ドラゴンボールR【本編完結】   作:SHV(元MHV)

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hisaoさん、誤字報告ありがとうございます!

そして宣伝です!
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上記の作品の元ネタである【田舎に帰るとやけに自分に懐いた褐色ポニテショタがいる】の続編がTwitterにあがりました! ショタが好きな人も、そうじゃない人も是非見てくれ! いざ行かん、修羅の道へ!(爆)

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【募集】Twitterにて発見したお題(´・ω・`)
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こちらも募集しております! 投稿していただいた全部を書くことはできませんが、台詞から内容を連想してできれば二次作品で短編投稿いたします! こちらは自分の修行目的のお題になりますので、興味をもった方は是非ご一報ください!


それでは本編をどーぞ!!


第73話【決戦】

悟空は慣れた亀仙流の山吹色の道着に身を包むと、最後に帯を締めて下腹部を叩く。

 

「っし! チチの飯腹一杯食ったし、これで十分(りき)が出せっぞ!!」

 

気合い十分な父親を、しかし悟飯は不安そうに見上げる。

 

「お父さん、でもベジータさんが身に付けたあの技は……」

 

「そうだぞ悟空。身勝手の極意とかいうのを独自に昇華したヤツの無窮の極意。あれを一体どうやって攻略するつもりだ?」

 

悟飯の不安を代弁するように、ピッコロが悟空へ向かって尋ねる。

 

「ん~、確かにあれ使われたらオラの攻撃当たらねえしな。でも大丈夫、なんとかなるって!」

 

ケラケラと明るく朗らかに笑う悟空に、ピッコロも悟飯も驚きを隠せない。悟空がこうしている時というのは、決まって切り札があるのに決まっているのだ。

 

「……ベジータか。かつての暴君はどこへやらといったところだな。ヤツは変わった。その強さもな。もはや俺では勝負にもなるまい」

 

かつて一度はベジータを追い詰めたラディッツが自嘲するように呟く。

 

悟空はそれを受けて否定するでもなく、静かに頷く。

 

「ああ。兄ちゃんもあの頃よりうんと強くなったけど、多分今のベジータと闘えるのはオラしかいねえと思う」

 

「はっきり言いやがる。……だがそうか、今のベジータはビルス以上か」

 

「ああ」

 

あまりに正直に告げられ、ラディッツは笑ってしまう。否定しようがないほどに事実だからだ。

 

そして確信を得た。今目の前にいる最愛の弟と、かつて激闘を繰り広げた王は、もはや破壊神でさえ届かない領域へと足を踏み出していることに。

 

それはクリムゾンと野望を同じくするラディッツにとって何よりも朗報と言えた。

 

「負けるなよ、カカロット。下級戦士がエリートを上回る瞬間を、俺に見せてくれ」

 

「任せとけって!」

 

笑いながら悟空は瞬間移動によって武舞台へと移動する。ラディッツはいつの間にか頼もしくなった弟の後ろ姿を、自らの記憶に焼き付けるのだった。

 

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ベジータはその腕にブルマを抱き締めながら、観客席のあるスタジアムの一角で彼女の唇をやや強引に奪う。

 

舌を吸い上げ、唾液の一滴も残さず己のモノにするような強引なキス。

 

ブルマは始めそれに抵抗するも、すぐに諦めたように自らも彼の首へと手をもたれ、されるがままに自らもベジータのキスを貪る。

 

どれほどの間そうしていただろうか。このまま押し倒されるのではないかとブルマが不安になった頃、ようやくベジータの唇は彼女から離れた。

 

「……んっ、はぁ……どうしたのよ、急に」

 

ブルマは疼く下腹部の熱を誤魔化しながらベジータに尋ねる。

 

「お前が欲しかっただけだ」

 

「ちょっ、んぅ、んむ……!」

 

再び抱き締められ、唇を重ね合わせる二人。

 

一線を越えない睦事がしばしの間行われ、アナウンスでベジータが呼び出される。

 

ベジータはすっかり腰の抜けたブルマを優しくその場に座らせると、背を向け出口へと向かって歩き出す。

 

その後ろ姿に、どこか切なさを覚えたブルマが不意に彼を呼び止める。

 

「ベジータ!」

 

振り返るベジータ。その真剣な顔に、ブルマは思わず見とれてしまう。

 

「そ、孫くんに負けるんじゃないわよ!」

 

不器用な激励だった。

 

出会った頃からそうだった。ろくでもないことでぶつかって、喧嘩して、それでも何だかんだベジータは許してくれた。

 

気がつけば夫婦になり、子供も出来た。

 

自分でも不思議なほどに恋をしているのがわかる。愛しているのに恋をしている不思議な感覚。だから今でも不器用なのかと、ブルマは科学と同じようにはいかない自分の情動を鑑みて苦笑を浮かべる。

 

きっと、こういった諸々の感情も全てお見通しなんだろうと考えながら、ブルマは武舞台へと向かう夫を見守った。

 

__________________________________

 

 

ベジータは腕を組み厳めしい顔つきで、悟空は自然体で笑顔を浮かべて立っている。

 

今、二人は精神と時の部屋にいた。二人が戦うことによる地上への影響を鑑みたクリムゾンによって、武舞台ごと時の異次元空間へと送られたのだ。

 

さらに武舞台をウィスとクリムゾンによる球状のバリアが十重二十重と囲み、万が一の衝撃さえ逃さんと万全の備えを用意している。

 

そしてこの様子は、大スカーレットこと21号の操るスフィアを経由した超次元通信によって会場のカメラへと送られていた。

 

「へへっ……」

 

「どうかしたのか?」

 

「いや、なんだかこうして向き合うのが楽しくってよ。なんでかな、組手は何回もしてるのに、これからベジータと戦うのがオラ楽しくてしょうがねえ」

 

「……ふん、正直俺も同感だ。何故だかお前の顔を見ていると、無性にぶっ飛ばしたくなることがあるんでな」

 

こことは異なる世界において、宿命のライバルとも言える関係だった二人。

 

この世界での彼らの関係は浅く、頼りになる仲間といった程度の関係である。ところがいざ真剣に向き合ってみれば、これほど噛み合う相手はいないのではないかと確信するほどに互いの戦意は向上していった。

 

『さあーーーーーーっ!! 泣いても笑っても怒っても喜んでも!! これが最後! 最終決戦となります!! 超次元の戦いのフィナーレ!! 孫悟空選手対ベジータ選手、開始(はじ)めいッッ!!』

 

「「はっ!!」」

 

アナウンサーによる開始の声を聞き、二人は即座に変身する。

 

──立ち上る黄金の柱には、まるで寄り添うように銀の支流が流れ──

 

──全身を包む黄金と白銀の気は、穏やかに沸き立つ湯気のごとく纏われ──

 

──全てを見切る黄金の瞳孔は、銀の虹彩によって縁取られ──

 

──時々その蒼銀の髪の表面を七色の輝きが染め、神をも超える力が君臨した──

 

無窮の極意

 

神々の中でも最高の強さを持つ破壊神、その一握りが有する絶対勝利の力“身勝手の極意”を進化させた姿へとベジータは変わる。

 

──鬣のように伸びた深紅の頭髪──

 

──太さと長さと共に存在感を増した黄金の尻尾──

 

──さらには超サイヤ人4のように全身を黄金の体毛が包みこんでいる──

 

──その全身は薄っすらと赤い膜に覆われ、悟空の気に応えるように明滅を繰り返している──

 

超サイヤ人ユナイト

 

超サイヤ人3、4、ゴッド、マスターの全てを組み合わせたこの姿からは、神々しさと荒々しさの双方を同時に感じとることができる。悟空はこれに加えて、悟飯の究極化を戦いの中で学び取りユナイトの秘めたパワーを全て引き出していた。

 

──ベジータのそれが極限まで無駄を省き精錬された姿だとするならば。

 

──悟空のそれはあらゆる要素を組み合わせ融合させた姿。

 

奇しくも同じサイヤ人でありながら、真逆の方向性へと進化した二人。

 

その究極とも言える拳が、音を置き去りにしながら武舞台の中央でぶつかり合った。

 

──閃光が生まれ、いきなりカッチン鋼の武舞台がバラバラに砕け散る。

 

「ぐうっ……!!」

 

そこから生まれた圧力をどうにか重層バリアで受け止めたクリムゾンだが、一人ならば今の余波ですでに体力の半分を持っていかれていただろうと黙考する。

 

「予想はしていたが、想像以上のパワーだな」

 

「……それをバリアだけで受け止めていなすお前も大概だと思うけどね」

 

破壊神ビルスがバリアを操作するためセルへと変身したクリムゾンへと話しかける。

 

彼もまた、この決勝戦を見届ける特等席を条件に重層バリアの維持へと参加していた。

 

「ビルス様、サボらないでください。これ、失敗したら絶対元の宇宙にまで影響でますよ」

 

ウィスがぼやきながらバリアの出力を上げていく。

 

もはや破壊神どころか、その監視者兼付き人である天使のウィスでさえ目の前で戦う悟空とベジータの全力を受け止めることはできない。

 

ウィスとしてはそのことを報告せねばならないのだが、下手な動きを見せれば横の男が何をするかわからず正直手をこまねいていた。

 

クリムゾンはウィスが状況的に今は手を組まざるをえないことを知りつつ、万が一に備えてビルスとウィスの二人を最大限警戒していた。

 

ビルスは破壊神としての役目を果たすことはできないことを悟ると、面倒な現状を一観客として見届けるつもりだった。

 

「だあっ!」

 

「でやっ!」

 

そんな各々の思惑が進むなか、悟空とベジータの戦いも一進一退の攻防を見せていた。

 

その様子を表の世界で不思議そうに眺めていた面々の内、不意にクリリンが気づく。

 

「……うっそだろ! 悟空のヤツとんでもない手段であの技を攻略しようとしてやがる!」

 

「どういうことだ、クリリン」

 

自身の眼力では悟空とベジータの戦いを全て見切ることは叶わなかった天津飯がクリリンに尋ねる。

 

「いや、ベジータの使っている絶対回避の技というか能力って、どんなにスゴくても扱っているのはベジータっていう一個人だろ? だから悟空のヤツ、一撃貰うごとに後出しでベジータに追撃してんだよ。速度がどんどん上がってるから、あのままだといずれベジータの攻撃速度を上回るかもしれない。もちろん全部にカウンターが来るから普通なら耐えられっこないけどさ。タフすぎるぜ、まったく」

 

ベジータの放つ攻撃は、すなわち全てがカウンター。

 

ベジータ自身が“因果”と名付けた究極のカウンターは、対峙する相手の気を取り込み、相手が強力なパワーの持ち主ならば持ち主であるほどその威力を増す。ましてや身勝手の極意を超え、無窮の極意へと至ったベジータの攻撃は悟空と全く同時。

 

同撃による打撃は紛れもなく悟空へと尋常ではないダメージを与えている──はずだった。

 

「この拳に残りやがる妙な感触。貴様、それはまさかヴォミットの……!」

 

驚き、悟空を見つめるベジータ。

 

悟空は悪戯がばれた子供のようにニヤリと笑い、全身を包む赤いオーラの質量を増す。

 

「へへっ、ばれちゃあしょうがねえや。前から()()真似できねえかなって思ってたんだけどよ。やりゃあ案外できるもんだな」

 

そう、悟空が無謀な殴り合いを選んだ理由。それはヴォミットの纏うフィールドジェネレイティングアーマーを模倣した技を身に付けたからにあった。

 

ベジータが無窮の極意によって絶対回避の技を身に付けたのと同じように、悟空はこれまでの戦いとその驚異的な模倣性によって自らの肉体を無敵の鎧と化す一種の絶対防御を身に付けていた。

 

「ということは……!」

 

ゼノが何かに気づいたように桃白々へ振り向く。

 

「どちらが先に力尽きるか、我慢比べというわけだな」

 

「なんと羨ましい奴等だ! 俺も参加したいぞ!!」

 

桃白々の独白にブロリーが我慢できず叫ぶ。

 

バリアが破壊されては再生し、再生しては破壊しを繰り返す。

 

同時にそれは、万が一とも称されるふたりの激闘がこの異次元空間の外へともたらされれば、尋常ではない被害が出るのは間違いないだろうということだった。

 

21号こと大スカーレットによって操られるスフィアはそのカメラに殴り合うふたりの姿を写す。

 

──サマーソルトキックの影響で空中へと浮かんだベジータへと、悟空の突き上げ(アッパーカット)が迫る。しかし顎を捉えんと放たれた一撃をベジータは紙一重で回避し、打ち下ろしの右(チョッピングライト)で悟空の意識を刈り取らんと一撃が放たれる。

 

霞と呼ばれる人体の急所であり、一般的には側頭部の窪みとして知られる部位への一撃。

 

しかし絶対防御を持つ悟空はその一撃を受けても笑顔を止めず、逆にこれまでの苦労が実ったと言わんばかりに会心の笑みを浮かべていた。

 

そう、ベジータの右腕を、悟空の尻尾が遂に捉えたのだ。

 

「はあっ!!」

 

「ぐ……うおりゃぁっ!!」

 

咄嗟にベジータが至近距離から悟空の顎へと拳を唸らせる。

 

鼻の下、人中へと命中したそれに悟空はわずかに怯むが構わず脳天をベジータに向かって振り下ろす。

 

「がっ!」

 

遂に、回避の叶わなくなったベジータへと悟空の攻撃が命中した。ベジータの顔面へと降り注いだ悟空の額は彼の鼻をへし折り鼻血を吹き出させる。

 

──しかし次の瞬間、悟空はベジータを解放せざるを得なかった。

 

「がはぁっ……!」

 

やんわりと添えられたベジータの左腕から放たれた、浸透する気の一撃。それが悟空の内臓を激しく揺ら(シェイク)し、悟空は自らの絶対防御を超えてきた攻撃の正体を探るため距離を取る。

 

「ぐっ……痛っ……! やってくれる……!!」

 

折れた鼻の骨を無理矢理真っ直ぐに戻し、息を通す為に勢いよく鼻血を吹き捨てるベジータ。高められた気とサイヤ人としての生命力が、すぐに傷を癒していく。

 

「ぐぇっほっ……! げほぉっ……! こっちの、台詞だ……!」

 

腹を抱え、苦しそうにしながらも、同じく限界突破したサイヤ人の肉体は内臓へのダメージであっても僅か数秒で完治させてしまう。

 

さらなる激闘を予感させる雰囲気を感じ、ビルス、ウィス、クリムゾンの三人は緊張感を露にするが、あろうことか悟空とベジータはお互いに変身を解いてしまった。

 

「なにっ……!?」

 

ビルスは理解できないと言わんばかりに驚愕する。ウィスは訝しみ、クリムゾンはただ一人察しがついたのか苦笑いを浮かべる。

 

「察しがいいなベジータ」

 

「なに、これ以上無駄な消耗をしても意味がないからな」

 

絶対回避と絶対防御。二人は互いにその能力を攻略し、同時にこれ以上の消耗を無駄と断じた。

 

今の流れを繰り返せば、確かに消耗しきった相手に勝つことは容易だろう。だがここまで来て、この決戦をそんな詰め将棋のような方法で終わらせてしまうことは双方が納得しなかった。

 

「ふふっ、カカロット。落ちこぼれとしてたいした敵のいないこの星へやってきた貴様の半生、しかと感じ取らせてもらったぞ」

 

「そのおかげでオラはこの地球に来れたんだ、感謝しなきゃな。ベジータこそ、サイヤ人としてのプライドは捨てちまったみてえだけど、オメエが抱える大事なモンはオラも持ってる。わかんねえな、サイヤ人の人生ってやつも」

 

「まったく、その通りだ。……フフフ、ハッハッハッハッハ!」

 

「ヘヘ……ハハ、アハハハハハ!」

 

互いに拳と拳を通じて感じた相手の人生。苦痛と悔恨と冒険を繰り返してきた人生だった。

 

戦闘民族サイヤ人として生まれながら、真逆の人生を歩んできたお互い。それがこうまで対等の目線を持って闘えるとは、誰が予想しただろうか。

 

二人は再び構える。もはや武舞台はないが、二人にそんなものは必要ない。

 

ベジータは腰をやや落とし、左手を鉤状にして右手の拳を握りこむ。

 

悟空は右足を前に半身となり、握った右拳を下に、鉤状にした左手を頭より上に構える。

 

純粋な武と武の対決。

 

拳と拳。

 

意地と意地のぶつかり合いは、第2ラウンドを迎えようとしていた。

 

 




パパとママがいちゃいちゃしている間、チビトランクスはブリーフ夫妻が見てます(´・ω・`)

悟空とベジータ。この二人が真剣勝負できたのは原作では二回のみとなっております。組手すら出来てないんですよね、実は。なので超においてそんな二人が共に修行し力を開花させていくのは嬉しい反面、ライバルが一緒に鍛える違和感が拭えない奇妙な寂しさがあったり……(´・ω・`)

さてそんなこんなでこの勝負、まだまだ決着が尽きません。どっちが勝つのかもわかりません!(笑)

出たとこ勝負のこの作品ですが、今後も応援をよろしくお願いします!

では次回予告。今回はテンション的に普通のドラゴンボール風でいきます。
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オッス! オラ悟空!
ベジータのヤツ無窮の極みを解きやがった。やっぱオラと同じ考えらしいな。
だけどさすが亀仙人のじっちゃんを倒しただけあって、普通にやったら勝てそうにねえぞ! こうなりゃ一か八か、あの技で仕掛けるしかねえ!
次回【龍拳】。ベジータ、オラの全部を見せてやっぞ!


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