ドラゴンボールR【本編完結】   作:SHV(元MHV)

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あるすとろめりあ改さん、文体指摘ありがとうございます( ̄▽ ̄;)
ISは知らないけど『あいあむあいあんまん』楽しく読ませてもらってます(´・ω・`)♪

ゆーの助さん、誤字報告ありがとうございます。


さて、色々異論反論あるかもしれませんがこれが自分にとっての彼のその後です。


第50話【流転】

その日、昼休みを過ぎた頃に突如としてレッドリボン軍本部にけたたましい警報音が響いた。

 

執務室隣の応接室でカレーを食べていたラディッツが急ぎ口許を拭いている間に、ブラック補佐が口の中のステーキを無理矢理飲み干し即座に観測室へ連絡を取る。

 

すると、隣の執務室からクリムゾンが同じく口許を拭きつつ現れた。

 

「ラディッツ、超サイヤ人・オリジンへ変身してすぐに中の都の北西28KSの5地点へ飛んでくれ。私も変身したらすぐに行く」

 

「なにがあった」

 

「時空震が観測された。タイムマシンだ」

 

クリムゾンの言葉にラディッツは無言で頷き、窓から外へ飛び出す。

 

「また、セルとやらが来たのでしょうか」

 

不安を隠せず、クリムゾンへ問いかけるブラック補佐。禿頭(とくとう)は相変わらずだが、その顔に刻まれた深い皺に時間の流れを感じさせる。

 

「わからん。別時空で同じ結論に至ったヤツかもしれんし、そうでないかもしれん。だがそうであった場合、ヤツが動く前に最大戦力をぶつけなければならん」

 

クリムゾン総帥はそう言って同じく窓から飛び出すと、その頃にはラディッツは既に空を飛びつつ衛星からの光を浴びて変身している。

 

クリムゾンもまた、特設されたヘリポートにも似た場所へ移動して変身を開始する。

 

『超ブルーツ波発生装置を起動します』

 

プロトの声がスピーカーから響き、クリムゾンの周囲を囲むようにして八ヶ所に現れたパラボラアンテナ状の発生装置がそびえ立つ。

 

現状、クリムゾンが変身する為に必要なエネルギーは膨大であったが、これをあっさり解決する方法があった。ブルーツ波である。

 

真紅の肌へと変わるクリムゾンセルの実態は、ラディッツと同じく超サイヤ人オリジンに近い。なお超サイヤ人オリジンとは原種超サイヤ人のことであり、言い方がややこしいということでクリムゾンに改められた。

 

最初に変身した際クリムゾンが無意識に月からの集束ブルーツ波発生装置を利用したのもその為である。

 

「殖装!!」

 

掛け声と共に光がクリムゾンを包み、変身そのものは時間にして数秒で完了した。

 

「……よし、行くか」

 

クリムゾンは額に指を二本当てて、目的地へと瞬間移動した。

 

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ポイントには、すでに地球の戦士がある程度集結していた。

 

場合によっては迎えに行こうと思っていただけに手間が省けたとも言える。

 

残りの戦士もすぐに集まってくるが、クリリンは気がつけば自分の後ろにいたクリムゾンセルに驚く。

 

「おわぁ! クリムゾンさんいつの間に!?」

 

その言葉に、クリムゾンは微笑をもって答えた。

 

「瞬間移動というヤツだ。セルからパクった」

 

「へ~便利だな! なあなあクリムゾンのあんちゃん、今度オラにも教えてくれよ」

 

「構わんぞ。というか別の世界ではお前から学習したようだぞ、セルのヤツは」

 

「そうなんか! すっげえな、違う世界のオラ」

 

クリムゾンがやってきた様子を興味深そうに見ていた悟空がクリムゾンに瞬間移動を教わろうと教えを請うてくる。

 

しかし、話す時間は僅かしかなかった。ピッコロが、タイムマシンが出現する気配を感じ取ったからだ。

 

「親父、来るぞ」

 

ピッコロの言葉にわずかに緩んでいた空気が一瞬で引き締まる。

 

すると彼らの目の前で、突然風が吹き始めた。風は次第に激しさを増し、やがて蒼電が空気中に走り始める。

 

蒼電が増すに従って、空間の一部が歪み始める。球形に歪んだ空間が一気に実態を取り戻すと、そこには一機のタイムマシンが鎮座していた。

 

「全員取り囲め! 私の合図があるまで攻撃は控えろっ!!」

 

タイムマシンの周囲を、この事態に合わせて選抜された面々が取り囲む。

 

16号、ベジータ、悟空、ラディッツ、ピッコロ、クリリン、クウラ、そしてクリムゾン。

 

しかしタイムマシンに乗っている存在を見て、ベジータが真っ先に声をあげた。

 

「トランクス!!」

 

その声に一同はわずかに緊張を解くものの、当のベジータ本人が臨戦態勢を解いていないことからすぐに気を引き締める。

 

そして、キャノピーが開きそこから驚愕の表情を浮かべたトランクスが降りてきた。

 

「こ、これはどういうことだ……!! 父さんに16号、それにセルだと!? 一体、俺はどこへ来てしまったんだ!?」

 

困惑する表情のトランクス。クリムゾンはまだ警戒していたが、すでにベジータの我慢が限界を超えていた。仕方なくクリムゾンは手をあげて、全員に臨戦態勢を解くよう指示する。

 

即座にトランクスへ駆け寄るベジータ。トランクスは困惑しながらも心配そうに自分の体を触る父親に奇妙な表情をしている。

 

「なにがあったというのだトランクス。いや、お前の時代は一体どうなったのだ」

 

身長的に見上げるような形になってしまうベジータだが、その視線から感じる本物の情愛にトランクスは逆に困惑してしまっていた。

 

「……どうやら、騙されたようね。トランクス、ひとまず状況を整理しましょう」

 

「マイ! ……わかった」

 

タイムマシンから降り立った黒髪の女──マイは、その鍛え上げられた観察眼で集団の指示を取っていたクリムゾンへと歩いていく。

 

「あなたがこの世界のリーダーなのかしら」

 

「指導者として言うなら、私が率いているのはレッドリボン軍に過ぎない。少々、規模は大きいがな。私からもいくつか質問がある。ひとまず移動するとしよう」

 

言ってクリムゾンは変身を解く。その出来事にトランクスとマイは驚くが、こんなものはまだ序の口である。

 

「みんな、ひとまずはレッドリボン軍へ跳ぶぞ。直接でなくて構わないから、私に掴まってくれ」

 

「よぉし、オラ覚えちゃうぞ」

 

「いやさすがに一回体験しただけじゃ無理だろ」

 

「ひと安心ならいいんだがな」

 

「おいトランクス、何があったか知らんがもう大丈夫だ。パパがついてるぞ」

 

「……俺も嫁さん探すかね」

 

「総帥、タイムマシンはどうしますか?」

 

わいわいがやがやと言わんばかりではあったが、一同はひとまずレッドリボン軍本部に移動するのであった。

 

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戻ってきた一同はクリムゾンの執務室隣にある応接室へと集まり、ひとまずはトランクスの話から聞くことにした。

 

長い、永い話だった。絶望の未来。別世界へと託した希望。打ち砕かれた平穏。そして…… 

 

そこで彼らの住んでいた世界はすでに“消滅”してしまったことが話され、室内に気まずい空気が漂う。

 

「……悟空ブラックにザマスか。そうか、ヤツはザマスというのか。そうかそうか」

 

さらに暗く笑い始めたクリムゾンに全員が引き気味になる中、話をラディッツが引き継ぐ。

 

「あー、そいつはちょっと放っておいてやれ。トランクス、今の話を聞いた上で一度整理したい。多少は推論もあるが、いいか?」

 

「は、はい。えっと……」

 

「ラディッツだ、カカロットの兄にあたる。まずお前の話を整理しよう。お前の世界と言うとややこしいが、未来から帰還したお前さんはその世界でセルを倒し、魔人ブウをも倒した。だがその後突如として現れたカカロットの肉体を持つ界王神ザマスによって地球が壊滅。未来に援軍を求め辛くも勝利したが、お前の世界は全王なる存在によって消滅。破壊神の付き人であるウィスという男の案内で、ザマスが破壊する前のお前の世界の過去に帰る()()だった」

 

「はい……」

 

沈鬱な表情で俯き返事をするトランクス。その隣ではマイが心配そうに彼の手を握っている。

 

「だがいざタイムマシンがワープしてみれば、やってきたのは見知らぬ世界。おまけにお前らを案内するはずだった付き人のウィスはどこにもいない。なるほど、確かに騙されたと考えれば多少は納得がいくな」

 

腕を組み、淡々と告げるラディッツだが、その態度が気にくわない男が一人いる。ベジータだ。

 

「さっきから聞いていればラディッツ! 貴様この意気消沈したトランクスへ少しは気を使えんのか!!」

 

超サイヤ人になりかねない勢いで激昂するベジータだが、ラディッツはその様子を見てもどこ吹く風といった様子で相手にしていない。

 

そして静かなにらみ合いを始めてしまったラディッツに変わって、部屋の隅で立っていたピッコロが口を挟む。

 

「俺からも推論だがいいか?」

 

「あ、はい。ピッコロさん、なんですよね……?」

 

自分の知るピッコロと比べて遥かに巨体となっている彼を見上げてトランクスは思わず尋ねる。

 

「ああ、まあこちらの世界では色々あってな。お前の知っている俺は神と融合したのか?」

 

「は、はい。凄まじいパワーがありましたが、あなたほどではありません」

 

「そうか、そいつはいい。……さて、俺の推論だがな。ひょっとして、トランクス達は騙されたわけじゃないんじゃないかということだ」

 

「どういうことだ、ピッコロ」

 

ラディッツはピッコロの意見が気になり、にらみ合いを中断してそちらの方へ向く。

 

「いやなに、全王とかいう輩は破壊神以上の力を持っているんだろう? そして破壊神に破壊された対象は時間軸の関係なく概念ごと破壊されてしまうと言ったな。そこでだ。破壊神以上の力もとい権能を有する全王がその世界を消滅させたというんなら、その世界はそもそも過去も未来も関係なく消えてなくなってしまったんじゃないのか? 確認はできないが、この可能性は高いと思う」

 

「なっ!? ど、どういうことですか!」

 

あまりと言えばあんまりなピッコロの言葉にトランクスは戸惑いながらも叫ぶ。その声には、どうか今言ったことを否定してほしいという懇願さえ混じっていた。

 

「まあ聞け。聞いていて奇妙に思っていたんだ。なぜお前らは、仲間も守っていた子供も全て等しく消滅させられたというのに平静でいられたんだ? 過去に行けば生きている頃に会える? そんなことでお前は満足するのか? 俺にはなにか、修正力のようなモノが意識に働いたとしか思えん。そしてもしその通りなら、きっとお前達が帰った後、応援を頼んだ世界じゃ滞りなく日常が続いたはずだ。だとするなら付き人は付いてこなかったんじゃなく、付いてこれなかったんだ。認識できなくなったんだからな。そう、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……」

 

──カシャンッ!──

 

ピッコロの言葉に思うところがあったのか、マイが持っていたカップを落として割ってしまう。

 

「そんな……うそよ……あの世界が……そんな……」

 

「マイ!」

 

「すまん、追い詰めるつもりはなかったんだ。だがそうだとするなら、お前達は恐らくこの世界においても異分子だ。いずれ、因果律とでも呼ぶべき何かがお前らを排除しようと働くだろう」

 

「くっ……! だったら俺たちに死ねとでも言うんですか!!」

 

「それは違う。なあそうだろう? 親父」

 

激昂するトランクスを受け流すように微笑しながらクリムゾンへと振り向くピッコロ。そこには先程までの暗い笑みはない。自信に満ちた男の姿があった。

 

「……さきほどはすまなかった。かつて見た未来の宿敵の名前を知って思わず興奮してしまってな。そして私が、このクリムゾンの名において宣言しよう。君たちを決して排除させはしないと」

 

体の芯に響くような力強い言葉。しかしそれでも、トランクスはさきほどの言葉が気にかかってしまう。

 

「ですが、俺達がピッコロさんの言うとおり“滅びの因子”そのものだというなら、この世界もいずれ滅ぼされてしまうかもしれない……!!」

 

トランクスは怯えていた。愛する者を守れたと満足していた自分が愚かしくて。どうすることもできない、悪意を超えた脅威から身を守る術を持たない自分が情けなくて。

 

「……私はかつて、神龍によってこの世界の未来を見た。そこは、君が語った未来と瓜二つだったよ。だからこそ私は今日まで抵抗してきた。愛する妻を、娘を、息子を守るために戦ってきた。“滅びの因子”? それがどうした。私は絶対に屈しない。そして私たちは、そんな“理不尽”にこれまでも抗ってきた。それはこれからも変わらない。破壊神だろうと、全王だろうと、この私の家族に手を出すというなら受けて立とう。そのことを必ず後悔させてやる……!!!」

 

クリムゾンは立ち上がり、赤いオーラを吹き上げる。トランクスはそれを見て、目の前の男ならひょっとしてどうにかなるのではと思った。それは、甘美で心地いい誘惑だった。確信などない。運命などという、不確定な要素に今後も委ねることになる。しかし、目の前の男ならそれさえも打ち砕いてくれるのではと、思わずにはいられなかった。

 

「……先にクリムゾンに言われてしまったが、トランクスよ、俺も同じだ。そんなモノがこの後に待ち構えているというなら、この俺が粉砕してやる!」

 

「オラもだ。どうにもオメエが頼ったオラはみょうちきりんな失敗ばかりしたみたいだからな。たぶん、それも何かの修正力なのかもしんねえ。普通の修行だけじゃなくて、そっちの対策もした方がよさそうだな」

 

「悟空にしちゃ頭回るな。さてはお前、偽物だな?」

 

「ひっでえなクリリン! そりゃねえだろ~!」

 

「……やれやれ。俺も悪かったな。二人とも、心底疲れ果てているだろうに、今そんなことを言ってすまなかった」

 

「俺もだ。すまなかった」

 

次々と声をかけられ、トランクスとマイは困惑する。こんなにも頼る相手がいるということに。

 

「はじめましてだな。俺は人造人間16号だが、中身は元人間で、ヴォミットという。これからよろしくな、トランクス」

 

「は、はいヴォミットさん。よろしくお願いします」

 

「わ、私もよろしくお願いします」

 

巨体を傾げて同じ目線まで下げて握手してくる人造人間16号(ヴォミット)に恐縮するトランクスとマイ。

 

そして最後に、これまで沈黙を保っていたクウラが口を開く。

 

「破壊神の破壊を受けて立つなどと、冗談に聞こえんからあの男は厄介なのだ」

 

ため息さえ吐きながらクウラはトランクスに近づく。

 

「まずは鍛えろ。話はそれからだ。少しはマシになったら、組手の相手をしてやる。俺をガッカリさせるなよ」

 

そう言ってクウラは部屋を出ていく。それが彼なりの不器用な激励であることを察して、フリーザとよく似た彼のことがトランクスは気になる。

 

その疑問は様子を見ていた悟空から教えられた。

 

「あいつはクウラって言ってな。フリーザの兄貴で、オラのライバルだ。あれで案外面倒見がいいんだぜ?」

 

ニカッと笑う悟空の言葉にトランクスは流石に言葉もなかった。だがひとつ思った。ここなら、自分は安心できるのかもしれないと。

 

「よし、話がまとまったな。トランクスよ、さっそく付いてこい。ブルマに説明せねばならんからな」

 

出入り口でトランクスを待つベジータ。トランクスはその子煩悩全開な父の姿に困惑しつつも、これはこれで新鮮だと嬉しさを隠しきれず、マイの手を引いて歩き出すのであった。

 

かつて、ひとつの世界を救った英雄は、流れ流れて魔王の居場所にたどり着いた。そこが安住の地となるかは、これからのお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この話、実はドラゴンボールcの時から考えていましたが、そうなるとcにはマイがメインヒロインにいるんですよ。そのためどうしてもうまく扱えず、お蔵入りしてました。
まああの終わり方と次の章の始まり方に違和感は感じていたので、これが自分なりの推論というか考察になります。なにせ改変するストーリーは師匠がこれ以上ないのを書いてしまわれたんで、今さら自分にあれ以上のお話なんぞ書けねえっす。ほんと丸焼き師匠パない。
まあ穴もあると思いますが、あんまりつっこまんといてください(苦笑)
あー、なんか久しぶりに普通のあとがき書いたわ(笑)

なお先日アブーラおじいちゃんの回想書きましたのでよければどうぞ。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=168416&uid=35351


さて、それでは次回予告です。
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遂に集う、全世界の強者達。
ひしめく悪意と闘志の中で、男達は向かい合う。
これが、究極の戦いだ。
次回【開幕】。全選手入場ッ!!

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