ピッコロ対フリーザは個人的に原作で1、2を争うくらいに好きな戦いです。
あ、それとタグに勢いでつけた『主人公最強(常識の範囲内で)』を削除しました。なんだか【俺のハーレムアカデミア】と同じことになる伏線に感じたので。今後もできるだけタグは最低限でいきます。
遠く離れたナメック星で激戦が繰り広げられていた頃。
地球でも、慌ただしく事態が進行していた。
「ドクターゲロ! ナメック星はどうなってる!」
「そう慌てるな。こんなこともあろうかと、スパイロボを宇宙船に搭載しておいたのだろうが」
激昂するかのように怒鳴るクリムゾンを嗜めるのはドクターゲロである。
表面上落ち着いているように努めるクリムゾン総帥であったが、深夜に叩き起こされたブラック補佐などは眠気など吹き飛ぶほどに震えている。
それほどにクリムゾンは殺気だっていた。
ドクターゲロはそんなクリムゾンを落ち着かせながら冷静に宇宙船に搭載しておいた複数のスパイロボを起動する。
スパイロボといっても虫のようなサイズではなく、小鳥に近い本来の用途よりも大型のタイプだ。
サイズが大きい分速度も早いし、スカウターの技術も応用しているのでリアルタイムに通信ができる。
「……けた違いに巨大なエナジー同士がぶつかり合っているな。パターンからして恐らく片方はピッコロ、もうひとつがフリーザか」
「いきなりフリーザと戦っているのか……戦闘力は計測できたか?」
「ピッコロが戦闘力12万、フリーザが40万といったところか。ピッコロは形振り構わず全力のようだが、フリーザにはまだまだ余裕がありそうだな」
「当たり前だ。ヤツがその気になれば、ナメック星など一瞬で宇宙の塵となるんだぞ……!!」
クリムゾンはひとまずピッコロが生きていることに安堵する。だが、いくらパワーアップしたとはいえ今のピッコロが勝てないことは道理だ。
蟻が巨象を倒すことなど決して出来ないのと同じように、圧倒的な戦闘力は多少の技量など踏み潰してしまう。ましてや相手は帝王フリーザ。そんじょそこらのパワーに頼った戦い方などするはずもない。
「耐えろよピッコロ……お前が死ねば全てが終わりだ。こちらの準備が整うまで、なんとか持ちこたえるんだ……!!」
クリムゾンはただ見ることしかできない孤独な戦いを強いられる。せめて準備が一秒でも早く整うことを願って。
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激しい戦いが天候すら変える中、ネイルは全てのナメック星人をどうにか宇宙船へと連れてくることができた。
消耗した体力も村長のひとりに治療してもらい、ピッコロの援護に向かおうとした彼だったが、思わぬところで足止めを食っていた。
「そらそら! さっさとドラゴンボールを出すんだよ!」
そこに現れたのはザーボン率いるフリーザ軍の面々。フリーザ直属の手下として選ばれた彼らは、宇宙でも精鋭級の実力者である戦闘力1000以上を下限としている。
ネイルの戦闘力を知る彼らだが、幼いナメック星人の子供を人質にすることでその動きを牽制していた。
ネイルからすれば指一本で十分な連中なのだが、子供を人質にされては身動きがとれなかった。
そんな中、
「〝俺の名はダック。あまり乱暴なことはしたくない。大人しくドラゴンボールを出してくれ。そうすれば悪いようにはしない〟」
なぜわざわざナメック語で交渉しようとするのか。
それを不思議に思った長老のひとり、ムーリが同じくナメック語で彼に話しかける。
「〝……どういうことだ。子供を人質にまで取っておいてそんな言葉を信用しろとでもいうのか〟」
「〝あれは私の意思ではない〟……おい、子供と引き換えにドラゴンボールを差し出すそうだ。離してやれ」
「ああ? なに寝ぼけたこと言って……わ、わかったよ」
威圧をこめて睨むダックの剣幕に負け、大人しく子供を下ろす兵士。
ダックの戦闘力は1700。フリーザ軍兵士においてもかつてのラディッツを上回る戦闘力を誇る。
ザーボンは彼しかナメック語を話せず、またフリーザへドラゴンボールの情報を提供したことから彼自身を警戒していたが、まるで子供を庇うかのような今のやり取りにさらに警戒心を強めていた。
「〝さあ、これでいいだろう。早くドラゴンボールを渡してくれ。フリーザがこちらへ来れば、ヤツは手段は選ばずドラゴンボールを手に入れようとする〟」
「〝お前の目的は……まさか……!〟」
驚愕するムーリ。彼は目の前のダックのドラゴンボールを手にいれようとする目的がフリーザの為ではないと気づき、そこからある想像をする。
「〝そうだ。俺はこのドラゴンボールを使って、フリーザを殺す……!!〟」
それはかつて一族を滅ぼし、自分から全てを奪った敵の配下へと落ちた王族の、復讐の宣言だった。
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ピッコロとフリーザの激闘は続く。
数値上の差を見れば、ピッコロが勝てる道理はない。
ゆえにピッコロは終始時間稼ぎに努めていた。
しかもただの時間稼ぎではない。隙あらばフリーザへ重傷を負わせようと、集束した気による閃光のごとき気功波を放っている。
奇しくもそれは、フリーザが得意とする指先からの光線デスビームに酷似していた。
「お、おのれぇ……!!」
フリーザは込み上げる怒りを抑えることが出来なくなっていた。
まともに戦えば五秒と掛からない程度の力しか持たないナメック星人。
それを相手に全力を出すなど恥ずべき行為ではあったが、こうも時間稼ぎに徹されては何をされるかわからない。
フリーザは一度怒りを鎮めるため力を抜く。その瞬間デスビームにも似た気功波がフリーザの右肩を焼くが、フリーザはそれを気にも止めない。
「……認めましょう、あなたの実力を。そして後悔なさい! 私をこの形態にさせたことを!!」
瞬間、フリーザの上半身が不自然に膨れ上がる。歪な体型となったフリーザだったが、変化はそれだけに収まらず、手が、足が、膨れた上半身に合わせるようにして巨大化していく。
あっという間に変身を終えたフリーザは、ピッコロをも見下ろす巨体となって彼の眼前へと舞い降りた。
その圧倒的な速度にピッコロは逃げることもできず固まってしまう。
「気を付けろよ。こうなっては前ほどやさしくはないぞ」
言うなり、フリーザは無造作にピッコロを蹴りあげた。
内臓全てが爆発したかのような衝撃を受けたピッコロは、口から紫の血を吐き出しつつも口を噛み締め、彼方へと飛んでいく。
「おいおいどこへ行くんだ? まだこっちの攻撃は終わっていないぞ」
飛びつつ岩山を破壊するピッコロに追い付いたフリーザは彼を捕まえると、続いてその右腕を無造作にもぎ取る。
「どこまで再生できるか見物だな。楽しませてくれ」
そう言ってフリーザは残るピッコロの左腕を、右足を、左足を次々ともいでいく。
まるで虫をバラバラにして遊ぶ子供のように。無邪気に、残虐に。
しかしピッコロは耐えていた。
例え死にかけるほどの重傷を負っても、悲鳴をあげれば最後の仙豆を落としてしまう。口の中で血にまみれた仙豆をしっかりと確保しながら、激痛に耐えてピッコロは耐えていた。
「悲鳴さえあげないとは流石だな。だが、もう終わり──ぐっ!」
ピッコロの首をもぎ取ろうとしたフリーザだったが、横合いから突如側頭部を襲ったエネルギー波にそれを放ったと思われる相手を睨む。
「ピッコロは殺させんぞ……!!」
そこには、ザーボンらフリーザ軍兵士を一蹴し駆けつけたネイルの姿があった。
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「よ、よせダック! こんなことがフリーザ様にバレればキサマも……げぎゃっ!」
ナメック星人らを取り巻く状況は一変していた。
突如としてフリーザへの反意を示したダックはナメック星人らと協力してフリーザ軍兵士を逆襲。
混乱するフリーザ軍は、ダックの動きに乗じて襲いかかる他のナメック星人らによって次々と討ち取られていった。
「おのれぇっ! そこをどけぇっ!」
「断る」
さっさとダックを始末しておけば、と後悔するザーボン。彼は状況の不利を感じ逃げ出そうとしていたが、その前にネイルが立ちはだかっていた。
自身の倍はあろうかという戦闘力の持ち主を前にザーボンは冷や汗を隠せない。
これまで自分以上の強者など、ギニュー特戦隊などの例外を除けばフリーザ一族しかいなかった。
彼にとって自分以上の存在と戦うなどという選択肢はありえない。それがザーボンに始めから逃げの一手を取らせた。
「はあっ!」
全力のエネルギー波をネイルに向かって発射し、目眩ましになっている間に横を駆け抜けようとするザーボン。
しかしネイルは油断どころか目を閉じてすらいなかった。
ネイルによって左腕を捕まえられたザーボンは、へし折れんばかりに握りしめられた腕を捩りあげられ膝をつく。
「その程度の目眩ましならピッコロに散々やられている」
「ま、待てっ! フリーザ様の、いやフリーザの秘密を教えてやる! 俺達が組めば、あのフリーザだって倒せるぞ!」
「悪いが興味ないな」
「待て、待ってくれ! ──がはぁ!」
ザーボンの胸を気孔波で貫いたネイルは死体をその場に捨てると、一度ナメック星人らの集まる場所へと戻っていった。
「それで、お前はどうするつもりだ」
ネイルは一応は味方となったダックという男に話しかける。
「あんたらはこの星から脱出してくれ。ドラゴンボールは俺が使う。安心しろ、フリーザは必ず倒すさ」
「だが、ドラゴンボールは自身の力を超えた相手の命を奪うことができない。どうするつもりなんだ?」
ムーリはダックがそのことを知らないのだろうと思って聞くが、ダックの返答は違った。
「勿論そんなことは知っている。そもそもこのドラゴンボールとてオリジナルではないのを、あんたらは知っているか? これに関しての知識なら俺は誰よりも深い。余計な詮索はいらんよ」
そう言ってダックはナメック星人らが持ち寄ったドラゴンボールを見下ろして微笑む。
その微笑は、暗く、淀んだものだった。
「……わかった。なら俺はピッコロを助けに行く。あのフリーザを相手に未だどうにか持たせているようだが、フリーザのヤツはまるで本気じゃない。あいつひとりを殺させてたまるものか……!」
「俺の言えたことではないが、気を付けろよ。それともし今後出会うことが有ったら、ラディッツという男に“騙してすまない”と伝えてくれ」
「……? わからんが、その男に出会うことがあれば伝えよう。ではな」
言うなりネイルはピッコロの元へと飛んでいく。あまりよくないことに戦場は宇宙船に近づきつつある。ならばネイルにできることは、ピッコロを助けつつ宇宙船から少しでも遠ざけることであった。
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所変わってレッドリボン軍本部。
「全ドラゴンボールの輸送を確認。中央広場にて陳列済みです!」
報告に来た兵士が全て言い終わる前にクリムゾンは走り出す。
先程フリーザが変身を開始した。資料とラディッツの証言から情報は得ていたが、実際に変身した姿を見て一同に戦慄が走った。
(戦闘力100万以上……もはや通常の手段で勝てる相手ではない!!)
今現在最大の戦闘力を発揮できるラディッツでさえ、大猿化して戦闘力は10万を超える程度だ。
クリムゾンはナメック星のドラゴンボールのパワーを利用しフリーザを太陽に放り込む作戦を計画していたが、けた違いの戦闘力を有するフリーザが太陽の表面温度で死んでくれるのか確証が持てない。
ブラックホールに放り込むことも考えたが、万が一正確な座標を示さなくてはいけなければならない場合それは不可能になる。第一、ブラックホールは観測できない特異点。死ぬとは限らないのだ。そしてフリーザは宇宙空間でも生存することができる。
「出でよ
クリムゾンは最短ルートとして窓を突き破ると、五階から身を投げながら集められたドラゴンボールへと叫ぶ。
途端に空は曇りだし、雷雲と共に神龍が召喚される。
『さあ、願いを言え。どんな願いでも「悪いが急いでいる! ナメック星にいるナメック星人達を、全員ここへ瞬間移動させてくれ!」……わかった。だが少々遠いから時間がかかるぞ』
「構わん! 急いでくれ!!」
『承知した……!!』
神龍の赤い目が輝き、人智及ばぬ奇跡の力が発動する。
「ドクターゲロ! ナメック星人らの転送が確認できた時点で宇宙船を自爆させろ! 近くにあるフリーザの宇宙船を巻き込んでしまえ!!」
ついでとばかりにクリムゾンは指示をする。少なくともフリーザから宇宙船を奪えば、彼から移動手段を奪うことになる。
万が一地球へ来ることを企んでも、少なくない時間稼ぎが可能となるのだ。
焦燥感にかられ続けるクリムゾン。複数の思惑が、事態をさらに加速させていく。
ダックの件は気づかなかった人が多かったので驚きました。意外と重要なことはさらっと書いておいたりします(´・ω・`)
今回ナメック語を探している内にナメック語ジェネレーターなるものを発見しましたが、さすがにそれを作品で反映させることは無理でしたので諦めました。てか作った人スゲエ( ̄▽ ̄;)
ちなみにいつぞやダックの見た目をコブラのダックでイメージしてくれと言いましたが、書いている内にこいつ↓のイメージが強かったので切り替えて参考にしてください。新しい方のcvは所ジョージじゃないといいなあ。昔のはまんまアルフだったし。
http://media.comicbook.com/wp-content/uploads/2012/03/avengers-howard-the-duck.jpg
『ハワード・ザ・ダック』は名作だと思ってる。ケモナー必見のシャワーシーンもあるよ!duck tits!
知らない人はニコニコ動画にあるNCのレビューでも見てください(´・ω・`)(笑)