インフィニットストラトス ~空から降ってきた白銀と少女~   作:鉄血のブリュンヒルデ

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あけましておめでとうございます!
本作「インフィニット・ストラトス 〜空から降ってきた白銀と少女〜」をここまで読んで下さり大変ありがとうございます!(終わりみたいですがまだまだ続きます笑)

個人的趣味ながらも、お気に入りが11人も居てくれる事に心から感謝申し上げます。

それではどうぞ、出来ればお楽しみください!


始まりの始まり Twelfth Episode

『第2回モンド・グロッソ準決勝!勝者は、第1回の優勝者であり未だに公式戦無敗記録を更新し続ける絶対的強者!日本代表!織斑 千冬選手!

今では彼女の祖国が運営するIS学園で教師を務めているとの事です!

そして、1時間程前に行われた同じく準決勝の勝者は、アリーシャ・ジョセスターフ選手!イタリアの国家代表で、織斑 千冬選手とはライバルの間柄であるとお互いに認め合い、今でもたまに模擬戦をするとの事です!

 

さぁ、遂に一時間後となった決勝戦!これは絶対に目が離せないぞぉ!

 

以上!第2回モンド・グロッソ会場のドイツからの中継でした!』

 

「いやぁ、凄かったね!」

 

「あぁ、流石千冬姉だ!」

 

大きなガラスの前でステラと一夏は、館内アナウンスで流れていた実況を聴きながら千冬の勝利に大喜びしていた。

 

ここはドイツ。第2回モンド・グロッソが行われる国だ。

何故ステラ達がここにいるのか。それは、千冬の晴れ姿を一目見たいというステラの言葉がきっかけだった。

 

それは遡ること2週間前。

 

 

 

…………………………

 

「おい一夏、ステラ。後1週間は一緒にいられるはずだったんだが、急遽現地での調整とかで出発が早まった。すまないが、家の事は頼んだぞ」

 

「了解」

 

リビングで、自分のスマホに届いたメールを確認した千冬がそう言うと、一夏がキッチンから顔を出してそう言った。

 

「モンド・グロッソかぁ。1回生で見てみたいなぁ、千冬さんの戦う姿」

 

「生も何も、一度戦っただろう」

 

「違いますよ。あの時は私は戦いの中にいて、千冬さんの動き方や戦い方をじっくり見る暇が無かったし、それにあの時は千冬さんトリガーだったじゃないですか」

 

「そうか……なら、来るか?」

 

「「え?」」

 

千冬の突然の言葉に一夏とステラは間の抜けた声を出したが、すぐにその言葉を理解したのか、ステラの顔が明るくなって行った。

 

「いいんですか?!」

 

「え?でも家の事はどうするんだよ」

 

「まぁ、2週間程度なら大丈夫だろ」

 

「ダメだろ、埃とか溜まるし。なぁステラ」

 

「埃なんて掃除すればいいじゃない!そんなことより、私はモンド・グロッソ見に行きたい!」

 

普段なら今ので渋るのだが、今のステラには全く効果が無かった。

それを見て一夏は1回だけため息をつき、少し苦笑しながらステラを見て口を開いた。

 

「分かった分かった、行くよ」

 

「ホントに?!やったぁ!」

 

『ですがマスター、1週間後は束さんとのご食事の予定では?』

 

「…………あっ」

 

「まぁ、あいつには私から言って日付をずらして貰えばいい」

 

「すみません、ありがとうございます千冬さん」

 

「いいさ、この位」

 

 

…………………………

 

そして現在に至る。

 

「それにしても、千冬さんまだ1回も零落白夜使ってないね」

 

『これを言うと他の選手に失礼ですが、彼女らは全員それを使わせるに至っていないのでしょう』

 

「それって千冬姉の必殺技みたいなもんだろ?それ無しの剣1本で決勝戦進出ってすげぇな」

 

コンコン

 

「誰だろ」

 

ステラ達が千冬の戦いっぷりについて話していると、突然ドアからノックをする音が聞こえた。

 

「俺が出るよ」

 

「うん、分かった」

 

ガチャ

 

「はい。どなたで、うっ?!」

 

「っ?!一夏!」

 

ドアを開け、訪ねてきたのが誰かを確認しに行った一夏の呻き声の様な物を聞き、ステラはすかさず立ち上がった。

 

「はいはーい。そこ、動かない」

 

「……誰?ていうか、一夏を離して!」

 

部屋に入って来たマスクを着けた何者かの腕の中に捕まっていた一夏を見て、咄嗟にステラはギンギラを展開しようとした。

 

「あれ?いいの?あなたがISを展開する一瞬の間でも、この子頭をぶち抜けるわよ?嫌なら、それをテーブルに置いて腕を後ろに回しなさい」

 

「卑怯もの……っ!」

 

ステラはそう言いながらも、ギンギラの待機状態であるゴーグルをテーブルに置き、腕を後ろに回した。

 

「それでいいのよ、それじゃあ

 

 

 

 

 

おやすみなさい」

 

ステラの意識は、そこで途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………

 

「んんっ………………ここは?」

 

自分の見知らぬ場所で目覚めた事に違和感を感じつつ辺りを見回すと、そこには縛られた一夏と複数のIS、そして先程ステラ達を拐ったマスクを着けた女が立っていた。

 

「あら、目覚めた?」

 

「ステラ、大丈夫か!」

 

「うっ…大方、どっかの廃工場って所かな」

 

「あら、冷静な判断ね」

 

「目的は何?」

 

「さぁね?何かしら」

 

「ふざけて無いで教えて!何の為にこんな「ちょっと黙りなさい」がぁっ!?」

 

自分達を拐った理由を聞こうとしたステラの腹を、女は思いっきり蹴り上げた。

 

「ステラ?!おい!ステラに何しやがる!」

 

「何って、うるさいハエを叩いただけよ?」

 

「ふざけんな!」

 

「待って一夏!これ以上突っかかると、一夏もやられるよ?」

 

「へぇ、この状況で他人の心配をしてる余裕があるのね」

 

「え?…がっ?!うっ?!ごはっ?!」

 

「おい、おいやめろよ、やめろぉ!」

 

「うっ!こんのぉ!」

 

「きゃあ?!」

 

先程から一方的にやられていたステラだったが、突然ステラの腕を縛っていたロープが千切れて、その勢いのままマスクの女を殴り飛ばした。

 

「あーら、痛いじゃない!」

 

バンッ

 

「え?」

 

突然響いた乾いた音にステラと一夏は呆然としたが、女の持つ銃の銃口が向く方を向いたステラの顔が徐々に驚愕と痛みに歪んだ。

 

「あ、あぁ…い、いたいよぉ、いたい…い、たいっ!」

 

そう言いながらうずくまるステラの右腕は血に染まり、傷口からは血が重力に従い地面に向かって腕を滴り落ちていた。

 

「痛いっ、痛いよっ助け、て……一夏ぁっ」

 

「ふふふっ、小賢しい真似するじゃない」

 

地面に落ちていた小さな折り畳みナイフの様な物を手に取った。

 

バンッ、バンッ、バンッ、バンッ

 

「うぁっ!ぐっ!はぁっ、あぁ!」

 

「おい、何やってんだよ…何やってんだよぉ!」

 

バンッ

 

「父、さん……母さ、ん……………助け、て」

 

バンッ

 

「やめろ、やめてくれぇ!」

 

バンッ

 

「うっ!うぅ…………………」

 

発砲の度にステラの体が揺れ、その度にステラの顔からは血の気が引き、その目はどんどん焦点が合わなくなっていた。

 

ガシャーーーーンッ!

 

ステラの命が一歩一歩死に向かう中で、突然廃工場の壁の一部が吹き飛んだ。

 

「一夏!ステラ!無事か!」

 

それは千冬だった。そしてその後には複数のISが並んでいた。

 

「ドイツ軍から連絡があって、お前達が誘拐され、たと………………ステラ?」

 

千冬の目に飛び込んだのは、四肢をだらんと下げて柱にもたれ掛かる、血塗れのステラの姿だった。

 

「嘘、だろ?ステラ!おいステラ!」

 

千冬はそう叫びながら近くの敵を切り倒し進み、ステラの元に一瞬で飛び込んだ。

 

「ステラ!目を開けろステラ!」

 

「ち、ふゆ……さん?」

 

「そうだ、私だ!待っていろ、今すぐコイツらを殺して「だ、め……っ!」何故だ!」

 

「千冬、さんは…人、殺しになっちゃ、ダメ!うっ…ゴホッ、ゴホッ!一夏を連れて、にげ、て…」

 

「ふざけるな!お前を置いて逃げれるわけないだろ!」

 

「死ねぇ!」

 

「千冬姉危ない!」

 

「っ!ぐぁっ?!」

 

後ろから斬りかかって来た誘拐犯の内のIS乗りの攻撃に反応しきれず、千冬は背中に切り傷が入った。

 

(シールドエネルギーが機能しない、だと?!)

 

「ぐっ!はぁ!」

 

「きゃあ?!」

 

その時、千冬は自分のミスに舌打ちをした。ドイツ軍のIS部隊は既に半壊滅状態にあり、ドイツ軍が倒せなかった誘拐犯のISに囲まれていた。

 

「そうか、そうだな。普通に考えればそうだ。幾ら軍用機と言えど、搭乗者の事を考えてリミッターが付いている。しかし誘拐をする為にISまで持ち出す様な輩が、リミッターなど付けるわけが無いな」

 

そう言いながら、自身唯一の武器の雪片を構えた。

だがその時、千冬や一夏の間をすり抜けて黄色く光る兎達が誘拐犯達に飛びつき、そして爆発した。

 

「ちーちゃん!今の内に!」

 

千冬は廃工場に響いた声に従い、ステラと一夏を抱えて天井に空いた穴から飛び出した。

 

「束、何故ここに」

 

「スーちゃんのピンチを見逃すわけないじゃん!とにかく今は逃げよ!」

 

「まずは病院だ!ステラが撃たれている!」

 

「いや、私のラボに行くよ。その方が技術も設備も整ってるし、緊急でもオペできる」

 

「分かった、急ぐぞ!ステラの血が足りているうちに!」

 

「千冬姉!ステラ、大丈夫だよな?!」

 

「大丈夫だ、間に合わせる。絶対に!」

 

千冬と束はその言葉を区切りに会話を止め、担いでいる二人に負担がかからない様に、しかしそれでも最高速度に近いスピードで束のラボに向かった。

 

 

 

…………………………

 

コトッコトッコトッ、コトッコトッコトッ、コトッコトッコトッ

 

「おい、落ち着けよ千冬姉」

 

「落ち着いていられるか。私が駆けつけるのが遅かったせいでステラは………クソっ!」

 

「今そんな事言っても仕方ないだろ」

 

「そうだよちーちゃん。それにあまり動くと背中の傷口が開くよ?」

 

ラボの客室の様な場所に束が入って来ると、千冬は束の肩を掴んだ。

 

「ステラは無事なのか?!」

 

「大丈夫、そろそろ意識も回復すると思うよ」

 

「そうか、よかった……」

 

「ねぇ、ちーちゃん。どうしてスーちゃんを連れて行ったの?」

 

「どういう事だ?」

 

「どうしてスーちゃんをドイツに連れて行ったのって聞いてるの!」

 

束の言葉が理解できずに困惑していた千冬に、束は掴みかかった。

 

「ちーちゃんがスーちゃんをドイツに連れて行かなかったら、スーちゃんはこんな事にはならなかったんだよ?!」

 

「なっ?!私はステラが見たいって言ったから連れて来たんだ!」

 

「何?そうやってスーちゃんのせいにするの?!」

 

「違う!私はただ!「二人とも止めて下さい!」……ステラ?」

 

二人が口論をしていると、先程束が入って来た入口から車椅子に乗ったステラとそれを押すクロエが出てきた。

 

「束さん、千冬さんは悪くありません。私があの時下手に抵抗したから撃たれたんです」

 

「そんな!違うよ!」

 

「そうだ!お前は悪くない!」

 

「……………………よかった」

 

「「え?」」

 

「二人とも、息ピッタリですね」

 

「いや、それは…」

 

「そうかもだけど…」

 

「私の事で二人が言い争うなんて、嫌です。それに私にはハーモナイザーがあるので回復力だけは自信あります!」

 

「いや、でも!」

 

「千冬様、とにかく落ち着いて下さい」

 

自分の責任だ、と自分を責めようとする千冬にクロエは一先ず落ち着く様に促すと、ステラの乗る車椅子を千冬の前に止めた。

 

「ただ、少しお互いに強がらずに本音で話してみるのも良いものだと思いますよ」

 

「ステラ…私が遅かった事を、恨むか?」

 

「そんな、まさか」

 

「怖かったか?」

 

「………はい。凄く怖かった、です」

 

「痛かったか?」

 

「はい…痛かったです」グスン

 

「辛かったな…本当に、良く頑張った」

 

「うん、怖かったぁっ、怖かったよぉ!どうして私ばっかりこんな目に遭うの?!うぅ、ひっぐ…本当に死にそうで、体が冷えていくのが、感覚が無くなって行くのが怖かった!怖かったのぉ!うわぁぁぁぁ!」

 

ステラは、今まで溜め込んでいた恐怖を吐き出すように大声で泣いた。そして泣き疲れたのか、数分後には眠りについた。

 

「ギンギラ、1ついいか?」

 

『千冬さん?何故ここに。どうかしましたか?』

 

整備の為に無人状態で展開されたギンギラに、泣き疲れ眠ってしまったステラをベッドまで運んだ千冬が整備室に1人現れた事に驚きつつ、いつもの冷静な口調で千冬に返事を返した。

 

「いや何、さっきのステラの言葉が気になってな」

 

『さっき言葉?』

 

「『どうして私ばっかりこんな目に遭うの』」

 

『っ!』

 

「ギンギラ。深く聞くつもりは無いが、過去ステラに何があった」

 

『……いつか、頃合いを見て話すつもりでした。ですが、早いうちに話しておいた方が良いですね』

 

『私とマスターは、この星の産まれではありません』

 

「何?」

 

ギンギラの急な発言に千冬は驚いたが、ある意味そう考えた方が合点がいった。

 

『この事はいずれ詳しくご説明します。本題はここからです。マスターが元いた星でその身に、心に深い傷を負わせた事件が起きたのは』

 

「ギンギラちゃん。その話、私も聞いて良いかな?」

 

ギンギラがステラの過去を語ろうとした時、束が整備室の入口で立ち声をかけた。

 

『構いませんよ』

 

「ありがとう」

 

束はその答えを聞くと、千冬の隣に歩いて行き近くに置いてあった椅子を2つ取り片方を千冬に渡し、もう片方を自分の近くに置いて腰をかけた。

 

『この事はブレンとティキさん、マスターの両親の苦渋の決断でマスターの記憶からその記憶を抜き取ったので、恐らくマスターも先程は感情のままに思いを吐き出したので、その記憶が一時的に戻ったのでしょう。それを踏まえてお聞きください。あれはまだマスターが8歳の時の話です』

 

ギンギラはそう言って、かつてステラに起きた2つの出来事を語った。

 

「嘘だろ?そんな事が…人を、人の命を何だと思っている!」

 

「それじゃあ、スーちゃんは……」

 

『千冬さん、1つ聞いてもよろしいですか?』

 

「なんだ?」

 

『この話を聞いて、マスターをまだ家族として扱って下さいますか?』

 

「当たり前だ。むしろ、尚更その気持ちが増した。私が、私達大人が守らないとな」

 

そう言って、千冬は拳を強く握った。

 

『しかし、1つ疑問も残ります』

 

「なんだ?」

 

『暮桜のシールドエネルギー、そして絶対防御も無視して千冬さんに傷を負わせたあの攻撃。零落白夜とも違うあの力、束さんは何かご存知ですか?』

 

その言葉と共に、千冬とギンギラの視線が束に注がれた。

 

「残念だけど、それは分かってないの。個人的にも、零落白夜を超える能力は『作れない』っていうのが結論だよ」

 

「お前なら作れなくても、アイツならどうだ?」

 

「っ?!ちーちゃん、何が言いたいの?」

 

『お二人が希に口にするその『アイツ』というのはいったい誰なのですか?』

 

ギンギラの純粋な疑問が、二人の心には重く押し潰すような物に感じた。

そして、その質問に答えたのは千冬だった。

 

「『デストロ・デマイス』。奴は悪魔の科学者だ。そして、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう一人のISの開発者だ」

 

 

 

 




俺のこの小説で季節物をやろうと思いましたが、考えると序章なので出来ないですね。はい。

ちなみに『デストロ・デマイス』の名前は英語の破壊者の『デストロイ』なら『デストロ』で、終焉の『デマイス』からそのまま『デマイス』です。

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