インフィニットストラトス ~空から降ってきた白銀と少女~   作:鉄血のブリュンヒルデ

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入学!ギンギラ一番星
混乱と出会い First Episode


(これは、想像以上にキツいぞ…)

 

(あぁーー、帰ってアニメ見てぇ…)

 

(さて、どうしたものか)

 

一夏と弾、数馬は三人三様の思考で頭がいっぱいだった。なんか1人だけ違う気もするが。

 

3人が何故この様な事を考えているのか。それは今の彼らの状況を見れば分かるだろう。彼らは今。

 

(IS動かせるからって女子校に放り込むなよ………)

 

彼らは今IS学園に、つまり女子しかいない学校に放り込まれたのだ。そんな彼らの思考は知らずに、クラスの殆どの女子は3人に熱い視線を送っている。

そんな空気を打ち破る様に教室のドアが開き、緑色の髪の女性が入って来た。

 

(あ、突っ込んできた人だ)

 

一夏がそんな事を考えていると、女性は転けた。急にどうしたとか考えるなよ?転けたんだ。

 

「えっと、私はこのクラスの副担任を務める山田 真耶です。よろしくお願いします」

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

「ういーす、よろしくでーす…」

 

「よろしくお願いします。ほら、一夏も」

 

「え?あぁ、よろしくお願いします」

 

「よろしく頼む」

 

殆どの生徒にシカトされて涙目になっていた真耶だったが、ステラ達が反応してくれて嬉しそうにニコリと笑った。

 

「はい!それでは自己紹介をお願いします!」

 

先程の事で自信がついたのか、ハキハキと喋り自己紹介の開始を促した。

 

(それにしても、やっぱり視線が痛い………ん?あれ箒か?箒か!って、目を逸らしやがった…)

 

「……くん?…おり……くん?織斑 一夏君!」

 

「は、はい!」

 

「あ、あの、その…自己紹介であ、から始まって次は織斑君の番なんだよね?だからその、してくれるといいなぁって。ダメかな?」

 

「わ、分かりましたから!そんなに謝らないでください。えっと、うっ…」

 

一夏はオドオドしながら自分にお願いしてきた真耶を落ち着かせてから振り返った。すると全ての生徒から視線が注がれた。

 

(ふぅ……落ち着け。ステラと鈴もあの時はこんな感じだったんだな。よし、行くぞ!)

 

そして一夏は息を大きく吸い込み、口を開いた。

 

「織斑 一夏です!」

 

「……えっと、織斑君?他には?」

 

「以上です!」

 

「何が以上です、だ馬鹿者」

 

スパァンッ!

 

「げっ!関羽?!」

 

「誰が三国志の英雄か」

 

ゴツッ!

 

「いってぇな。何すんだよ千冬ね」

 

ゴゴゴゴゴッ

 

「織斑先生だ」

 

「はい、織斑先生…」

 

「あの、もしかして織斑君って織斑先生の」

 

千冬と一夏の会話を聞いていた生徒の内1人が手を挙げて質問すると、千冬はため息を吐きながら質問に答えた。

 

「あぁ、弟だ。だが弟だからと言って贔屓目で見たりはせず、公私は分別する。君達生徒にも甘くするつもりは毛頭ないから覚悟しておけ。私の言うことをよく聞き理解しろ、理解出来なければ出来るまで教えてやる。私の言葉にははいとYesで答えろ。反抗するつもりなら覚えておけ。やった後に許しを乞うな、時間の無駄だ」

 

((流石は千冬/さん(姉)……))

 

「「「「「き…」」」」」

 

「き?」

 

(((耳塞ごう)))

 

「「「「「キャアアアアア!」」」」」

 

「うわっ?!」

 

「千冬様!ずっとファンでした!」

 

「私千冬様に憧れてこの学校に来ました!九州から!」

 

(やっぱりこうなるよね…)

 

(もうマジで帰らせて…)

 

(面倒な事だ)

 

女子の歓声に反応出来ずに耳鳴りのする一夏と、女子達に呆れたりする3人。そして千冬もイラついたような表情にため息1つ零して、呆れたように口を開いた。

 

「良くもまぁ毎度毎度こんな馬鹿共が集まるものだ。それとも何か?わざと集中させてるのか?」

 

「あぁーん!もっと激しく罵って!♡」

 

「でも時には優しくしてぇ!♡」

 

「はぁ………静まれ!」

 

シーーーーン……

 

「すげぇな」

 

「さて、織斑。もう一度やれ」

 

「はい……うあっ」

 

先程より熱い視線でたじろぎながら、一夏は先程の様に息を大きく吸い込んだ。しかし先程とは違い普通の声で言った。

 

「織斑 一夏です。試験会場で迷ってたまたま入ったISの適正検査の会場に入ってIS動かしてしまいここにいます。趣味は基本家事とゲームです。よろしくお願いします!」

 

パチパチパチ

 

「まぁいいだろう。時間もない、男の自己紹介が終わったらLHRは終わりだ。他は各自でやれ。次は五反田だ」

 

「ういーす…………五反田 弾。趣味はゲームとアニメと特撮の鑑賞で、今とりあえず凄く帰りたいです…………」

 

ザワザワザワ

 

「静まれ!五反田、もっとマシな事言え」

 

「えぇ………えぇと、あ、一夏とは中学からの仲でよくゲームとかやってまーす。後嫌いな物は女尊男卑でーす」

 

ゴツッ

 

「いってぇ?!これ体罰じゃね?!」

 

「馬鹿か、お前は」

 

千冬は多少怒りのこもった顔で弾を出席簿で殴った。しかしそれは弾を心配しての事であると、弾も理解していた。しかし、それは弾も譲れないということを千冬も理解している。

 

「まぁいい、次は御手洗。まともなので頼むぞ」

 

「はい。御手洗 数馬。趣味は特に無いが、珈琲を煎れる事にこだわりがある。弾とは幼少から、一夏とは中学からの仲だ。三年間よろしく頼む」

 

パチパチパチ

 

「ようやくまともな自己紹介を聞けた。それと、もう一人紹介する『男』がいる。入れ」

 

「はい!」

 

千冬の呼び声に答えるように、教室の外から元気な声が聞こえた。そして教室の扉が開き、一人の男が入って来た。

 

「皆さん初めまして!俺は津上翔一って言います。担当は家庭科で、主にこのクラスの担任と副担任のサポートをします。ISの事はよく分からないけど、家庭科の事なら何でも聞いてね」

 

ザワザワザワ

 

「いいから静まれ!とりあえずこれで終わりだ。先程も言ったが、後は個人でやれ。これにてHRは終わりだ。1時間目の準備をしろ」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

返事をすると共に千冬達教師陣は教室を出て、生徒達は色んな所に集まり話を始めた。

 

トタトタトタ

 

スパーンッ!

 

「いってぇ?!何だよステラまで!」

 

「何だよじゃない!弾はもうちょっと発言に気をつけて!」

 

「何でだよ!」

 

「あのね?女尊男卑はISを使う人の中で殆どの人が持ってる思想なんだよ?それに、世界的にもその思想は広がっているのに、あんな事……」

 

「何だ、心配してくれてたのか。別に問題ねぇよ。ありがとな」

 

「もう……」

 

「一夏」

 

ステラ達が話していると、1人のポニーテールの凛とした少女が一夏に声をかけた。

 

「ん?箒だよな?久しぶりだな」

 

「あぁ、久しぶりだな。すまないが、少し一夏を借りていいか?」

 

「うん、いいよ」

 

「いいぜ」

 

「構わない、持ってけ」

 

「すまないな。一夏もいいか?」

 

「おう、いいぜ。じゃあまた後でな」

 

「あ、ちょっと待って?ねぇ篠ノ之さん」

 

「箒でいいぞ」

 

「うん、分かったよ。箒はちょっとこっちに来て」

 

そう言うとステラは、箒の腕を掴んで少し離れた所でこっそりと箒に耳打ちをした。

 

「箒ってさ、一夏の事好き?」

 

「んなっ?!///」

 

「あー、箒もかー……」

 

「え、「も」ってどういう事だ?ま、まさかお前も?!」

 

「ん?あー、違う違う。でも気を付けてね?私は立場上応援できないけど、頑張ってね?」

 

「フフッ、応援してるじゃないか」

 

「え?あはは、ホントだね。あ、引き止めてごめんね?はい!一夏と行ってらっしゃい」

 

「あぁ、行ってくる」

 

(束さんの事はもう少し仲良くなってからがいいかな)

 

箒を見送りながらそんな事を考えて弾と数馬の元に戻って今後の事などを話していると、1人の少女が声をかけてきた。

 

「ちょっとよろしくって?」

 

「よろしく無い。頼むから帰ってくれ」

 

「まぁ!何なのですかその態度は?このセシリア・オルコットが話しかけて差し上げていると言うのに!」

 

「何者だ?」

 

セシリアの言葉に数馬は訝しそうに言った。

 

「オルコットさんはイギリスの国家代表候補生だよ。専用機も持ってる」

 

「あら、そちらの方はご存知なのですね」

 

「なぁステラ、国家代表候補生って何だ?」

 

「まぁ、そんな事も知りませんの?これだから男は」

 

(うわっ、俺コイツ嫌いだわ)

 

「オルコットさん、男だからってどういう事?」

 

「決まってますわ。男なんて皆女にこうべを垂れるしか出来ない無能な生き物って事ですわ」

 

ステラの言葉にセシリアは当然の様に答えた。その答えに怒りを示したのは男である弾と数馬ではなく、ステラだった。

しかしその言葉に反論しようとした所に一夏と箒が帰って来て、その後ろから千冬達が戻って来た。

 

「全員席に付け。授業を始める」

 

「くっ!また来ますわ!」

 

「二度と来んなよ………」

 

「同感だ」

 

そんなこんなで授業が始まった。授業が始まると先程騒いでいた女子達も静かに授業を受けていて、真耶はノートをとり、翔一は教材等の整理をしていた。そして授業時間が終わりに差し掛かった頃、千冬が思い出した様に振り返って口を開いた。

 

「そういえば、クラス代表を決めなければな」

 

「はい、織斑先生。クラス代表って何ですか?」

 

「月に一度行われる会議に参加したり、クラス会議等で司会をしたり学年別トーナメントに出場したり、まぁ学級委員の様な物だ。自薦他薦構わん、誰かいないか?」

 

(((嫌な予感…)))

 

「はい!織斑君がいいと思います!」

 

「私は五反田君!」

 

「いやいや、ここはクールな御手洗君でしょ」

 

(当たった……)

 

(やっぱりね)

 

「一周回って津上先生とかは?」

 

「あー、それもいいねぇ」

 

「え?俺も?」

 

「他にいないか?いなければこれで決まりだが」

 

「いや、俺達やるなんて一言も「納得行きませんわ!」え?」

 

一夏が反論しようとすると、セシリアが立ち上がって叫んだ。

 

「そのような選出は認められません!大体、男がクラス代表だなんて良い恥さらしですわ!このセシリア・オルコットにそのような屈辱を1年間味わえとおっしゃるのですか!?実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然!それを、物珍しいからと言う理由で極東の猿にされては困ります!わたくしはこの様な島国でISの技術を学ぶために来たのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!」

 

「良いですか!?クラス代表は実力トップがなるべき、そしてそれはわたくしですわ!!大体!文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛で「え?マジで?!変わってくれんの?!サンキュー!」あ、あなたは何を言ってますの?」

 

「いやだって、やりたくねぇし。俺YD病だから」

 

「YD?何ですのそれは」

 

「は?やりたい事しか出来ない病だよ。知らねぇの?」

 

(いや、知らないだろ…)

 

一夏は心の中で呟いた。

 

「あ、あなたやる気はありますの?!」

 

「いや、だから無いって」

 

「な、ならば何故この学園に!」

 

「政府から強制的に」

 

「なっ?!ふ、ふんっ、所詮は島国の政府ですわね。やはりアニメや漫画『程度』の物しか取り柄のない国の考える事は低レベルですわね」

 

「お、お前いい加減に!」

 

いい加減頭にきた一夏が言葉を止めに入ろうとすると、弾がそれを制止した。そしてその顔は珍しく怒りに染まっていた。

 

「おいおい。今、アニメや漫画『程度』って聞こえたのは俺の幻聴か?」

 

「幻聴でも何でもないですわ。そんな『程度の低い物』しか誇る物のない国など「いい加減にしとけよチョココロネ」チョ、チョココロネですって?!」

 

「お前何も分かってねぇな。アニメ作るのにどんだけの人材と時間が必要か分かってんのか?それに、アニメは漫画が原作ってパターンが多い。そしてその漫画でも人気を勝ち取る…いや、そもそも出版社に認められるのは極僅かなんだぞ?そして例え認められなくとも漫画を書き続け、それに魂すら捧げた漫画家の信念をお前はたった今馬鹿にしたんだぞ?その意味わかってんのか?テメェみてぇな他人を蔑むしか出来ねぇ様な奴が、漫画やアニメ語ってんじゃねぇよ」

 

「何なんですの!ISも使えない『男』の癖に生意気な!」

 

パタンッ

 

「残念ながらここではその言葉は通用しないぞ。セシリア・オルコット」

 

次に口を開いたのは、読んでいた小説を閉じて机に置きながら立ち上がった数馬だった。

 

「ど、どういう事ですの?」

 

「考えてみろ、俺達がここにいる理由を」

 

「っ?!」

 

「俺達はISが使える。つまり、ここでは『男はISが使えない』という常識は当てはまらないんだよ」

 

「それにね?オルコットさん。あなたの発言は外交問題になり兼ねないんだよ?」

 

「え?」

 

多数の人間からそれぞれの指摘を受け混乱するセシリアにステラが優しい口調で、しかしどこか怒りを感じる声で告げた。

 

「あなたはさっきから何度日本を馬鹿にした?この事をイギリスの偉い人に伝わったら、どうなるかな?良くて代表候補生の権限を剥奪、そして専用機の強制返還。悪くてあなたの家の財産全没収だよ」

 

「わ、私はそんなつもりは!」

 

「それに、この学園の七割以上が日本人なんだよ?そんな発言して、大丈夫?」

 

「あ、あぁ…」

 

それを見兼ねて一夏が立ち上がった。

 

「お、おい皆!その辺でいいだろ?確かに腹は立ったけど、流石に反省してんだろ?」

 

一夏の言葉を聞き振り返ると、そこには俯いて肩を震わせるセシリアの姿をあった。

 

「……………ですわ……」

 

「え?」

 

「決闘ですわ!ステラ・ターナー貴方もです!」

 

「え?!私も?!」

 

「いい加減静まれ!」

 

シュッ!パァンッ!

 

強烈な音がして全員が教室の後ろの壁を見ると、白いチョークが突き刺さり一部砕けて白い粉が舞っていた。

 

「決闘は一週間後にアリーナで行う。いいな?」

 

「「「「「分かりました!」」」」」

 

千冬の凄味の効いた声で、殆どの生徒は怯えて返事をした。

そして一週間後の決闘に向けて、それぞれの思惑が交差する。

 

「あの野郎、ぜってぇ潰す」

 

「仕方がないか」

 

「何で私まで…」

 

「え?これって俺含まれてんの?」

 

「結局俺ってどうなんの?」

 

会話に置いて行かれた二人を除けて。

 

 

 




非常に疲れた…………

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