンヒルデ

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言い忘れてましたが、今回のクラス代表決定戦はトーナメント形式で行われます。
ちなみに決勝ではバトルロワイヤルです。


混乱と出会い Fourth Episode

「さてと、束さん?」

 

ステラと弾の試合が終わって残す所後一戦となり、ステラ達はピットで束による整備を受けていた。その最中にステラが束にニコニコしながら近寄り話しかけた。

 

「ん?何かな?」

 

「GNドライヴの事なんだけどさ。作った?」

 

「うん!作ったよ!」

 

ゴツッ!

 

「いったぁ?!えぇ?!どうしたのスーちゃん!」

 

「どうしたのじゃ無いですよ!」

 

どうやらステラは弾の機体に積んであったGNドライヴの事で束を問い詰めている様だ。

GNドライヴとは通称「太陽炉」と呼ばれる半永久機関である。

太陽炉は起動開始から常に「GN粒子」と呼ばれる特殊粒子を生成し、機体の稼動エネルギーのほかに、高濃度圧縮した粒子による強力なビーム兵器、飛行用の推進剤(GNバーニア)などさまざまな用途に利用される。搭載機の掌にはプラグが存在し、ビーム兵器の使用の際はここからエネルギーを供給する。また、装甲表面にGN粒子の防護膜を形成したり、高圧縮してバリアのように固定する「GNフィールド」を展開することで高い防御力を得ることができる。

 

という本来ならば存在すらしない粒子を生成してしまう、束の作ったISのコアと同等の力を秘めている物だ。

 

「男性操縦者ってだけでも狙われる危険性があるのに、GNドライヴみたいな物を付けたら狙われる危険性増してるよ!数馬のだって!」

 

「そこら辺にしろ、ステラ」

 

「数馬?でも」

 

「あれは俺が頼んだんだ」

 

「どうして?色々な国から狙われる事になるかもしれないんだよ?!」

 

「それでいい。それで俺達男でもISを扱えて尚且つ強さを示せば女尊男卑を打ち砕ける。それで受けるリスクが狙われるだけなら安いもんだ」

 

「そうかも、しれないけど……」

 

数馬の言葉の意味を理解しつつ納得が出来ないステラは、二つの感情がぶつかり合い口篭ってしまった。

 

「そういえば弾は?」

 

「あいつは試合の疲労と瓦礫から生徒を守った時のダメージが大きかったらしく、医務室に運ばれた」

 

「じゃあお見舞い行かないと」

 

「今は止めとけ」

 

「え?なんで?」

 

「あいつが助けた女子生徒が礼を言いに行っているからだ」

 

「あぁ、そういう」

 

そしてその頃の医務室。

 

「あの、先程は妹共々助けて頂きありがとうございました。私は三年生の生徒会会計を任されている『布仏 虚』です」

 

「え?あぁ、別にいいっすよ。俺がやりたくてやったんだし」

 

「しかし、何かお礼をしないと」

 

「なら敬語無しでお願いします」

 

「え?」

 

虚は何を言われるか一瞬身構えたが、弾の言葉に力が抜けた。

 

「だって先輩でしょ?」

 

「それだけでいいなら、敬語は直しますが…」

 

「はい、アウト。今敬語だった」

 

「あ、ごめんなさい。えっと、五反田君」

 

「弾でいいすっよ」

 

「えっ?え、でも…」

 

(男の人を下の名前で呼んだことなんて1回も無いっ!でもどうしよう。五反田君にお礼はこれだけでいいと言われたのに無下にする訳には…)

 

「あの、どうしました?」

 

「ひゃいっ?!」

 

心の中で悩む虚に突然弾が声をかけた事で変な返事をしてしまった。

 

「ハハッ、なんすかその声」

 

「うぅ…」

 

「でもそういう風に緩くていいっすよ。その方が接しやすいですし」

 

「そ、それなら弾君も敬語やめて下さい!」

 

「え?別にいいっすよ?それと今のは敬語ですよ」

 

「私はこの喋り方に慣れてしまってるんです!だから弾君も私を下の名前で呼んで敬語無しです!」

 

(あれ?私何言ってるの?!)

 

「わかったよ虚」

 

(しかも弾君全く動じてない?!)

 

バシュゥッ…

 

「五反田、先程の試合の事だが…………すまん邪魔したな」

 

独特の空気を圧縮した様な音が鳴りドアが開いて千冬が医務室に入ってきたが、顔を赤らめる虚を見て少しニヤッとして踵を返した。

 

「お、織斑先生、誤解です!」

 

「え?ちょっと待ってなんで帰るんすか千冬さん?」

 

「冗談だ。先程の試合についての連絡だが、事故が起きる直前のシールドエネルギーの残量を鑑みてステラが勝者となった。お前は疲労も怪我もあるし丁度良かったかもな」

 

「了解っす」

 

「そうだ布仏姉」

 

「は、はい。なんですか?」

 

「頑張れよ」ニヤッ

 

「なっ?!」

 

再びいたずらっ子の様な笑顔を浮かべて一言言葉を残して医務室を出た。

 

「えっと、虚?」

 

「わ、私もう帰りますから!」

 

「え?お、おう?」

 

虚は顔を真っ赤にしてそう言い医務室を飛び出した。

 

そして場面はピットに戻る。

 

「それにしても、フィリップの構造複雑だね」

 

「うん、色々と無理したからね。それと、今度の休日家に来なよ」

 

「え?」

 

「いやぁ、クーちゃんが会いたい会いたいってうるさくてさぁ。私が今日来るのにも着いてこようとしてたし」

 

「そうなんですか?なら今度帰ろうかな」

 

二人はそんな日常会話をしながらも、テキパキと作業をこなしていた。

 

『マスター、出力設定安定しました』

 

「了解。それじゃあ次はこれを拡張領域に入れて」

 

『はい』

 

バシュゥッ…

 

「束、終わったか?」

 

「後少しだよ」

 

「俺の専用機まだ来ねぇのか?」

 

「先程あと少しだと山田先生から電話があった」

 

ピットに入ってきたのは千冬と一夏だった。

 

「皆さーん!届きましたよ!織斑君の専用機!」

 

ピットの搬入口の様な所から大きな箱が搬入されて来た。そしてその影から真耶が出てきた。

 

「これが織斑君の専用機『白式』です!」

 

真耶の声と共に箱が音を立てながら開いた。そして、そこには『白』がいた。紛うことなき『白』が。まるで汚れを知らぬかのような佇まいに、その場にいる殆どが言葉を失った。

 

「これが、俺の…」

 

そう言いながら一夏はそのISに触れた。すると一夏と白式は光に包まれて次の瞬間、そこには白式を纏った一夏が立っていた。

 

「よしっ!それじゃあサクッと一次移行(ファーストシフト)まで済ませちゃおうか」

 

「いや、戦え」

 

束の言葉を一言で切り裂いたのは人類最強の女、千冬だった。

 

「お前の機体のスペックを考えればこの中でステラと一二を争う。そして、その機体は………いや、この先は自分で感じろ」

 

「無茶言うなよ千冬姉!」

 

「無茶では無い。どうせこのISの開発には束、お前が関わっているのだろう?」

 

「うん、倉持技研が制作放棄した新しいコンセプトの機体を私が組み上げて作ったんだよ。それに開発段階のギンギラちゃんのデータも組み込んだから、出力やスピードは凄いよ」

 

「つまりはそういう事だ。それにアリーナの使用時間は無限では無い」

 

「一夏、こうなったらやるしかないだろ」

 

「どうする?」

 

「………こうなりゃやるっきゃない!」

 

「それでは準備をしろ」

 

千冬に言われ、まずはギンギラに飛び乗ったステラがカタパルトに乗った。

 

『千冬さん、オルコットさんはどうしたのですか?』

 

「オルコットは機体の破損が予備のパーツで補える物では無かったので棄権だ」

 

「了解です。ステラ・ターナー!」

 

『ギンギラ!』

 

「『出ます!』」

 

そして次はフィリップを纏った数馬。

 

「御手洗 数馬、フィリップ。出る!」

 

そして最後は、白式を纏った一夏だ。

 

「千冬姉、束さん」

 

「ん?」

 

「何かな?」

 

「勝ってくる!」

 

「フッ、まぁ精々頑張れ」

 

「頑張ってねいっくん!」

 

そして一夏の表情は引き締まり、カタパルトに乗った。

 

「織斑 一夏!白式!行きます!」

 

その声と共にカタパルトはレールの上を滑り、一夏はアリーナへと飛び出した。

 

「さてと、それじゃあ」

 

「始めるか」

 

「あぁ!」

 

〈試合、開始!〉

 

ギンッ!

 

ブゥーーンッ!

 

バンバンバンッ!

 

ステラは先程とは違い、アリーナの地面に向かって加速し、そのまま地面のスレスレを飛び始めた。そしてこの操縦テクニックに観客達も魅入っていた。

 

「逃がさん!」

 

数馬の放った青い光弾は、途中から黄色くなり不規則に動きステラの後を追った。

 

「くっ」

 

(やっぱりこの能力が厄介だ!)

 

「はぁっ!」

 

ステラは後ろを振り向き、レーザーで光弾を爆発させた。

 

「ウォォォ!」

 

ブゥンッ!

 

「っ?!一夏か!」

 

ステラをひたすら狙う数馬に、横から縦一戦にブレードが振るわれた。

 

「くそっ!」

 

その後数馬はロッドを取り出して一夏とつば競り合いを始めた。

 

ガキンッ!

 

「流石に剣の腕はいいな、はぁっ!」

 

ガンッ!

 

「そっちもそんな武器よく扱える、なっ!」

 

ブンッ!

 

「サーマルキャノン!」

 

「「っ?!」」

 

二人のぶつかり合いに、突然横からステラがサーマルキャノンを撃ち込んできた。

 

「私も居るって、忘れてない?」

 

「あぁ、忘れてないさ」

 

「忘れてる余裕はねぇしな…」

 

三人は言葉を交わしながら宙を漂い、互いに間合いを計っていた。

 

「っ!そこっ!」

 

ギュンッ!

 

「はぁっ!」

 

バンバンバンッ!

 

「おぉっらぁ!」

 

ブゥン!

 

ステラはレーザーを撃ち、数馬はそれを撃ち落とそうと光弾を放ち、一夏はその流れ弾を切り裂いた。

 

「ちっ!先に一夏を落とす!」

 

数馬はそう言うと、ビームライフルにエネルギーを蓄積し始めた。

 

「これでも喰らえ!」

 

そして撃ち出された青い光弾は風の様な緑の粒子に包まれてその速度を上げた。

 

「くっそ!」

 

一夏は負けを覚悟して防御の体制に入った。だが―――

 

「ちーちゃん!始まったよ!」

 

「あぁ」

 

突然白式は光に包まれ、光が弾け飛ぶとそこには先程とは姿の違う白式がそこに居た。

 

「ステラ、数馬。俺は最高の姉を持ったよ」

 

「まさかっ」

 

「このタイミングで一次移行(ファーストシフト)?!」

 

そして一夏は一次移行(ファーストシフト)によって現れた『雪片弐型』を横に振って自分の周りに漂う砂埃を切り裂いた。

 

「俺はこの力で、あの日守れなかった物を、仲間を守る!」

 

そして一夏はその場から一瞬で数馬の目の前に移動した。

 

「なっ?!」

 

瞬時加速(イグニッション・ブースト)を、今の一瞬で?!ていうか零落白夜最大出力じゃん!)

 

「数馬!」

 

ギンッ!

 

「はぁぁぁ!」

 

雪片弐型を振り下ろす一夏と突然の事に驚く数馬の間に、シフトでスピードを極限まで高めたステラが割り込んだ。

 

「がぁ?!」

 

「なっ?!」

 

「っ?!ステラ!」

 

ステラの背中に斜めに傷が入り、そこから血が飛び出す。一夏と数馬は突然の事に驚き、会場全体も騒然とした。

 

〈試合中止!一夏、数馬!今すぐステラを連れてピットに戻れ!〉

 

千冬の声は焦りに染まり、完全に教師としての態度を忘れている。

 

「一夏!とりあえずステラを!」

 

「わ、わかってるよ!」

 

そして二人はピットへ戻ると、すぐにギンギラを整備台の上に乗せてステラを運び出してISを解除した。

 

「おい!大丈夫かステラ!」

 

そこに千冬が駆け寄り、抱き着いた。

 

「ちーちゃん離れて、応急処置だけでもしとかないと」

 

「あぁ、わかった………一夏、来い」

 

「おう…」

 

ドゴッ!

 

「ごあっ?!」

 

ピットの中に、重い音が鳴り響いた。その瞬間、時が止まったようだった。

 

「一夏、何故殴られたか分かるか」

 

「俺が、ステラを傷付けたから…」

 

「違うな。お前、あの時なんと言った?」

 

「え?」

 

千冬の言葉の意味が分からずに動揺する一夏に千冬は苛立ったように胸ぐらを掴んだ。

 

「お前はあの時『あの日守れなかった物を守る』と言ったな。結果はどうだ?お前はまた守られただけだろう!もう少しでお前は数馬を斬り殺す所だったんだぞ!もしコイツが死ねば、荘吉達に合わせる顔が…」

 

「千冬姉はいっつもそうだ…」

 

「なに?」

 

「千冬姉はいつも合わせる顔が合わせる顔がって、そんな事ばかりじゃないか!」

 

一夏は千冬の手を弾いて、今度は一夏が千冬に詰め寄った。

 

「それを言うなら千冬姉だって、あの日千冬姉がもう少し早ければステラの怪我も少なく済んだんだ!」

 

「なんだと!ならあと時あの場に居ながら女に闘わせてただ怯えていたのは何処の誰だ?お前だろ!」

 

「うっ!それは…」

 

「それにお前は「やめてよ二人とも!」っ?!束?」

 

「何してるの?スーちゃんがこんなになってるのに、口喧嘩してる場合なの?!それに、二人はただ言い争ってるだけだと思ってるだろうけどさ、その根本的な原因って、私だね」

 

「なっ?!違う!お前を責めたい訳では!」

 

「そうですよ束さん!」

 

「だって、そもそも私がスーちゃん達を私達の戦いに巻き込んだのが間違いだったんだ!そのせいでまだ子供のスーちゃんを何度も傷付けた!スーちゃんはまだ夢を見れたのに!スーちゃんはまだ自由でいられたのに!私がそれを壊した!」

 

束は涙を流しながら、自分の事を責め始めた。その姿は世界最高峰の天才では無く、過去を悔いるただの一人の人間だった。

 

「ねぇ、このパターン何回目だっけ?」

 

その声に、全員の視線は簡易ベッドに注がれた。

 

「皆自分の事を責め過ぎだよ」

 

「ステラ、大丈夫だったのか?」

 

「平気だよ!一夏の攻撃なんて全然効かないもんね」

 

ステラはニコッと笑い、そう言った。

しかし場は和まず、尚更に重くなった。

 

「スーちゃん、無理しないでよ!まだ起きれる程は」

 

「心配し過ぎですよ束さん!私そんなに弱くないですよ!」

 

「でも、俺があの時武器の特性をしっかり把握しておけば!」

 

「初めて使うんだから仕方ないでしょ?それに、あの時は夢中だったもんね」

 

「俺が反応できていれば、お前は俺を庇わずに済んだ」

 

「数馬だってまだ初心者なんだから仕方ないよ。これから経験を詰めば良いって」

 

「私が一次移行(ファーストシフト)を優先させなければ、一夏に特性を教えられた!」

 

「時間無かったんですから仕方ないですよ」

 

「「「「でも!」」」」

 

「だーかーらー!皆自分を攻め過ぎなの!今回は誰も悪くないの!いい?!」

 

ステラの言葉に、その場にいた全員が押し黙った。

 

「で、この場合クラス代表ってどうなるんですか?」

 

「本来勝者がクラス代表という話だったが、流石にもう試合は出来ない」

 

「じゃあ私が決めていいですか?」

 

「まぁ、あのまま行けばお前が勝っていた可能性が一番高いからな」

 

「やった!ありがとうございます!」

 

ステラの笑顔に、四人は釣られて笑顔になった。

 

そして、この波乱続きのクラス代表決定戦は終わった。

 

 


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