ドラゴンボールR【本編完結】   作:SHV(元MHV)

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始まりがあれば終わりがあるもの。これにて本編完結とさせていただきます。
実際自分でもこのトーナメントが最後の章になるのだなあとは思っていたのですが、気がつけばこの10年後のお話を書いていました。10年後にしたのは原作者兼神である鳥山明先生にあやかったような形になりますが、きっとこれも無意識下で神からの啓示があったのでしょう(´・ω・`)
この作品は一種の提起です。皆さんもドラゴンボールを読んでいて様々な思いを募らせたことと思います。
「最強はアルティメット悟飯だろ」
「超は最悪。ドラゴンボールはGTまで」
「いやZも大概引き延ばしで虚無が詰まっていたぞ」
などなど(笑)
でもきっと誰もがドラゴンボールを観ていて、読んでいて、()()()()()
この小説を読んでいただいている人は、きっとそんな思いを抱いて集まってくれたのだと思っています。
これまで多数の評価、お気に入り、感想をいただくことができました。
中には心ない言葉や、こちらの思いが伝わらなかった、届かなかったという風に感じる声もありました。全てかけがえのない記憶として、そして記録として残ります。
今後もこの物語は終わりません。まだ描きたいお話がありますので。
銀河最強決定戦における最後の勝利者を明確にしなかったのは、どうしてかその方がいいように感じたからです。あれが悟空が主人公ならば自分も彼に勝たせていたと思うのですがそうはなりませんでした。なので、あの時勝ったのがどちらかは読んだ皆さんが決めてください。
またこの作品を始めるに当たって文字通り大量の考察を送っていただき、また考察を共にしていただいたhisaoさんに感謝を。
そしてドラゴンボールの二次創作を始めるきっかけとなった偉大なる
【丸焼きどらごん師匠】
に大感謝を。あなたがいなければ、私の人生は燻ったままでした。

他にも感想常連となっていただいたモニュコナイさん、歌舞伎rocksさん、M Yさん、アミールさん、慎ゴジラさん、寒い大王と嘔吐物博士さん、蒲鉾侍さん、人類に逃げ場なしさん、丘ひじき姐さん、室伏周平さん、黒髪大好きさん、モブRR兵さん、SSSさん、jinさん、みなさまに感謝を。応援の言葉や評価には非常に助けられました。この場に載せられなかった方にも、全て感謝を捧げます。ありがとうございました。




第75話【不屈】

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~10年後~

 

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モーブは、()()()()()()()()を走る路面電車に乗りながら数日後の会議資料を携帯端末で片手間に纏めていく。

 

学生兼業の総帥補佐のひとりを勤める彼は忙しく、ましてや彼の年齢を考えれば仕事量も本来もっと少なくていい。しかし、偉大なる父親を持つ彼からしてみればそれくらいのことはして当然という意識がある。このことは彼の面倒を見ている義理の兄ラディッツの悩みの種でもあった。

 

──タタタタンッ──

 

そんな忙しい彼の耳に乾いた音──銃声が響いてくる。音からして短機関銃、火薬を増量した強装弾というのを判断すると、モーブはやれやれと言わんばかりにため息をついた。

 

「……やれやれ、度胸試しに強盗を働くのは止めてほしいんだがな」

 

モーブは言いいつつ人をかき分け、路面電車の窓を開ける。するりと器用にそこから身を乗り出して路面へと飛び出すと、鞄型端末を起動するキーワードを口にした。

 

「瞬着!!」

 

彼専用に作られた、姉二人の合作である生機融合パワードスーツ『RR-XX MODEL:CELL』が起動する。

 

ナノ単位で分解された鞄型端末がその存在を再構成して彼の全身を包み込む。その間、0.001秒。

 

緑を基調としたガンメタルグリーンの装甲が展開され、擬似的にモーブの低い身長を補う。ゼノの剣にも用いられたビブラニウムをふんだんに用いた装甲は、地球上ではよくある例外を除いてあらゆる攻撃を寄せ付けない。

 

変身後二秒で現場に到着したモーブ。だが、そこで彼が見たのは執事服を来たピンクの魔人だった。

 

「おやおや、これは坊っちゃま。随分のんびりとしたご到着で」

 

嫌味たっぷりで笑うその男は魔人ブウ。彼の父クリムゾンが、バビディから奪った方の魔人である。

 

その驚異の能力はそのままに、クリムゾンによって絶対の忠誠を誓うように改造された彼は、今ではクリムゾンに仕える執事としてあらゆる職務をこなしていた。

 

「黙れ。僕は十分に早い」

 

言いながらもなにも出来ずに終わったことに忸怩たる思いを抱くモーブ。しかし彼はすぐに思考を切り替える。

 

ここにこのピンクの執事がいるということは、彼が慕い、畏怖し、尊敬して止まない父が地球へ帰ってきているなによりの証拠だからである。

 

「モーブ! 大きくなったな!!」

 

すると強盗らしき大男の首を片手で掴み引きずりながら、クリムゾンが現れた。反対の手に握られた拳銃がありえない形状へと変形し、それに釣られて大男が物凄い表情になっているがクリムゾンは気にしていない。

 

御年56歳。生機融合体となった影響で、クリムゾンの見た目的な変化はない。

 

「……いや、前回会ってからまだ三ヶ月しか経ってないよ」

 

モーブの身長は156センチ。見た目も細く、中性的な顔立ちは下手な女性より女性的であり目下彼の悩みの種である。

 

「何を言うか! 三ヶ月もあれば人間の細胞は全て入れ替わるのだぞ! それに前回より0.3ミリほど身長が伸びているではないか!!」

 

「常識的にそれは誤差だよ」

 

無駄にハイテンションなクリムゾン。それも仕方がない。彼にとって悩みの種であった、第10宇宙の界王神候補。ザマスを今回正式な手続きを経て彼の配下としたのだから。

 

「それで、問題は解決したの父さん」

 

「まだ完全に終わったわけではないが、概ねはな。全王の開催した“力の大会”とやらにはブロリーと悟空、それにベジータが参加してくれている。なに、次いでに全王宮を落としてくれても構わんさ」

 

「父さんも出ればよかったのに」

 

そう言いながらモーブは変身を解く。薄紫のラベンダーに似た色合いの髪をおかっぱに切り揃えた彼の顔を見てクリムゾンの笑みが深まる。

 

「それは流石に過剰戦力というものだ。それにそこへ私が参加した場合、間違いなくストッパーは私だろう。嫌だぞ、そんな役目」

 

「主殿、そろそろコルドめが到着する時間かと」

 

「わかった。モーブ、母さんには夕食には戻ると伝えてくれ」

 

息子を愛でる顔から即座にレッドリボン軍の支配者としての怜悧な表情へと変わったクリムゾンは、一瞬だけ優しい表情を浮かべてモーブへ伝言を頼むと、瞬間移動で惑星フリーザNo.79へと移動する。

 

「……いってらっしゃい」

 

聞こえない言葉を呟き、モーブは再び移動を開始する。

 

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レッドリボン軍本部における総帥の執務室。今はクリムゾンが殆ど使わなくなってしまったその空間は、地球上のレッドリボン軍を纏める総帥補佐らの待機室となっていた。

 

「……ね、いいでしょ?」

 

自分より遥かに高身長の夫をソファーに押し倒し、艶然と見下ろし舌舐めずりをする大スカーレットこと21号。あえて半端に脱いだ白衣の下は薄っすらと肌が浮かぶ極薄の特注ワイシャツ、足首には彼女の下着が引っ掛かっている。

 

「い、いや! スカーレット、ここではまずい! やっぱりやめよう!!」

 

「なんだよ~、ヴォミットの意気地無し♪」

 

言葉では夫を否定するがその手は止まらない。

 

「待て! 服を脱がすのを止めたまえ!!」

 

抵抗しつつも脱がされていくヴォミット。以前までの緑色のバトルスーツではなく、今はラフな格好をしている。が、こんなことならバトルスーツを着ておくのだったとヴォミットは後悔していた。

 

「ン゛ン゛ッ!!」

 

そこへ部屋へ入ってきたモーブがわざとらしく咳払いをする。

 

「ありゃ、モーブちゃん」

 

「モ、モーブくん! 助かった!!」

 

脱がされかけた服をいそいそと着込むヴォミット。大スカーレットこと21号はやや顔を赤らめる弟を見てやれやれとため息をつく。

 

「いい加減執務室でイチャつくのは止めてください」

 

「営んでいただけよ!」

 

「場所を弁えろよ! あとパンツ履けよ!!」

 

変なところだけ父にそっくりな姉のドヤ顔に怒りを浮かべるモーブ。なお、かつて父親もこの執務室でラディッツから同じツッコミを言われていたりする。

 

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クリムゾンファミリーはその規模を10年という歳月で大きく変化させていた。

 

まず家族が増えた。ヴォミットと大スカーレットは結婚し、その体は超ドラゴンボールによってクリムゾンと同じ生機融合体となった。完全な人間とならなかったのは、“いつか理不尽な存在が現れた時に、それ以上の理不尽でその思い上がりを打ち負かしてやるため”とは大スカーレットの言葉である。

 

二人の間にまだ子供はないが、これは生機融合体という存在となった影響である。とはいえ時間の問題ではあるが。

 

ラディッツは成長したスカーレットと結婚した。散々諦めさせようとあの手この手を尽くしたラディッツだったが、そもそも彼女を傷つけられない彼の敗北は決まっていた。強引に押し倒す振りをしたが最後、そのまま逆に食われてしまい敢えなくゴールインとなった。

 

無論クリムゾンがそれをただ許可するはずもなかったが、一度経験してダメージが少なかったのもありラディッツを半殺しにするだけで済んだ。

 

ヴァイオレットは手の離れた子供達に寂しさを覚えながらも、まだ幼さの残るモーブを溺愛している。その見た目はクリムゾン驚異のアンチエイジングにより20代前半の美貌を保っている。

 

クリムゾン自身は先ほども言ったがその見た目に変化はない。両目は健在だがそのひとつに未だ眼帯を付けている。理由は、片方の眼を常に変身させておくことで不意打ちに備えるのが目的であった。なおこれにより第6宇宙最強の殺し屋ヒットの不意打ちを防いでいる。

 

惑星フリーザNo.79にて他の宇宙を代表する面々が来訪するのを待つクリムゾンは、不意に自分の生涯を振り返る。悟空との出会いを始め様々な出来事があったが、あの大会から瞬く間に時間が過ぎたように感じた。

 

「どうかなさいましたか?」

 

「なに、少し自分を振り返っていただけだ」

 

「それはそれは。振り返る人生のない私からすれば、羨ましい限りです」

 

「嫌でも蓄積することになるさ。先はまだまだ長いのだからな」

 

クリムゾンがこれから行おうとしているのは、『力の大会』以後の各宇宙間における諸々の調整である。

 

『力の大会』とは全宇宙における全てを司る全王によって提唱されたものであり、本来はレベルの低い宇宙を消滅させる為振るいにかけるのが目的で開催された。

 

これを開催するきっかけとなったのは第7宇宙で行われた銀河最強決定戦であり、お忍びでこれを見に来た全王が提案したものである。これに各宇宙は反発したが、そもそも当初は『力の大会』など関係なしに低レベルの宇宙を消滅させる予定だったと聞かされ、各宇宙の代表者らも黙らざるを得なかった。

 

クリムゾンを初めとした第7宇宙の面々による尽力もとい脅迫によって、『力の大会』における敗北=宇宙の消滅という条件はなくなった。ただしその代わり全王より、“今後100年以内に人間レベルが低い宇宙全てのレベルを6以上にすること”を条件とされて。

 

無茶な条件ではある。単純なようで複雑な条件を持つ人間レベルをあらゆる宇宙において上げるなど正気の沙汰ではない。

 

が、機会が与えられたならばクリムゾンはそれに応えるだけである。できないとは限らないのだ。未来への切符は、未だ白紙なのである。

 

そうしている内に、広々とした空間に各宇宙の代表が集まってくる。その中には破壊神や界王神も紛れている。彼らそれぞれの宇宙の代表が『力の大会』と今回の会談、そのどちらを選んだかも今後の判断材料のひとつだ。

 

「では始めるとしようか。なに、より良き未来を目指すのは楽しいぞ。消滅を待つだけの絶望の未来なぞ、この私が訪れさせん」

 

自信を持ってそう断言する男は、かつて未来を垣間見た男だった。

 

父より簒奪した軍隊を率いて、常識的にはとても無理な絶望を幾度も潜り抜けた男だった。

 

彼の名は、レッドリボン軍総帥 クリムゾンといった。

 




書きたいことは前書きで書かせていただきました。ですが改めて、みなさんに感謝を。

bye for now!

……とりあえず※R18作品※【うちはの火影】をぼちぼち連載再開します。よかったら読んでくださいm(_ _)m
https://syosetu.org/novel/114364/
リンクタグの使い方がわからんので、そのままアドレス貼ります。誰か教えてください( ̄▽ ̄;)


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