ドラゴンボールR【本編完結】   作:SHV(元MHV)

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クリリン達はどうなったの?

ラディッツが仲間になったので、べジータ達が動こうとしない。つまりこのままでは話が進まないのでは?

……いえいえそんなことはありません。あちらの都合で動かれるのと、こちらの都合で動かれるのでは、まるで事情が違うのでございます(外道)

ということで本日も更新。

でもってつかの間の日間9位……! やったぜ!

皆さんからの評価、お気に入り、本当にありがとうございます。大変励みになっております。

ということで今日も更新だぜええええええええ(°∀°)!!!!!


第10話【挑発】

ラディッツがレッドリボン軍に所属して、一週間が経過した。

 

周囲からの妙に暖かい対応に戸惑いながらも、順調にラディッツはレッドリボン軍に馴染んでいた。

 

そんなある日、レッドリボン軍司令室は奇妙な緊張感に包まれていた。

 

設置されたスカウターへの通信機を取り、ラディッツは緊張から汗をかきつつも口元に浮かぶ笑いを堪えきれず表情を歪める。

 

「……こちらラディッツだ。べジータ、聞こえるか」

 

しばしの沈黙。だが遅れているわけではない。多次元通信を利用したスカウターの通信に時間差は発生しない。

 

『……ラディッツ。貴様いつからこの俺を呼び捨てにできるほど偉くなりやがった』

 

返ってきた声に込められているのは紛れもない怒気。だがその様子からラディッツは相手が掛かってくれたことをほくそ笑む。

 

「おお、偉くなったとも。悪いが俺はもうフリーザ軍を抜けさせてもらう。地球でカカロットと平和に暮らすさ。いつまで経ってもフリーザに挑む気概のないお前らといるよりよっぽど居心地がいいぜ」

 

この通信はフリーザ軍にも傍受されているのを、レッドリボン軍の通信士が確認する。

 

つまりこれからの会話はフリーザも知るところになるわけだ。

 

『遺言はそれだけか? キサマ、そこまで言ってまさかタダで済むと思ってるわけじゃねえだろうな……!』

 

「ああ、思ってないとも。精々フリーザにゴマを擦って殺されないように頑張るんだなM字ハゲ。ああ、ツルッパゲにもよろしく言っておいてくれ。俺はドラゴンボールで不老不死になるってな」

 

『……どういう意味だラディッツ』

 

「おっと、口を滑らせちまった。それじゃああばよ、M字ハゲ」

 

通信が終わり、大きく息を吐いたラディッツは後ろのクリムゾンへと振り返る。

 

「で、こんなもんでよかったかい大将」

 

「上出来だ。これでべジータとナッパは地球へ向かってくるだろう。ドラゴンボールの存在に関しても、フリーザ軍とべジータの双方が知るきっかけが出来た。べジータが本気で動けばフリーザも反応するだろう。ま、簡単に調べられないように奴らのデータ資料は細工しておいたから、調べるのには少し時間がかかるだろう。ともあれ、これで奴らの動きをある程度縛ることができた。大金星だぞラディッツ」

 

今回のべジータへの通信は、入念に準備が置かれた上で行われた。地球へ行くことは事前にフリーザ軍へと報告を行っていたラディッツ。このまま消息不明になっては、いずれ調査の為にフリーザ軍の兵隊らがやって来るのは明白。

 

そこでクリムゾンは、今後のフリーザ軍の動きをある程度特定するためにラディッツに一芝居打ってもらったのだ。ちなみに台詞は彼のアドリブである。

 

「だがよかったのか。この星が戦場になるのはお前も望まないだろう」

 

クリムゾンにとって大切なモノが多いと言える地球は、星を軽々と破壊するような連中との戦いには間違いなく向かない。

 

だがクリムゾンはそんなことはわかっていると言わんばかりに自らの玉座で足を組んだまま笑みを浮かべる。

 

「まあな。だがそれはあくまでべジータ達だけだ。フリーザとの戦いでここを戦場にするつもりは毛頭ない。ま、来るとしたらそれ相応の対策を立てるつもりだがな。そして、ドラゴンボールは地球だけにあるわけじゃない」

 

「……ナメック星か!?」

 

「ご明察。フリーザは恐らく、コピーである地球のドラゴンボールよりも本家ドラゴンボールであるナメック星のモノを狙うだろう。ヤツがナメック星に来た時が、ヤツの最後だ。それにしてもラディッツ、お前が不老不死になりたがってるとは思わなかったぞ」

 

フリーザのパーソナルデータを知っているからこそ、クリムゾンは最小限の労力でフリーザの行動を縛った。それは後に仕掛ける策の為にも重要なことである。

 

「ん? あんなものはヤツの興味を引くために言っただけにすぎん。俺は死にたくても死ねない不老不死なんぞ正直ごめんだね」

 

「ふふ、違いない。……さて、ラディッツ。お前にはひとまず悟空が間に合わなかった場合の保険になってもらう。具体的にはとりあえずナッパを超えてもらおう」

 

「いやにあっさりと言ってくれる。この間も話したが、サイヤ人の特性である“死にかけてからのパワーアップ”は必ずしも当てはまるとは限らんぞ。俺もこれまで何度も死にかけたが、ご覧の実力だ」

 

自分を卑下するように両手を広げるラディッツだが、クリムゾンは笑うことなく彼を見つめる。

 

「それは違うな。スカウターと繋がっている裏次元データからその件に関しても情報を読ませてもらったが、それらを解析するにラディッツ。お前が強くなれないのは、単に基礎が足りないからだ」

 

「基礎だと?」

 

「ああ、基礎だ。いいか、物事には順序がある。水を汲むためには器が必要だが、その器に合わない量の水をいくら入れてもただ効率が悪いだけだ。ラディッツ、お前の器を鍛え直してもらう。期限は一年。その間に俺が認めるだけの実力になっていなければ、悪いがお前を捨て駒にさせてもらう」

 

クリムゾンはラディッツの目の前までやって来てそう断言する。

 

捨て駒。何度も言われ、聞いてきた言葉だが、この男が言うならば文字通り命を捨てさせるという意味なのだろうとラディッツは考える。

 

だが不思議と、その言葉に怒りも不快感もなかった。

 

彼からそれ以上の期待と信頼を向けられていたからだ。

 

「ふん、いいだろう。だが普通、捨て駒にする相手に面と向かってそれを宣言するのは違うと思うぞ?」

 

「そうか? 自分の為に死んでもらうかもしれないんだ、最低限の礼儀だろう」

 

「……変わってるよ、お前は。で、俺はどこに向かえばいい」

 

短い付き合いだがクリムゾンの性格を徐々に掴みつつあるラディッツは、彼が自分を誰の、あるいはどこへ向かわせるつもりなのか訪ねる。

 

「武天老師。お前の弟であるカカロット、孫悟空の師匠のところだ」

 

 

__________________________________

 

 

べジータへの挑発が終わり、ラディッツを武天老師こと亀仙人へと預けたクリムゾンは次なる備えのために世界中の達人の元を訪ね歩いていた。

 

「ボラ殿、あなたのおかげで俺のような男が娘を持つことができたよ。礼を言う」

 

「礼を言われるほどのことではない。美しい妻と娘だな。羨ましい限りだ」

 

時刻は夜。ボラの元を訪ねたクリムゾンはそのまま彼らのキャンプへと滞在し、一夜を共にしていた。

 

ボラはクリムゾンが手土産に持ってきた高級ウィスキーをカパカパと上機嫌に空けながら、バイオレットとスカーレットを手放しに誉める。

 

その横ではクリムゾンを歓迎するためにウパが世話しなく動いており、せっせとツマミを運んだり、スカーレットの為に毛皮の布団を持ってきたりと実によく働いている。

 

「あなたと酒が飲めてよかった。……ボラ殿、今から一年後にとてつもない力を持った連中がこの星へと降りてくる。俺はその時に備えて、多くの達人へと声をかけている。戦力として期待しているわけではない。ただ無駄に立ち向かって死んでほしくないだけだ」

 

「俺の実力を知った上でそんなことを言うのか」

 

(かん)に障ったのか、ボラが自身の筋肉を隆起させてクリムゾンを威圧する。

 

彼自身が言うには、密猟者のマシンガンをも弾く自慢の肉体らしい。実際以前に手合わせをしてそれ以上の威力を持つ対物ライフルさえも弾いたのを知っているクリムゾンとしては、万が一彼に掴みかかられれば命はないのを知っていた。

 

だがそれでも、ボラの力ではべジータに勝つことはできないのだ。

 

「ああ、よく知った上で言っている。奴等はその気になれば街を消し、星さえも壊すことができるだろう。だが俺がそうはさせない。奴らの行動を制限し、こちら側の戦力を徹底的に強化してやるつもりだ。ボラ殿、あなたにそのつもりがあるなら、これから俺がやろうとしている地獄の修行に参加するか?」

 

本来であれば初めから誘ってもよかった。だがこうして酒を酌み交わし、彼ら親子の歓待を受けて、クリムゾンはその命があたら散らされるかもしれないことを考えると、迷ってしまった。

 

現に今も言葉にはしたものの、クリムゾンは懊悩し、ボラからの返事が拒絶であることさえ願っている。

 

「不器用な男だな。いいだろう、俺も力を貸そう。先程多くの達人と言ったな。どれほどの人間に声をかけているのだ」

 

「ざっと20人ほど。だが、そのうちの大半は振るいにかけて落とすつもりだ。達人を鍛えるのは、武天老師と神に依頼するつもりでいる」

 

「か、神だと!? クリムゾン、お前はまさかこのカリン塔の頂上を越えた天界にいる神様のことを言っているのか!?」

 

驚きのあまり酒を吹き出してしまったボラだったが、真剣な眼差しを向けるクリムゾンは揺るがない。

 

「……なるほど。たしかにそれは大事だ。ウパ、少し出掛けることになるぞ」

 

「はい父上! お供します!」

 

以前訪ねたときより、青年として逞しく成長したウパが凛々しく返事をする。

 

こうして、侵略者に対する備えは着々と備わっていた。

 

__________________________________

 

 

「うむ、みな筋がよい。実に羨ましい限りじゃ」

 

「そうだな。全員がたった三ヶ月で驚くほどの実力をつけた」

 

これまでの3ヶ月間。クリムゾンは名だたる達人らを集め、武天老師こと亀仙人による修行を受けてもらっていた。

 

そしてその成果がある程度今日。クリムゾンは、天下一武道会の会場を貸しきりそこで天界へ連れていくメンバーを選抜するためのテストを行っていた。

 

内容は簡単な体力測定だ。悟空にテスターになってもらった各種トレーニング器具を使用し、それらを使用した際の数値を見る。また最後には組手も行われた。

 

現在、選抜メンバーに残っているのは──

 

クリリン。

 

天津飯。

 

ヤムチャ。

 

ラディッツ。

 

ヤジロベー。

 

ボラ。

 

桃白々。

 

──の七人である。残りの格闘家達は、全員失格となっていた。

 

「くそっ! せっかく名を上げるチャンスだと思ったのによ!」

 

どっかと座り込み、不満を口にするのは天下一武道会本戦出場経験者のギランである。

 

「……残念ながら、私たちの力では彼らに到底敵いそうにない。仕方ないだろう」

 

同じく座り込み、残ったメンバーのそうそうたる顔ぶれを見たナムはため息をつく。

 

「かつて天下一武道会を優勝した頃が懐かしいものだ。時代の流れ、というものかな」

 

どこか切なそうに、クリリンらメンバーを見つめるのはチャパ王。かつて悟空と予選において戦い、二度に渡って敗れた彼はやや白くなった髪を撫でつつため息をついた。

 

「あなた達が弱いわけではない、相手が規格外なだけだ」

 

「クリムゾンさん……!」

 

ナムは慌てて立ち上がり、彼へとお辞儀をする。

 

「ああ、疲れているだろう。座っていてくれ。君たちの実力は十分に高い。だが、今回彼らが相手することになるのは事実規格外の存在だ。かつて亀仙人、武天老師が月を壊したのを覚えているかな」

 

「……ああ、とんでもない光景だったな」

 

そのときの様子を観客席から見ていたチャパ王は、かつての亀仙人のすさまじさを思い出して総毛立つ。

 

「今回相手するのは、この地球そのものを破壊しかねない相手だ。勿論、情報戦を仕掛けて既に奴等が簡単にこの星を壊せないよう、手は打ってある。だからといって、安心はできないがね」

 

「それが事実だとするなら、私たちの力など……」

 

ナムは思わずうつむき、自分の力の無さを嘆く。

 

「折れることはない。君たちの力は本物だ。鍛え研ぎ澄ました力というものは人間が積み重ねてきた結晶そのものだ。相手が星を壊せるからなんだと言うのだ。今届かないならばいずれ届かせればいい。もし君たちが届かせることができないのなら、君たちの跡を行く者達にその背中を見せてやればいい。そうすればいずれ必ず君たちの牙を届かせることができる。そのために必要な時間があるというならば、私が作ってみせよう」

 

力強く宣言するクリムゾンの言葉に、三者はそれぞれ聞き入る。

 

……これより百年以上先。彼らの子孫は孫悟空の子孫らと()()()()()を繰り広げるほどに成長するのだが。それはまた別の話。

 

 




ということで第10話でした(´・ω・`)

最後の三人とのやり取りは拙作【ドラゴンボールC】を読んでいただいている方には少々ニヤリとしてしまう演出として書きました。
どういうことかわからない人は、18歳以上だったら是非読んでください(笑)

今回無駄に人数を集めているように感じるかもしれません。ドラゴンボールの世界は特に少数精鋭となっていきますからね。

ですがクリムゾンからしてみれば、戦力になりえる人間をむざむざと放っておくことなどしません。チャパ王、ギラン、ナムの三人に声をかけたのもそういう理由です。

そして彼らは運がよかったのです。これからたった一年でナッパ級の相手を倒すことを目標に設定された7人よりは……(笑)



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