ドラゴンボールR【本編完結】   作:SHV(元MHV)

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人類に逃げ場なしさん、報告ありがとうございます! ですがあそこはセルジュニアをセルシニアと言い直したシーンが前にあるのであれでよいのでございます! 紛らわしくてすいません( ̄▽ ̄;)
またhisaoさん、ZZZZさんも誤字報告ありがとうございました。




第62話【黄金】

デスビームによってギネを助けたフリーザは、先程のジャネンバに劣らぬだけの邪悪な笑みを浮かべてバーダックチームを見下ろす。

 

「おやおや、誰かと思えば私に殺されたサイヤ人じゃないですか。折角だからこの騒動の原因であるそいつと一緒に殺してさしあげてもいいんですが……」

 

言いながらフリーザは気を高め、四肢を黄金に染め上げる。

 

「まずは化け物退治が先決です。大界王、約束を違えることは許しませんよ!」

 

言いつつフリーザはジャネンバへと突っ込む。固まっていたギネが慌ててバーダックの懐に飛び込み、それと同時にフリーザとジャネンバの両者はぶつかり合い結界に包まれた地面を砕きながら場所を移動していく。

 

「ちっ、フリーザの野郎なんてパワーだ!」

 

「フ、フリーザ様なんで私なんか助けたんだろ?」

 

バーダックの胸板にしがみつきながら不意にギネが尻尾を揺らして疑問を口にする。

 

「あん? ……確かに妙だな。ヤツなら俺達ごと殺しに来るハズだ。おい大界王! 見てるんだったらどういうことか答えやがれ!!」

 

バーダックは、自身を拾い上げた大界王へと向かって天に向かって吠えあげる。

 

『バーダックちゃんそんなムキにならないで。これはフリーザちゃんからの提案なんだから』

 

「なに?」

 

飄々とした老爺の声がバーダック達の脳内に直接届く。ギネやセリパはどこから声が聞こえているのかと不思議そうに周囲を眺めている。

 

『閻魔ちゃんが封じられた影響で、今全宇宙がとんでもないことになってるのは説明したよね。ちょっと規模が大きすぎるから、使える戦力は使うことにしたのよ。そこでこの戦い、フリーザちゃんがアレを倒せれば僕預かりで“あの世の達人”に引き上げることにしたのよ』

 

「なんだとっ……!? ふざけんな!! あの野郎と肩を並べて鍛えるぐらいならお前も含めてぶっ殺してやる!!!」

 

激怒し、一度は解かれた超サイヤ人へと再び変身するバーダック。その怒気の凄まじさにトーマらバーダックチームの面々は一歩下がってしまう。

 

『まあまあ、それはあくまでフリーザちゃんがジャネンバを倒せたらじゃからな。バーダックちゃんが倒せば、それはなくなるよ』

 

「……けっ、言われなくてもやってやらあ!」

 

言うなりバーダックはフリーザとジャネンバが飛んでいった方角へと飛んでいった。

 

「ちょ! バーダック!! ……なんだよ、奥さんと仲間置いて行っちまいやがって」

 

しょぼくれるギネの肩をセリパが優しく叩く。

 

「仕方がないよ、ああいうヤツだし。それで、大界王だっけ? あたしらに何してほしいんだい」

 

『話が早くて助かるのう。お前さん方には閻魔ちゃんを助けるのを任せたいんじゃよ。上の方に館があるからの、そこに向かってありったけの罵詈雑言をぶつけてくれればよい』

 

「なんだ、そんなことでいいのかい。……行くよトーマ、さっさとこの夢を終わらせちまおう」

 

「……そうだな、あいつの面も拝めたしな。よし、行くぞお前ら!」

 

「おうよ!」

 

「……」

 

バーダックチームはバーダックに代わり封印された閻魔の館へと向かう。泡沫の夢、一時の白昼夢に過ぎない今を終わらせる為に。

 

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フリーザとジャネンバの闘いは激しさを増していた。

 

フリーザが無数のデスビームによってジャネンバを撃てば、ジャネンバは再び体をブロック状に分解移動しフリーザの背後を狙う。

 

「そんなこけおどしに、このフリーザが引っ掛かると思うなよ!」

 

フリーザは瞬間移動したジャネンバに向かい、全身から放出するデスキャノンを撃つ。

 

確実に当たった筈だが、それでもジャネンバに目立ったダメージはない。

 

(やはりこのままでは今一歩及ばない……どうにかパワーアップする為のエネルギーが欲しいところですが)

 

死後フリーザは地獄行きが決まっていた。しかし魂の状態で抵抗を繰り返し、スピリットロンダリング装置で悪の気を濾されても彼はひたすらに狭間で留まり耐え続けた。

 

それを為したのは帝王としてのプライド。絶対強者として、無様に無力化するのを自身に許さなかった結果だった。

 

だからこそ、復活してすぐに地上へは向かわなかった。むしろ現状を利用して得た肉体を永遠のモノとする為に、大界王へと話を通して取引までした。

 

小賢しい真似を嫌うフリーザだったが、それらの手段によって遂には自分を倒したラディッツを目にして以降、認識が変わっていた。

 

「ばっ!!」

 

超能力と併用した衝撃波によってジャネンバを吹き飛ばすが、すぐに反撃の斬撃が襲ってくる。

 

フリーザはどうにかそれらを避けながら自身もまた不安定な体勢からデスビームを撃ち反撃する。しかし──

 

「なにっ!?」

 

──フリーザのデスビームは、それと全く同じ威力のデスビームによって防がれた。ジャネンバによる技の模倣である。

 

驚愕したことによって生じた隙。それはフリーザにジャネンバの斬撃を命中する結果を作ってしまう。

 

どうにか黄金と化した部分で受け止めはしたものの、骨まで達する一撃にフリーザは片腕が使えなくなることを余儀なくされていた。

 

そこへ、追撃を仕掛けるジャネンバにライオットジャベリンが複数飛来する。

 

再び超サイヤ人3へと変身したバーダックはフリーザを力強く睨み、怒りによって先程以上の戦闘力を発揮していた。

 

「フリーザ、俺はお前を許したつもりはねえ。それとこれでギネを助けた借りは返したぞ」

 

「フフ、あまり調子に乗らないことです。このフリーザを許さないなどと口にできるのも今だけですよ」

 

「ほざけよ。オラァ!」

 

フリーザへと向けた視線を逸らし、バーダックはジャネンバへと特攻する。馬鹿の一つ覚えのようであって、これがバーダックの基本戦法であるのだ。

 

それに何も正面から突撃することは悪いことばかりではない。ダメージからは逃れられないが、その分相手に肉薄できるのだ。

 

バーダックの拳がジャネンバを捉え、その体を浮かす。

 

「ウラウラウラウラッ!!」

 

滅茶苦茶でありながら最短でたどり着くバーダックの拳は、確実にジャネンバへダメージを与えていた──が、ジャネンバは口の端から血を流しつつダメージを無視して無造作に剣を振り下ろす。

 

バーダックの右腕が、宙を舞った。

 

「……ッッ!! 関係ねえ!!」

 

腕を切られバランスを崩しながら、バーダックは渾身のスピリット・オブ・サイヤンをゼロ距離で炸裂させ自身も吹き飛ばされることで無理矢理離脱する。

 

「おやおや、さっきの大言壮語はどうしたんでしょうか」

 

「うるせえ……! まだたかが片腕がやられただけだ!!」

 

意地を張り、ひたすらに真っ直ぐジャネンバを睨むバーダック。

 

フリーザはなんだか目の前の男と意地を張り合うのが急にバカらしくなり、迫るジャネンバにデスボールを叩きつけて彼方へ吹き飛ばす。

 

「……やれやれ。バーダックさん、一度しか言いませんからよくお聞きなさい」

 

「嫌なこった。お前からの命令なんて誰が聞くかよ」

 

「話はきちんと最後まで聞きなさい。それにこれは命令ではなく要請です。あなたのパワー、この私に捧げなさい」

 

フリーザから捨て石になれとでも持ちかけられるのかと考えていたバーダックは、それを遥かに越えたフリーザの言葉に思わず二の句が告げなくなる。

 

「呆けている場合ではありませんよ。この戦い、私はどうしても負けるわけにはいきません。本来ならあなたのようなお猿さんの力を借りるのは帝王としてのプライドが許しませんが……目的の為に手段を選ぶ余裕は今の私にないのでね」

 

「……随分とおしゃべりになったな? ええ、フリーザ様よ。大体それでお前があの化け物に勝てる保証はあるのかよ」

 

バーダックは切り落とされた右腕を押さえながら、嘲るようにフリーザの顔を見上げる。

 

「確実に、間違いなく倒して見せましょう。そのときは精々このフリーザに感謝するといいですよ」

 

「それだけは絶対にねえな」

 

言いつつ悩むバーダックだったが、すでにジャネンバは接近してきている。だがそこへ、一度避難したパイクーハンがオリブーを引き連れて戻ってきた。

 

「待たせたなバーダック! ……そいつは一体誰だ?」

 

「お初にお目にかかります。私の名はフリーザ。かつて宇宙の帝王と呼ばれた男であり、あの化け物を倒す算段を有した唯一無二の存在です。ま、バーダックさんの協力ありきですけどね」

 

「なんだと……?」

 

「来るぞ!」

 

オリブーが突進してきたジャネンバを受け止め、そのまま投げつける。だがジャネンバは地面へ叩きつけられながらも即座に受け身を取り、まるで逆立ちのような姿勢からオリブーへと強烈な蹴りをそのアゴにお見舞いする。

 

「ぐあっ!?」

 

「オリブー! くそっ、仕方ない! バーダック、ここは俺たちが食い止めるからさっさとそのフリーザとやらをパワーアップさせろ!!」

 

言いながらジャネンバの腰へとしがみつき、バックドロップの要領で地面へと再び叩きつけるパイクーハン。オリブーもまたアゴをさすりながら命がけの時間稼ぎへと挑む。

 

「さあ、あの方の言うとおり猶予はありませんよ。それとも、ここで意地を張って地上で平和を謳歌しているあなたの息子さん方に、無惨な結末を押し付けたいのですか?」

 

「ぐむぅ……!!」

 

唇を噛みきるほどに怒りと悔しさをこらえるバーダック。残った左拳を握りしめ、そちらの掌からも血が滴る。

 

「……勝てるんだな」

 

「何度も言わせないでください。勝ちますよ」

 

バーダックは拘りも蟠りも一度放り投げ、残る全パワーをフリーザへと注ぎ込む。

 

膝を着くバーダック。そしてフリーザは、パイクーハンとオリブーをそれぞれ地面へと叩きつけたジャネンバを見て嗤っていた。

 

「フッフッフ……ハーハッハッハッハッハ!! 特等席でご覧なさい! これがこの帝王フリーザの、真のパワーです!!」

 

気が溢れ、さながら炎が燃え上がるようにフリーザの全身を包み込む。

 

フリーザの体が一回り大きさを増し、白を金へと染め上げる。

 

爆ぜるようにフリーザの気が膨れ上がると、黄金へと変わったその姿を衆目に晒すようにフリーザは両手を下に向けて出迎えるような構えを取る。

 

「これが私の真の姿です。そうですね、見た目通りゴールデンフリーザとでも名乗っておきましょうか」

 

「……趣味の悪い色してやがる」

 

今のフリーザの内を占めるのは余裕と慢心。しかし、慢心せずして何が帝王かと言わんばかりにフリーザは無造作にジャネンバへと一歩踏み出す。

 

「ジャネンバァッ!!」

 

フリーザから迸る圧倒的な気を前にして怯んだジャネンバだが、その怯えをかなぐり捨てるように先ほどのバーダックを模した特攻を仕掛ける。

 

「ギッ……!?」

 

閃光。バーダックの目に見えたのはそれだけだった。

 

気がつけばジャネンバが体の表面を削られ縦に回転しながら吹き飛んでいく。

 

「おやおや、少々やり過ぎてしまいましたかね。でもこれは私にとって必要な戦いですので。恨まないでくださいね?」

 

言いながらフリーザは再び無造作に踏み出す。

 

「ガアッ!!」

 

ジャネンバはどうにか抵抗しようと構えるが、その時にはすでに目の前にフリーザが立っていた。

 

「ヒャァ!」

 

再びフリーザのデスビームが至近距離で決まる。否、それはデスビームではない。さらにそれよりも発動を早くした技、デスバレットである。

 

「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャッ!」

 

無数のデスバレットによって全身にヒビが入るジャネンバ。フリーザのデスバレットが収まった頃にはもはやまともに立っていられないほどのボロクズと化していた。

 

「ガ……! ギガ……!!」

 

呻き、唸りながらなおも戦おうとするジャネンバ。フリーザはそんなジャネンバに向けて柔らかな笑みを浮かべると、人差し指を頭上に向けて巨大なデスボールを形成する。

 

「では、ごきげんよう」

 

「ゴアアアアアアアア……! ア、アア……!!」

 

素体となったサイケ鬼もろとも完全消滅させられるジャネンバ。消滅に伴い、地獄の風景も変わっていく。

 

「さて。どうせならここであなたも消してしまった方がいいんでしょうが……」

 

言いながら振り向いたフリーザは人差し指をバーダックに向けながら邪悪な笑みを浮かべる。

 

「ま、やめておいてあげましょう。この力をもっと磨くためには、ある程度近い実力者も必要ですしね。ホーホッホッホッホ!」

 

笑いながら立ち去るフリーザを見て、バーダックは静かな決意を固める。

 

「……今に見ていやがれ。テメエが笑う余裕なんぞないくらいに俺も強くなってやるからな……!!」

 

腕を庇いながら立ち上がるバーダック。そんな彼の前に、閻魔の館から降りてきたバーダックチームの面々がやってくる。

 

「キャー! バ、バーダックの腕がー!」

 

「……騒ぐんじゃねえギネ。これぐらいなら大界王のじじいが治せる。トーマ、その辺にぶった斬られた腕落ちてると思うから拾ってくんねえか」

 

「お、おうわかった。すげえな、あの世ってのは」

 

腕がないにも関わらずさして動じないバーダックに少々引きながらトーマがトテッポとパンブーキンも交えて腕を探しに行く。

 

「……やれやれ、これでこの夢も終わりかね」

 

「セリパ……」

 

「変な顔すんじゃないよ。ま、来世なんてものがあるならまた会えるのを楽しみにしているさ。そんときゃ、真っ先にギネを見つけてやるんだよ?」

 

「セリパ姉……」

 

ギネはバーダックにくっつきながらセリパの言葉に顔を赤らめる。

 

「バーダックあったぞ! あちこち焦げてるけど大丈夫か、これで」

 

「問題ねえって。ありがとな、トーマ」

 

「気にするんじゃねえよ。お前こそ、油断するんじゃねえぞ」

 

トーマの言葉にバーダックは不敵な笑みを浮かべる。

 

「ああ、フリーザの野郎は俺が見張っててやる。アレの好き勝手にはさせねえよ」

 

「なら安心だ。お、どうやらそろそろらしいな」

 

話をしていたトーマの体が光の粒子に分解され、色褪せていく。

 

「あ、あのねあのね! えっと、その、大好きだよバーダック!」

 

瞳に涙すら浮かべてギネが想いを伝える。

 

「あたしから言いたいことはもうないよ。元気でな」

 

疲れた様子を隠そうともせずセリパが告げる。なお彼女の言葉がもっとも閻魔の館を覆う結界と閻魔にダメージを与えていた。

 

「どうせならあの世で最強になっちまえ。フリーザの野郎なんかに負けるんじゃねえぞ」

 

拳を突きだし、バーダックをトーマが激励する。

 

「……次は飯が食えるといいな」

 

「やっと喋ったと思えばそれかよお前」

 

トテッポとパンブーキンが言葉を交わしながら消えていく。

 

全員が消えたのを見届け、バーダックの胸中を束の間の寂寥感が襲う。

 

やがてその様子を見守っていたパイクーハンが近づくと、バーダックの顔は再び戦士の顔に戻っていた。

 

「さっさと戻るぞパイクーハン。今度の大会までにはお前ももっと強くなっておけよ」

 

「無論そのつもりだ。お前に負ける気なんぞない」

 

軽口を叩きながら大界王の下へ報告に向かう一同。

 

地獄の風景は、いつも通りに戻っていた。

 

 




悪の気が足りないからバーダックの気を起爆剤にパワーアップしたフリーザ様(´・ω・`)
ちなみにこのバーダック、大界王に直接スカウトされたif存在ですのでクッソ強いです。具体的には超サイヤ人3で初期のプラチナクウラと互角なくらい。
それだとジャネンバが強くね? と思った方がいたら本編を読み返していただければ理由はお察しいただけるかと。アイツこの作品のセルやらフリーザの悪の気が含まれてます。
しかもこのゴールデンフリーザはまだ完全ではないのでまだまだパワーアップするという。
でもってここまで書いて思ったけど、ホントフリーザ様って味方にしても味方に見えねえわ(笑)
あ、ちなみにオリブー以外は他の場所に行ってます。

ではでは次回予告~♪

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懐古。それは過去を懐かしむ気持ち。
失われた筈の者達との再会は、彼らに何をもたらすのか。
次回【郷愁】。真の誇りを、余さず示せ。


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