インフィニットストラトス ~空から降ってきた白銀と少女~   作:鉄血のブリュンヒルデ

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混乱と出会い Third Episode

「すまないな御手洗。本来全員の機体が届いてから試合を始める予定だったが、少し遅れていてな。対戦相手を繰り上げて始める事になった」

 

「大丈夫です。俺も代表候補生の実力を体感してみたかった」

 

そう言って数馬は黒に所々銀色の装甲やラインの入った装甲の付いた機体に体を預けた。

 

「御手洗 数馬、フィリップ。出る」

 

数馬が乗ったカタパルトはレールの上を滑り、数馬をピットの外に運んだ。そこには既にセシリアが宙に浮いていて、アリーナの観客席には多くの生徒が集まっていた。

 

「あら、逃げずに参られたのですね。その度胸だけは褒めて差し上げますわ」

 

「あぁ。お前相手に逃げるなんてそもそも選択肢にすらない」

 

「その減らず口を閉じさせてあげますわ!」

 

その時、アナウンスの声が響いた。

 

〈試合、開始!〉

 

「踊りなさい!私とブルー・ティアーズの奏でるワルツで!」

 

ギュンッ!

 

そう言って、数馬目掛けてスターライトMk-IIIを向けてビームを撃った。しかし数馬は冷静に避けて拡張領域から青いハンドガン型のビームライフルを取り出して構え言った。

 

「お前に一つ教えてやろう。撃っていいのは、撃たれる覚悟のある奴だけだぜ?レディー」

 

「ふん!キザったらしい!ティアーズ!」

 

セシリアが手を横に振ると、そこから四機のビットが飛び出した。

 

「やはりか、ならば来い。追い付けるものならばな」

 

そう言って数馬は地面に向かって急降下した。

 

「逃げてばかりなのですか?やはり男は」

 

ガキンッ!

 

「なんですの?!」

 

突如響いた金属音に、アリーナに集まった観客とセシリアはその方向を向いた。

 

「一機撃破。この程度か?イギリスの代表候補生」

 

「まさか、ISの初心者がブルー・ティアーズを一機落とした?ま、まぐれですわ!」

 

「まぐれかどうか、試してみるか?」

 

数馬はそう挑発しながらハンドガンと新たに取り出した銀色の鉄パイプの様な形状をしたロッドを構えた。

 

「くっ!男が、一機落とした程度で!」

 

ギュンッ!ギュンッ!

 

バンッ!バンッ!

 

ガキンッ!ガゴッ!

 

バコッ!ドガァーン!

 

「早速二機目だぜ。」

 

「どうなっていますの?!ブルー・ティアーズは整備したばかり、初心者に落とされる筈が!」

 

「つまり、それがお前の実力だ」

 

「なんですって?!」

 

「それと、お前の弱点を一つ教えてやろう」

 

「弱点?そんな物私には!」

 

「お前、ビットとそのビームライフルの併用が出来ないだろ」

 

「なっ?!」

 

核心を突かれ動揺するセシリアをよそに数馬は尚も続けた。

 

「そして、お前は近接格闘を苦手としている。つまり」

 

数馬の声とともにスラスターが起動し、次の瞬間数馬はセシリアの目の前にいた。

 

「ライフルを撃てない間合いまで近付けば、お前の体はガラ空きだ」

 

そう言いながら手に持ったロッドをセシリアに突きつけた。すると、先端から一回り細いロッドが射出された。

 

瞬時加速(イグニッション・ブースト)に、武器の変形機構。あなた、本当に初心者なんですの?!」

 

「あぁ、初心者さ。少しステラ(経験者)に戦い方を教わっただけだ」

 

(私が、男に負ける?…………いえ、この驕りこそが私の弱さ……?でも、それでも……っ)

 

「私はイギリスの代表候補生、セシリア・オルコット!絶対に、負ける訳にはいきませんわ!」

 

「いい眼だ。やっと楽しめそうだ」

 

数馬とセシリアは向き直り、互いの武器を構えた。

 

「行きますわ!」

 

「はぁっ!」

 

そこから、二人の戦いは激しさを増した。そして数分が経ち、二人の機体はもう限界に達しつつあった。

 

「セシリア・オルコット、一つ提案がある」

 

「はぁ、はぁ…なんですの?」

 

「次の一撃を最後にしよう」

 

「……分かりましたわ」

 

そう言って二人は浮上してある程度まで行くと、互いの最後の武器を構えた。

 

「良いのですか?互いに残っているのは射撃系の武器。そしてそちらはハンドガン型で私はスターライトMk-III。威力では明らかにこちらが勝っていますわ」

 

「構わないさ。弾からの受け売りだが、こういうのを必殺技と言うんだろ?」

 

そう言って数馬はハンドガンを投げ捨てて右足を前に腰を低く構えると、フィリップから紫色のオーラと緑色の粒子が溢れ出した。そしてオーラはフィリップの足を包み込み、粒子は風の様になり足元から包み込んだ。

 

「さぁ、行くぜ?」

 

「面白いですわ!ならばそれを正面から打ち砕き、あなたに勝ちますわ!スターライトMk-III、最大出力!」

 

セシリアも、残っていた二機のビットをスカート状にしてモードをスラスターに切り替えた。そしてスターライトMk-IIIとスラスターモードのビットにエネルギーを充填し始めた。

 

「「はぁぁぁ!」」

 

セシリアは強力なエネルギーを打ち出し、数馬はそれを蹴りで受け止めていた。

 

「くっ!うおぉぉぉ!」

 

「うぅっ、はぁぁぁ!」

 

二つのエネルギーは拮抗していたが、じわじわとブルー・ティアーズの放つ青いレーザーが裂けていった。

 

「これで、終わりだ!」

 

「え?きゃあああ!」

 

ドガーンッ!

 

〈試合終了!シールドエネルギーが両者ともにゼロの為、試合結果は引き分け!〉

 

ワアァァァァァァァ!

 

アリーナを歓声が包んだ。そして、その歓声の中にはピットの中にいるステラ達も含まれていた。

 

「凄い!凄いよ数馬!」

 

「まさか、瞬時加速(イグニッション・ブースト)をぶっつけ本番で物にするとはな」

 

「さっすがカズくんだね!」

 

「そうだ、な……?」

 

ん?

 

「あれ?束さん?」

 

「ん?あ、はーい!皆のアイドル束さんだよぉ!」

 

そして、束も含まれていた様だ。

 

ゴツッ!

 

「いったぁ?!ちーちゃんそれは酷くない?!」

 

「あのなぁ、いい加減自分の立場をわきまえろ!」

 

「仕方ないじゃん!ダンくんのISのチューニングが最終部分終わってないんだもん!」

 

「何?」

 

束の発言に、千冬は怪訝そうな表情をした。

 

「五反田の…いや、コイツらの機体はお前が作ったのか?」

 

「うん、そうだよ?」

 

さも当然のように言う束に、千冬は呆れた様な顔をした。

 

「あのオーバースペックはやはりお前の仕業か」

 

「うん♪でもブルー・ティアーズに引き分けたのはカズくんの実力だよ」

 

「はぁ……まぁいい。さっさと五反田の機体のチューニングを済ませろ」

 

「はいはーい!この束さんに任せたらチューニングなんてちゃっちゃと終わっちゃうから!」

 

カタカタカタカタ、カチッ

 

「はい、おーわり!これがダンくんの機体だよ!」

 

束の声とともに置いてあったISのコアが光りだし、光が収まるとそこには青と白の機体が立っていた。

 

「こ、これは!」

 

「ま、まさか!」

 

「そのまさか!この機体の名前はエクシア!ダンくん好きでしょ?」

 

「最っ高だぜ!」

 

そう言って弾はエクシアに飛び乗った。

 

「五反田 弾!エクシア!行くぜオラァ!」

 

弾がピットを飛び出すと、ステラがギンギラを展開してカタパルトに乗った。

 

「行くよギンギラ!」

 

『はい、マスター』

 

「ステラ・ターナー!」

 

『ギンギラ!』

 

「『出ます!』」

 

そしてステラもアリーナに飛び立った。

 

「弾、よろしくね」

 

「おう」

 

『マスター、今回はサポートはしません。そうなっては初心者の弾さんにハンデを背負わせる事になります』

 

「分かってるよ」

 

「心遣いありがとよ。それじゃあ…」

 

〈試合、開始!〉

 

「「行くぜ(よ)!」」

 

ギンッ!

 

「うおっ?!早っ!」

 

「悪いけど、手加減は無しだよ!」

 

「なら!」

 

そう言って弾は拡張領域から実体剣を取り出して刀身を折り畳んだ。

 

「喰らえっ!」

 

弾は折り畳んだ刀身の内側にあったビームライフルでステラを狙い撃った。

 

「うわぁ?!あっぶない……やっぱりエクシアって事は『GNソード』は必須だよね」

 

「当たり前だろ!」

 

GNソード。それはエクシアの右前腕に装備される斬撃兵装。ビームライフルとしての機能があり、刀身を折り畳むことで銃身を展開するライフルモードになる。

 

「ねぇ弾。攻撃しないからちょっと機体のデータ見てみて?」

 

「は?なんで……あぁそういう」

 

ステラに言われて弾はエクシアの機体データを閲覧しだした。

 

「ステラ。やっぱり『GNドライヴ』載ってたぞ」

 

「だよねぇ…………後で束さんに事情聴取しなくちゃね☆」

 

「うおぉ?!なんか背筋に寒気が?」

 

「さてと、それじゃあそろそろ再開しようか」

 

「おう。やるか」

 

「はぁっ!」

 

「よっと!ウラァ!」

 

ステラと弾は空中で縦横無尽に飛び回りながら互いに遠距離武器を撃ち合っていたが、弾がしびれを切らした様にGNソードをソードモードに戻して斬りかかってきた。

 

「しゃらあ!」

 

「うっ!」

 

近接武器を持たないステラにとってはこの状況はキツいのか、明らかな防戦一方となってしまった。

 

「仕方ない………シフト!スピード!」

 

ギンッ!

 

「なっ?!」

 

弾が驚愕の声をあげた。理由は、突然ステラが姿を消したからだ。

 

「消えた?いや、上か!」

 

ガキンッ!

 

「グッ!重い!」

 

アリーナで白熱した試合をしている時、千冬達は二人の映像を見ていた。

 

「束、今のは何だ?」

 

「今のは『シフト』だよ。私がギンギラちゃんに搭載した3つのシステムの内の1つで、パワーとスピードとディフェンスの3つの内1つか2つを選ぶことでギンギラちゃんの性能のバランスを変える能力だよ」

 

「その3つというのは単一使用能力(ワンオフ・アビリティー)か?」

 

「違うよ。ギンギラちゃんの単一使用能力はまだ発現してない。だから外付けで能力を付けたんだよ」

 

「その場合拡張領域をそこそこ使わないか?」

 

「確かに使うよ。でもギンギラちゃんには武器が無いからね」

 

「え?」

 

その発言にその場にいた殆どの人間が驚いた。

 

「束。つまり、ギンギラの武装は」

 

「腕部のビーム砲とカスタム・ウィングで投擲武器にもなる肩の上のリング。それと拳だけだよ」

 

「お前、ステラの負担を考えろ」

 

「仕方ないじゃん。スーちゃん自身もその方が慣れてるし」

 

「しかし、今度何かギンギラ専用の武器を作れ」

 

「りょーかい!すっごいの作っちゃお」

 

そしてその頃アリーナでは。

 

「ステラ、そろそろ決着付けようぜ」

 

「いいよ。それじゃあ本気で行くよ?」

 

〈TORANZ-AM SYSTEM LADY?〉

 

弾の視界に映る機体情報の中に、赤い文字でそう映し出された。そして弾は迷わずそれを認証した。

 

「しゃあ!行くぜ!トランザム!」

 

「シフト!パワー!スピード!」

 

ギンッ!

 

風を切り裂く音と共に赤い光と青い光の線が生まれ、アリーナの中心でぶつかった。

 

弾はGNソードを高速で振り、ステラは強化されたスピードとパワーでリングを巧みに使い攻撃をいなしていた。

 

「弾、やるね!」

 

「さんざん箒とお前に習ったから、な!」

 

ガキンッ!ブンッ!ギンッ!ドガーンッ!

 

「くっ!トランザムの方が速いか……なら!シフトリセット。シフト、スピード!」

 

「ぐあぁ?!」

 

ドガーンッ!

 

ステラはスピードに全ての性能を振ると、弾に抱き着いてそのままスピードに任せて弾を壁に叩きつけた。

 

「決める!サーマルキャノン!」

 

「喰らうかよ!」

 

弾はそう言って左腕に付いていたGNシールドを前に突き出した。サーマルキャノンはそこから裂けたが、弾は壁に叩きつけられている事もあり壁とサーマルキャノンに挟まれ機体がギシギシと悲鳴をあげていた。

 

「くっ!うおぉぉぉ!」

 

弾は叫びながら壁に沿って飛び出した。

 

「逃がさない!」

 

そう言ってステラはサーマルキャノンを撃ったまま横へずらして弾を追った。

 

ガゴーンッ!

 

その時、先程の戦いと今の戦いで蓄積されたダメージでアリーナの支柱が一本折れた。それは不運にも観客席の方に倒れた。

 

「マズイ!」

 

「くっ!間に合え!」

 

ステラは発射していたサーマルキャノンで支柱を撃ち抜いた。だがその破片が観客席に降り注いだが、観客全員が観客席のガラスのシールドの強度を信用している様で、逃げる者は少なかった。だが突然シールドにヒビが入り、そこにいた黄色いカチューシャを付けて眼鏡をかけた生徒がその事を大声で全員に伝えると、蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。

 

「逃げて下さい!ここは危険です!」

 

「きゃあ!」

 

「っ?!本音!」

 

先程の生徒が避難誘導をしていると、一組の布仏 本音がその場で転びそれを助けに行った。

 

バリーンッ!

 

その時、アリーナのシールドを1つの破片が貫いた。

 

「うおぉぉぉ!」

 

その時、その間に赤い光が割り込んだ。

 

「グッ!うあぁ!」

 

それはトランザムを発動したままの弾だった。弾は背を天に向けて二人に覆い被さるように守った。

 

「ダンダン!」

 

「本、音!逃げろ!そこの奴も!」

 

「すみません!ありがとうございます!」

 

二人が離れたのを確認すると弾はその場に膝をついた。

 

「弾!危ない!」

 

その時、弾の頭上に最後に残っていた瓦礫が降ってきた。

 

「あ、終わった」

 

「何が終わっただ」

 

弾が終わりだと感じて呆然とする中、黄色い光弾が不規則な軌道を描いて瓦礫を粉々に吹き飛ばした。

 

「おぉ、数馬」

 

「おぉ、じゃない。全く……とりあえず試合は中止だとよ」

 

「だろうな」

 

数馬は黙って弾に手を差し出して、弾も笑いながら何も言わずに手を取った。

 

 

その後、残っていたシールドエネルギーの量から勝者はステラに決定した。

 

 




今回はなんか展開変ですね……

虚さんの容姿ですが、うろ覚えなので違ったら教えてください。

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