ドラゴンボールR【本編完結】   作:SHV(元MHV)

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いつもありがとうございます!!!!
今回はいよいよあのキャラの登場! そして私がなぜ皆さんにあの声優について質問したか意味がわかります(´・ω・`)

では思いっきり不穏なタイトルですが、ひとまずグロ描写は抑えました。カットしたとも言う。
安心してお読みください( ゚∀゚)(笑)


第40話【壊滅】

天界。

 

高度約20キロという成層圏に存在する地球における聖域である。

 

広さはそれほどではないが神が暮らす宮殿があり、その中には“精神と時の部屋”などの特殊な環境を備えた場所もいくつかある。

 

そこより更に高く、高度約50キロ。成層圏界面にある超高空にて、三つの人影があった。

 

ひとりは以前、天津飯ら【梁山泊】を名乗る地球の達人らを監視していた眼鏡をかけた赤毛の女。白衣をたなびかせ、無表情に眼下を見下ろしている。

 

もうひとりは以前ターレスと一緒にいた、黄緑色のアーマーを着込んだオレンジ色のモヒカンヘアーの巨漢。その名を人造人間16号という。

 

──そして、最後の一人。どこか昆虫にも似た黒い甲殻と、斑点のある緑色の皮膚。紫の隈取りにも似た頬に、白い面。

 

セル。

 

彼こそはドクターゲロが目指した究極の人造人間である。

 

「さあ、やれ。()()()()は有意義に過ごせたのだろう? 貴様がやらないと言うならば、この私がこの大陸ごと消滅させてやるだけだぞ」

 

「……くっ!」

 

悔しさのにじみ出る表情で16号がセルを睨むがセルはそれをまるで気にしない。

 

そして16号は意を決したように両腕をその二の腕で挟み込む。

 

──カチッ──

 

機械的な音と共に彼の腕の肘から先が外される。

 

苦渋の表情を浮かべる16号は、これから奪うであろう多くの命に対して一言しか言えなかった。

 

「すまない……! ヘルズフラッシュ!!」

 

人造人間16号の腕より放たれた極光は、カリン搭を飲み込み下にある大地を破壊し尽くした。

 

__________________________________

 

 

極光はカリン搭と同じ大陸にあるレッドリボン軍本部でも確認された。

 

あまりのエネルギー量にあらゆる通信機器が使用不能となった。着弾に伴う衝撃は緊急事態に展開されるバリア装置によって大半が緩和されたものの、地震まではそうはいかない。

 

しかし、これらの緊急事態であっても真っ先に動く者がいた。

 

クリムゾンである。

 

「全戦士に連絡! 観測班はエネルギーの特定を急げ!」

 

未だ収まらない地震の揺れのなかで、クリムゾンは体勢をどうにか維持しながら部下へと指示を出す。

 

それを聞いて兵士達も自分のできることをしようと、通信兵などは這ってコンソールへとしがみつく。

 

「ターレスが1年ほど前に警告してきたヤツか……? だが一体どこに潜伏していた!」

 

「親父! 無事か!?」

 

司令室の扉を破壊しかねない勢いで部屋へと入ってきたのはピッコロ。巨体となった彼に合わせて、出入りする部屋の入り口は全て大きさが変わっていたりする。

 

「問題ない! それよりも結界を張れ! それと衝撃の方向がカリン搭に近い! 誰かを向かわせるんだ!」

 

クリムゾンはピッコロに簡易的な指示のみを与え、自身もまた司令席へとしがみつきモニターを睨み付ける。

 

後半の指示を受けた兵士らがターレスやラディッツに報告する中、さらなる衝撃がレッドリボン軍本部を襲った。

 

「ぐあっ……!!」

 

天井を貫き、現れたのはクウラだった。右半身を丸々抉り取られかのように欠損しており、口からは紫の血を吐き出している。

 

そしてクリムゾンらにそれを気にする余裕すら与えず、クウラを半殺しにした張本人が破壊された天井部分から現れた。

 

「やれやれ……フリーザ一族のようだから少しは期待したんだがな。とんだ期待外れだ、殺す価値もない」

 

「ゴブッ……! ギ、ギサマァッ!」

 

血が口中に溢れ返りながらもクウラは自身を圧倒した相手──セルを睨み付ける。

 

「な、なんだこの化け物は……!!」

 

ピッコロは心底から驚愕していた。最長老の記憶と力を引き継ぎ、真の超ナメック星人として覚醒した彼は純粋な実力は地球の戦士らにおいて最も高い。

 

その彼をして、目の前に現れた存在は化け物と言えた。

 

「ん? 貴様はピッコロか? ずいぶんと風体が違っているな。クックック、やはりこの世界はいい。あの滅びた世界よりもよほど素晴らしい素材が揃っている」

 

そのどこか聞き覚えのある声が話す内容に不快感を覚えたピッコロは、この場での全力戦闘を覚悟する。が、それはクリムゾンによって制された。

 

「……聞きたいことがいくつかある。貴様は“セル”か? だとすればなぜこんなところにいる」

 

「ほう、流石は私の細胞のオリジナル。すぐに私の正体に気がつくとは、誉めてつかわそう。私がここにいるのはシンプルな理由に過ぎん。即ち、()()()()()()と戦う為だ。……どうやらこの世界が私の知る歴史と大きく異なっているのは、貴様の影響のようだな、クリムゾン」

 

全く同じ声が会話をすることにピッコロは不快感の正体を悟る。

 

セルという存在が語った()()()()()という言葉。ピッコロはわずかに動揺しつつも、ふたりの対峙から目が離せなかった。

 

「……タイムマシン。いや、並行世界でも移動してきたか? ふん、ただ強者と戦いたいならば貴様の宇宙にいる破壊神とでも戦えばいいものを」

 

「くっくっくその通りだな。だが残念ながら、あちらの世界では間抜けな界王神が私に逆らったせいで破壊神は既に死んでいる。魔人ブウも拍子抜けするほどに呆気なかったぞ。それとここへ来た方法は貴様の推測通りだ。改造したタイムマシンを使い、私はやってきた」

 

会話ができている内に少しでも情報を収集しようとするクリムゾン。それには時間稼ぎの意味合いもあったが、どうにもその狙いはセルにバレているように感じていた。

 

「魔人ブウ……? コルドが言っていた太古の災厄か。それがどんな存在か興味が尽きんが、どうやら貴様はずいぶんと腕に自信があるようだな。だが、この世界に来たのが運の尽きだ」

 

クリムゾンが言い終わるのと同時、破壊された天井から地球最強の兄弟戦士が降り立った。

 

「クリムゾンのあんちゃん! カリン搭が消えちまった、これじゃドラゴンボールが使えねえ!」

 

真っ先に降りてきたのは孫悟空。すでに超サイヤ人3へと変身しているが、その姿は以前悟飯を前に披露した際よりもやや細身になっており、溢れんばかりの気が軒並み彼の裡へと納められているのがわかる。

 

「貴様、何者かは知らんが生きて帰れると思うなよ」

 

続いて現れたのは、上半身に赤い体毛を生やした形態へとすでに変身したラディッツ。彼はこの形態を原種超サイヤ人と呼んでおり、レッドリボン軍による研究を経てその特性が明らかにされていた。以来、ラディッツはこの形態の力を引き出す為の修行に努めており、今となってはさらなるブルーツ波を浴びることによってパワーアップすることさえ可能としている。

 

「くくく、残念ながらドラゴンボールは無しだ。あれを使って私を宇宙の果てへ瞬間移動させることは可能だからね。下らない時間稼ぎはさせんよ。それと、仙豆ももはや数に限りがあるんじゃないかね? ふふっ、大きなダメージを受ければそれだけで死人がでかねん。是非とも必死になって私を倒しに来てくれたまえ」

 

両腕を開き、自信たっぷりな様子で三人の超戦士を挑発するセル。

 

最初に動いたのはピッコロだった。

 

「だっ!」

 

その巨体からは想像もつかないほどに俊敏に動いた彼の蹴りが、気づけばセルの上げた腕によってあっさり防がれる。しかし巨大な気がぶつかり合ったにも関わらず周囲への被害が起きなかった。クリムゾンはすぐに、セルがあえてピッコロの気と相殺させた為に起きている現象であると理解する。

 

「でりゃあっ!!」

 

続いてセルへと向かっていったのは悟空。ピッコロが溜めの動作を作ったのに合わせてセルが前傾になった僅かな隙を突き、強烈な膝蹴りを側頭部へと食らわせる。

 

──だが、その結果に周囲は騒然となる。

 

「どうした孫悟空。そんなものかね」

 

悟空の星をも砕かん威力の膝蹴りを受けて、セルは微動だにしていなかった。

 

「はっ!」

 

「だりゃあっ!」

 

「うあたぁ!」

 

動揺を隠し、戦士三人はセルへと突っ込む。

 

しかし──

 

「ぶるぁ!」

 

──そのどれをもセルからカウンターを食らい吹き飛ばされる。悟空とラディッツに至っては変身が解け、気絶してしまっている。

 

どうにかピッコロのみは体勢を崩さなかったものの、大きくダメージを受けて吐血していた。

 

「すばらしい、実にすばらしい。これほどの強者と戦えたのは100年ほどぶりか。ボージャックなどよりもよほど楽しめたぞ。ふはははははははっ!」

 

セルは言いつつクリムゾンへと近づいていく。

 

「クリムゾンよ、私がなぜこんな場所へとわざわざやってきたかを教えてやろう。先ほど貴様は私のオリジナルだと言ったな。すなわち、貴様を吸収することは私の更なる飛躍を意味するということだ」

 

セルは自らの背中に収納された尻尾を大きく伸ばし、針状だった先端を口のように大きく広げクリムゾンへと向ける。

 

クリムゾンは動かない。下手に抵抗しても無駄なことを悟っているし、それによって()()()()()()部下をも刺激してしまう可能性を理解しているがゆえに。

 

「…………なるほど、どうりでこちらへ余波が来ないように気を使うはずだ。だが断言してやろう。貴様は私を吸収したことを後悔することになるぞ」

 

クリムゾンは彼我の戦力差を理解し、現状がほぼ詰みに近い状況だと悟る。ゆえにポケットのなかで密かにカプセルをひとつ解放する。

 

「ふふふ……ふっはっはっは! いいぞ、素晴らしい強がりだ! 私の究極体への進化の贄となる者が、最後に言い放つ言葉としては実に愉快なものだな! はっはっはっはっは! ……ではさらばだ」

 

ひとしきり嗤ったセルは、一瞬でクリムゾンを一飲みにして咀嚼するように尻尾をしまい吸収する。

 

「親父ぃー!!」

 

ピッコロはダメージにも関わらずセルへと突っ込む。しかし彼は止まらない。

 

「ふん!」

 

「ごはっ! ぐ、くっ! お、おのれぇ……!!」

 

セルはボディーブローの一撃でピッコロの内臓を滅茶苦茶に破壊して気絶させると、そのまま上空へと浮かび上がって破壊のエネルギーを掌中に溜め始めた。

 

その顔には、悪意のみが浮かんでいた。

 

 

__________________________________

 

 

セルの襲撃から1時間後。

 

レッドリボン軍本部()()にて、地球の有力な戦士達全員が集まっていた。

 

彼らは一様に惨憺たる有り様となったレッドリボン軍に驚愕していた。

 

セルは、クリムゾンを吸収しピッコロを気絶させた後、まるで面白半分と言わんばかりにレッドリボン軍本部基地を壊滅させていった。兵士達も抵抗したが、鎧袖一触とばかりにその大半が殺されてしまった。

 

その上、なにも殺されたのは兵士だけではない。基地にいた幹部クラスの大半が犠牲になっていた。すなわち、ブルー将軍やブラック補佐といった側近。シルバー将軍やイエロー将軍といった実務部隊の司令官である。

 

──そして、クリムゾンの妻であるバイオレットと息子であるモーブまでもが、セルの放った気功波によって命を奪われていた。

 

「……情けないっ! この俺が手も足も出んとはっ!! ドクターゲロ! 今すぐ俺の戦闘力抑制装置を解除しろ!!」

 

怒りも露に壊れたコンソールをさらに破壊するクウラ。それでも周囲に被害がいかない辺りは見た目よりも冷静なのだろう。

 

「そ、そんな……! クリムゾンさんが吸収されちまうだなんて! ドクターゲロさん、一体そのセルってヤツは何者なんだよ!」

 

一足遅れて事情を聞いたクリリンがドクターゲロに尋ねる。彼がたどり着いたとき、そこには明確な破壊の跡だけが残されていた。

 

そこで発見した瀕死の悟空、ラディッツ、クウラを咄嗟に持っていた仙豆で回復させたクリリンは、これまでまだ生きている者達の救助に当たっていたのだ。

 

そして地下の研究室にいたため無事だったドクターゲロは、家族を奪われ泣き疲れて眠ってしまったスカーレットを一瞥すると、厳かに口を開いて現状わかっていることを説明しだした。

 

「……まず、ヤツはワシが研究していたセルではない。なぜならば、まだセルの研究は途中段階だからじゃ。小さな試作体であるプロトセルが出来上がったのがつい先日じゃ。そしてそれはあやつのように成長することはない。とはいえ破棄するのも勿体なかったのでな。クリムゾンのヤツめに預けておいたのだが、この現状ではそれもすでに破壊されておるじゃろう」

 

言いつつドクターゲロはこれまで記憶野の調整を理由に封印していた17号と18号。そしてガーリックJr.経由で手にいれた()()()()を搭載した16号を起動する覚悟を決める。

 

「ではヤツは、やはり別の世界から来たというのか」

 

訝しげに問いかけるラディッツ。その目にはドクターゲロに対する不信感が現れている。

 

「……タイムマシンを応用したものを使ってこの世界に来たというのは本当だろう。タイムマシンに関しては以前親父がブルマと研究しているのを聞いたことがある。忌々しいが、ヤツは並行世界から現れたセルなのだろう。こちらとは違う歴史を辿った、な」

 

ピッコロは以前、クリムゾンがブルマ経由でタイムマシンに関するレポートを読んでいたのを見たことがある。それによればかつてオオモリという老人が、タイムマシンを開発しようとしたと記されていた。

 

その後、タイムマシンが理論上開発可能なことが改めてブルマによって判明しており、クリムゾンは備えのひとつとして共同研究を進めさせていた。

 

「ヤツがどこから来たかなどどうでもよいわ。そりよりも問題はヤツの目的だろう。クリムゾンを吸収した際のやり取りを聞く限り、セルとかいう輩はクリムゾンを()()()()()と言ったそうだな。ドクターゲロ、それはつまりセルの細胞がクリムゾンから作られたということか」

 

話が進まないのを見かねた桃白々がドクターゲロへと尋ねる。ドクターゲロは長く伸びた髭を撫でながらなんと説明したものかと少し考え、答えた。

 

「……そうさな。オリジナル、というのは正しいが間違ってもおる。以前人造人間には適性があるというのを説明したこと、覚えておるか?」

 

「ああ、そういえばそんな話もしておったな」

 

「クリムゾンの細胞は人造人間への適性が極めて高い。元々セルの細胞は、サイヤ人、地球人、ナメック星人、フリーザ一族といった、ありとあらゆる強者の細胞の持つ特性の良いとこ取りをしたような存在じゃ。そして人造人間への適性が高いということは、それら他種族の細胞から力を引き出す地球人の特性が高いものを指すのじゃ」

 

「つまりクリムゾンの細胞は、細胞同士の融和剤ってところか?」

 

「ま、そんなところじゃな」

 

ターレスからの質問にドクターゲロは答えると、近くの椅子を起こしそれに座る。

 

「そしてセルは、他の人造人間を吸収することで完全体へと進化する能力を持たせる予定()()()()

 

「予定ということは、つまり今は違うということか」

 

「……恐らく、ヤツがいた世界ではクリムゾンは既に死んでおるのじゃろう。死んだ細胞を吸収したところで意味はない。でなければ今さら初期の細胞に必要だったものを吸収する必要がないからの。しかし映像に残るヤツの姿は以前完全体に想定したものと同じ姿じゃった。当初の予定通り17号と18号を吸収して完全体となったんじゃろうな」

 

ドクターゲロは一息ついて言葉を止める。普段会話することさえ最小限な彼にとっての長話は思った以上に彼から体力を奪っていた。

 

「ワシはクリムゾンからの助言を受け、セルを完全体にするのに他の人造人間を吸収させることなく、エネルギー吸収装置を応用した能力を持たせることでそれを可能としようとしたのじゃ。13号のようにな。……今となっては、叶わぬ夢じゃがのう」

 

どこか疲れたように語り終えたドクターゲロ。一同はセルの情報を知らされたことで彼の狙いを再び考える。

 

「……オラ、アイツと戦って思ったんだが、あのときアイツはかなり手加減をしてたんじゃねえかと思う」

 

「……やはりお前もそう思うか」

 

悟空の言葉にラディッツが追随するように語りかければ、自身も同じことを思ったのかピッコロも無言でそれに頷く。

 

そしてその言葉を聞いて、クリリンが最悪の可能性を思い付きそれを言葉にする。

 

「じゃ、じゃあまさかセルってヤツは、クリムゾンさんの細胞を取り込むことで……!」

 

「殺せなかったのではなく、殺すつもりがなかった。ヤツの目的は、俺たちそのものか……!!」

 

ピッコロが拳を握りしめ、怒りのあまり握りこんだ拳から血が滴る。

 

「──その通りです、みなさん」

 

「誰だっ!」

 

いつの間に現れたのか、空間から滲み出るようにして赤毛の女と人造人間16号が現れる。

 

ラディッツが真っ先に反応し前に出るが、彼女の顔を見て固まってしまう。

 

「ス、スカーレット!?」

 

「え、スカーレットちゃんならここに寝てるぞ」

 

彼が思わず上げた声にクリリンが反応して眠るスカーレットを見るが、彼女はまだ目を覚ましてすらいない。

 

「……? その方との相似性については気になるところですが、私は人造人間21号です。偉大なるセル様によって創造された最後の人造人間になります」

 

彼女の言葉を聞いてもラディッツの確信は消えなかった。

 

癖のある赤毛。やや強気なつり目気味の目付き。さらに赤と青のアシンメトリーのワンピースの上から着た白衣と眼鏡といった装いは、幼いスカーレットがドクターゲロの研究を手伝っている際の格好にそっくりだったのだ。

 

もしここにクリムゾンかバイオレットがいれば、間違いなく彼女が自分達の娘だと断言しただろう。

 

一方ターレスは、かつてクリムゾンへの警告を言付けた男である人造人間16号と対面していた。

 

「……お前」

 

「ああ、言えなくてすまない。俺は人造人間16号だ。必要以上のことを喋れないよう、プログラムされているんだ」

 

ターレスは気まずそうに俯く16号へ声をかけると、16号は心底申し訳なさそうに答える。

 

しかしターレス以上に16号を見て驚いたのはドクターゲロだった。

 

「お、お前は……! 馬鹿な……!? 16号だと!?」

 

その何気ない所作に。たたずまいに。あり得ないものを見たとでも言うようにドクターゲロは戦く。

 

「ああそうだドクターゲロ。俺はあんたによって作られ、21号によって改造を受けた人造人間16号改だ」

 

「こんな、こんな馬鹿な話があってたまるか……! お前には記憶をプログラミングしていなかったはずだ!」

 

泣き出しそうな表情で16号を見るドクターゲロと、それをどこか懐かしそうに見つめる16号。

 

「……ああ、そのとおりだ。だから俺のことは気にしなくていい。俺はただの機械だ」

 

しかし自分を機械だと否定する16号の姿にドクターゲロはさらなる確信を抱いてしまう。不器用に自分を心配するかつての息子の姿を思い描いて。

 

「貴様らの目的はなんだ。どうやらセルの手下らしいが、いったい何のつもりでここに現れた」

 

混乱する状況を治めようと、ピッコロが代表して一同の前に進み出る。

 

そしてそれに答えたのは21号だった。

 

「私達は偉大なるセル様から命令を受けてきたメッセンジャーです。偉大なるセル様からの言葉はひとつ。“今から10日後にこの世界の命運を決めるセルゲームを開催する。参加は自由だが、このセルゲームにおいて私が勝った場合即地球を破壊させてもらう。諸君らが生き残るには、ゲームにおいて私に勝つしかない”……以上です」

 

「セルゲームだと? ふざけやがって!」

 

激昂するクウラが21号に掴みかかろうとするが、それをラディッツが止める。

 

「俺に触るな、サイヤ人!」

 

「そうはいかん。貴重な情報源をどうするつもりだ」

 

睨み合う二人だが、21号はそれに構わず説明を続ける。

 

セルゲームのルールは単純明快。

 

格闘試合においてセルと戦い、倒すことが参加側の勝利条件。

 

セル側はセルのみが参加し、相手側は同時に何人が参加しても構わない。

 

そして、負けた者はその時点でセルに吸収される。

 

──以上のことが、簡潔に21号の口から語られた。

 

「10日しかねえのか。くそっ、精神と時の部屋への入り口が壊されちまったから、修行の時間を作ることもできねえ!」

 

悟空が悔しげに口にしたことをこの場で知ったクリリンが冷や汗を流す。実質、わずか10日での劇的なパワーアップなど不可能に近いからだ。

 

「仙豆の補充もできん。クリリン、さっき使ったみたいだが残りはいくつある?」

 

ピッコロは個人に頼らない万能の回復手段である仙豆の所在をクリリンに尋ねる。

 

「悪い、さっきの3つで俺が持ってるのは全部だったんだ。天津飯はどうだ?」

 

「……道場に帰れば1つか2つはあるだろうが、どう考えても足りんな」

 

悔しげに語る天津飯。現状彼ら地球の戦士達に待ち受けているのは、セルによる()()だ。

 

そのときだった。天界のあった方角から凄まじい気が突如として発生したのだ。

 

「これは……!!」

 

「ベジータだ! アイツ、精神と時の部屋に入っていたのか! いや、だが一体どうやって脱出したのだ!?」

 

ベジータの気に反応するターレスとラディッツ。

 

「待て、デンデもいるぞ! これならドラゴンボールが使える!」

 

天津飯が歓喜の声をあげるが、デンデ生存を聞いて桃白々が叫ぶ。

 

「いかん! セルがドラゴンボールを封殺するつもりなら、ベジータとデンデは殺されるぞ!!」

 

「……!! オラ、行ってくる!」

 

急いで悟空が超サイヤ人3に変身して飛び出す。

 

事態は、風雲急を告げていた。

 

 




※タイムマシン開発者の名前がオオタニになってましたので、オオモリに修正。本当に申し訳ない(メタルマン感)


わたしは基本的にオリジナルキャラクターにはそれに合った声優をイメージしてみなさんに通達しております。さて、以前わたしが突然若本氏の声についてお聞きしたことを覚えておりますでしょうか。
そ う い う こ と で す。
ネタバレになりかねなかったのですが、気づく方がいなくて正直あのときホッとしてました( ̄▽ ̄;)
ということで今後もクリムゾン(cv:若本規夫)の活躍をお楽しみください(´・ω・`)

……なんで13号ことグレイ少佐がいないの? というのは次々回をお楽しみに(´・ω・`)
次回【退廃】。別の世界をお送りします。

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