インフィニットストラトス ~空から降ってきた白銀と少女~   作:鉄血のブリュンヒルデ

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今回語り手は千冬さんです。


始まりの始まり Thirteen Episode

奴は、デストロは転入生として私達の学校に現れ、私達の物理研究部に入部してきたんだ。

物理研究部は束が自らの悲願である『宇宙に行く』為の研究に使う、いわば仮の研究所の様なものだった。当時から私と束は周りから化け物扱いを受け、溢れていた者同士で不思議と惹かれあった。そこに、やりたい事があるからと純が入り、吊られるように蓮、荘吉、恵美が入部した。そして、いつの間にか私達の憩いの場となっていたんだ。

最初は奴の入部に全員が難色を示したが、束が態度を変えて奴の入部を推して来る様になった。そこで私達は奴の入部を許してしまった。

 

「それじゃあ、よろしくね!」

 

入部したての時の奴は明るく振る舞い、人懐っこい様な人格をしていた。

束が惹かれた理由だが「自分を理解してくれたから」との事だった。普通こんな事で心を許す程人の心は単純では無い。だが、弟と二人だけの家庭で弟を守る為に周囲の大人を退ける様に成長して人格を育てた私と違い、束はこの頃まだその心は純粋、悪く言えば単純その物だった。

束をはじめとして奴が友好関係を広げて信頼を得るのと並行し、私達はデストロに対する疑念は増していった。

 

そんなある日の事だった。

 

「デストロ、お前の目的って何なんだ?」

 

痺れを切らしたのか、全ての部員が揃っていた部屋で純がそう言った。そう、全ての部員がだ。研究の一部のデータを閲覧させる程デストロを信頼している束がいる前でその言葉を口にした。

 

「何のことだい?純」

 

「そうだよじゅんくん。目的って何のこと?」

 

「束には悪いが、俺達はコイツの事を全く信頼していないし、お前がただ束を理解している訳じゃないって事もだいたい分かっている」

 

純に続く様に荘吉も口を開いた。その言葉を聞いて束は驚愕し、デストロはその明るい笑いを怪しい笑いに変えた。

 

「やっぱりか。まぁ、初めから君達の…いや、誰の信頼なんて欲していないよ。僕が欲しかったのは束の宇宙に行く為に作り出している力だ。まぁ、動かせるのが女性だけで少数の特異体質の男性だけがISを動かせるってのは計算外だったけどね」

 

「嘘だったの?デストロは私の事を理解してくれてるんだよね?私の、友達なんだよね?!」

 

「嘘じゃないさ。僕はちゃんと理解してるよ」

 

「そうだよね。デストロは「君が作っているそれに兵器としての可能性が充分含まれているって事をね」…え?兵器?」

 

「やめろ!それ以上言うな!」

 

私は奴を止めようと叫びながら黙らせる為にと走り出そうとした。しかし、普段のISの試験運用のダメージが溜まっていたのか、私はその場で膝を着いてしまった。

 

「何故千冬程の人間が試験運用の後に体をよく痛めるのか。何故ISの出力が一定以上下げると稼働自体が出来なくなるのか、何故稼働に新たなエネルギーを使用する必要があったのか!

その答えはただ一つ………君の作ったISは、核兵器なんかより世界を滅ぼす力を大いに秘めている!究極の兵器だからさ!」

 

「ISが、兵器?嘘だ!デストロは嘘を言ってるんだ!そうだよね?……っ?!」

 

その時、束の脳裏にフラッシュバックの様に記憶の波が流れ込んで来た。

それはISの試験機を操縦し、その力の大きさに耐えられずに体を痛めた私の姿だった。その当時はただ出力の設定を間違えただけだと束に言い聞かせていた。束もだったら負担を減らそう、そう言って出力の調整に挑んでいた。

そう、私達は気付いていたんだ。ISの兵器としての側面に。だからこそ、それをただ純粋に宇宙を羽ばたく為の翼として見ている束に言えなかった。それを知った束が絶望するのが怖かったんだ。

それなのに、コイツは!

 

「束、君には感謝しているよ。君のおかげで『ベリアル』の力はより一層高まった」

 

そう言ってデストロは着ていた制服を脱ぎ捨てた。その下にはISスーツというISを動かす上でISへの脳の電気信号をダイレクトに伝えれる様にと束とデストロが開発した服を着込んでいた。そして奴はIS試験開発機2号のゼニスに乗り込んだ。ゼニスは、奴が物理研究部に入った時にどこからか持って来たボロボロのパワードスーツの様な物を改良した物だ。

 

「ベリアルって……ダメだよ!あれは危険だから解体しようって言ってたじゃん!」

 

ベリアル、有名な神話に登場する悪魔と同じ名前を持つそれは、束とデストロが開発したエネルギー発生の元型だと聞いていたが、何やら危険性があるらしい。

 

「何を言っているんだ?あれさえあれば世界のエネルギー支配等容易い!ベリアルの有効な活用法は世界の支配、そして!……いや、これは君達に言っても仕方ないね。何故なら……

 

 

 

 

 

 

今から君達には死んでもらうからね」

 

 

 

 

…………………………

 

 

 

 

 

 

『そうですか、そんな事が…………』

 

眼の前に膝を着いて座り込む私より一回りも二回りも大きい白銀のIS、ギンギラは私の話を聞いて何かを感じたのか、一言言うと黙り込んでしまった。そして、それは束も同様だった。

 

「それから私達はデストロを追っている。そしてその過程で純と荘吉は…………………

純と荘吉の死は、二人を愛していた者の心に深い傷を負わせた。

1人は常に心に復讐の火を灯し、1人は心を病み愛した者の亡骸と共に失踪した」

 

私はギンギラに説明しながら胸を痛めていた。あの時私が奴を止めていれば、ISが兵器として見られる事は無かったかもしれない。

 

ギンギラと束、そして私は重苦しい空気のまま口を閉ざして会話はそこで止まり、数分後に解散しようと提案したギンギラの言葉で私達もその場から立ち去り、それぞれ束が用意した場所に向かった。

 

その時、私には全く予測すらしていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まさか一夏達がISを動かしてしまうだなんて。

 

 

 

 




今回は短めです。
千冬と束の過去を少しだけ書いてみました。
多少今後のネタバレ等含んでいるかも知れませんでしたが、まぁ無視してください笑

変な感じになりましたけどこれからもお付き合い下さい
m(_ _)m

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