艦隊これくしょん with BIOHAZARD7 resident evil   作:焼き鳥タレ派

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Tape2; Survivalist of the Swamp

嬢ちゃん方の家らしき建物でバケモンをぶちのめした俺は、大股で歩き白い家に戻る。

別に奴らの世話になるつもりじゃねえ。あの野郎とはまだ話の途中だったからな。

また玄関をぶっ叩いてやろうと思ったが、今度は長門って姉ちゃんが、

ドアの前で両腕を組んで仁王立ちして待ってやがった。

声をかけようとしたが向こうが先に喋った。

 

「よう長……」

 

「ジョー、お前は一体何をしてくれたのだ!」

 

「あん?」

 

「既に偵察機からの情報が入っている!

素手でB.O.W殺すわ、肥満体を叩きのめすだの、

やりたい放題だったらしいではないか!」

 

「何怒ってんだよ。お前らだってあのバケモン連中は初めてじゃねえんだろ」

 

「方法を考えろと言っている!他の皆にどう説明すればいいのだ!?

異世界から来た、それはいい。前例があるからな。

だが、パンチ一つでB.O.Wの群れを殺しました、などと言ってみろ。

頭がおかしいと思われるのは私だぞ!」

 

「ああ……なんつーか姉ちゃんも辛い立場なんだな。同情するぜ」

 

「お前が言うんじゃない!」

 

「落ち着けって、とにかく中に入れてくれよ。

あの提督って奴と話を付けなきゃならねえ」

 

「当たり前だ!執務室でみっちり説教をしてもらうからな!」

 

長門は強引に俺を引っ張ると、執務室か?とにかく提督の部屋に連れて行った。

デスクに座ってた軍服が立ち上がってこっちに来る。

 

「提督、ジョーが帰ってきた。少しは思慮深い行動をするよう説得してくれ」

 

「ジョー、あなたが強いことは分かったが、無謀な行為は……」

 

「てめえこの野郎!」

 

今度こそ頭にきた俺は、長門の手を振りほどいて生っ白い野郎に殴りかかった。

が、その瞬間、長門に羽交い締めにされて拳が届かなかった。

なんだこりゃ、すげえ力だ。でも、俺の怒りは治まらねえ。

 

「おめえ、こんなところで何してやがった!ああん!?

女子供が戦ってる時に、自分一人あったけえ部屋で寛いでたのかって聞いてんだ!」

 

「やめろ、提督は指揮官だ!

彼に万一のことがあったら、鎮守府全体の機能が停止してしまうのだ!」

 

「いいんだ、長門君。彼を離してくれ。……ジョー。あなたが怒るのも無理はない。

殴って気が済むなら殴るといい。でも、約束してほしい。

今後は二度と命を投げ出すようなことはしないと」

 

「何を言うのだ、提督!」

 

「いい度胸だ、歯ァ食いしばれ!」

 

長門の拘束から抜け出した俺は、提督に拳を振り上げる。

その時、また長門が俺の腕を掴みやがった。なんだいちいち邪魔しやがって!

 

「やめろと言っている!提督に手を出すのなら、私とて容赦はせんぞ!」

 

「ならお前から相手だ!」

 

俺は、掴まれた右手をそのままに腰を落とし、背中に長門を乗せるようにして、

思い切り前方に身体を回した。

つまり背負い投げを決めて、提督に長門をぶん投げてやった。

 

「うわっ!」「ああっ!」

 

二人共デスクを巻き込んで派手に倒れる。いい眺めだ。

どっちも床に伸びて書類にまみれてやがる。

 

「どうだ、まだやるか!?」

 

「ううっ……あたたた。

会ったばかりのイーサンといい、どうして異世界から来るものは乱暴者が多いのだ」

 

「長門君、大丈夫かい?……ああ、腰を打ってしまった」

 

「ああ。提督は?」

 

「大丈夫だ、問題ない。ジョー、少しは暴れて気が済みましたか?」

 

「済むわけねえだろ。おめえをぶちのめすまではな!」

 

「いい加減にしないか!

本来ならこのような暴挙、銃殺刑に処されても文句は言えんのだぞ!」

 

長門が提督の前に立ちはだかって俺を睨みつける。いい目だ。

提督より、こいつとやりあった方が気分が晴れそうだ。両方の拳を構える。長門も同様。

俺達の間に鋭い緊張感が走る。両者、拳を振りかぶると、

 

「はい、ジョーも長門もそこまで」

 

「……了解」

 

チッ、提督の野郎だ。長門が構えを解いちまった。

やっぱりこいつから黙らせたほうがいいか?

どうせくだらない仲裁にでも入ろうとしてるんだろう、と思った。

だが、今度はなかなか面白そうなことを言った。

 

「ジョー。さっきも言ったが、あなたが強いことは理解できた。

では、その強さを我々に見せてほしい。

腕っ節ではなく、一切補給のない状況下での生存能力を、ね」

 

「どういうこった」

 

「つまり、この鎮守府の敷地内で一週間、生き延びてほしい。

この本館の外で、当然物資の提供も全くなし。

それであなたが今のように元気でいるなら、好きなように振る舞って欲しい。

私を半殺しにしてここを去るのも自由。

だが、ふらふらになってギブアップ、ということになれば……

当鎮守府の構成員となって帰還する方法を探す。どうだろうか」

 

「面白えじゃねえか。熟練のサバイバル術を見せてやる。後で吠え面かくなよ」

 

「では、決まりですね。長門君、彼を外にお送りして」

 

「こいつを、か?……はあ」

 

「いらねえよ!その代わり、外では勝手にやるからな!」

 

「もちろん、構いませんよ」

 

それで俺は、執務室から出て、海軍基地としては無駄に洒落た建物から外に出た。

空気がうめえ。俺は両腕を広げて深呼吸する。

落ち着いた所で改めて景色を眺めてみたが、へんてこな場所だ。

軍港の割には艦が入る場所が一箇所しかねえ。おまけにあんまり使ってる様子もねえ。

それになんだ?そこら中に散らばってるボロい木箱は。

近くにあるやつを適当に選んで一つ壊す。

 

軽く殴っただけでガラガラと崩れちまった。中になんか入ってるな。

こりゃ……金属製のガラクタだが、何にでも使い道はある。要は工夫だ。

こいつと適当な長いものがあれば……おっ、ちょうど良さそうな場所があるじゃねえか。

玄関前の広場の隣に、広い雑木林がある。さっそく広場を横切って林に向かった。

途中、すれちがう艦娘とかいう女の子が、

みんな俺を幽霊でも見るような目で見てきたが、どうでもいい。

 

おお、宝の山じゃねえか。

整備されてる歩道にはろくなもんがなかったが、道を外れた奥にはいいもんがあった。

頑丈な木の枝がたくさん転がってる。満足の行くまで拾った俺は、

さっそく、さっき拾った鉄クズと木の枝をポケットの紐でしっかりと縛り付ける。

なかなかだ。これでワニも殺せる投げ槍に大変身だ。

 

とりあえずの武器は完成した。

後は食いもんだが、イモムシでもムカデでもなんでも構わん。

雑木林から広場にかけて縫うように流れる川がある。

実はこいつには初めから当たりをつけていた。虫は湿気の多いところが狙い目だからな。

川岸に近づくと、2人の子供が遊んでた。こんな小さな子供までいやがるのか。

まだ小学校に入ったくらいじゃねえか。しかも、この寒いのに水着姿だ。

俺は驚きながらも、虫探しを始めた。

 

「邪魔するぜ」

 

「あっ!イーサンの仲間でち」

 

「パンチで怪物をやっつけちゃうおじいさん。ですって!」

 

「またイーサンの野郎か。悪いがそんな奴は知らん」

 

「ねー遊んでよぉ!そっちの世界のお話聞かせてほしいでち」

 

「ろーちゃんも!ろーちゃんも!」

 

「俺は、今夜の晩飯を探さなきゃならねえ。向こうで遊んでろ」

 

「そんなところにご飯なんてないよー」

 

「贅沢言わなきゃどこにでもあるもんだ。この石の陰は……いねえな」

 

「これあげるから遊んでよ~」

 

その時、ピンク色の髪をした女の子が一匹のザリガニを差し出してきた。

……おお、ありがてえ。

 

「俺に、くれんのか?」

 

「うん!かわいいでしょ!この川には上流からお魚さんやザリガニさんが……」

 

バリッ!と半分に割ってむしゃむしゃと食う。

 

「あ」「あ」

 

「悪くねえ。ありがとよ、うまかったぜ」

 

ザリガニを食い終えた俺は、ペッと殻を吐き捨てると、

思いがけず食い物を恵んでくれた子供に礼を言った。

だが、何にも返事がねえ、というより二人共その場で固まってやがる。

 

「あ、あ……」

 

「おい、どうした。悪いもんでも食ったのか?」

 

「うえええん!!ザリガニさんがー!」

 

「おじさんが食べちゃったー!!」

 

「どうした、なんだ、寒いのか!?」

 

「ながとさ~ん!」

 

「一体何だってんだ?」

 

いきなり泣き出した子供2人はどっか行っちまった。

まあいい、後はムカデ1匹くらい食べればエネルギー源は確保できる。

俺は気にせず濡れた岩や、苔の生えている辺りを探して、ようやくムカデにありついた。

毒のある頭をちぎって口に放り込む。まあまあだな、いつも通りだ。

食事を済ませると、遠くからでけえ声が聞こえてきた。

 

“ジョー!どこにいる貴様ァー!”

 

なんだよ、途中で邪魔すんのは反則だろうが。しょうがねえから返事をした。

 

「おい、何の用だ!俺はここだ!」

 

“そこかあぁ!!”

 

返事の返事が帰ってきてから3秒ほどで、鬼のような形相の長門が走ってきた。

怒りっぽい女だな。何がそんなに気に入らねえってんだ。

 

「よくもやってくれたな、ジョー!」

 

「なんだ?俺はお前らのルール通り、ここでサバイバルしてただけだろうが。

まぁ、滑り出しは順調だ。この分じゃ俺の勝ちは見えてる。

提督にも歯医者の予約を……って、なんだおい引っ張るな!」

 

「来い!」

 

「なんでだ。まだ丸々一週間残ってるだろうが」

 

「いいから来い!」

 

「わかったから手を離せ、この馬鹿力め!」

 

長門に続いて本館へ戻っていく。その途中もブツクサ文句を言ってきやがる。

 

「まったく!伊58と呂500が泣きながら私を呼ぶ声が聞こえたから、何事かと思えば……

ザリガニを食うとは何を考えている!」

 

「ザリガニは立派な食いもんだろうが」

 

「違う!」

 

「違わねえ。賭けてもいいが、茹でちまったら、お前だってエビと区別が付かねえ。

やってみろ」

 

「誰がやるか!」

 

「それはそうと、この辺にワニが出る池知らねえか?

一匹仕留めれば一週間楽勝なんだが」

 

「チャレンジは中止!お前を野に放ったのが間違いだった!

提督と今後の対応を協議する!」

 

「中止だぁ?そんな勝手が通ると思って……」

 

だべりながら歩いてると、いつの間にか本館の出入り口の前まで帰ってきてた。

長門が大きなドアを開ける。一度見た玄関ホールが視界に広がる。

ふん、相変わらず無駄に気取った造りだ。戦争する気あんのか、こいつら……ん?

おいおい、あれは!

 

「どうしたんだ、いきなり!」

 

長門を無視してそいつに駆け寄る。階段の脇に置いてあるそれは……間違いねえ!

俺のクーラーボックスだ!こん中には貴重な食料が詰め込んである。

思い切り蓋を開けると中には、ねえ。どうなってんだおい!

 

「今度は何なんだジョー……はっ!?なぜだ!

そのアイテムボックスは、イーサン帰還と同時に消滅したはずなのに!」

 

「てめえ、俺の食料どこにやりやがった!」

 

俺は目を丸くして近寄ってきた長門に掴みかかった。

せっかく仕留めたワニの肉がどこにもねえ!

 

「違う、それはイーサンの……」

 

「昨日さばいたワニ肉が一つ残らず消えてやがる!さてはお前ら食いやがったな!

それに、なんだあのガラクタは!代金のつもりか!」

 

「離せ、何を言っているのかさっぱりだぞ!」

 

「どうしたんだい、長門君!」

 

ちょうどいい。提督も下りてきたところだ。

この状況について説明してもらおうじゃねえか!

 

「提督、すまない。また例の箱が現れたのだ。それを見てジョーが急に騒ぎ出して……」

 

「あれは!……なるほど、ゴタゴタ騒ぎが続いて気づかなかった。

やはり転移者が現れると、あの箱もついてくる仕組みになっているらしいね」

 

「箱で思い出したのだが、あの木箱もまた出現していた。

ルーカスも死んだというのに、なぜ今頃になって……」

 

「二人だけで納得してねえで、何がどうなってるのか説明しろ!」

 

貴重な獲物を失った怒りを長門と提督にぶつける。

ちくしょう、2週間は食い物に困らない大物だったってのに!

 

「ああ、済まないジョー。

その箱は、アイテムボックスと言って、きっとあなたが持っていたものとは別のものだ」

 

「ふざけんな、どっからどう見ても俺の箱だ!」

 

「少し信じがたい話になりますが……」

 

そしたら、提督が俺のものにしか見えない緑色の箱について説明を始めた。

なんでも?これは例のイーサンが使ってたもので、色んな所にあって、外観も全く同じ。

変わってるのは、全部の箱の中身が共有されているってことらしい。

要するに、ここの箱に入れたもんが、よその箱で取り出すこともできるんだとよ。

 

「で、それを信じろって言いたいのかよ」

 

「人間一人が世界の壁を超えてきたのです。

箱の一つが転移しても不思議ではないのでは?」

 

「まぁ……そりゃそうだが」

 

「それに、まだ希望はあります。イーサンが転移してきた時、

その箱には様々な銃火器がありました。元々所持していなかったものまで。

彼はそれを活用してB.O.Wや深海棲艦、そして遂には変異したルーカスを退けたのです。

きっとその箱には、

所有者にとって必要なものが収められる仕組みになっているのでしょう。

まずは中身をよくご覧になってみては」

 

なんか提督に説き伏せられたみたいで気に入らねえが、奴の言うことにも一理ある。

見るだけ見てみるか。

俺はまたクーラーボックス、あいつらが言うにはアイテムボックスを開いて、

中身を確認した。どれも小さな付箋が貼られ、メッセージが書かれている。

 

「なになに……

ショットガンM21、“装弾数は少ないが強力なショットガン”いらん。

ムラマサ、“非業の死を遂げた刀匠の呪いの刀”こいつは獲物をさばくのに使えそうだ。

気色悪いピンク色の刃が気に入らねえが。

最後に……AMG-78α(アルファ)、“試作品につき取扱注意”こいつは一体なんなんだ?」

 

俺は、持ち上げるとガチャガチャ音がする、ロボットの腕みたいなガントレットを、

色んな方向から眺める。左手用らしいが、なにができんだ、これ?

とりあえずはめて手を握ってみる。ん?……なっ、なんだこいつは!

手の甲にある円形のコアから、駆動音と共にガントレット全体に、

青緑に光るエネルギーが行き渡る。

 

《装備完了》

 

喋りがった!こりゃあ……なんだか面白えぞ!ガントレットをはめた左腕が軽い。

というより、筋力が爆発的に上がったような気がする。さらに拳を握ってみる。

 

《チャージ開始》

 

「チャージ開始だ?おい、これ、どうなってんだ!」

 

いきなり俺の許可なくチャージを開始しやがったAMG-78αのやり場を求めて、

長門達に近寄る。膨大なエネルギーを内部に蓄えて、ブルブル震えてるんだが!

 

「ま、待て、ジョー!それは何かマズい気がする!とりあえず私達から遠ざけるんだ」

 

「うむ、その通りだ!話せばわかる!」

 

薄情な連中め!

その時、グォン!とガントレットが、更にエネルギーをチャージしやがった。

 

「なんなんだこりゃ、くそ、外せねえ!」

 

《チャージ完了》

 

やべえ、俺の筋力を限界まで増幅して破裂寸前だ。

気を抜いたら、多分このホールがぶっ壊れるほどの一撃が炸裂する。

なんか、こいつのエネルギーを逃がせるもんはねえか?俺は周りを見回す。

足元には……頼む、壊れんなよ。頑丈だから大丈夫だよな!

 

俺は、アイテムボックスにフルチャージした左拳を叩き込んだ。

箱は壊れなかったが、物凄え衝撃波が走り、階段手すりの細い支柱が砕け、

ホール全体の窓ガラスが、風圧で割れんばかりに揺さぶられ、ガタガタと音を立てる。

 

嵐が過ぎ去ったホールに静けさが戻った。長門も提督も尻もちをついて俺を見てやがる。

ざまあみやがれ。うん、こいつは気に入った。魔法の左手を手に入れて、

シャドーボクシングをする俺に、立ち上がった提督が話しかけてきた。

 

「は、はは……イーサン同様、強力な武器が手に入ったようですね。

どうですか、せっかく手に入れたその力。

姪御さんと再会するために使ってみる気はありませんか。彼がそうだったように」

 

「……なんでだ」

 

「はい」

 

「どうしてそこまで俺に構う。ただの流れもんに過ぎねえジジイに」

 

アイテムボックスの縁に手をついて誰ともなしに呟いた。

初めはこいつをぶっ飛ばす気だったが、馬鹿騒ぎのせいで頭が冷えたっていうか、

一番基本的なこと思い出したぜ。

 

「彼に、教わったからです。逃げない勇気を。

きっとあなたにしてみれば、“知った事か”でしょうが、彼はどんな窮地に陥ろうと、

また、自らもB.O.Wの力に飲み込まれそうになりながらも、必死に戦い、

我々の元へ帰ってきてくれました。

その姿に、私や艦娘一同、どれだけの影響を受けたことか。

確かに時には退くことも肝心ですが、今は立ち向かうべきだと私は考えます」

 

また、イーサンか。どんな野郎だったかは知らねえが、

よほどこいつらの頭の中に残るほどの修羅場をくぐったのは間違いないらしい。

若いもんには負けたくねえ。……俺も、いっちょあがいてみるか。

 

「お前をぶっ飛ばすのは止めにする。その代わり、寝る場所を貸してくれ。

そこのベンチで構わねえ」

 

「もちろんですジョー。

3階のかつてイーサンが寝泊まりしていた客室を使ってください」

 

「それと!食事は1階の食堂で取るんだぞ?鳳翔には話を通しておく。

0700・1200・0600の3食だ。だから、もうザリガニを食うのはナシだぞ。

他の艦娘が怖がる」

 

「ザリガニはうめえと思うんだがな……」

 

「うまくない!……食べたことはないが」

 

そんなこんなで、俺はこの変な軍事基地で厄介になることになった。

二人に3階の客室に案内されて、提督に鍵を渡された。

 

「今日からここが、あなたの仮住まいだ」

 

「恩に着るぜ」

 

「足りないものがあれば、私か長門君に言ってください。

今日のところはお疲れだろうから、ゆっくり休んでほしい」

 

「ああ。夕食はもう済ませたからな」

 

「ん、それは、何よりです……それじゃ、今日はごゆっくり」

 

「あんたもな。それじゃあ」

 

俺は提督から受け取った鍵で、部屋の鍵を開けた。

中に入ろうとすると、階段を下りる提督達の会話が聞こえてきた。

 

“ザリガニを食べたって本当かい?”

“ああ。でなければあの二人が大泣きする理由がない。もしかすると他にも何か”

“彼の生存能力は並外れているな”

“下手な兵糧攻めやハッタリは逆効果だ。こっちが右往左往する羽目になる。

 ジョーについては皆にどう伝える?”

“今度は初めからありのままに全てを伝えようと思う”

 

人を珍獣みたいに言いやがって。ザリガニはな、ご馳走なんだ。覚えとけ。

心の中で言い聞かせて部屋に入る。なかなか立派じゃねえか。

イーサンって奴はここでどんな生活送ってたんだろうな。

 

ふとテーブルを見ると、妙なものがあった。携帯式の無線機かラジオみたいなもん。

それと、不思議な素材でできたブーツ。手にとってみると、触ったことのない感触で、

引っ張ってみると、大きく伸びる。ちょっと履いてみるか。

……おお、長靴の上からでもぴったりだ。どっちも役に立ちそうだな。

しばらく借りとくぜ。

 

ひとしきり部屋の中を見て回ると、暴れまわった疲れが今更出てきたのか、

なんだか眠くなってきた。今日はもう寝る。

俺はベッドの上に大の字になって寝転がった。

……しかし、帰るつってもどうすりゃいいんだ。

都合のいいことに、ガスマスク野郎のペンライトは手元にはなかった。

提督は前例があるって言ってたな。その辺も明日聞いとくか。

身の振り方について考えてるうちに、いつの間にか俺は眠っていた。

 

 


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