特に株式たまごさん、ほぼ全話報告をいただいて作者は恥じ入るあまり白目を向きました(笑)
今後も間違いは多々起こすものの、臆すことなく書いていきますのでよろしくお願いします(´・ω・`)!
そして皆さんからの、お気に入り、評価、感想本当にありがとうございます。
お気に入りは分かりやすくやる気に繋がりますし、高評価はひとつの達成感を得られます。そして感想は言うまでもありませんが、みなさんから書く力をいただいていると思っていますので、どうぞ今後もお付き合いお楽しみのほどよろしくお願い致します。
絶え間ない苦痛。
それが、今のラディッツを襲う感覚の全てだった。
喉は乾き、全身からは既に汗さえ流れない。脱水症状はすでに危険な領域へと至っていた。
目がかすみ、手足の感覚さえ痺れたように把握できなくなりつつある。
──すでに、ラディッツの目は死んでいた。
100度近い温度差によって暑さ寒さの感覚は狂い、かつて慣れ親しんだ重力は磨耗した体を苛み続ける。
そして空気の薄さがその消耗に拍車をかける。冗談ではなく息を吸う度に足りなくなる酸素を過剰に求め、ラディッツの肺は収縮を繰り返す。
(……おれは、死ぬのか……)
前後左右、天地上下がわからない。
自分が今どこにいてどうなっているのかが理解できない感覚に、ラディッツは酔う。
──このまま眠ってしまえばどれだけ楽になれるだろうか──
そうラディッツが思ってしまっても無理はない。
だからこそ、不意に写真で見た弟の顔が、ラディッツの消えかかった心の灯火を再び燃え上がらせる。
「ぐっ……ぐぬぅ……!!」
かつて失ってしまったものが、もうじき帰ってくるのだ。
こんな場所で死んでたまるかと、ラディッツは無理矢理力を入れて立ち上がる。
そして懐から残り三粒となった
仙豆。それはラディッツが修行するにあたって、悟空からその存在を知らされていたクリムゾンが渡した、一種の切り札であった。
ラディッツに渡された仙豆は全部で七粒。これを用いてラディッツは地球上で最も過酷と言える“精神と時の部屋”にて、死と隣り合わせの厳しい修行を繰り返していた。
ラディッツに与えられた期限は一ヶ月。これはかつて悟空やピッコロほどの実力者であっても、半月と持たずに脱出したほどの場所だったからだ。
クリムゾンによって大猿化のデータを取られたラディッツは、その後自分を必ず強くすると約束したクリムゾンを信じ、少しでも地力をあげる為に天界で最も過酷な環境へと挑んでいた。
他の面々も少なからず試したが、あの天津飯ですら一ヶ月の間ここに籠ることを止めたほどなのだからラディッツの覚悟は並大抵ではなかった。
そして、ラディッツが精神と時の部屋へと挑んでから三週間が経っていた。
すでに体力は限界であり、屈強なサイヤ人のラディッツといえど根を上げる寸前だったと言っていい。
だが彼は決して折れなかった。半死半生の傷でも仙豆さえあれば傷を治せるという保険もあったが、なにより万が一ベジータが来たとき、今度こそ家族を守るための力がラディッツは欲しかった。
データとしてカカロットの強さをラディッツは知っていた。その戦闘力も格闘センスも自分の遥か上を行っていることも理解できていた。
だが、かつてラディッツは無力感を味わった。なんら関わることなく、父を、母を、弟を失ったと思っていた。
ところが最弱だと思っていた弟は自分よりも強くなって今もなお鍛え、かつての自分とは違い家族を守るために修行を繰り返しているという。
であるならば。情けない兄としては、せめてその助けになってやりたいのだ。
その想いが、かつてない心の強さが、ラディッツをこれまで抑え込んでいた殻から解き放とうとしていた。
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暗い地下の一室で、クリムゾンは複数の機械式人造人間がひとつの姿へ改造されていく様子を眺めていた。
「……どれくらいかかる」
「元々人造人間9号から11号は失敗作とはいえ完成しておったからな。それらを組み合わせるだけであるならば、不具合の確認を含めても一週間とかかるまい。しかしお前も考えておったとはな、人造人間を
複数の人造人間の合体。それはある種禁忌である人造人間の製造をさらに上回る行為。
とはいえそれは本来であれば現在研究中の究極の人造人間“セル”に搭載されている予定の機能である。とはいえ、機械式でもやりようによってはできなくもない。
「足りないモノがあるならばそれを補おうとするのは自然な流れだ。なんならこの後の人造人間にも組み込んではどうだ」
「……悪くないな。13号には現在開発している永久エネルギー炉を搭載する予定になっておるが、連結式に変更してみるか。こちらは出力が不安定な分合体させることで出力が倍増する仕組みになっておる」
ドクターゲロはクリムゾンには言っていなかったが、人造人間として最高の適正を持つ17号と18号をセルに吸収させるつもりでいた。
なぜわざわざ別の人造人間として作るのかと言われれば、最初から組み合わせるよりも完成させてから吸収させた方がパワーアップの効率がいいという結果がでているからだ。
「全て問題なく間に合えばいいのだがな……」
「物事は常に不測の事態を想定して行動するべきじゃよ。さて、わしは少し寝るぞ。最近少々疲れやすくなっておってな」
「ゆっくり休め。こちらで出来ることがあればやっておこう」
「ふん、機密保持とか言って助手をクビにした貴様に言われたくはないわい。……ま、あれが役に立ったかと言われれば微妙じゃがのう」
レッドリボン軍二大巨頭の企みは続く。来るべき日、それさえも越えた未来へと備えて。
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ここはナメック星。
地球より遥か離れた星であり、その大きさも地球とはけた違いに大きい。
さらに三つある太陽はこの星から夜を奪っており、特殊な植物環境がこの星を乾くことのない水の豊かな星へとしている。
かつて異常気象により滅びかけた種族ではあったが、唯一生き残った者の一族が僅かながらに細々と暮らしていた。
そんな地球より遥か離れた星にて、地球生まれのナメック星人が最長老と呼ばれるナメック星人をまとめる長と話をしていた。
「そう緊張することはありません、遠き星より来たナメックの子よ。よろしければあなたの頭を触らせていただきたい。あなたがこれまでどうしてきたのか、それを教えてください」
大きさにして三メートル以上はあろうかという巨体のナメック星人が、目を閉じ椅子に深く腰かけたままピッコロへと優しく語りかけていた。
「……わかった。だが余計なことはするなよ」
それに対してピッコロはまるで久しぶりに会った祖父母を前にしたときのように緊張し、どのような態度を取っていいか考えあぐねていた。
しかし迷ったところで自分の役割は果たせぬと、ピッコロは意を決して最長老へと近づく。
何かを引き出されるような感覚の後、ピッコロは己の力が上昇していることに気づいた。
「これは……!」
思わず自分の両掌を見つめるが、突如として上昇したパワーは紛れもない事実であった。
「ありがとうございます、
「そのために今、俺の親父が動いている。あんたらナメック星人達にはすぐにでもこの星を脱出してもらいたい。ドラゴンボールを持ってな」
ピッコロがクリムゾンから託されたこと。それは、ナメック星人の移住であった。
ほぼ万能の願望器であるドラゴンボールを作るような種族であるナメック星人は、例えフリーザを倒したとしても今後も狙われる可能性が高い。
その上地球のモノ以上の力を持つドラゴンボールを有しているのだ。脅迫なり何なりされて不用意な形でそれを使われては、最悪の事態を引き起こしかねない。
その為、地球に移住してもらえるならば可能な限り向こうの要求に従え、とクリムゾンがピッコロに指示してある。
「……なるほど。そのクリムゾンという地球人の方が懸念することも理解しました。ですが、ここナメック星は大きい。すぐに全員が集まることは難しいでしょう。なので、一週間ほど時間をください。私がテレパシーで各村の長老に話を通します」
「……わかった。ではそれまで俺もこの近くで待機させてもらう。せっかく貰った力も試したいからな」
ウズウズと体から溢れる力を試したくて仕方がないといった様子に、最長老は柔らかい笑みを溢す。
「それはあなた自身の力ですよ。私はほんのきっかけを与えただけに過ぎません。それに、恐らく
「なに? それはどういうことだ」
ピッコロは“本来の自分”という言葉が引っ掛かり、思わず尋ねる。
「……ですが、それは同時に大きな決断をも迫ることでしょう。ですので、まずはそこのネイルに鍛えてもらうといい。彼は私が生んだ唯一の戦闘タイプのナメック星人です。あなたに多くのことを教えて差し上げることができるでしょう」
「最長老様、ですが私は……!」
突然名前をあげられたネイルは驚き、最長老を問いただすが最長老の答えは変わりなかった。
「危機はまだこの星にたどり着きません。ですが、そのときは刻一刻と迫っています。ネイル、あなた自身の為にも彼を鍛えて差し上げなさい」
「……最長老様がそこまでおっしゃるのであれば」
やや不満そうに、だが同じナメック星人であるがゆえにそれほどの反感はなくネイルは最長老に従った。
「俺は滅多に人へ教えることなどしない。だから手加減はできないと思え」
「こっちの台詞だ。手加減なぞしたら、即座に倒してやる!」
挑発したつもりが、好戦的な台詞で返すピッコロに笑みを浮かべるネイル。
進む事態とは裏腹に、悪意は確実に、そして予想よりも早くナメック星へと迫っていた。
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「……なるほど。ナメック星に、ドラゴンボールですか。いつぞやスラッグが言っていたという伝説の道具。眉唾なので信じてませんでしたが、実際にここ最近スラッグがそれを血眼になって探しているという話ですからね。ふふ、ナメック星の座標を我々フリーザ軍が把握していることが大きく有利に働きましたね」
上機嫌に、饒舌に。
圧倒的な存在感を示しつつ、貴重な情報を提供したフリーザ軍の
浮遊型の卵のような玉座に腰掛けながら、フリーザは妖しく微笑む。
クリムゾンの策略は、思わぬ形で破られようとしていた。
『クリムゾンによる大猿化の確認実験(大体こんな感じ)』
ラディッツに満月で大猿化してもらう→クリリンに尻尾をぶった切ってもらう→仙豆で治す→繰り返しという鬼畜仕様。途中からブルーツ波を特定し発射装置作ってたりします。
大体5巡くらいしてもらいました(´・ω・`)
そして今回は衝撃のラスト。全部がうまくいくと思ってたかな?
主人公の策略なんていうものは破られるためにあるんです(外道)
まあそんなフリーザ様もある意味掌の上なのですが……果たして彼が掌で躍り続けるかはまた別の話というわけで。
それでは次回もお楽しみに(´・ω・`)