インフィニットストラトス ~空から降ってきた白銀と少女~   作:鉄血のブリュンヒルデ

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始まりの始まり Seventh Episode

バタンッ

 

「ただいまぁ!」

 

「一夏、戻ったぞ」

 

洗濯等を一段落させ、夕食の仕込みを始めた一夏。その最中玄関から元気な声と多少気だるげな声が聞こえた。

 

「あ、おかえり。千冬姉、ステラ。入学申請終わったのか?」

 

「あぁ。だが、何故あの担当の教師はあそこまでヘラヘラしていたんだ?」

 

「え?あ、もしかして津上先生?」

 

「そうだ。しかも途中途中で挟んでくるギャグもだ。クオリティが微妙過ぎて苦笑すら出来なかったぞ」

 

「仕方ない、そういう先生だから」

 

千冬は頭を押さえながら、一夏は苦笑しながら会話をしていると、ステラが目を輝かせながら一夏の腕にしがみついた。

 

「ねぇねぇ一夏!今日のご飯は?」

 

「豚カツだぞ」

 

「やった!」

 

「うるさい」

 

コツッ

 

「いてっ」

 

(うわぁ、俺の時と対応全然違う。でもまぁ、二人とも楽しそうだな)

 

一夏が二人の微笑ましい、まるで本物の姉妹の様な雰囲気を醸し出しながら話しているのを見ていると千冬が思い出した様に一夏に向き直り話し始めた。

 

「そういえば、ステラは両親の転勤で海外に出ると言う事で私の所に預けているという事になった」

 

「え?あー、確かにその方が色々面倒くさくなさそうだな。でも無理矢理じゃないか?」

 

「あの……津上とか言う教師も納得してたぞ」

 

 

一時間前

 

『え?でもステラ・ターナーさんって名前的に外国人じゃ……あ、お母さんが日本人でお父さんがアメリカ人とかなんですか?』

 

『え?あ、そういう事、です……』

 

(この教師がこんなで助かった)

 

そんな事を千冬が考えているとは知らずに、担当の教師はステラに話しかけていた。

 

『じゃあ、ステラさん。転校の時に何かあったら、俺に相談してね?俺が力になるから』

 

『あ、はい!ありがとうございます!』

 

『大丈夫大丈夫!俺教師だから。そんな緊張しなくてもいいよ?ほら、チャチャっとお茶でも飲んで』

 

『………………』

 

『あはは………』

 

『あれ?面白く無かったですか?おっかしいなぁ…』

 

 

……………

 

「何て言うか、津上先生らしいや」

 

「それはさておき、二日後の準備はもうしたのか?」

 

「いや、まだだよ。ステラはどうだ?」

 

「いや、私も…」

 

「全く、二日なんて直ぐに過ぎるぞ。今夜の内にでも準備しておけ」

 

「明日で大丈夫だろ?後38時間もあるんだぜ?」

 

そして二日後

 

「あれ?なんか一瞬で過ぎたような感覚なんだけど?」

 

「ステラ、気にすんな」

 

「私も今月からまた仕事だ。帰って来るのは冬休みかそれまでに様子見程度にしか戻れないが、二人とも生活リズムを崩さぬ様にな」

 

「ハハッ、それは俺らより千冬姉の方が「一夏それ以上は!」あー、まぁ千冬姉も気を付けてな!」

 

「はぁ…それより、ステラ」

 

「はい、なんですか?」

 

千冬はそっと頭に手を置き、いつもの冷静な喋り方ではなく、優しい口調で声を掛けた。

 

「不安もあるだろうが、しっかりな」

 

「はい!わかってます!」

 

「フッ、それじゃあ行ってくる。元気でな」

 

「おう、いってらっしゃい」

 

バタンッ

 

「さて、それじゃ俺らも行くか」

 

「うん。あ、白帯忘れてた。ちょっと待ってて」

 

 

 

「よしっ、行こうよ」

 

「おう、行くか」

 

そうして二人は家を出た。

道中、ステラと一夏が一緒に歩いている姿に驚いた生徒が道で固まると言う事件があったが、それはまた別の話。

 

そして時は流れ始業式。

 

「なぁ一夏」

 

そう話しかけて来たのは、一夏が中学に入って出来た友達の『五反田 弾』。赤い髪に黒いバンダナがトレードマークだ。実家は食堂を営んでいるが、弾はあまり手伝おうとしない。本人曰く「俺はYDだからな」と言っている。

 

「あの白い髪の子外国人だよな?転校生とかか?」

 

「え?あー、ど、どうだろうな?」

 

(やっべぇ、弾達に言うの忘れてた。あ、サプライズって事にするか)

 

「おい、静かにしろ。説教くらうぞ」

 

そういったのは『御手洗 数馬』。弾と同じく中学に入って出来た友達だ。性格はクールで、ハードボイルドに憧れている。数馬の事を知るものは数馬の事をハードボイルドだと認めているが、本人は「俺はまだただのハーフボイルド」と評している。

 

「おぉ、サンキュー数馬」

 

ちなみに、学年主任の教師がこちらに睨んでいたのを数馬が気付き説教というワードで合図を送ったと言うのが今の状況だ。

 

「えぇー、これにて始業式を終わります。誰か連絡のある先生はいらっしゃいますか?」

 

…………

 

「えぇーいらっしゃらない様なので、先生方は担当のクラスを先導して教室に戻って下さい」

 

「ほらほら、皆は早く立って。今日は皆に大事な連絡あるから」

 

『はーい』

 

「一夏、何か隠しているだろ」

 

「は、は?何の事だ?」

 

教室に行く廊下を並んで歩きながら、数馬が一夏に話しかけた。体育館での弾との会話を聞いて、明らかに変な返し方に疑問を抱き、今の質問をした。そして基本的に嘘をつくのが下手な一夏は、その言葉に動揺を隠せずにまた変な返し方になった。

 

「はぁ…まぁ、後でいいさ」

 

「お、おう」

 

そして全員が教室に入り、着席した所で津上が教卓にたった。

 

「さてと連絡だけど……なんとこのクラスに転校生が来ます!」

 

ザワザワザワザワ

 

(あ、このクラスなんだ)

 

「じゃあ入って」

 

ガラガラガラッ

 

「それじゃあ自己紹介を」

 

「あ、はい。えーと……」

 

ジーーーーッ

 

クラス全員の視線を浴びながら、ステラは声を出した。

 

「ス、ステラ・ターナーです!まだ色々慣れない事や分からない事もあり皆さんに迷惑をかけないように頑張ります!」

 

パチパチパチパチッ

 

「あぁそれと、ステラさんは一夏の家でホームステイの様な感じで今居候中だそうです」

 

『えぇーーーー!』

 

「はぁ…そういう事か」

 

「へぇー、あの娘このクラスだったのか」

 

「ちょ!どういう事よ一夏!」

 

「おわ?!鈴、なんだよ!」

 

「あれで気付かないからビックリだよなぁ」

 

周りの喧騒の中で一人だけ一夏に掴みかかって来た少女。彼女の名前は『(ふぁん) 鈴音(りんいん)』一夏とは小学生からの付き合いで、昔中国から引っ越して日本の小学校に転入した際に虐めを受けたが、一夏に助けられた。その為、一夏に惚れている。ちなみに愛称は『(りん)』。

 

「ホームステイって何よ!あの娘と一緒に住んでんの?!」

 

「それ以外にホームステイって言葉が意味する言葉無いだろ!て言うか痛い痛い!」

 

「はい!ねぇ、ステラさんって呼んでいい?」

 

一夏と鈴は完全に無視して、クラスの女子がステラに話しかけてきた。

 

「あ、はい。全然良いですよ」

 

「あ、私もしつもーん。織斑君ってステラさんと付き合ってんの?」

 

「あ、いやそれは無いですよ。確かに一夏は好きですけど、あくまでも家族的な意味ですから」

 

「痛い痛い!いた……くない?」

 

その言葉を聞いた瞬間、鈴は既に席に座っていた。

 

「なーんだそういう事ねぇ」

 

「はいはーい、それじゃあ今日は始業式とちょっとしたクラスで一時間集会的な事をしたら終わりだから。特にしなきゃいけない事は無いし、何か意見ある人」

 

「あ、せんせーい。じゃあステラさんの歓迎会でもやろうよ」

 

「えーと、今の意見なんだけど賛成の人いる?」

 

ザッ!

 

「おぉっ、皆賛成?なら……やろっか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と言う事で司会よろしくね、一夏」

 

「なんでですか津上先生!」

 

「ほら、数週間一緒にいたんだろ?なら一夏が適任だと思うなぁ」

 

「えぇー………。もうわかりましたよ!

 

えっと、何する?」

 

ガタッ!

 

一夏の発言と共にクラスの大半がずっこけた。

 

「織斑君考えて無かったの?!」

 

「逆に今の数分で思い付くわけ無いだろ!」

 

若干口論になりかけている女子生徒と一夏を見兼ねて、鈴が口を開いた。

 

「あのさ、無難に自己紹介とか質問とかでいいんじゃない?」

 

「あ、もうそれでいいんじゃん!よし、それにしよう!」

 

クラスの生徒が出した意見に強引に引っ張っていく一夏を呆れ顔で見る数馬と鈴だった。

 

「さてと、それじゃあステラに質問ある人」

 

「はーい!ステラさんの白い髪って染めてるんですか?」

 

「いや、産まれた時からこの色でしたよ」

 

「次私!じゃあその青い目も?」

 

「そうですよ」

 

「んじゃ次俺!ステラさんの親って何の仕事してんの?」

 

「え?あー、それは…」

 

(あれって何て言えばいいの?!「NEVECで兵士やってます」なんて言える訳無いし…あ!そうだ!」

 

「えっと、環境の調査員、かな?」

 

ある意味間違えてはいないが、多少強引な誤魔化し方だ。だが事情を知らないでクラスの生徒はそれで納得したようだった。

 

「おい皆、そんなに連続で質問したらステラが困惑するだろ。今度は逆にステラから皆に質問するとかどうだ?」

 

「おぉっ、一夏にしてはいいこと思い付いたな」

 

「おい弾テメェ一回ぶん殴るぞ」

 

「落ち着け一夏、事実だろう」

 

「数馬、お前もか」

 

「仕方ないんじゃない?一夏だし」

 

「おい、勝手に人の名前を悪口の為の言葉にすんじゃねぇよ」

 

弾、数馬、鈴の順番で罵倒される一夏。その様子を見てステラが少し微笑んで口を開いた。

 

「四人とも仲がいいんだね」

 

「今の会話でどうしてそうなるんだよ…」

 

「ほら、喧嘩するほど仲が良いって言うし」

 

「あーもう!とりあえずステラは何か質問あるか!」

 

「え?あーそうだなぁ。あ、ここら辺で一番美味しいご飯食べれるお店とか?」

 

「それなら弾の所でいいんじゃない?」

 

「確かに旨いよな。なぁ、どうなんだ?」

 

「Z-z-z-……」

 

ゴスッ

 

「ゲボァ?!」

 

「え、今の凄い声何?」

 

「気にすんな、いつもの事だから」

 

一夏の言葉に、クラスの全員が小さく首を縦に降った。そして攻撃をくらった弾は、

 

「なんだよ!またかよ!」

 

そう言って数馬に抗議して

 

「いつもの事だろう」

 

と、数馬が返す。

 

これがこのクラスの日常のようだ。

 

「まぁ、じいちゃんの料理は普通に旨いぞ」

 

「じゃあ今度行こうかな。ね?一夏」

 

「ん?おう」

 

「それじゃあもう一つ質問なんだけど、この学校でまだやってない行事とかあるの?」

 

「やってない物って言われても、行事何もしてないよな?」

 

「本当に?!やった!」

 

そう言ってステラは満面の笑顔を浮かべた。

その笑顔にクラスの殆どが見入っていた。

 

「あ、そろそろ時間だね。それじゃあそろそろ終わろうか。まだ質問がある人は個人的に聞いてね。それじゃあ帰る準備して」

 

『はーい』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで、ステラが学校に転入して六日目の土曜日。

弾の祖父が経営する『五反田食堂』に一夏、弾、数馬、鈴、ステラの五人が集まっていた。

 

「さてと、それじゃあ自己紹介ね。私は凰 鈴音。皆から鈴って呼ばれているわ。よろしくね」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

「あ、敬語は無しね。同い年なんだから」

 

「あ、わかった。よろしくね、鈴」

 

「俺は御手洗 数馬。俺も敬語は無しでいい。よろしくな」

 

「うん、よろしく数馬」

 

「えっと、次俺?俺は五反田 弾。敬語無しで下呼びオッケーだぜ」

 

「うん、弾もよろしく」

 

「おい弾。自己紹介終わったなら料理出すの手伝え」

 

そう声をかけてきたのは、弾の祖父『五反田 厳』だ。だが、その言葉に対し弾はため息をつきながら答えた。

 

「手伝わねぇよ。俺YDだから」

 

「……その言葉を使うなと言った筈だぞ、弾」

 

その言葉に反応して、厳は威厳のある声からドスの効いた声を発して、弾は負けじと厳を睨み付けた。

二人の間に流れる空気は他の四人にも伝達して、その場の空気は最悪な物となった。

 

「こんのーっ、馬鹿兄ぃ!」

 

「うぇ?ゲボァ?!」

 

その空気を破ったのは、店の奥から突然飛び出して来た少女の弾へのドロップキックだった。

 

「な、何すんだよ蘭!」

 

「何すんだよじゃない!何お客さん来てるのに喧嘩してんの!」

 

「いや、だってじいちゃんが俺に働けって言うんだぜ?!」

 

「ただの正論でしょうが!」

 

少女の名前は『五反田 蘭』。弾の妹で、小学六年生だ。

 

「あ、一夏さんに数馬さんこんにちは!それと、鈴さんも」

 

「何よ、私はおまけな訳?」

 

「違いますよ、ただ邪魔なだけです♪」

 

「あーら、言ってくれんじゃない♪」

 

バチバチバチバチッ

 

二人の間に火花が飛び散るが、そんな物は知らん顔して厨房から一人の女性が料理を持って出てきた。

 

「ごめんね、一夏君に数馬君。毎日うちの子供が騒がしくて」

 

彼女は『五反田 蓮』。弾と蘭の母親で五反田食堂の自称看板娘だ。

 

「ちょっと、自称は余計よ」

 

「母さん、誰と話してんだ?」

 

「ん?あぁ、気にしないで♪」

 

「そう言えば貴方は?」

 

蓮の言葉に、蘭も思い出したかの様に振り向いた。

 

「そうだ、私もそれ気になってたんです」

 

「あ、私ステラ・ターナーって言います!今一夏の家でホームステイしてします!」

 

自己紹介にも慣れてきたのか、ステラはハキハキと喋りそう言った。しかし、その言葉に蘭が凍りついた。

 

「ホームステイ?って事は、まさか一夏さんと一緒に住んでるんですか?!」

 

そう、蘭も一夏の事を恋愛対象として意識していたのだった。故に初日の鈴と同じく驚愕している。

 

「あ、大丈夫だよ?私一夏に対する好きは家族的な意味だから」

 

「あ、なーんだ。そうだったんですね!ステラさん、これからよろしくお願いします!」

 

「うん、よろしくね」

 

「それで、料理置いても問題無いかしら?」

 

「あ、はい。どうぞ」

 

一夏の返事に、にこりと笑って答えて蓮は机に料理を並べていった。

 

「はい、蘭の分」

 

「え?どうして?」

 

「皆さんとお話してきなさい。店は私とお義父さんでやるから」

 

「うん!」

 

それから、蘭も交えた六人は日が暮れる前まで話したりゲームをしたりして仲を深めていった。

そして、それを見守りながら蓮は、とある人物と連絡を取っていた。

 

「もしもし。久しぶりね、束」

 

「本当に久しぶりだね、れーちゃん。どうしたの?」

 

「あの娘。ステラちゃんは貴方が千冬に預けたんだってね」

 

「……誰から聞いたの?」

 

「千冬よ。もしもの時は頼むって言われてね」

 

「そっか」

 

「ねぇ、束。もしかして、またアイツが何かしようとしてるの?」

 

「分からない。でも、もしそうだとしたらどうするの?」

 

「殺すわ」

 

先程ステラ達と話した時とは別人の様な声で蓮は即答した。その言葉に束は悲しそうな声で答えた。

 

「そうだね。れーちゃんは大切な、じゅんくんをアイツに…」

 

「そうよ、だからアイツは私が殺す」

 

「ねぇれーちゃん。じゅんくんを殺された恨みを忘れろなんて言う気はないけどさ、それは私に任せてくれない?全ては、私がアイツと一緒にISの開発をしたりしたから」

 

「束は悪くない。悪いのは全部……あ、お客さん来たから、切るわね」

 

「あ、うん。またね」

 

「えぇ、貴方もね」

 

ピッ

 

「純、貴方の仇は私が……」

「………母さん」

 

その様子を、弾は影から見ていた。

幼き頃、父が死んだと聞いた日からずっと。

 




書いてて気付いた。

無駄に壮大にし過ぎてる!ヤバい!

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