インフィニットストラトス ~空から降ってきた白銀と少女~   作:鉄血のブリュンヒルデ

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始まりの始まり Sixth Episode

 

「でりゃあ!!」

 

ブンッ!

 

「一撃で終わりか!ステラ!戦闘において初手はまず当たらないと思え!攻撃は二手三手用意して初めて完成だ!」

 

「くっ!はい!」

 

ドガーンッ!

 

「束!お前の機体のスペックは本来一対多を目的としたものだ!少なくとも誰かと共闘するなら出力の調整を忘れるな!」

 

「わかってる、よ!」

 

ゴオォォォ!

 

ドガーンッ!

 

ガキンッ!

 

ギギギギッ!

 

 

「す、すげぇ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この、地形さえも変えてしまう程の戦闘から三十分程前。

 

 

「さて、着いたよ~♪」

 

「「「「殺す気(です)か!」」」」

 

「おわ?!ま、まぁまぁ皆落ち着いて、ね?」

 

「全く…それで?ここでやるのは良いが、一つ聞こう。私のこのIS擬き…トリガーでいいな。トリガーは飛べるのか?」

 

「いや?飛べないけど?」

 

「…………………」

 

数秒の沈黙の後、千冬がため息をつきながら口を開いた。

 

「まぁいい。どうせ武器は弧月一本だろ」

 

「追加する?」

 

「必要ない………いや、弧月をもう一本だ」

 

「了解」

 

「それじゃ、始めましょうよ!」

 

「楽しそうだな、ステラ」

 

「そりゃあもう!だって世界最強(ブリュンヒルデ)の千冬さんだよ?!最高に心が踊るよ!」

 

一夏の問いにとびきりの笑顔で応えると、クロエが三人の前に出た。

 

「試合の形式は二対一。束様、ステラ様ペアと千冬様。制限時間は一時間程でしょうか。何かハンデは付けますか?」

 

「いや、必要無い」

 

「わかりました。それではルールを決めましょう。基本のルールは、どちらかのシールドエネルギーがゼロになった時点で試合終了です。なので千冬様のシールドエネルギーは2倍に「1.5倍で十分だ」…それではそのように」

 

「試合開始の合図五分後に致します。それまでは自由に移動して下さい」

 

クロエの説明が終わると、三人はそれぞれ移動を始めた。

 

「一夏様、少し後ろにお下がり下さい。バリアに近すぎて危ないですので」

 

「あ、はい。わかりました」

 

そうして三人が散ってから4分強程経った頃。

 

『それではカウントを始めます』

 

『5』

 

『マスター、展開の準備を』

 

「了解」

 

『4』

 

「よーしっ!白兎の初乗り、おもいっきり飛ばそうか!」

 

『3』

 

「ふぅ……そう易々と負けんぞ。ステラ」

 

『2』

 

「3人の戦い……どれくらい凄いんだろう」

 

『1』

 

「行くよ、ギンギラ!」

 

『はい、マスター』

 

『0』

 

「ギンギラ、起動!」

 

「行くよ白兎!」

 

「トリガー、オン…」

 

3人の掛け声と同時に島の3ヶ所が光った。

 

 

 

 

「ギンギラ、束さんの場所は?」

 

『ここから南西200メートルの所で監視用のビットを放っています』

 

「了解、千冬さんは?」

 

『試合開始から一歩も動いていません』

 

ステラは少しギンギラと話した後に束の元へと向かった。

 

「レーダーオン……やはり合流を優先するか。ならば、妨害あるのみだな」

 

ダッ!

 

ビーービーービーーー

 

『っ?!マスター、千冬さんが高速で此方に接近中!』

 

「え?!」

 

「はぁ!」

 

ザシュッ!

 

「きゃあ?!」

 

『マスター?!くっ、は!』

 

「なるほど、人工知能に加え自立稼働も出来るのか。だが」

 

『なにっ?!』

 

「機械的動きならどうとでもなる」

 

ガキンッ!

 

『ぐわっ!』

 

「うわぁ?!」

 

千冬との圧倒的な実力の差の前に、なす術も無く攻撃をくらい続けていると、木々の間を潜り抜けて、光る兎が千冬とステラの間に入り千冬に触れた瞬間に爆発を起こした。

 

「スーちゃん、大丈夫?」

 

「危うく巻き込まれそうでしたよ…」

 

「ごめんごめん、でもこれならちーちゃんでも少しはダメージ入ったかな」

 

「甘いな」

 

「うぇ?うわぁ?!」

 

「きゃあ?!」

 

束がステラに声をかけている途中で、突然斬撃が飛んできた。

 

「ちーちゃん、適応力高すぎでしょ……」

 

千冬が使ったのは『旋空』、シールドエネルギーを消費して瞬時に刀身を拡張できる弧月の能力だ。振り回されるブレードは先端に行くほど速度と威力が増す。

射程アップの性能は効果の持続時間と反比例し、発動時間を短くするほど射程が伸びる。剣のスピードと旋空のタイミングを合わせないと効果が十分発揮できないのだが。

 

「ちーちゃん完全にタイミング合わせてるよ…」

 

束が千冬の適応力の高さに驚いていると、ステラからのプライベートチャンネルが開かれた。

 

「こうなったら……束さん!私が攻撃したらすぐに兎を千冬さんに放って下さい!」

 

「え?でもそれじゃスーちゃんに」

 

「私はすぐに避けます。だからお願いします!」

 

「わかった、ちゃんと避けてね?」

 

「分かってます!行くよギンギラ!」

 

『はい、マスター』

 

ギンッ!

 

「でりゃあ!」

 

そして時間は始まりに戻る。

 

「一撃で終わりか!ステラ!戦闘において初手はまず当たらないと思え!攻撃は二手三手用意して初めて完成だ!」

 

「くっ!はい!」

 

ドガーンッ!

 

「束!お前の機体のスペックは本来一対多を目的としたものだ!少なくとも誰かと共闘するなら出力の調整を忘れるな!」

 

「わかってる、よ!」

 

「束さん!避けて!」

「うん!」

 

「『サーマルキャノン!』」

 

ゴオォォォ!

 

ドガーンッ!

 

「これで!」

 

「まだだ!」

 

『マスター!シールドを!」

 

「わかってるよ!」

 

ブォンッ

 

ガキンッ!

 

ギギギギッ!

 

 

 

 

 

 

 

ピキッ

 

「え?!嘘?!」

 

サーマルキャノンを回避した千冬が弧月で斬りかかり、それをステラはEX-T(エクスサーマル)で作ったバリアで防御した。だが、千冬は同時にもう一本の弧月をバリアに突き立て、無理矢理バリアを抉じ開けようとした。

 

『マスター。危険ですがここはサーマルキャノンを出力をセーブして撃って牽制を』

 

「わかった!」

 

「『サーマルキャノン!』」

 

バリンッ!

 

「っ?!くっ!」

 

ギンギラとステラの二人で作り出したコンボ技。しかしそれすらも回避して反撃を仕掛けてくる千冬。必殺技を連発して動きに遅れが見え始めたステラ。それをカバーする為に接近戦に切り替えて千冬の攻撃を受け止める束。

 

 

 

 

 

 

さながら世界大会の様な戦いに、三人は夢中になっていた。そんな中で観戦サイドは。

 

「す、すげぇ…」

 

三人の壮絶な戦いに魅力されていた。

 

「流石は世界最強(ブリュンヒルデ)織斑千冬、ですね。いくら擬似ISと言えどプロトタイプ。それで二人のISを圧倒するとは」

 

「あの、ステラのIS…ギンギラでしたっけ?あれって普通のISと比べてどのくらい強いんですか?」

 

「量産型のISなら余裕で越えてます。しかしステラ様も経験が少ないので、ギンギラ様のサポートに依存しがちですね」

 

「そうなんですか……あ、そういえば、クロエさんと束さんってどういう関係なんですか?」

 

「親娘です。義理ですが」

 

「あ、すみません…なんか、変な事聞いちゃって」

 

少し気まずい雰囲気になりつつあり、クロエが苦笑しながら、されどにこやかに話を続けた。

 

「今は幸せですから、何も問題無いですよ。気にしないで下さい」

 

その顔に、一瞬魅入りそうになった一夏だったが、再度響いた爆音に二人は再び視線を戻した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いっけぇ!」

 

ステラはそう言って肩の上に浮くサブ武器(リング)【ISに改修されたことでカスタムウイングとなった】を千冬に向かって投げつけてそれを追いかける様に加速した。

 

ギギギギッ!

 

「残念だったな。こういう武器は勢いを殺さなければ、こういう使い方もある!」

 

千冬はそう言って、弧月で受け止めていたリングをそのまま遠心力に任せて回転してステラに投げ返した。

 

『マスター、このまま!』

 

「うん!」

 

ステラとギンギラは、投げ返されたリングを操作して自分たちの前に止まらせて。

 

「『サーマルキャノン!』」

 

拳を突き出してサーマルキャノンを放った、が。

 

「なるほど、ギンギラにはエネルギーの限定的な回復能力があるのか。だがしかし、使いすぎた様だな」

 

元々ダメージの蓄積で動きに遅れがあったが、それに加え先程からのサーマルキャノンの連発。ギンギラの動きは更に鈍っていた。

 

『マスター!T-ENG(サーマルエナジー)残量が僅かです!』

 

「くっ、でも………………」

 

ギンギラに言われた言葉でステラは初めて気付いた様で、その顔には焦りが見え始めた。

 

しかし千冬はそれを待ってはくれなかった。

 

「はぁ!」

 

ガキンッ!

 

「束さん?!」

 

「大丈夫大丈夫!このくらい ビーービーービーーー[警告、シールドエネルギー残り僅かです]

 

「あちゃー、エネルギーもう殆ど無いよ」

 

「ならば互いに最後の一発だ。いいな?」

 

「良いですよ!さぁギンギラ!ギラギラに行くよ!」

 

『はい、マスター』

 

そしてそれぞれが構えをとって、次の瞬間。

 

その辺り一帯は光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「負けたぁ…完全に負けたぁ」

 

「やっぱりちーちゃんは強いねぇ。まさか旋空を一瞬でマスターするとは」

 

「いや、今回ばかりは苦戦したぞ。二対一とはいえここまで追い込まれたのは初めてだ」

 

「三人方とも凄かったですよ。ステラ様も気を落とさないで下さい。最初から世界最強(ブリュンヒルデ)に勝てないなんて別に気にする事でもありませんよ」

 

「そうだって、千冬姉に一発で勝てたらそれこそガチの化け物だぜ?」

 

「ハハハッ、化け物って…」

 

五人は島からの帰路の中でそんな事を話していた。

 

そして、家に着いて1日の疲れや先程の事もあり一夏とステラは直ぐに眠りに付いてしまった。

そしてクロエは帰りの準備をして、千冬と束は縁側に腰かけていた。

 

「束、私にトリガーを渡した理由はなんだ?」

 

「…………ちーちゃん、あの日の事覚えてる?」

 

「私達が犯した罪が多過ぎてあの日ではわからん」

 

「白騎士事件の日「忘れろ」でも!」

 

「アイツの事は忘れろ。あの日の罪は絶対に拭えないが、少なくともお前の罪では無いだろう」

 

「でも!………今でも思うんだ。私がISを作らなかったら、幸福に生きられた子供達はいっぱいいた筈じゃないかって。私一人の夢の為だけに、何人の夢を犠牲にしたかとか。今でも夢に見るよ、あの日の全ての始まりの夜の事を…………ビギンズナイトの事を」

 

「そうだな。あの罪だけは永遠に拭えないだろうな。だが、そうだな。荘吉の言葉を借りるが、『人は生きる限りは必ず罪を犯す。だがその一つ一つの罪を数え、その数だけ人を幸せにすればいい』ってな」

 

「そうくん、か。懐かしいね」

 

「それに、お前の夢は私の夢だ。もしそれが罪なら、私も背負ってやる」

 

「ちーちゃん………」

 

二人の間に沈黙が流れる。しかしそれは決して重くなく、二人は先程より清々しそうな顔をしていた。

 

「束様、帰りの支度が出来ました」

 

沈黙を破ったのはクロエだった。そしてその声を聞いて束は立ち上がると、千冬に向き直り満面の笑顔で別れの言葉を告げた。

 

「またね、ちーちゃん。これからは余り会えなくなるけど、また何時か来るからその時はよろしくね♪」

 

「あぁ、いつでも来い」

 

二人はそれ以上言葉を交わす事は無かったが、二人は暗黙の了解だったかの様に拳と拳をぶつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『見つけたぞ。目覚めの兆しよ……我の片割れ達よ』

 

その頃、宇宙を漂う黒い霧の中で、黒い『ナニカ』が目覚めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてそれは、ゆっくりと地球に迫っていた。

 

 





今回少し長めです。
ヤバい、千冬さん強すぎる笑

最近展開がバタバタ過ぎる気もするので、後少ししたらまとめも兼ねてキャラ説明をします。

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