インフィニットストラトス ~空から降ってきた白銀と少女~   作:鉄血のブリュンヒルデ

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混乱と出会い Second Episode

「やっと授業終わった………」

 

「疲れた、帰りたい………」

 

「すまないなステラ。入学の前にお前が俺達の所に戻って来て無かったらもっと苦労していたかもしれない」

 

「いいよ全然。友達なんだから当然だよ」

 

一日目の授業が終わり、放課後の教室で一夏達四人がいた。

 

「まさか一日目にテストがあるなんて…本当にステラがいなかったら0点だったかも…」

 

「帰れる……」

 

「それは本当に驚いたよ。しかも最初のテストで応用問題ってこの学園怖い…」

 

「とか言いながらお前は100点だったな。篠ノ之 束に教わったというのもあるだろうが、やはりお前はこのクラスで頭一つ抜けているな」

 

「えへへっ、そんな事無いよォ…///」

 

否定しながら、ステラの顔はニヤけていた。

 

「あ、良かった。まだ居たんですね」

 

「ん?山田先生どうかしたんですか?」

 

ステラ達が談笑していると、教室の扉を開き真耶が入って来た。

 

「皆さんの部屋が決定したので、伝えに来ました」

 

「やっと帰れ………る?」

 

「え?俺達って一時は自宅からって」

 

「え?ちょっと、待って。要するに今日は家に帰れ…?」

 

「ないです」

 

ウヅダドンドコドーン!(嘘だそんな事ー!)

 

「ちょ、今なんて言ったの?全然聞き取れなかった」

 

「これに関してはどうしようもないな」

 

ひたすら家に帰りたいと嘆いていた弾だった。

 

「今日は、今夜は………魔砲少女ぶら☆くらの放送日だというのに!」

 

「弾?それは録画でも」

 

「いい訳ねぇだろ!ステラなら分かるだろ?サンダース軍曹の目が見えなくなって、今日それがどうなるか気になるだろうが!」

 

「分かるよ!分かるけど!」

 

「そういえば、俺達の荷物って家に置いたまんまだ。取りに帰れないんですか?」

 

「まだ分からないのか?四人しかいないんだ。俺らの体を調べたい輩なんて馬鹿ほどいる。無闇矢鱈と出られんぞ?」

 

「御手洗の言う通りだ。お前達は世界に四人しかいない男性操縦者なんだぞ?」

 

「千冬さん、仕事おわったんですか?」

 

「織斑先生と呼べと……いや、放課後だから関係無いな。しかし校内では気を付けろよ、ステラ」

 

「ちふy…織斑先生だって私の事下の名前で呼んでますよ?」

 

「…………教師はいいんだ」

 

(((滅茶苦茶だ…)))

 

「それと五反田。この学園の寮にはテレビがある」

 

「…………え?」

 

「毎年買い替えるから画質はいい。それに、録画機能もある」

 

「つ、つまり!」

 

「見たければ寮でも見れる」

 

「よっしゃあああ!」

 

千冬の言葉に弾は歓喜のあまり叫んだ。

 

「いや、でも俺達荷物が」

 

「それなら問題ない。蓮に持ってきて貰った。入っていいぞ」

 

「久しぶり、でもないわね。元気にしてた?」

 

「なんで母さん?」

 

「蓮さんお久しぶりです!」

 

「ふふっ、ステラちゃんは元気みたいね」

 

「えへへ」

 

撫でられてニヤけているステラを見ていた蓮は思い出した様に自分の持っていたキャリーバッグを開いた。

 

「そうだ。荷物は全員の数日間の着替えとパジャマ、歯磨き粉と歯ブラシ。それとスマホと充電器を持ってきたわ。足りないものがあったら連絡して。送るか持ってくるかするから。あ、それと数馬君には帽子とコーヒーメーカー持ってきたわよ」

 

「ありがとうございます」

 

「それじゃあ私は帰るわね。千冬、少し話があるわ。来て」

 

「分かった。山田先生、後は頼んだぞ」

 

「はい!」

 

千冬はその場を真耶に任せ、蓮と共に教室を出た。

 

「それじゃあ寮の鍵を渡しますね」

 

そう言って真耶は番号の書かれた札の付いた鍵を3つ取り出して机に置いた。

 

「あれ?でも、寮って二人部屋ですよね?」

 

「って事は一人だけ一人部屋か?」

 

「そうなるな」

 

「へぇ?なるほど」

 

その瞬間三人の目がギラりと光った。

 

(一人部屋なら、落ち着いて勉強とか出来るな)

 

(ゆったりと休日を過ごすには丁度いい)

 

(ゲームしまくれるじゃねぇか!)

 

「あ、いえその…一人は女子と同室なんです………」

 

「「「……………え?」」」

 

真耶の言葉に三人は先程の表情を崩し、間の抜けた声を出した。

 

「すみません!寮が一棟補強工事中で部屋が足りなくなってしまって…」

 

「津上先生はどうするんですか?」

 

「津上先生は教師の寮の方になります。学生寮の方になるよう織斑先生も言っていたんですが、そこは決まりがありますので至りませんでした。本当にすみません…」

 

「いいですよ山田先生!じゃあ、決めようぜ。弾、数馬」

 

「しゃあ!やるか!」

 

「そうだな」

 

そう言って三人は拳を突き出した。

 

「あっあの、一体何を?」

 

「いや、こんな雰囲気ですけどただのジャンケンですよ」

 

「「「じゃーんけん…………」」」

 

(大概一人の敗北が条件の場合、弾と数馬は確実に合わせて出して俺の一人負けを狙って来る。そしてその時にパーをよく出す。つまり俺はチョキを出せば勝てる!)

 

(と、一夏は考えるだろうな。つまりは)

 

(グーを出せば勝ち確だな)

 

(って考えるだろうなアイツら。だから、パーを出して俺が勝つ!)

 

(よし、弾。行くぞ)

 

(オーケー)

 

(って感じかな?どうせあっちが勝つんでしょ)

 

この間僅か一秒。謎の緊張感に包まれた教室の中で、三人は同時に腕を振り下ろした。

 

「「「ぽんっ!」」」

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「くっそー、負けたぁ……」

 

一夏は廊下を歩きながらボヤいた。

 

「一夏はわかりやすいからな」

 

「マジそれな」

 

「あ、着いた」

 

「今何時だ?」

 

「五時ちょっと前だな」

 

「数馬、テレビ使っていいよな?」

 

「別に構わないぞ」

 

そして並んだ部屋のドアノブにそれぞれ手をかけた四人は顔を合わせた。

 

「部屋が隣だし困った事があれば来ていいよ」

 

「ありがとな」

 

「サンキュ」

 

「それじゃあまた明日」

 

「うん」

 

ガチャッ、バタン

 

 

 

ーステラの部屋

 

「えっとー、誰かいますか?」

 

しーーーん……

 

「まだ戻ってないのかな?」

 

ドアを閉めて、静かな部屋を見渡す。すると、そこに水色の髪の少女がテレビの前でリモコンを弄りながら画面を凝視していた。

 

「あのー?」

 

「え?あ、そのえっと…」

 

「あ、私はステラ・ターナー。この部屋をあなたと一緒に使わせてもらいます。一年間くらいよろしくね」

 

「え、あのその。えっと…」

 

「あー…一応確認だけど、日本の代表候補生の『更識 簪』さんで合ってるよね?」

 

「え?うん。でも何で?」

 

「IS学園に入学予定の代表候補生は全員覚えてるよ。それより、ちょっとテレビ借りてもいい?」

 

「いいけど……」

 

「あれ?もしかして見たいのあった?」

 

「録画したから大丈夫…」

 

(生で見たいけど、仕方ないよね)

 

「あ、その前に録画しなきゃ……あれ、もうしてる?」

 

簪からリモコンを受け取ったステラは、チャンネルを変える直前で思い出して番組表を開いた。すると、ステラが録画しようとしていた『魔砲少女ぶら☆くら』が既に録画されていた。

 

「えっと、もしかして更識さんもぶら☆くら好き?」

 

「『も』って、あなたも?」

 

「うん!だから今日は絶対見逃したくない!」

 

「そうだよね!サンダース軍曹の目が見えなくなって、もう残りの体力も少ないのに敵はまだ大勢いる…気になりすぎ、て………あっ///」

 

怒涛の勢いで語っていた簪だったが、無意識だったのか急に顔を赤らめて俯いた。

それに対してステラは目をキラキラさせて簪の手を取った。

 

「凄い!ここまで語れそうな人弾以外に初めてだよ!」

 

「え?引いたり、しないの?」

 

「する訳ないじゃん!私がアニメ好きじゃなくても、更識さんのこと見たら好きになってたかも。ってあぁぁぁ!もう時間だ!急いでつけなきゃ!」

 

「え?あぁ!ヤバい!今回は本当に見逃したくない!」

 

カチッ

 

『前回のぶら☆くら!』

 

『きゃあ!』

 

『サンダース軍曹!』

 

『目が、見えない?』

 

「「間に合ったァァ!」」

 

ドンッ!

 

「ウェ?!何?」

 

ドンドンドン!

 

「ステラ!助けてくれ!」

 

「え?一夏?」

 

「箒に殺される!」

 

「ごめんちょっと何言ってるか分からない」

 

どこかの芸人の様に言うステラと、本当に訳が分からず困惑する簪。そして廊下から聞こえる一夏の声。

 

ガチャッ

 

「助かった!」

 

とりあえず状況の確認の為にステラは、助けを求めた一夏と、廊下で修羅の様な雰囲気を醸し出す箒も招き入れた。

 

「すまない、ステラ。今すぐそこの一夏を寄越してくれ」

 

「いいけど、その前に状況確認ね。更識さん、迷惑かけてごめんね。ぶら☆くらは後で自分で見るからここで見てていいよ」

 

「う、うん」

 

「箒はこっち来て。一夏は弾と数馬呼んできて」

 

「お、おう」

 

「分かった」

 

冷静に対処するステラを見て一夏と簪は困惑し、箒は素直に受け入れた。

そして一夏と箒の部屋に、一夏、箒、ステラ、数馬が集まっていた。弾はどうしたか?部屋でぶら☆くら見てるよ。

 

「つまり?一夏が箒の風呂上がりを見てしまって、その後失礼な事言ったからその竹刀でぶった斬ろうと?」

 

「あぁ」

 

「俺が何言ったよ!」

 

「何言ったの?」

 

「いや、それはその……」

 

「はい、箒」

 

顔を赤らめて俯く箒に、ステラは耳を向けた。

 

「ブラジャー付けるようになったんだなって」ヒソヒソ

 

「なるほど、一夏?」

 

「なんだ?」

 

「セクハラ」

 

「んなっ?!そんな言い方無くねぇか?!」

 

「いーや、これはセクハラだね」

 

「なんと言ったんだ?」

 

「いや、これは女子の問題だから」

 

「なるほど、それは竹刀でぶった斬られても文句は言えんな」

 

「そもそも竹刀はぶった斬る物じゃねぇけどな?!」

 

「え?だって箒ベッド真っ二つにしたんでしょ?」

 

「鍛えているからな」エヘン

 

「そんなどっかの猛士みたいな…」

 

「それで、ステラがわざわざ俺と弾を呼んだ理由はなんだ?やはりセシリア・オルコットとの決闘か」

 

「うん、そうだよ」

 

ステラは頷きながら、ポケットからメモリーカードを取り出した。

 

「ちょっとパソコン借りていい?」

 

「おう」

 

ステラは部屋に備え付けてあるパソコンを起動させると、メモリーカードを挿してデータを表示した。

 

「これは、ISのデータか?」

 

「うん、代表候補生の戦闘訓練とかは基本的には公開されてるんだ。そして、希にISの適正度も開示されてる。だからそのデータを引っ張ってきて、私なりの対策を考えて来た」

 

「流石ステラ。仕事が早い」

 

「数馬には負けるよ。数馬も調べてるんでしょ?」

 

「まぁな」

 

そう言って数馬は手書きの書類をテーブルに置いた。

 

「一応俺の調査結果を伝えよう。奴の機体の名は『ブルー・ティアーズ』。イギリスで開発中の第3世代型ISだ。射撃を主体とした機体で、第3世代兵器「BT兵器」のデータをサンプリングするために開発された実験・試作機という意味合いが濃い。『スターライトMk-III(マークスリー)』は主力武装である巨大な特殊レーザーライフルで、実弾装備がない。『インターセプター』という近接武器もあるが、使用されたデータは少ないな。俺の調べられる範囲はここまでだった。後は頼む」

 

「うん、でも数馬が殆ど言っちゃったし私は補足説明と用語の説明くらいかな。まずBT兵器って言うのはブルー・ティアーズの略称で、機体の名前の由来にもなってるよ。

遠隔無線誘導型の武器で、相手の死角からの全方位オールレンジ攻撃が可能。装備によっては機体に接続することでスラスターとしても機能したりするよ。装備数は6基で、4基はレーザー、2基はミサイルを撃つことができるの。最大稼働時にはビームの軌道も操ることができる。私からはこの位かな」

 

「要するにそのブルー・ティアーズってのはビットみてぇなもんか?」

 

「あれ、弾来てたんだ」

 

「さっきからな」

 

ステラ達が見た方向に、腕を組んで開いたドアに寄りかかる弾がいた。そしてゆっくりドアを閉めてこちらに歩いてきて、一夏達と同じ様に適当な所に腰掛けた。

 

「まぁ、簡単に言うとそうだよ」

 

「しかし、作戦を練ると言っても専用機が届いていないのではやりようが無いのでは無いのか?」

 

箒の言葉にステラは首を横に振った。

 

「多分、一夏の機体には確実に1つだけ確定している武装がある」

 

「え?」

 

「一夏、覚えてる?第2回モンド・グロッソの時の事」

 

「……」

 

「あぁ、一夏そっちじゃなくて試合の方ね?」

 

「え?あぁ!そういう事ね」

 

「ステラ。恐らくとは思うが、以前千冬さんの使っていた『雪片』か?」

 

「うん、多分その後継だと思う」

 

その場にいる全員が考える中、ステラは既に何かを思い付いているようだった。

 

「実は一夏の訓練は決めてるの」

 

「本当か?!」

 

「箒とひたすら剣道して。以上」

 

「「は?」」

 

「え?」

 

「確かに武装が1つ確定しているなら丁度いいな」

 

「じゃあ俺らどうする?」

 

「一応、私が付くよ。射撃と近接武器の間合いの把握とか、少し武術を織り交ぜての近接格闘訓練しか出来ないけど」

 

「それで十分だ」

 

「あ、俺も剣道やりてぇんだけど?」

 

「じゃあ、箒。一日教えて貰える?」

 

「え?あ、あぁいいぞ」

 

よく分からないまま返事をした箒だったが、次の瞬間に気付いたのか少し焦り出した。

 

「ま、待て!私に誰かを教えるなんて」

 

「いやいや、大丈夫だよ。箒強いもん」

 

「ど、どういう事だ?」

 

「だって、そんなに引き締まってて綺麗な腕をしてる人、私千冬さんしか知らないもん」

 

「千冬さんと、同じ?」

 

「うん。だから箒は強い。もし今力が無くてもきっと強くなれる」

 

そう言うステラの目は、本気だった。それに後押しされた様に箒はキリッとした表情になった。

 

「あぁ、任された!」

 

「よーしっ!来週はオルコットさんに勝つぞぉー!」

 

「「「「「おーー!」」」」」

 

 

 

その頃隣の部屋では

 

「ターナーさん、遅いなぁ……」

 

簪が待ちくたびれていた。

 

 

 

 

 

 

 




本作の一夏は少しだけ強いです。

それと、出来れば答えてください。
Q.今までで内容に違和感等がありましたか?

なるべく最善は尽くしていますが、希に自分で感じるので答えて頂ければなんとかします!

こういうのは活動報告を作るべきですかね?

※この質問を活動報告に作りました。お答え頂けると嬉しいです。

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