艦隊これくしょん with BIOHAZARD7 resident evil   作:焼き鳥タレ派

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Tape8; Naval Fight 2nd

その冷たいガラス管の中で私は眠っていた。ガラス越しに2つの声が響いてくる。

 

 

──主任、やはりD型の不具合が解消できません。

 

──具体的には?

 

──特異菌の生成速度が遅く、絶対量がどうしても要求性能の100%を超えません。

  これでは自らの体積以上の菌を放出することができず、

  とても軍事兵器としては使い物にならないかと。

 

──原因は?

 

──特異菌のゲノムがヒト胚に上手く定着しません。

  胚と特異菌のDNAがリンクせず、拒絶反応を抑えきれていないようです。

 

──なるほど……4番目も廃棄か。シリンダーから生食を抜け。

 

──かしこまりました。

 

 

やめて。私、まだ、がんばれる。

 

 

──排水、完了しました。

 

──これよりE型の開発に移行する。D型は廃棄処分とせよ。

 

──はい、直ちに焼却炉の燃料回路を開きます。

 

──いや、待て。……この研究所も危なくなってきた。E型の開発は次の場所で行う。

  先に移動の準備を始めろ。

 

──半年前に移転したばかりなのにもう?では、D型はどうしますか。

 

──うむ……ここに置いていくわけにはいかん。

  B.S.A.Aに押収されれば実戦配備の前に解毒剤を作られかねん。

  ……そうだな、“あの男”に管理を任せる。

 

──よろしいのですか?私はどうも彼が信用に足る人物だとは……

 

──取引をする。奴の力への欲望は人一倍だ。

  E型が完成すれば、その力を思うままに使わせると言えば、承諾するだろう。

 

──しかし、大丈夫でしょうか。ただの民家では隠すと言っても限界が。

 

──奴は家中に妙な隠し部屋を作るおかしな男だ。

  少なくとも移転後に足跡を消すまでの時間は稼げるだろう。

  回収するか、引き続き預けるかはその時再検討する。

 

──わかりました。では、そのように手筈を。

 

──頼んだぞ。

 

 

……そんな夢を見たの。いいえ、思い出したの。

目の前には真っ暗な狭い部屋。誰も気づかないほど小さくて狭い隠し扉。

私はただそこでじっと待っていた。

この朽ちた体を脱ぎ捨てて、広い世界に旅立つ、その日を。

 

 

 

 

 

──製油所地帯沿岸 上空

 

「間もなく作戦ポイントに到着する。全員気を引き締めろ」

 

“はっ!”

 

クリスがチーム全員に呼びかける。

その頃、B.S.A.Aアルファチームと鎮守府護衛艦隊は輸送ヘリに搭乗し、

製油所地帯沿岸の主力艦隊に向けて突き進んでいた。

 

「うわー、こんな高いとこまで飛ぶん初めてやで!」

 

「艦載機が飛ぶことはあっても、空母が飛ぶことはないからな」

 

この一週間、彼らは明石から水上移動ブーツの提供を受け、

鎮守府が管理するエリアで模擬弾を用いた演習に勤しんでいた。

そして今日、初の実戦に飛び込むことになった。

深海棲艦。未知のB.O.Wとの戦いを前にして、

すがるようにFGM-148ジャベリンを抱きしめる者もいる。

そんな彼に気づいた武蔵が声を掛ける。

 

「案ずるな。戦局が危うくなったら我々が援護に着く。

そのために私達が付いてきたのだから」

 

「は、はい!」

 

「しかし、お前達の航空機の性能は目を見張るものがある。

対空砲火の届かない高高度を飛行し、他の護衛艦隊の頭を通り抜けて、

直接敵主力艦隊を叩けるとは」

 

武蔵は窓の外から眼下に広がる雲海を眺めながら、誰ともなしに独り言を漏らす。

そう、この作戦は、B.S.A.A隊員の海における戦い方の習得と、

姫級との戦いに備えた模擬戦を目的としていた。

彼女の言う通り、アンブレラの最新技術を搭載した輸送ヘリは高高度を飛行し、

他の護衛艦隊に発見されることなく一直線に敵の主力へ飛行している。

 

『まーさすがに姐さん方が重いんでこれ以上高くは飛べませんがね』

 

パイロットがヘッドホン越しに笑いながら軽口を叩く。

 

「なんやてー!うちらが太っとるて言いたいんか!」

 

『はは、違う違う。背負ってるもんの話だよ。君なら肩車して空でも飛べるさ』

 

「なんやてー!うちがちんちくりんのまな板やって言いたいんか!」

 

『そこまでは言ってないだろ、そこまでは』

 

「馬鹿話はやめろ!!」

 

『申し訳ありません……』「うぃ……」

 

クリスの一喝で騒ぎが一気に静まった。ここで気を緩めてもらっては困る。

提督の話では、これから向かう作戦ポイントには、

本来油断しなければ勝てなくない程度の深海棲艦しかいないらしいが、

ジョーの転移以来、あちこちの海域で深海棲艦が強化されている。

その現象は日本近海で特に顕著で、やはり原因は分かっていないそうだ。

 

『レーダーに感!数6です!』

 

「総員、降下準備。ジョー、起きろ!」

 

「んあ?おお、敵か。おっしゃ、いっちょぶちかますぜ」

 

「いよいよ、ですね」

 

まだ入隊して間もない隊員が緊張した声で告げる。

それを聞いたジョーが彼に声をかけた。

 

「シケたツラしてんじゃねえよ。ロケットランチャー持ってんのにビビるやつがあるか」

 

「あなたは、どうして平気でいられるんですか……」

 

「俺だって死ぬのは怖え。だが怖い以上に腹が立つ。お前も怒れ。

こんなクソみてえな任務やらせやがった化け物共を皆殺しにするまで死ねなくなる」

 

「はい!……やってやる、やってやるぞ!」

 

そんな二人のやり取りを見てわずかに口で笑ったクリスは、

パイロットに降下指示を出した。

 

「ヘリを下ろせ。対空砲火に巻き込まれないよう、俺達を下ろしたらすぐに退避しろ」

 

“ラジャー”

 

そしてヘリは雲を突き抜け、大海原を見下ろす高さにまで降下した。

点在する小島以外には何も見られない海域。

……いや、前方500mに深海棲艦がポツポツとその姿を表す。

一旦ヘリがその場でホバリングし待機。

クリスはトールハンマーに、

集弾性、命中精度、連射速度、各性能を底上げするサイトCをセットした。

そして出撃要員に改めて事前に打ち合わせた内容を告げる。

 

「予定通り3名ずつ降下。全員が合流した時点で……」

 

「隊長!ジョーが飛び降りました!」

 

思わず舌打ちが出る。一体何を考えているのだ。

 

「決して真似はするな。それでは、状況を開始する!」

 

隊員達はロープを下ろし、一気に滑り降りる。

着水すると、明石謹製のブーツがもたらす海上移動能力で、

重装備の隊員の足を海が優しく押し返し、彼らを飲み込むことなく下から支える。

演習場以外での使用が初めてで内心驚きながらも、ジョーと合流。

周囲を警戒しつつ彼に話しかける。

 

「なぜこんな無茶を!」

 

「ロープの訓練なんか受けてねえ。

どうせ下は水なんだから、飛び降りたほうが手っ取り早いだろう」

 

「水が衝撃を受け止めてくれなかったら、あんたは死んでいた!」

 

「俺達がお行儀よくロープで着地するのを連中が待っててくれると思うか?

奴らはもう気づいてる、見ろ」

 

「あれは……!」

 

彼が指さした方向を見ると、

既にこの海域に巣食う主力艦隊の一部が、ジョーたちに迫っている。

 

「おいでなすったな。俺達でバラバラにしてやろうぜ。

お前らは俺のことは気にせず撃て。勝手に避ける」

 

「馬鹿なことを言うな!おい、待て!」

 

ジョーは不敵に笑いながら、2度目の深海棲艦との戦いに飛び込んでいった。

その左の拳を握りながら。

 

《チャージ開始》

 

 

 

まだヘリに残っているクリス達も敵影に気づいていた。

黄色く光る片目を隠し、三連装砲を3基肉体に埋め込んだ女性型のB.O.W。

クリスが降下を急がせる。

 

「急げ!敵部隊の一部が迫っている!」

 

「ラジャー!」

 

「おい、またジョーが先走っているぞ!」

 

武蔵が深海棲艦に突っ込むジョーを指さした。呆れるクリス。

一刻も早く降下しなければ。残りはクリスを含め3人。うち2名がまだロープの途中。

既に遠くの敵本隊から複数のフラッシュ。すなわち発砲。

命中はしなかったが、ヘリが爆発した砲弾が放つ熱風に煽られ、

降下中の隊員が一時停止してバランスを取る。これ以上もたもたしていられない。

 

「手段を選んでいる時間はない……!」

 

クリスは助走を付けてヘリの搭乗口から飛び降りた。

 

 

 

ブーツの性能を信用して緊急避難的行動を試みたが、我ながら馬鹿なことをした。

海面がどんどん迫ってくる。3,2,1...そして、俺は部下が待つ海面に着水。

一か八かの試みだったが、落下の衝撃をブーツが海に逃してくれた。

同時に残りの2名も降下完了。迫る深海棲艦にトールハンマーを向けながら叫ぶ。

 

「くそっ!……俺とジョーの真似はするな!

ヴァイパー、カーチスのペアは接近中の2体のうち、

ジョーに気を取られている片方を攻撃。俺がジョーの援護に回る!

スコーピオン、リパブリックのペアは本隊を叩け。

この距離ならジャベリンの射程内だ!」

 

指示を飛ばすと隊員達は訓練通り、海を滑り横一列に単縦陣を展開。

俺はジョーの元へ走りながらトールハンマーを撃ち続ける。

遠距離からの散弾はほとんどダメージを与えられなかったが、注意を引くことはできた。

身体から生えている三連装砲をジョーに向けていた1体が俺に身体を向けた。

 

 

 

《チャージ完了》

 

姿勢を低くしてジグザグ走行しながら砲弾を避けつつ、

薄気味悪い黄色の亡霊に接近した俺は、

首周りを硬そうな装甲で覆った2人組の1体に、フルチャージの一発をお見舞した。

バシィ!っと奴の顔面にヒットしたが、物凄い硬さでろくに効いてる感じがしねえ。

鼻血は出てるが、黄色く光る眼で俺を睨みつけるだけだ。

こいつ、本当に幽霊じゃねえだろうな。

 

『イカセハ シナイ オマエタチハ ココデ シヌ』

 

「ああ、そうかよ!耳クソ詰まってて聞こえやしねえがな!」

 

……その時、後ろから連続した銃声が近づいてきた。

なんだクリスかよ、散弾でそんな遠くから狙うんじゃねえ。

 

 

 

遠距離での撃ち合いは自殺行為だ。どうにか一体の注意を引くことはできたが、

遠くから魚雷も迫っている。あの航跡は、Mk14か?

とにかく俺は、軌道を読みながら回避しつつ、着実に距離を詰めて行く。

黄色く光るB.O.W。こいつらも新種なのだろうか。いや、今はいい。

ジョーを援護し、目の前の敵を片付ける。できなければ、死だ。

 

とうとう目の前に深海棲艦の一体を見上げる。不気味としか言いようがない。

どう見ても人間の身体から、先端が三連装砲になっている軟体生物が何匹も生えている。

そいつは俺をじっと見て身体と一体になっている砲を向ける。

 

気づくと同時にトールハンマーで人間部分の頭部を撃つ。

12ゲージ弾の火力をフルに活かした一撃で、B.O.Wをのけ反らせ、

攻撃をキャンセルさせることはできたが、有効なダメージは与えられなかった。

そして、銃声に気づいたジョーが深海棲艦に張り付いて敵を殴りながら呼びかけてきた。

 

「遅かったな、クリス!」

 

「馬鹿な真似はいい加減にしろ、一人でどうにかなると思っているのか!」

 

「思っちゃいねえが、やる時にやらなきゃ死ぬんだよ!

そのデカイ銃で時間を稼いでくれ!俺はやることがある!」

 

「やるって何を!」

 

「お嬢様方にプレゼントだよ!」

 

そう言ってジョーは一旦しがみついていた深海棲艦から離れ、道具袋を漁り始めた。

何を考えているのかは知らんが、

もう1体がお前に砲を向けていることに気づいているのか?

まあいい、どうせ何かろくでもないことを考えているのだろう。

俺は青黒い鼻血を出している個体の顔面に向け、トールハンマーの引き金を引いた。

 

 

 

背後から銃声。よし、うまくやってるみてえだな。とうとうこいつを使う時が来たぜ。

俺はステイクボムを取り出すと、2体の化け物の間に放り投げた。

手榴弾と違って木製だから沈むことがねえ。さあ、お楽しみだ。

俺は一度後ろに下がって無線機でクリスに連絡。

 

 

 

『クリス、そいつを銃で撃ってくれ!撃つ前に奴らの身体に身を隠せよ!』

 

なにやら変なものを投げたと思えば、わけのわからないことを言う。

だが問答してる余裕はない。俺はB.O.Wに組み付き、サムライエッジを片手で構えると、

海面にプカプカ浮かぶそれを撃った。すると──

 

 

 

パァン!と木製の爆弾が弾け、鋭い無数の木の枝が2体の深海棲艦に突き刺さる。

 

『イギエアアア! イタイ イタイ!!』

 

無線機を通して、奴らの悲鳴が道具袋を震わせる。よっしゃ、自慢の傑作が大爆発だ!

実際奴らは目の前でもがきながら全身に刺さった木片を抜こうとしている。

反撃に出るなら今だな。俺は無線機で後ろの連中と通信する。

 

「何してやがんだ、さっさと撃て!こいつらをぶち殺せ!」

 

 

 

隊長とジョーが乱戦を繰り広げていて手が出せなかった我々は、

ジョーの連絡を受けてFGM-148 ジャベリンの発射準備に取り掛かった。

ヴァイパーこと俺と弾薬手のカーチス、

スコーピオンとリパブリックのペアが1体ずつ始末する。

あとは隊長の指示を待つだけだ。俺は隊長と無線を開き、攻撃許可を仰いだ。

 

「こちらヴァイパー、いつでも攻撃可能です」

 

『レッドフィールド了解。攻撃を許可する』

 

「発砲許可が出たぞ!こっちは左だ!スコーピオンは右を頼む!」

 

「隊長は!?」

 

「着弾まで時間がある!必ず回避してくれる!」

 

俺はスコープを覗いて目標をロックオン。

照準の向こう側にいるB.O.Wに狙いを定め、トリガーを引いた。

その瞬間、発射筒から射出用ロケットモーターでミサイルが放り出され、

一瞬宙を飛んだ後、飛行用ロケットモーターが点火され、

眩しいバックブラストを後尾から噴出。

緩い弧を描きながら敵に向かって飛翔していった。

 

 

 

カアァァッ!という、聞き慣れた燃える推進燃料がこちらに突き進んでくる。

こいつらが悶えているうちに退避しなければ。

 

「ジョー、逃げろ!爆発に巻き込まれるぞ!」

 

「わあってるよ!」

 

着弾まで約5秒。ジョーは別方向に逃げ出した。

俺はひたすら海を滑りながら、視界の右端にロケット弾を捉えた時、

前方にジャンプして倒れ込んだ。上半身を少しだけ曲げて後方を見る。

2発とも、2体のB.O.Wに着弾。重戦車を大破させるほどの大爆発が起きた。

海面に寝そべっていた俺も爆風に転がされ、爆発音で耳鳴りがする。

 

……やがて、煙が晴れると、頭のなくなった個体が1、

手足が吹き飛ばされ、腹の裂けた個体が1。どちらも死んでいるのは明らかだった。

ずぶずぶとその大きな身体が海に沈んでいく。まず前哨戦はクリア。

だが、残りはまだ4体。今のような、いや、

今の種を上回る強敵が待ち構えていると考えるべきだ。

俺は後方の部下に追随してくるよう指示を出し、敵本隊へ駆けだした。

 

 

 

どうにか勝てたが、AMGがろくに効かねえとなると、戦いようがなくなる。

後ろを取って首をねじ切れる奴ならいいんだが。ステイクボムも使っちまった。

俺の後ろからクリス達がついてくる。おっと、あいつから無線だ。

 

『どうせお前に行くなと言っても行くだろうし、

下がれと言っても下がらないだろうから言っておく。

前にいるなら敵艦の様子を報告してくれ』

 

「杖持ってデカいクラゲ被った女と、水兵服着て大砲持った女が二人ずつ。

どいつもこいつも真っ黄っ黄だ」

 

『それは空母ヲ級と戦艦タ級だ!なぜこんなところにヲ級空母が!

しかもただでさえ強力なのに、全艦フラグシップだと?

この異常は、やはり一過性のものではないというのか!』

 

この声は武蔵か。フラグシップ(旗艦)ってのは司令塔だからフラグシップなんだが、

全員司令官じゃ誰が一番偉いのかわかんねえ。それともみんな好きにやれってことか?

俺好みの方針ではあるが。どうでもいいことを頭から追い出して、さらに加速すると、

なにか空から乱暴に空気を裂くような音がいくつも迫ってきた。

近づくにつれ、空にポツポツとその正体が現れる。やべえ、航空機だ!

 

 

 

まずいな。対空兵装は持ち合わせていない。

本来地上目標をターゲットにするジャベリンでは空の敵を攻撃できない。

ここは一度退却だ。輸送ヘリにミニガンが搭載されていたはず!

 

「退却!総員ヘリに戻れ!」

 

全員に指示を出し、後退するが、後ろから猛スピードで戦闘機が追いかけてくる。

戦闘機がバラバラと薬莢を撒き散らしながら二門の機銃を放つ。

海に一直線の水柱が二本立ち上る。俺達は3つに分かれて走りながら銃撃を回避するが、

水柱の一本がスコーピオンのペアに襲いかかった。

 

『がああっ!』

 

『スコーピオン!しっかりしろ!』

 

「どうした、何があった!」

 

『隊長、スコーピオンが負傷!右上腕部から出血!救援求めます!』

 

「今行く、待ってろ!……2番機聞こえるか?救援乞う、至急救援をよこしてくれ!

対空装備で援護を頼む!」

 

負傷者1名!

俺は、リパブリックに介抱されながら、海の上で寝転ぶスコーピオンの元に走る。

だが、戦闘機の編隊は俺にもヴァイパーペアにも機銃掃射を行い、

思うように近づけない。そして、その間にも情け容赦なく戦艦の砲撃は続いている。

弾けた砲弾が海水を叩き上げ、滝のような水を浴びた俺はずぶ濡れになる。

このままでは動けないスコーピオンに命中するのは時間の問題だ。

その時、ジョーが俺のそばを離れて何処かに向かう。

 

「くそったれ!おい、俺が囮になる!お前が行きゃどうにかなるんだろ!?」

 

「やめろジョー!」

 

俺の制止を聞かず、ジョーは一人誰もいない方角へ走り出し、

背中の投げ槍を戦闘機に向けて投げ始めた。

彼に気づいた戦闘機の一部が方向転換し、ジョーを狙いだした。

同時に機銃弾の妨害が弱まり、負傷した隊員への道が開けた。

全速力で海を滑り、スコーピオンに駆け寄る。

 

「しっかりしろ!」

 

「はあ…はあ…隊長、すみません……」

 

俺は防護ベストのポケットから回復アンプルを取り出し、

スコーピオンのベストの上から太い針を直接刺した。

急速に止血する効果のある注射を射つと、スコーピオンの容態が若干落ち着いた。

 

「ありがとうございます、隊長……」

 

「ヘリに救援を要請した。この作戦は失敗だ。すぐに撤退する」

 

その時、ヘリのローター音と共にうるさい少女の声が無線に飛び込んできた。

 

『ちょっと待ったらんかいー!!』

 

「君は、確か龍驤と言ったな。負傷者を今すぐ収容しなければならない。

撤退するなら今しかない」

 

『うちらを忘れてもろたら困るで!今から行くから待っとき!』

 

うおー!という叫び声に思わず空を見上げると、

龍驤を始めとして、艦娘達が次々と飛び降りてきた。

そうか、B.S.A.Aのチームで戦うことに気を取られていて、彼女達を忘れていた!

皆も、まるで海がもう一つの足であるかのように、何事もなく着水。

 

「軽空母龍驤、参上や!オッチャン、怪我人は任せたで!」

 

「わかった。残った隊員とヘリを守ってくれ、頼む」

 

「航空戦なら負けません。さあ、はばたいて!」

 

赤城が弓に矢を番え、空に放つ。

矢は上空で炸裂し、複数の戦闘機で構成される編隊に変化。

すぐさま敵機に攻撃を仕掛ける。

奇襲を受けた航空機は、機銃弾で機体を貫かれ、次々と落下していく。

 

龍驤も負けじと航空機を発艦させる。

彼女は飛行甲板が描かれた巻物を広げ、人型に切った紙人形を

指先に集めた不思議な力で航空機に変化させ、次々巻物から離陸させる。

彼女の機体は、戦闘機を無視して、遠くに待機する主力部隊に攻撃を仕掛けた。

空から次々と爆弾を降らせ、直接敵戦艦・空母に叩きつける。

深海棲艦らが苦痛に声を漏らし、無線に割り込んでくる。

 

『ガガ…ソンガイ、チュウハ……』

 

「いよっしゃー!」

 

『私もそろそろ出るべきだな。……行くぞ!』

 

ヘリから縄梯子が落とされると、続いて一際大きな影が飛び降り、戦場に降り立った。

戦艦・武蔵。艤装という装備を身につけた彼女はまさに軍艦の化身だった。

巨大な三連装砲をいくつも背負って平然と立っている姿は、

彼女がやはり人であって人でないことを示していた。

 

「後は私達が引き受けよう。大和型戦艦二番艦、武蔵。参る!」

 

「頼んだぞ……!」

 

俺は負傷したスコーピオンを背負い、縄梯子を上っていった。

機内の簡易ベッドにスコーピオンを寝かせてバンドで身体を固定すると、

次の仕事に取り掛かる。

頼む、とは言ったが、彼女達だけに任せきりにするつもりはない。

俺は俺にできることをやる。ミニガンに掛けられていたゴム製シートを取り払い、

レールで搭乗口まで引っ張り、両手をレバーに掛け、機体の上昇を確認。

銃口を空に舞う敵機に向けた。

 

「さあ、借りは返させてもらうぞ」

 

 

 

そして、武蔵は一度眼鏡を直し、その向こうに居る戦艦タ級の一隻を見つめていた。

 

「……なるほどな。私の知るフラグシップとは何かが違う。

何者かに存在を改変されている。

だが、どのような手品を使おうが、私の46cm砲の前には無意味だ!」

 

武蔵が艤装にシグナルを送ると、その重量には不似合いなほど滑らかな動きで、

46cm三連装砲が、耳に痛い金属の摩擦音を立てながら角度修正した。砲弾も装填済み。

狙うは戦艦大物のみ。

 

「遠慮はしない、撃てぇ!!」

 

全砲門が火を噴く。戦場に轟音が駆け巡り、衝撃波で海面をえぐり、

生き残ったヴァイパーペアや味方である赤城、龍驤すらも驚かせた。

真っ赤に燃える黒鉄の炎が戦艦タ級に食らいつく。

着弾寸前に敵も気づいたが、時既に遅し。

何かしようと手を挙げたが、46cm砲弾が黄色いオーラで不気味に輝く身体に突き刺さり、

とどめを刺すように爆発。小型のキノコ雲が上がり、そこには何も残らず、

生死を確かめるための死体すら残らなかった。

 

「相変わらず武蔵さん、ようやるわ……」

 

「見惚れてはいられません。皆さんを守らなくては!」

 

「う、うん。せやな!」

 

彼女達は、一度帰還した航空機に補給を済ませると、

再度敵空母が放った攻撃機の迎撃、敵艦の爆撃を命じて飛び立たせた。

 

 

 

一方、B.S.A.Aも休んでいるわけではなかった。

ヴァイパーペアがスコーピオンを失ったリパブリックに通信を送る。

 

「こちらヴァイパー。リパブリック、聞こえるか!」

 

『ああ!通信は良好だ、どうぞ!』

 

「俺達で戦艦を撃つ!FGM-148は一人でも発射自体は可能だ、

スコーピオンがいなくても装填はできるだろう?」

 

『既に装填済みだ!戦闘機は艦娘が引き受けてくれてる!今なら撃てるぞ!』

 

「やれる範囲でいい、撃てるだけ撃て!先に始めるぞ!」

 

『了解!』

 

ヴァイパーは通信を切ると、ジャベリンを構えて、

スコープの向こうにいる戦艦タ級にロックオン。

カーチスが周囲の安全を確認し、発射の合図を出した。

 

「ファイア!」

 

ヴァイパーがトリガーを引くと、

ロケットモーターで噴射炎を伴わずミサイルが放り出され、一瞬高度を落とし、

飛行用ロケットモーターに点火。

バックブラストが乾いた音を鳴らしながらタ級に突っ込んでいく。

遥か向こうに怪しい発砲炎を見たタ級は回避行動を取るが、

赤外線誘導機能を備えたミサイルはどこまでも敵を追いかけ、直撃、爆発。

対戦車用とは言え、決して無視できないダメージを受けたタ級。

 

『チィッ!』

 

あの飛翔弾を放った人間二人組を粉砕すべく、三連装16inch砲の照準に収める。

同時に、砲弾に点火するべく、脳から武装に命令を送ろうとしたその瞬間。

上空から獅子の咆哮の如き銃声と共に、

光線銃のような真っ赤に焼けた機銃弾の帯が彼女を襲った。

猛烈な銃撃の前に、砲撃どころか立っていることが精一杯だ。

 

『!!?』

 

何が起きたか分からないタ級。

なぜ?なぜ、たかが機銃に戦艦の私が押されているのか!?

しかしその疑問に誰かが答えてくれるはずもなく、

毎分3000発放たれる7.62x51mm NATO弾にただ肉体をちぎり飛ばされる。

焼けた弾丸の先に、回転翼機が1機。あそこか!

なんとか体勢を立て直し、ヘリを撃墜しようとするが、

2発目のミサイルに気づくのが遅れた。リパブリックが放ったジャベリンがタ級に命中。

艤装を破壊され、横転する。

 

『ウグッ!! アアア……』

 

彼女は右の腕と砲を破壊され、転びながらヘリを睨む。

 

 

 

その時、クリスがヘリコプターから戦況を把握し、

M134ミニガンで援護射撃を行っていた。

 

「ここから頭を抑えれば問題はなさそうだ」

 

驚異的な発射レートで弾丸を放つ重機関銃で、続々と湧いてくる敵艦載機を撃ち落とし、

敵艦の反撃を妨害し続けるクリス。レーザーガンのような怒涛の弾幕を張る。

もちろんそんなものはありはしないが、

焼けた弾丸が一列になって地上に放たれるため、

遠くから見れば宇宙人の攻撃にすら見える者もいるだろう。

 

 

 

ヴァイパーペアがジャベリンに装填を終え、再度スコープで敵艦を捉える。

立ち上がろうとするタ級は既に虫の息。

 

「カーチス、周辺の状況を!」

 

「いつでも行ける!やっちまえ!」

 

そして、ヴァイパーがFGM-148ジャベリンのトリガーを引いた。

砲口から放り出されたミサイルが、後部からバックブラストを噴き出し、

ダイレクトアタックモードで高度50mを飛びながら敵艦に向かって飛翔。

赤外線誘導に導かれながら、タ級に向かって突撃する。

 

気づいたタ級が右腕をかばいながら逃げようとするが、

やはり蛇のように追いかけるミサイルを振り切ることができず、直撃を受けた。

爆発を起こすミサイル。艤装ごと海に放り出されるタ級。

体中に亀裂が走り、その身にまとう黄色いオーラが徐々に消えていく。

 

『ア…ア……』

 

彼女の身体が少しずつ海に沈み、身体が完全に沈むと、

二度と浮かんでくることはなかった。

 

「おい、やったぞ!聞いてるかリパブリック!俺達、異世界のB.O.Wを殺ったんだぞ!」

 

『ああ!残りの奴もやっちまおう!』

 

しかし、既に時刻は夕暮れ時を迎えようとしていた。

 

 

 

「あかん!夜戦にもつれ込んだら面倒や!一気に決めるで!」

 

「そうですね。私達空母は……」

 

「右、そして私が左だ」

 

艦娘三人はその短い会話で標的を定めた。

武蔵は46cm三連装砲、赤城・龍驤は攻撃機に切り替え、

龍驤の反復攻撃で既に手傷を負っていた空母ヲ級2隻を沈めるべく、

最後の攻撃を敢行する。武蔵が全砲門に再装填、

 

「この主砲の本当の力、味わうが良い!」

 

宣言通り向かって左の空母を狙い、全主砲を発射。

1tを越える砲弾の群れが螺旋を描いてヲ級の巨大な頭に命中。

その運動エネルギーと重量、そして爆発でそのまま頭部を粉砕。

首がなくなったヲ級は少しの間ふらふらと身体を揺らすと、前のめりに倒れ、轟沈。

そして、残る1隻に攻撃機の編隊2つが迫る。無数の攻撃機が酸素魚雷を投下。

ヲ級に向かって前進を始めた。

 

彼女も海を泳ぐ炸薬の塊に気づき、慌てて戦闘機を発艦させたが、

魚雷をどうすることもできず、足元から突き刺さり、

肉体を破壊していく爆発の連続に為す術もなく、下半身を失った。

 

『ワタシハ シネナイ マダ……』

 

そして空母ヲ級は、後ろに倒れ込んで、暗い海へと沈んでいった。

 

 

 

「なんとか、日没前に倒せましたね」

 

「うちらにかかれば楽勝やで~!」

 

「あ、ヘリが来ました。帰投しましょう」

 

赤城が指差すと、彼女の後方に輸送ヘリが高度を落として

海面ギリギリまで降下してきた。艦娘もB.S.A.A隊員もすぐさま乗り込む。

戦闘員を回収したヘリは、直ちに鎮守府へと飛び去った。

 

 

 

──鎮守府 本館前広場

 

ヘリが着陸すると、提督と長門が皆を出迎えたが、のんびり挨拶はしていられない。

俺は何か言おうとした提督を遮るように救急搬送を求めた。

 

「おかえり、大丈夫……」

 

「提督、負傷者が出た。医務室へ連れて行ってくれ」

 

「わかった。長門君、すぐ手配を!」

 

「了解!」

 

全員でスコーピオンを乗せたシートを運びながら、本館の医務室に彼を運び入れた。

回復アンプルで出血は止まったが、弾丸が体内に残ったままだ。

医療班の艦娘に彼を任せ、小さな手術室の入り口にランプが着くのを見ると、

どっと疲れが出た。他の隊員達も同様だった。

ヘルメット越しにも緊張と疲れに満ちた表情がうかがえる。

 

「あれが、深海棲艦なんですね……」

 

「そうだ。間もなく俺達は、あれを遥かに凌ぐB.O.Wの軍隊と戦うことになる。

……今ならこの作戦から下りても構わない。本来俺達が来た目的とは明らかに異なる。

深海棲艦との戦いを勝手に始めたのも俺だ。

処分や人事考課に関して不利益を受けることはない」

 

その時の彼らが迷っていたとしたら、ほんの刹那だっただろう。リパブリックが答えた。

 

「俺はやります。スコーピオンをやられて、俺は、怒っています!

連中を丸焼きにしないと、気が済みません!」

 

「まだまだ弾薬は残っています。使ってやらなきゃかわいそうですよ」

 

「俺達も深海棲艦を倒せました!やれるんですよ俺達も!」

 

「そうか……ありがとう」

 

離脱者なし。スコーピオンの怪我も後遺症の残らない程度の負傷だった。

回復した時に同じことを問うつもりだが、恐らく返事は同じだろう。

その時、後ろから複数の気配が近づき、俺に声をかけた。

 

「わ・た・し・た・ち、を忘れてはいまいか。クリス隊長殿?」

 

「せや!空母倒したんうちらやでー!」

 

「本日の戦い方は、“連合艦隊”と申します。

姫級との戦いでは、あのように2つの部隊で総力戦を行うんです。

つまり、私達も力を合わせて戦える。

逆に言えば、本番では12対12の激戦になるということになりますが……」

 

艤装を外した武蔵、龍驤、赤城が駆けつけてきた。

彼女達は特殊な修復溶液で満たされたプールで傷を癒やすらしい。

もっとも、今日の戦いで負傷した艦娘はいなかったが。

 

「3人共、協力に感謝する。皆がいなければ、多くの隊員が犠牲になっていた」

 

「んふふ~もっと褒めてもええんやで?」

 

「こーら、調子に乗るんじゃない」

 

「機銃弾を受けた方、命に別状はないそうでなによりです」

 

「姫級との戦いでも、力を貸してくれ。頼む」

 

「もちろんです。一緒に、頑張りましょうね」

 

「ちょっといいかな」

 

提督も医務室に入ってきた。そうだ、今日の戦闘記録について提督に報告しなければ。

 

「ああ、今行く。……全員、ここで解散だ。提督には俺から報告しておく」

 

“はっ”

 

「武蔵君も来てくれたまえ。艦娘の代表からも話を聞かなきゃね」

 

「ちがーう!艦娘の代表はうちやって……うわわわ!」

 

「はいはい、ちびっ子はおネムの時間だ。宿舎に帰って休め」

 

武蔵が片手で粒状の襟首を掴んで無理矢理医務室の外に出した。

 

「はは……それじゃあ、行こうか」

 

 

 

 

 

俺は、アイテムボックスの前で左腕のAMGを見つめて考え込んでいた。

今日の戦いじゃ、俺はまるで役に立たなかった。敵がどんどん強力になっているらしく、

AMG-78αのフルチャージもほとんど効果がなかった。

今までの戦い方じゃあ、姫級を殺すなんざ到底無理だ。

もう拳だけじゃなく、俺も銃を取るべきなのかもしれねえ。

俺はショットガンM21を取り出そうと、アイテムボックスの蓋を開けた。

 

「ああん?なんだこりゃ」

 

すると、中にまた変なもんが入ってやがった。

アンブレラの社章と社名がプリントされたジュラルミンケース。

やっぱりこいつにも付箋が貼られてた。

 

“ようやく完成した”

 

ただそれだけだ。ケースを開けてみる。中には、AMG-78αがもう一つ収められていた。

……いや、なんか違うな。コアが放つ波動というか、威圧感というか、

とにかく何かが桁違いだ。俺はAMG-78αを外して謎のAMGを装着する。

いつも通りカチカチと自動で俺の腕に合わせて形状を変化させ、しっかりと固定する。

そして、コアがαより明るく輝き、全体にエネルギーを伝達。

 

《装備完了》

 

一体何が違うんだ?と思ったのも束の間。こいつの性能を身をもって知ることになる。

……左腕がねえんだよ!いや、吹っ飛んだとかそういう意味じゃねえ。

まるで腕がなくなったみたいに軽くなりやがった!

明らかに性能が飛躍的に向上している。

なるほど、これなら姫級……待てよ、その前に決着を付けなきゃならねえ奴がいる。

 

「こいつがあればジャックの野郎をぶっ倒せるかもしれねえぞ」

 

俺が完成版AMG-78を隅々まで眺めていると、2階から声を掛けられた。クリスか。

 

「何をしている。これから執務室で報告会議だ。ジョーも来るんだ」

 

「うるせえな、今行くよ」

 

 

 

──執務室

 

俺達が執務室でソファに着くと、まずは武蔵が今日の戦闘について提督に報告した。

 

「なるほど、やはりあの海域でも深海棲艦の凶暴化が進んでいたんだね」

 

「ああ、通常は艦娘が新米から卒業するための

腕試し程度の敵しか存在しないはずだが、

全艦フラグシップ、戦艦・空母・重巡2隻ずつという滅茶苦茶な編成だった」

 

「やはり例の姫級が接近しているということなのだろうか……」

 

「提督、姫級の位置は割り出せているのか?」

 

「まだだ。北部方面の海軍基地が監視を続けているが、

地上からの観測では何も見ることができない、と言ったほうがいい」

 

困った様子で腕を組む提督に、俺が一つ提案をした。

 

「B.S.A.Aのヘリで夜間に索敵を行うのはどうか。

戦うわけではないから航続距離と速度に優れた戦闘ヘリで姫級を探す。

大体の位置は北海道の北東で合っているのだろう」

 

「それは危険すぎる。深海棲艦が気づかないわけがないし、

真っ暗な夜の海では何も見えないだろう」

 

「問題ない。索敵には対空砲火が届かない高高度を飛行する。

ヘリには夜間戦闘用ナイトビジョンも搭載されているから昼と同等の視界が得られる」

 

「敵空母が艦載機を放ってきた場合は?」

 

「武装ヘリにはチェーンガンやミサイルポッドを装備している。

今日の戦闘で見た航空機程度なら、

オートターゲットシステムで発艦直後に撃ち落とせる。心配は無用だ」

 

「輸送用のヘリコプターにもとんでもない機銃を装備していたからな。

戦闘ヘリとなれば凄まじい力を持っているのだろう」

 

「何か見たのかい?武蔵君」

 

「ああ。クリスがヘリに負傷者を収容した後、

空から大型の機関砲で援護射撃を行っていたのだが、

無数の艦載機や戦艦を圧倒するほど強力だった。

あまりに発射速度が早くて光の帯が敵を薙ぎ払っているようだった」

 

「そうなのか。……やはり70年の技術の進歩には驚かされる。

それじゃあ、クリス。君に姫級の捜索を頼みたい」

 

「任せてくれ。あと、頼みたいことがある」

 

「何でも言ってくれ」

 

「消耗したヘリの燃料や弾薬類の補給をしたいのだが……」

 

「ヘリコプターなら、灯油だね。問題ない。

弾薬は武装を見ないと製造可能かわからない。

明日にでも見せてくれ、明石君と検討しよう」

 

「すまないな」

 

バタン!

 

噂をすれば影、という。その時、名前が出たばかりの明石が執務室に飛び込んできた。

日本の文化はよくわからないが、何かめでたそうな感じは伝わってくる。

 

「みんなー!ビッグニュースだよー!」

 

「なんだ騒々しい、ノックぐらいしないか!大体なぜ法被など着ている!」

 

だが、長門の小言も無視して明石が続けた。

 

「ついに、ついに完成したんだよ!」

 

「だから何がだ!」

 

「皆さんお待ちかねの、超大型戦艦だよー!」

 

イェイ!と明石がクラッカーを鳴らした。

 

 

>超大型戦艦完成まで、あと0日00時間00分00秒

 

 

 

 


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