ドラゴンボールR【本編完結】   作:SHV(元MHV)

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前回はお騒がせしました。
「来たか~( ̄▽ ̄;)」とは思ったもののやはり謂れのない低評価は気になるのですよ。
改めて感想にて追記していただいた時計かるたさん、モニュコナイさん。活動報告にて声をかけていただいた歌舞伎rocksさん、ありがとうございました。
また連鎖爆撃さんはご指摘いただいて至らない点に気づかせていただきありがとうございました。姜維さんもありがとうございます。
またメッセージにて応援いただいたhisaoさんにも感謝を。
またこの機会に評価を入れていただいた方が多数いたみたいで本当に感謝の極みです。ありがとうございます。今後も励みます

さて! 今回は最長老もといナメック星人に関して自分なりの考察をまとめた回になりました。名前をどうしようかと思ったんですが、個人的にも思い入れの強いドラゴンボールMBのカラコルから取らせていただきました。

そして思い出したかのようにボラ&ヤジロベー。ああ、あとキュイ(笑)
いや彼らの出番は考えてたんですが、うまいこと入れる場所なくてこんなところに( ̄▽ ̄;)

なにはともあれ本編をどうぞ!


第34話【天寿】

今、ひとりのナメック星人が天に召されようとしている。

 

ナメック星人最長老。

 

元の名前をカラコルというこの男は、かつてナメック星の神でもあった。

 

その昔ナメック星は栄華の極みにあった。ツフル人に準じるほどの高度な科学文明と、宇宙でも類を見ない高い平均戦闘力。その上ヤードラット人に代表される特殊種族に匹敵する超能力。所有しているのはたったひとつの惑星であるにも関わらず、ナメック星人は紛れもなく銀河を三分する勢力の一角だった。

 

──しかしその繁栄がきっかけだったのだろうか。善良で真面目だったナメック星人に、“悪”が生まれてしまった。

 

“突然変異”。

 

生まれつき残虐さと凶暴さを有する存在が生まれてしまう、全宇宙を悩ます怪現象である。

 

その突然変異が、ナメック星人にも生まれてしまったのだ。

 

当然、ナメック星人らは突然変異によって生まれた“悪”のナメック星人を自分達の力でなんとかしようとした。だが当時の戦士らが何十人束になっても“悪”のナメック星人には敵わず、やむを得ず神であるカラコルは天変地異を起こして“悪”のナメック星人を倒したのだ。

 

神であるカラコル以外が全滅するという無惨な結果を残して。

 

ひとり生き残ったカラコルは後悔した。もっと早くに同胞達を逃がすべきであったと。わずかに数人ばかりのナメック星人を逃がすことには成功したが、それとてどこまで生き延びてくれるかわからない。

 

その後カラコルは、神であることを辞めた。

 

ひとりのナメック星人として、失われたナメックの子らを産み育む役目を自らに課すことで、全てを手遅れにしてしまった自らの罪を少しでも償おうと思ったのだ。

 

その後500年の間に彼は多くの子を産んだが、子孫にはナメック星の科学文明のことも、“悪”のナメック星人のことも一切を伝えなかった。

 

それはひとえに悲劇を再び繰り返さない為でもあるし、なにより逃げ延びた“悪”のナメック星人が舞い戻るのを防ぐためでもあった。

 

そう、悪のナメック星人は死ななかった。あくまで撃退したのみだった。ダメージは与えたが、そのたぐいまれなパワーによって天変地異を生き延びた彼は、奪った宇宙船で宇宙の何処かへと消えたのだ。

 

ゆえにカラコルは考えた。

 

細々とただ生きているだけならば他の星々との交流は途絶えるが、同時に絶滅したとも思われるだろうと。調査に来るものがあるだろうからしばらくはひっそりと暮らせばいい。関わらなければ見つかることもないだろうと。

 

そして死が自らを迎えるまで黙することを己に課した。それが、最長老を名乗ることにしたカラコルの覚悟でもあった。

 

500年もの時が過ぎた。1000年を超えて生きてきたカラコルに、かつての若々しい肉体はもはやない。ただ朽ちていくのを待つ巨体が椅子に座るのみである。

 

最長老としての役割もムーリへと移した。これでドラゴンボールの力は継続するし、彼によって力を引き出されたムーリならば更にドラゴンボールを強くすることもできるだろう。

 

(……永かった。あの“悪夢”から500年ですか。ふふ、私も歳を取りましたね)

 

約1000年もの間、ナメック星人として生きてきた。その生の半分を罪悪感に苛まれて生きてきた彼は、ようやくその役目を終えようとしている。

 

そんな彼の大往生に立ち会わんと、多くの者が訪れていた。

 

ナメック星人全員は言うまでもなく、レッドリボン軍幹部や彼らナメック星人に助けられてきた達人やサイヤ人など多くの人物が集まり、最長老と彼が佇む住居を囲んでいる。

 

そんな現状を把握し柔らかく微笑みながら、最長老は最も近い位置に立つ若いナメック星人を呼ぶ。

 

「……ピッコロは、そこにいますか?」

 

「はい、最長老様」

 

ネイルと融合したピッコロは彼の記憶をも受け継いでいる。“悪”のナメック星人に備えて産まれたネイルの最長老を敬愛する気持ちは、ピッコロもまた受け継いでいた。

 

「……私は間もなく寿命を迎えます。ですが最後だからこそ、心残りをあなたに託したい。私と、同化してはもらえませんか」

 

側に控えていたナメックの長老集が驚く。

 

「そ、それは……!」

 

「驚くのも無理はありません。ですが、あなたに言っていなかったこと、()()()()()()()()託したいことがあるのも事実。同化すれば私の心残りもまたあなたに伝わるでしょう。お願いです。あなただからこそ頼むのです。カタッツの子よ」

 

ピッコロはしばし悩み、自分を見守る者達の顔を見る。

 

ナメックの長老集は最長老の決定ならばと納得した表情で、悟空やラディッツは自分を信頼した面持ちで、クリムゾンは何ら心配することはないとでも言いたげに微笑んでいた。

 

「……わかりました。最長老様、あなたの力を受け継がせていただきます」

 

「ありがとうピッコロ。……ふふ、ピッコロという名前が、ナメック語で何を意味するか知っていますか」

 

「はい、“違う世界”です」

 

「そう、あなたはもはやナメック星人という枠を超え飛び立ちました。ですがどうかその違う世界から、今後も我が子らの行く先を見守ってあげてください。……さあ、私に手を置くのです」

 

ピッコロはうながされるままに最長老の大きな体と自身の手を乗せる。

 

「私は皆をいつも見守っています。健やかなることを……」

 

そして最長老の体は輝き、ピッコロとの同化が行われる。

 

光が収まると、そこには身長がコルド大王並みに巨大化したピッコロがいた。

 

「……最長老様。あなたの想いはしかと受けとりました。どうか、安らかな眠りを」

 

1000年を超えて生きてきたナメックの叡知と、それに付随する様々な想いをピッコロは噛み締める。

 

今、真の意味でピッコロはナメック星人の限界を超えた。

 

 

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それはフリーザ軍が襲来してきたときのこと。

 

クリムゾンにとって危うい出来事があった。

 

ボラとヤジロベーを配置したのは本来東の都だった。だが実際フリーザ軍の襲撃を受けて、ヤジロベーは勘を理由に急いでレッドリボン軍本部がある大陸沿岸に移動していた。

 

ボラもそれに付き添い、彼と共に海岸を一望できる崖の上で佇んでいる。

 

「おめぇまでついてこんでいいんだぞ」

 

ヤジロベーはぶっきらぼうに告げるが、ボラは笑みを浮かべるだけで答えない。

 

ヤジロベーが告げた勘が滅多に外れないことを知っているからだ。

 

「……来たぞ」

 

質問に答えるでなく、ボラが口を開いたのは海の中から続々とフリーザ軍の兵隊が現れたからだ。

 

彼らの戦闘力は総じて低い。レッドリボン軍の部隊が戦っている連中と比べても大きく劣る。戦闘力にして精々が500程度だろう。しかし低い戦闘力というのも時と場合によっては利点となりうる。特に惑星中で極大の戦闘力同士がいくつもぶつかり合っている現状では。

 

しかも彼らはそれだけではない。多少の戦闘力なら遮断する、フリーザ軍でも滅多に使われないステルスマントを装備している。

 

そう、彼らの目的は強者である達人などではない。情報を集積し、一部指揮をしているレッドリボン軍本部を襲うことこそが目的であった。

 

これは彼らを率いるキュイによって決定された独断でもあった。

 

(フリーザ様は戦争を舐めていらっしゃる。当然だ、あれだけ圧倒的な強さをお持ちなんだからな。だが俺のような半端者が生き残り評価されるにはこういったことが必要なのも事実。くくっ、当然備えてはいるだろうが、どうやら強者は軒並み星中に散っているようだしな。そいつらが帰ってくるまでにせいぜい暴れさせてもらうぜ!)

 

キュイは戦闘力の低い一団をバラバラに海のなかに突入させ、見つからないように海中を移動して近づいていた。

 

宇宙空間でもある程度生身で活躍できる者らにとって、海はそれほどの障害とならない。数人が海中の巨大生物に食われたようだがそれとて想定内だ。

 

しかし、仲間を引き連れ現れたキュイが海岸で見たのは、褐色でありながら金属質な光沢の肌を持つ巨漢と、刀を持った着流しの男だった。

 

「ちっ、どうやって察知しやがった! お前ら、あいつらをぶっ殺せ!」

 

キュイは目の前のふたりの戦闘力を計測し、ひとりならまだしもふたりを同時に相手すればとても敵わないと悟る。

 

だがここで自身も部下を盾に離脱し、どうにか10人も引き連れて敵の本部らしき場所に突入すれば、それで目的は達成できるだろうとも考えた。所詮は地球人であるし、強者でないならば何とでもやりようはあるとも。

 

そして撹乱の為にエネルギー波を放とうと両腕を構えたキュイは──自分の腕がなくなっていることにしばらく気づかなかった。

 

ヤジロベーはしばし切り落とした腕を見て食べるか悩み、無造作に捨てる。

 

今の彼が持つ刀は、クリムゾンによって提供されたブルマとドクターゲロによる合作である。その切れ味は凄まじく、キュイの腕をあっさり切り裂いたほどである。理論上は戦闘力一億であろうと通じる刀とのことだったが、ヤジロベーはそれらに関してはあまり気にしていなかった。よく切れる刀程度の認識である。なお、たった今キュイの腕を切り落とした斬撃にヤジロベーは気を纏わせてはいない。

 

キュイは戦慄する。目の前の得体が知れない男を相手に、自分が生き残れないことを理解して。

 

「むんっ!!」

 

ふと爆音に振り向けば、後ろに控えていた100人ほどの部下の一部がまるで隕石に衝突されたかのようにバラバラに吹き飛んでいく。

 

更に言うならばそれを為した巨漢ボラの肉体はフリーザ軍兵士の攻撃をまるでものともしない。その上まるで粘土細工を畳むかのように折り畳まれたフリーザ軍の兵士が投擲され、他の兵士を打ち砕く。

 

「こ、こんな……! 俺の、作戦が……!」

 

全てを台無しにされ、キュイは呻く。

 

実際彼の作戦は悪くなかった。

 

レッドリボン軍本部には当然各種装備を身に付けた兵士達が控えている。

 

そのうえ移動させることの難しい強力な固定砲台などもある。

 

だが、キュイの戦闘力はフリーザ軍でもトップクラスの15000を誇る。更に彼が率いる部隊はステルスマントを装備していた。これらの面々に奇襲を受ければ、被害は出ないとは言えない。そうなればクリムゾンとて、冷静にコルド大王を捕らえる作戦を進められなかっただろう。

 

この件以降、クリムゾンは本部へ人造人間15号と14号を常駐させ、達人らが修行しながら宿泊できる施設を増築する。

 

また今回フリーザ軍の秘密装備であるステルスマントは回収され、レッドリボン軍によって改良されることになった。

 

 

 

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やがて事件から一年が過ぎた。

 

コルド大王の定期訪問はすでに終え、見事フリーザ軍をまとめたクウラはクリムゾン直属の二等兵として所属した。今は月面でのブルーツ波集積装置のメンテナンスに向かわされている。

 

一言も文句を言わないのを誰もが不思議がっていたが、本人に不満はないようであった。

 

そしてこの頃、クリムゾンに第二子が誕生した。

 

フリーザ軍襲撃に備えての夜の作戦会議による結果であり、産まれた子供にはモーブと名付けられた。母親譲りの紫がかった髪色を持つ男の子である。

 

それと最近スカーレットがドクターゲロの研究に興味をもっているらしく、ちょこまかと付いて回る少女と老人の姿は物珍しさもあってレッドリボン軍で噂になっている。

 

そして忙しい日々を送るなかでクリムゾンは、ようやく出来た時間を使ってある人物と面談していた。

 

「ようやく、落ち着いたか」

 

二足歩行の犬、といった風体の老人がクリムゾンに話しかける。手には熱い玉露が注がれた湯飲みをもっている。

 

「ええ、どうにか。その節は礼を言います。おかげで被害が最小限に抑えられた」

 

クリムゾンの言う被害が国民なのかレッドリボン軍の兵士なのかわからず、またわざとそういった言い方をしたのであろうことを想像して──対面に座る国王はなんとも言えない表情になる。

 

「意地の悪い言い方をする。とはいえ、レッドリボン軍と和解して正解だったと心から思うよ。お父上の頃からでは想像もつかないがね」

 

現在、各都市には続々とレッドリボン軍の基地が作られ始めている。

 

更に各国から腕に自信のある者や、今回のレッドリボン軍の戦いを見て憧れた者などが続々と入隊を希望しており、各将校をはじめレッドリボン軍は激務の真っ只中にいた。

 

特にクリムゾンはこの一年まともに休んでおらず、数日前に倒れたのをきっかけにバイオレットに泣かれ、ピッコロにはこんこんと説教され、ブルー将軍には実力行使とばかりにボラと桃白々を護衛という名の見張りに呼ばれた上での休暇が強制的に取らされた。

 

それでもどうせ仕事をするだろうからとラディッツが断言したので、休みの期間は一ヶ月もの長期となった。

 

おかげでクリムゾンは完全に暇になってしまった。ワーカーホリックが染み付いている彼としては現状でも次に繋がることを考え、ちょうどいい機会だからと会うべき人間には会っておこうと行動していた。今回、国王と会っているのもその流れである。

 

国王との面談をついでのように考えている時点で少しずれているがそれは仕方がない。

 

「……あれと一緒にしないでいただたきたいね」

 

父親のことを話題に出され一気に苦い顔になるクリムゾン。既に死後十年以上が経過しているにも関わらず、クリムゾンのなかで父親は未だ苦手なものとして認識されていた。

 

「はは、それはすまんな。まあ、仮に今回の件での功績を讃えるならブルースター勲章などを授与したいのだが、どうだね」

 

「必要ないな。誰かに評価されたくて軍を動かしたわけではない。私は自分の縄張りを守っただけだよ」

 

素直でないクリムゾンの一言に国王は笑みを浮かべる。その言葉が事実とするなら、彼が健在である限り太陽系は安全だと断言されたようなものだからだ。

 

「……さて、名残惜しいがこの辺で失礼しよう。今日はいいお茶をごちそうになった」

 

照れ臭さを隠すように残った自らの湯飲みの中身を飲み干し、クリムゾンは立ち上がる。

 

すると、壁際に控えていた人造人間13号ことグレイ少佐もまた壁から背を離してクリムゾンの横に付き従う。

 

さらに部屋の外には桃白々とボラが控えている。ちなみに宮廷の前には超重量の重りを着用しているギニューが必死な顔つきで立っている。額につけられた緊箍児からして戦闘力を抑制されているのが見て取れた。

 

「こちらこそ、君のプライベートな時間を使わせてしまってすまない。いずれまた食事でもしよう。そのときは是非家族で来たまえ」

 

「ええ、そのときには是非」

 

クリムゾンは国王からの誘いに笑顔で答えると、颯爽と身を翻して去っていく。

 

国王はその背中に頼もしさを感じる反面、あまり頼りすぎて彼へと負担をかけないよう自分の意識を切り替える。本来なら国王である彼が、独立軍事組織であるレッドリボン軍に頼るようなことはあってはならないのだ。

 

「だが、いずれまた危機が迫れば彼らを頼らざるを得なくなる。そして私もまた、それに安堵している、か。クリムゾン総帥、地球を頼むぞ」

 

正面からその言葉を告げるわけにはいかない国王は、既に退出したクリムゾンへ向けて語りかける。

 

窓の外を吹く風の冷たさが、季節の変わりを告げていた。

 




やっちまったピッコロの意味を素で忘れてました。2017/10/25 18:56 訂正しました。

キュイの部下を食べたのはなんだろうなーとか考えながら後書き書いてます。
個人的には映画【魔神城の眠り姫】に出てきたでっかい怪獣みたいなのが怖くて印象強いです。そういえば昔ゲーセンで海の怪物倒すゲームありましたね。なんだったかなあれ。
くそでかいサメがリヴァイアサンとか名付けられてて怖かった覚え。ラスボス倒せなかったんだよなー( ̄▽ ̄;)

これにてひとまずフリーザ編終了です。日常的なシーンを挟んで次はいわゆる人造人間編へと進んでいきたいと思ってます。

ナメック星人がさらっとかつての銀河三大勢力とか設定考えたら色々妄想が捗る。
できれば伝説の超サイヤ人絡ませたかったけど時代が違いすぎた(´・ω・`)
あ、特に毎回ルビ振ってないですけど超サイヤ人って書いてみなさん普通に超をスーパーって読んでると私は信じてますので(笑)

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